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四元士  作者: デイン
変化する日常
4/33

第四話

(冷静に考えろ。今俺にできることを…)

しかし何も思い浮かばない。無意識のうちに、今置かれている状況に恐怖し、焦っているからだ。

「なんだお前助っ人か?」

裕貴を掴んでいる男はそう言うと、もう一度裕貴を見た。

「おい、ボーイフレンドが助けに来てんぞ、もっと喜べよ!」


普段なら突っ込んでいる亮介だが、今はそんなのんきなことを言っている場合ではない。裕貴はと言うと、怯え切っていてこいつが何を言っているのかわからない様子だ。

(考えている暇なんかねぇだろ!)

「!!」

亮介が立ち上がろうと力を込めた瞬間、今度は重かった体が地面から離れる。

自分の周りだけ水が浮いており、その水に閉じ込められた。中心に向かって渦を巻いているため出ることができない。

裕貴を掴んでいる四元士は亮介に向かって手を伸ばしている。

(くそ!なんだこれ?

息が………)

必死にもがくが、全くでれそうにない。

ついには口からも大量に水が流れ込んできた。

「ゔっ、が………」

「亮介ぇ!!」

だがその裕貴の叫びも届くことはなく、

酸素が切れ、意識が朦朧としてきた。

亮介の意識が消えかけたとき、突然水が消えた。


ヴゥ、ゲホッ……

大量に飲んだ水を吐き出して、意識が少しずつ戻ってきた。しかしまだ力は入らない。その四元士の手はもう、亮介には向いていなかった。


「このくそアマぁぁーーー!」

チカラを使っていた手を裕貴に払われたからか、その四元士は逆上し、裕貴の首を絞める。

「やめろ!!」

しかし亮介の言葉を完全に無視し、首を絞め続ける。裕貴の苦しそうな顔が見える。



やめろよ…やめてくれ…

(もうあんなことは嫌なんだよ。

裕貴を守るって約束したんだよ!)

亮介は力を振り絞って手を伸ばす。が届くはずもない。そんなことはわかっていても、守りたい一心で手を伸ばし続ける。何もできない悔しさと裕貴を失う恐怖で、自然と拳を握る。



裕貴の目から光が失われかけたとき、

突然その四元士は手を離した。その直後、男の表情が消えた。次の瞬間、男の頭から赤い物体と液体が飛び散る。そしてその場に倒れた。

亮介には何が起きたかわからず、飛んできた赤い液体を見て見る。血だった。

血が飛んできたのだ。奴を見ると、今まで頭があった部分は真っ赤な血に染まり、もはや原型をとどめていなかった。

だが今はそんなことよりも……

「裕貴!おい、裕貴!」

必死に呼びかけるが返事がない。

入らない力を振り絞って裕貴の近づき、

声をかけ続ける。

「おい!しっかりしろ裕貴!」

目を閉じたまま、亮介の言葉に反応を示さない。

「そんな……やめてくれ……」

亮介の目から水が流れてくる。雨なのか涙なのかはわからない、が頬を伝って、裕貴に落ちる。

「裕貴……頼むよ、返事してくれ……

裕貴………」

目に溜まった涙で前が見えない。


「………ぅ……りょ…う……」

……えっ?

「裕貴…?」

「りょう………す…け……あ…り…がと」

「裕貴!大丈夫か!?」

良かった……

裕貴が生きていることへの安心で、また涙が溢れる。

「だいじょうぶ…だよ」

そう言って微笑む裕貴を見て、自然と笑みがこぼれる。

「ごめん、朝はせっかく気使ってくれたのに…」

「いいよ、もう悩んだ顔は見せないでね?相談してね?」

「うん、ありがとう…」

「りょう、智香は?」

「大丈夫だよ、裕貴」

佐藤さんの声が背後からする。

「私は突き飛ばされて頭打って気絶してただけだから」

その言葉に裕貴も安心したようだ。




「大丈夫かい?

すまない、遅れてしまった」

裕貴が目を覚ましてから5分ほど経ったあと、高月さんが来てくれた。

「はい、3人とも無事です」

「ほんとに良かった」

安堵の笑みを高月さんが浮かべる。

「それと高月さん、俺、四元協会に入団したいです」


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