お天気工場
けいちゃんは滑り台が大好き。
今日も階段をのぼって、しゅーっと滑り降ります。
けれども何だか、雨が降りそうなお天気。
「けいちゃん、もうおうちに帰りましょう」
ママが言います。けれど、けいちゃんはまだ遊びたいのです。
「晴れになればいいのになあ」
けいちゃんがそう呟いて、滑り台を滑っていたときです。
しゅーしゅーしゅるるん
滑り台はぐうんと伸びて、お空の上に。
すとん!とおりた場所は大きな工場でした。
あっちでもこっちでも、バタバタガタガタ。何かを作っているみたいです。
「なんだろう?」と、けいちゃんが一つの機械に近づくと…。
「おっとっと。機械に触っちゃいけないよ。
見学に来たのかい?いいよ、ゆっくり見ていきな」
そう言って機械の後ろから、青い帽子をかぶった小人が出てきました。
「これが気になるのかい?この機械は雪を作るためのものさ」
ぐうんぐうんという音が聞こえます。
けいちゃんが見ていると、機械からは次々と透明の箱に入った雪が出てきました。
小さな粒の雪。大きなぼたもちみたいな雪。
べちゃべちゃ雪にカチカチ雪。
「ここはお天気工場。他にも色んなお天気が作られてるんだ。
ゆっくり見ていってくれな」
青帽子の小人はそう言うと、出来た雪を沢山積み上げて行きました。
早速けいちゃんは他の機械の方へ歩いて行きました。
次の機械の近くには、橙色の帽子の小人がいました。
「こんにちは!ここは何を作っているの?」
けいちゃんが聞くと、橙小人は答えます。
「ここでは雷を作っているんだよ」
機械からは箱に入った雷が沢山出てきました。
糸みたいに細い雷。大根みたいに太い雷。
ガラガラ雷。ゴロゴロ雷。
「何だかちょっと怖いかも」
「怖くない怖くない。とってもカッコイイじゃないか」
橙小人はにっこり笑って言いました。
次の機械の近くには、藍色帽子の小人がいました。
「こんにちは!ここは何を作っているの?」
けいちゃんが聞くと、藍色小人は答えます。
「ここでは雲を作ってるんだ」
機械からは箱に入った雲が沢山出てきました。
食パンみたいにぶ厚い雲。葉っぱみたいに薄い雲。
もくもく雲。さやさや雲。
「美味しそう」
「残念だけど雲は食べられないよ」
藍色小人は大笑いをしました。
次の機械の近くには、青色帽子の小人がいました。
「こんにちは!ここは何を作っているの?」
けいちゃんが聞くと、青小人は答えます。
「ここでは風を作ってるいるのよ」
機械からは箱に入った風が沢山出てきました。
海みたいな大きな風。ため息みたいな小さな風。
びゅうびゅうの風。そよそよの風。
「どうして風って吹くの?」
「それは内緒よ」
青色小人はウインクをして答えました。
次の機械の近くには、桃色帽子の小人がいました。
「こんにちは!ここは何を作っているの?」
けいちゃんが聞くと、桃小人は答えます。
「私は雨を作っているのだよ」
機械からは箱に入った雨が沢山出てきました。
ネズミの爪みたいに小さな雨の粒。ぞうの目みたいに大きな雨の粒。
しとしと雨。ざあざあ雨。
「雨に濡れると風邪を引いちゃう」
「だから人間は傘を差すんだろう?」
桃小人はそう言いました。
次の機械の近くには、赤色帽子の小人がいました。
「こんにちは!ここは何を作っているの?」
けいちゃんが聞くと、赤小人は答えます。
「おいらは太陽を作ってるんだ」
機械からは箱に入った光が沢山出てきました。
大声みたいな眩しいぐらいの光。赤ちゃんのほっぺみたいな柔らかい光。
ぽかぽかの光。ギラギラの光。
「お日様って一つじゃないの?」
「一つしかなかったら、世界中を照らせないじゃないか」
赤小人は不思議そうに言いました。
次の機械の近くには、紫帽子の小人がいました。
「こんにちは!ここは何を作っているの?」
けいちゃんが聞くと、紫小人は答えます。
「わたくしはここで、夜を作っているのです」
機械からは箱に入った黒い闇が沢山出てきました。
チョコレートみたいな黒。葡萄みたいなキラキラの黒。
沈みそうな黒。浮かびそうな黒。
「夜って、こんなに寂しいの?」
「寂しくありませんよ。
この黒の中には、お星様とお月様が隠れているんですもの」
紫小人は優しく教えてくれました。
「さてさて」と声がして、けいちゃんが顔を上げると
そこにはお天気の神様が居ました。
神様はけいちゃんに聞きます。
「けいちゃんの好きなお天気は、どんなかな?」
「えっとねえ、僕は…晴れ!」
けいちゃんがそう答えると、神様はにっこり笑顔になりました。
「そうかいそうかい。それじゃあ今日のお天気は、晴れ!」
神様がそう言うと、赤小人が箱を抱えてきました。
そして、箱をぱかっと開けると――。
お空に、暖かい光が溢れました。
お日様がさんさんと空の下を照らします。
「さあ、けいちゃん。たくさん遊んでおいで」
神様がそう言って、指を指した先には、虹色の滑り台がありました。
「うん!ありがとう!」
けいちゃんはそう言うとその滑り台を滑り降りました。
しゅーしゅーしゅるるん!
すとん!
「あれ?」
気がつけばけいちゃんは、いつもの公園にいました。
「夢だったのかな?」
けれど見上げた先には、優しく輝く太陽があったのでした。