朝のお仕事
まだお日様が昇らない、朝早く。
ふうちゃんは目が覚めてしまいました。
「おとうさん、おかあさん、おきてー」
お願いをしましたが、まだお父さんもお母さんも起きてくれません。
お布団に入って目を瞑りましたが、なかなか眠れません。
「どうしよう…」
そうふうちゃんが言って、おふとんから出たときです。
カーテンの隙間。窓の外に、何かが見えました。
ふわーんふわーん、と気球が空に浮かんでいました。
「えっ?あれはなあに?」
気球のかごには、にわとりさんがいました。
「ふうちゃんおはよう!
ぼくと一緒に朝のお仕事に行かない?」
「うん!行きたい!!」
ふうちゃんがそう言うとにわとりさんは気球からハシゴを出してくれました。
「じゃあ乗って乗って! いっくよー!」
そうして、ふうちゃんとにわとりさんを乗せた気球はぐうんと空高く飛びました。
「朝のお仕事ってなあに?」
ふうちゃんが聞くと、にわとりさんはにっこりしました。
「おはようってみんなにご挨拶をすることだよ」
そう言うと、にわとりさんは気球から下を見下ろしました。
そこには、電車の車庫がありました。沢山の電車が眠っています。
「こっけこっこー!あっさですよー!」
にわとりさんは大きな声でご挨拶します。
ふうちゃんも負けずに、
「あっさですよー!」と叫びました。
電車達があくびをしながら目を覚ましました。
「今日もみんなを乗せて、頑張ってねー!」
次に行ったのは、公園です。
「こっけこっこー!あっさですよー!」
滑り台や鉄棒が目を覚ましました。
その次に行ったのは、海。
「こっけこっこー!あっさですよー!」
漁師さんやお魚さん達が目を覚ましました。
それから、気球はどんどん進みます。
新聞屋さんを起こして、病院を起こして、バスを起こして、駅を起こして。
犬さんを起こして、猫さんを起こして、カラスさん、鳩さん、信号さん。
そうして、最後に気球は空の端っこまで来ました。
「こっけこっこー!おそらさーん、おーはーよー!あっさですよー!」
ううん、と空の向こうから声がします。
「むにゃむにゃ。もう朝~?」
そう言うと、お空はパジャマを脱ぎました。お空のパジャマは真っ暗色。
そして、とっても綺麗な、お洋服を着ました。お洋服の色は、綺麗な空色。
青空では、さっきふうちゃんとにわとりさんが起こした鳥さん達が朝のお散歩中。
「さあ、これで朝のお仕事はおしまい。ふうちゃん、お疲れ様」
にわとりさんはそう言うと、ふうちゃんをおうちに帰してくれました。
「そうだ、まだお仕事、残ってるね。
大事なお仕事、最後に頑張って!」
にわとりさんに言われて、ふうちゃんはにっこり笑って頷きました。
そして、
「おとうさん、おかあさん、おきてー
あっさですよー!」
って言って、お父さんとお母さんを起こしたんですって。