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四元士  作者: デイン
変化する日常
8/33

第八話

「ここが訓練所だよ」

………ん? ここが?

「こ、ここですか?」

高月さんに案内された訓練所(?)には何もなかった。白い壁に白い床、まるでさっきまでとは別空間にいるみたいだ。

ここに来る前もいくつか訓練所を回って来た。それぞれ所々に焦げたような黒色シミのある部屋、水浸しの部屋、それに部屋とは言い難いような土の地面が広がった部屋があった。

しかしこの部屋にはなにもない。

部屋の大きさは他と同じで15m四方である。

が、殺風景すぎてかなり広く感じる。その真ん中にポツンとこちらに背を向けて座禅を組んでいる人がいる。

「高月か?」

「はい、立岡さん」

見た目は、背中だけだが、20代後半だろう。

ちなみに高月さんは24歳らしい。

ズンッ……

部屋に足を踏み入れると重く何かがのしかかってくる感覚があった。例えるなら背中に畳を一畳分背負っているみたいだ。

「おお悪い悪い。気圧を元に戻すよ」

立岡さんがそう言うと突然体が軽くなった。

いや、元に戻った。

立岡さんは座禅をとき立ち上がって、こっちに歩いてくる。かなりガタイがいい。

「お前が及川か、俺は立岡龍一。気の四元士だ」

座っているときは感じなかったが話し方もかなり迫力がある。

「あっ……ぼ、僕は及川亮介です、PSIはわかりません」

圧倒されて言葉が尻すぼみになる。

「そうか、まぁ見た感じだと俺と同じ気の四元士だな」

!!

「な、なんでわかるんですか?」

「直感だ」

んっ……? 今なんて?

直感であんな言い切れるのか?

(意外とこの人天然なのか?)

「でもお前この前PSI使ったんだろ? どんな感じだった」

「いや、無我夢中であまり覚えてないです」

「そいつはどうなった、その四元士は」

「なんか急に動きが止まって、ちょっとしたら顔から血が吹き出して破裂しました」

必死にあの事件のことを思い出して言った。

思い出すだけで吐き気がする程気持ち悪かった。裕貴が放心状態であまり覚えてないのが幸いだった。

「及川、人が宇宙に行くとどうなると思う」

この人はなぜこんなことを聞いて来るんだ?

「た、確か頭が木っ端微塵に……あっ」

「フッ、やっと気づいたか。そうだ、つまりお前は自らの手でそいつの頭の周囲の気体を取り除いた。真空状態を作ったから顔が破裂したっつーわけ」

つまり俺は気の四元士?

じゃあやっぱりあのときあいつの頭をグチャグチャにしたのも俺?

人を殺した実感が確実なものになって行く。

もちろん今まで人を殺したことなんてない。

裕貴の兄貴の"あの"事があった後ではなおさらだ。人の死を見るだけであの恐怖が蘇る。

……ズキッ!……

「うっ、うぅぅぅ…」

痛っ…。

"あの"ときのトラウマがまるで走馬灯のように頭に浮かんでくる。苦しい…。

「だ、大丈夫かい亮介君」

ズキズキッ!…

「ゔゔゔぁぁぁ……」

徐々に視界が狭くなっていく。

何も見えない、何も考えれない、何も感じることができない。

嫌だ嫌だ嫌だ……


すぅぅぅ……。

なんだこれ、急にからだが楽になってく。

立岡さんがこっちに手を伸ばしている。

「及川、お前の過去に何があったかしらねぇがな、いつまでも過去にとらわれてんじゃねぇ!ないものばかり見てどうする?過去ばっか見てるんじゃ人は救えねえ。次は大切な人を失うぞ。迷いは捨てろ!ウジウジしてんじゃねぇよ!」

あぁ、立岡さんの言う通りだ……。

何"あの"ときのことばっか考えてんだ。一番辛かったのは裕貴だ。俺じゃねぇ。俺がこんなとこでメソメソしてたら裕貴は守れねぇ。裕貴を守るためにここに来て、PSIを使えるようにするんだ!





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