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なつのひのおはなし

今日はとってもとっても暑い日。

ひいくんも、汗をだらだらかきながら、砂場で遊んでいます。

「暑いなあ」

ひいくんがつぶやいた時です。

「暑いよう。溶けちゃうよう」

突然後ろから声がして、ひいくんはびっくり。思わず振り返ると、そこには小さなペンギンがいました。


「溶けちゃう溶けちゃう。どうしよう」

ペンギンはそう言って、泣き出しそうになりました。

ひいくんは慌てて、ペンギンを日陰に連れて行きました。

それでもペンギンは、

「まだ暑いよう。夏なんて嫌いだよう」

とうとうべそをかいてしまいました。


するとそこに、大きなペンギンがやってきました。

「暑いなあ、暑いなあ」

「あっ、パパ!」

小さなペンギンが叫びました。

「やあ坊や。ほんとに暑いなあ」

大きなペンギンそういうと、じっとお空を見ました。

「ううむ。暑いのはきっと、あそこにあるピカピカのせいだな」

ひいくんは、大きなペンギンにつられて空を見ました。

そこにあったのは、太陽でした。

「ようし」と大きなペンギンは言いました。

「涼しく涼しく涼しくしてあげよう」

「どうやるの?」

ひいくんが聞くと、大きなペンギンはにっこり笑いました。

「ペンギンには不思議な力があるんだよ。ぜんぶをカチコチにする力がね」


そう言うと、大きなペンギンはへんてこりんな歌を歌いだしました。


「チコチコ・カチカチ・カコカコ・ピッキピキ

コチコチ・チカチカ・コカコカ・キッピキピ

おいらはペンギン ペペンギンギン・ペペペのギン

ギンギンキラキラ ペンペンヘラヘラ

ナンナンキョクキョク 涼しくな~あれっ!」


すると、何と言うことでしょう。

公園のお砂場も、ブランコも滑り台も、葉っぱも木もそしてお空の雲も青も太陽までもが

キンキラの氷に包まれてしまいました。


「うわあ」

ひいくんが思わず呟くと、息が真っ白になりました。

「どうだい」

大きなペンギンは胸を張って言いました。

「パパすごぉい!」

小さなペンギンは大喜びでジャンプします。

「ひいくん遊ぼ!」

小さなペンギンはそういうと氷の上をすいすいとスケートで遊びはじめました。

ひいくんも氷の滑り台を滑ったり、氷の葉っぱを観察したりして遊びました。


けれども時間が経ってくると、ひいくんはちょっと心配になってきてしました。

このままお空や公園がカチコチのままだったらどうしよう。太陽はうまく沈めるかしら。お月様は出てこられるかな。

それに砂場のところでは、ひいくんのスコップやバケツがカチンコチンの氷の中に埋まっているのです。


「ねえペンギンさん」

ひいくんは言いました。

「お空や公園は元に戻せる?」

大きなペンギンはびっくりした顔をしました。

「戻すだって?こんなに涼しくて気持ちいいのに!」

ひいくんは何だか泣きたくなりました。カチコチの床は冷たくて、段々身体がぶるぶると震えてきました。

「でも今は夏だもの」

ひいくんは言いました。

「夏は暑くないとだめなんだよう!」


その時です。

ママが大きな荷物を抱えてやってきました。

「あらあら全部カチンコチン。涼しくていいけど、これじゃあ夏さんが悲しむわ」

「でも暑くて暑くて、僕らは溶けてしまいそうなんだ」

大きなペンギンが言うと、小さなペンギンも「そうだそうだ」と言いました。

「大丈夫よ」

ママがふうわりと笑って言いました。

「暑いときはね、冷たいものを食べると涼しくなるのよ」

そういうとママは、フォークで氷をガリガリ削りました。たちまち氷はふわふわの小さな粒になっていきます。

「さあ、ひいくんもペンギンさんたちも手伝って」

ガリガリ、ガリガリ。

みんなでガリガリ。ガリガリガリガリ。

太陽も雲もお空の青も、葉っぱも木も砂場もみぃんな。

ガリガリを沢山すると、公園の真ん中には大きな大きな氷のお山が出来ました。

ママはにっこり笑って大きなかばんから、大きなシロップの瓶を出しました。

そして大きな声で歌います。

「ガリガリ カキカキ つぶつぶ氷

カキカキ ガリガリ シロップかけよ

カキカキ こおり かき氷 召し上がれ」

木に登って、たっぷりシロップを垂らすと白いお山は綺麗なピンク色になりました。

「さあさあみんなで食べましょう」

ママはそう言って、ひいくんとペンギンさんたち、そしてお日様にもスプーンを配りました。

「おいしいおいしい」

ペンギンさんたちはにっこにこ。

ひいくんもにこにこ。

ママもにこにこ。


お日様もにこにこ。


小さなペンギンが、うっとりと目を閉じて言いました。

「夏っていいね、僕夏だあいすき!」


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