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四元士  作者: デイン
変化する日常
3/33

第三話

「えっ?」

「あくまでこれは僕の推測だよ、君は僕の右手を見ているけど、何かついてるかい?」

「いや、その…マークみたいな…」

「丸の中に三角が二つかい?」

「はい」

「これは四元士にしかみえないんだ、だから君は四元士ってこと」

「で、でもそんなの…」

「使えないと言いたいのかい?

それを使えるようにするためには訓練をしないといけない。そして四元協会はその訓練をする場でもあるんだ。

だから一つ聞きたい、四元協会に入らないかい?」

「はい?」

「すぐにとは言わない。

連絡先を教えるから、きたいと思えたら連絡すればいいよ」

そういって高月は、領収書を持って会計に向かった。

「あ、あの…」

しかし突然のことに戸惑っていた亮介の声が届くことはなく、高月は夜の闇に消えて行った。



(どうすりゃいいんだよ…)

店を出て、家に向かいながらそんなことを考えて、スマホを見ると、着信が二つ、メールが一つきていた。

帰ってこない亮介を心配した母親と裕貴からである。

それも当然のことで、仮入部を7時30分に終えて帰るのに、既に10時を超えているからである。さらに亮介の家から学校までは徒歩で10分。

帰りがそんなに遅れることはまずあり得ないからである。

「すぐ帰る。」

それだけ打って裕貴にメールを送った。


「ただいま」

「どうしたのこんな遅くまで」

「仮入部一緒にした人と飯食ってた」

「じゃあ連絡の一本くらい入れてね、心配だから」

「うん」

普段なら遅く帰るときは連絡を入れるようにしている。

今日はないから心配したのだろう。

そう思って、二階の自分の部屋へ上がり、ベットに倒れこむ。

(なんだよ、四元士って、四元協会って…)

そう考えていると、スマホがなる。

画面には裕貴と表示されている。

「もしもし」

「もしもしじゃないよ!

どこいってたの?」

「いや、友達と飯いってた」

さっきの出来事を言うことはできない。

あまりに現実味がないし、信じてもらえるはずないからである。ましてや自分にもチカラがあるなんて、もってのほかだ。第一使えやしない。

「ほんと?

ならいいんだけど、悩みならちゃんと相談してよね?」

「うん、ありがとう。

今日は疲れたから寝るわ、おやすみ」

「あっ、ちょっと…」

裕貴の声を避けるように通話を切った。

(悪いな、裕貴)

そう思いつつ、亮介は目を閉じた。




どうしたのよ…亮…

裕貴は半強制的に通話を切られた後も考えていた。

(絶対何かあったよね、あたしにくらい、話してくれたっていいじゃない…)

心配になった裕貴は、明日悩みを聞くことを決めた。

「絶対聞いてやるんだから!」

そういって裕貴は、目を閉じ、眠った。




「ふぁっ」

次の日の朝、亮介はいつも裕貴が起こしに来る時間よりも30分前に起きた。

いつもならあり得ないことだが、あんなことがあってはよく眠れない。

(風呂はいるか)


そして風呂を上がってリビングに行くと

「あら珍しい、自分で起きたのね亮介」

と卵焼きを作りながら言う母親につづいて

「あれ、亮介が早起きなんて、雪でも降るのかしら?」

と、姉の久紀が言う。

久紀はちょうど昨日、留学から帰ってきたらしい。昨日亮介が帰ったときには時差ぼけで寝ていたが。

そんな母親と姉を無視してパンをかじると、

「おっはよ〜ございまーす!」

と聞き覚えのある声がする。ってか毎朝このテンションなのか?

「あらおはよう、裕貴ちゃん」

「あっ、裕貴おはよ〜、久しぶりね」

「あっ、久紀お姉ちゃん!

久しぶり〜、いつ帰ってきたの?」

「うん、昨日ね」

「また料理教えてね、久紀お姉ちゃん!」

「いいわよー、フランスで学んできた料理伝授したげる!」

「やったー!」

パンを食べ終えた亮介は、その会話を無視して玄関に向かう。

「もー亮待ってよー」

と裕貴が追いかけてくる。

「「いってらっしゃーい」」

っと二人の声が聞こえる。




ねぇ…ねぇ……

「ねぇってば!」

「ん?なんだ」

「やっぱり悩み事あるでしょ」

そういって裕貴が目を細めてくる。

「別にないよ」

そう言って亮介が歩き出すと腕を掴まれる。

「ちゃんと話して!

あたしに嘘つかないでよ!」

いつもなら話している亮介だが、今回はそうはいかない。なぜなら、裕貴を巻き込む訳にはいかないからである。

「それはいえない」

「どうしてよ…」

「ごめん…」

お互い目を見たまま黙ってしまった。

「…………わかった」

そこから一言も話すことはなく、学校まで歩いた。


五限目と休憩を終えて今は英語の授業。

普段なら他の授業に比べては意欲的に取り組んでいるが、今日はできない。

誰に話せばいいか、そして今朝の裕貴の態度が頭の中をグルグルしている。

あんな裕貴を見たのは初めてだ。

信頼してないから話さないのではない、逆に信頼してるからこそ亮介は黙り続けた。もうあのときのようなことは起こしたくない。

(裕貴も心配してくれたのはわかってる。

こんなこと話しても信じないのはわかっているしそれが普通……だけど話すだけでもしてみるか)

そう考えがまとまったときに少しスッキリした気分になった。

快晴だった空の向こうから厚い、暗い雲が来ていた。


放課後。

「なぁ、ゆ……」

「智香帰ろーー!」

「えっ、う、うん…」

そう言って裕貴と友達になったであろう佐藤智香(だっけ?)と、亮介の言葉を遮るように手を引っ張って教室を出て行った。


亮介が昇降口から出るとすぐ真上には、先ほどまで向こうにあった分厚い雲があった。もちろん大粒の雨も。

折りたたみしかない亮介は、持っているカバンが少しはみ出るくらいのサイズのだった。

かなり濡れながら歩いている。

「……っ!……」

ふと雨とは違う音がした。音と言うよりは声に近い。

「……や……っ」

また聞こえる。

その声の方に近づいてみると、誰かが

地面に座り込んでいる。

「大丈夫で…」

そこまでで亮介の言葉は止まった。

横から来た衝撃によって吹き飛ばされたからだ。

「っ……」

壁際へと打ち付けられた亮介は目を覚まし、二つのことに気がついた。

一つ目は、倒れているのが佐藤智香で、今衝撃を与えたであろう人物に掴まれているのは裕貴だった。

二つ目は、衝撃を与えた人物は1人だが、亮介からはかなり離れていた、殴るなんてできる間合いではなかったのだ。

そこで亮介は、その人物は四元士であることに確信を持った。

即座にこの状況を理解した亮介だったが、その四元士のチカラなのか、かなり体が重くなっており、動くことはできなかった。

「りょ、亮…助けて…」

裕貴の小さい声が耳に届く。

(助けないと!

でもどうすれば….どうすればいいんだ………)


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