転生少女ー1
誕生日のべにです!!笑
ヒロインの名前をジュリアに変更して「いい子に育ったらお兄様に愛されすぎまして。」を連載スタートです!
お試しバージョンとところどころ被るところもありますが、一から連載していきます!
ジュリア視点中心ですが、ジオお兄様やリノ視点も入れていきます!
テンポ良くを目指して、魔法学園生活と甘いお話を書いて行きたいと思います!
楽しんでいただけたら幸いです!(*´∇`*)
せめて今週だけでも、毎日更新していきますね!!
先ずはアカデミー編の「転生少女」です!
20140804
とある女性は呟く。
「ああ、なにか良いことないかな」
空からイケメンが降っては来ないし、ドアを開いたら異世界に行けるわけもなく、淡々と退屈な人生を送る。
これまでがそうだったように、これからもそうだと思った。
小学校で決めろと言われた夢を叶えることもなく、中学も高校も勉強なんかせずただ遊び、非現実的なものを望むだけで、平凡な人生を送っておしまい。
そう思っていたのに、死んだ。
色鮮やかな赤いオープンカーにガツンと当てられて、ほぼ即死したらしい。
気付けば、真っ黒だった。死んだあとの世界なんだと思う。
自分の身体があるように感じるけれど、見えない。
ふわふわと浮いているように、ゆらゆらと流れているように、闇に漂っているのを感じる。
死んで悔いはなかった。
良いことなんかではない。
普通なら唐突な事故で死んだら悔いる。でも私には、生き返りたいと願うほどのものがなかった。
楽しかった思い出も浮かばない。たくさんあるはずだ。関わってきた人達の笑顔も浮かばない。
最低なほど、私は今までの人生に執着していない。価値あるものだと思っていない自分に嫌気がさした。
最悪なのは人生じゃない。自分だったんだ。
退屈な人生だって思っていたのは、自分のせいだった。
ないものだけを求め、持っているものには見向きもしない。
関わってきた人達を大切にしなかった。日々を大切にしなかった。人生を台無しにしたのは、私自身。
死んで後悔しない自分だと言うことに、後悔した。
このまま流れた先に、生まれ変われたのなら、もっといい人生を送れるような人間になりたい。
触れ合う人達を大切にして、サボることも逃げることもしないで、日々を大切にしていきたい。
そういう人間になりますように、と祈った。
――目を覚ますと、ベッドの上。
見慣れた天蓋付きのベッドはお姫様のものように桃色のフリルをあしらっている。着ている白いナイトドレスも淡い桃色のフリルだらけ。手はちっちゃい。
確かに存在している。
お姫様のベッドから降りて、白いドレッサーに向かいカバーを捲る。鏡に映るのは、四歳の女の子。
生まれ変わった私。
名前はジュリア・ラヴィー。
金色から赤色のグラデーションのふんわりした髪と、ブルーの真ん丸の瞳。その瞳から、桜色に染まる頬を伝って涙が落ちた。
暫く呆然と鏡の中の自分を見つめる。
悲しい結末の本を読んだあとみたいな気分になる夢。
それは前世。厳密に言えば、死んだあとの願いだ。
死んだあとの後悔に、涙した。悲しくて、悔しくて、涙をポロポロと落とす。
持つものを大切にできるいい人間として、楽しい人生を歩みたい。
今でも、私はそう思う。
涙をフリルの袖で拭い、短い足でよちよち気味で窓に向かった。
アーチ型の窓を開けば、おとぎ話のような赤い煉瓦と丸っこい建物が並ぶ大きな街。
金の羽を持つ鳥が鳴いて空を飛んでいる。鶏に似ているけれどお洒落な羽を持つし、空も飛ぶ。屋根に卵を産み落としていくおかしな鳥さんだ。
その鳥が飛び去ると、赤い煉瓦の屋根に一人の男の人が降り立つ。手紙の配達人だ。履いている靴は、建物を飛び越えるほどのジャンプ力を発揮して、そして羽根のように軽やかに着地する魔法の靴。
そんな配達人の彼に向かって、手を振って挨拶をした。
遠くには、高い城壁に囲まれた白いお城。その遥か向こうの空には、ドラゴンの親子が飛び去る影が見えた。
――そう、ここは魔法に溢れた世界だ。
出会いを大切に、友人を大切に、日々を大切に、小さな幸せも大切に、この世界で生きていこう。
「おはようございます」
私は空に向かって、微笑んで挨拶をした。
20140804