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三十二日目:激震

※本当なら三十日の更新分です



 エウレカの指し示した場所は、なんとなく見覚えのあるようなないような場所だった。

 強いて言えば、崖の上の方。

 すぐ近くのところから、マグマが滝のように流れ出ていた。

 例の黒い木々……名前何だっけ? が生茂っている。

 地上ならこれが木々の生茂っている森がある崖から水の滝が滴っているというような光景となるんだろうけど、残念ながらここはネザーエンパイア。

 景観へのある種の感動と同時に、生命の恐怖をもっと切実に感じるような場所だった。

「……ねえエウレカ、本当にここで大丈夫なのかな?」

「大丈夫ですわよ? まず滝の方ですが、あちら側からのデッドウォーカーたちの襲撃はありえませんの」

「確かにやってこようものなら、焼かれるだろうしね……」

「ディーゼルボアもマグマの通り道はさけますし」

「雨のときは? ほら、ものすんご姿形で突進してきたよね。結局絞め殺したけど」

「それでもですわ? おそらく、通常の陸地とマグマの固まった陸地との違いが嫌なんではないでしょうか」

 そういうものかな、と思いつつ、ぼくはもっと周囲を見回す。

 立地としては、滝周辺の森の中。

 少しだけ他の木より大きな場所に来て、エウレカは胸を張っていた。

 突き出される二つの山と広がる谷に、反射的に顔をそらした。

 だって、その、じゃないとさ……。

 流石に自分の自制心に自信はあるけど、たまーにちょっと、危ない時もあるので。

「どうしました? リンドさん」

「なんでもないよ」

「うぃぃ」

 媚びているわけでもないのに、こう、一つ一つの動作が確かにストライクなのだ。

 彼女がぼくの望んだ姿で出てきた、という事実が、証明されているようで嫌な気分になる。

 わざとやっているのかと疑ったこともあったけど、顔はいつものエウレカで、むしろぼくと話している時の無垢な感じなものだから、端的に言ってどうしようもない。

 エウレカは木を叩き、ぼくに向けて得意げに言った。

「では、ここに建てますわ!」

「建てますわって言われてもねぇ。第一、どこに建物つくるのさ。どう見てもそんなことが出来そうな場所はないけど――」

 運んできた荷物を見ながら、ぼくはエウレカにそう言うと――エウレカの顔が、間近にあった。

「うおわ!」

 こちらの目を覗き込むような距離感は、とにかく落ち着かない。後退待ったなし。でもエウレカはこちらの襟を掴んでいて、

「な、何? 何?」

「……リンドさん、さっき何て言いました?」

「え、何?」

「……」

 エウレカは少しの間黙ると、ぼくの襟を手放した。両手の指先をこめかみに当てながら、神妙な声を出す。「……どうやら、記録されている場所は同じようですわね」

「……本当、どうしたの? エウレカ」

「いえ、下手に聞き出してまた頭痛を起してしまったら……、恐ろしいですわね。とりあえず保留としておきましょう」

 何やら一人で納得した風のエウレカ。

 よく分からなかったものの、エウレカは話を続けた。

「何も建築というのは、地面についているものだけ限定というわけではありませんわ?」

「限定って?」

「考えてもみてほしいですわ。ここの溶鋼樹は、こんなにも強い強度をほこっているのですわ」

 言いながら、エウレカは木を蹴飛ばした。

 そう、蹴飛ばしただけなのだ。

 だけれど、その時の動作に反して、音が明らかにおかしかった。


 まるで巨大なドラゴンが降ってきたかのような、そんな音がした。


 どしん、とか、そんな音じゃ到底済まされない。積んできた木材が浮き、がらがらと山の形を崩し、近くを流れているマグマでさえ一瞬「ざーざー」という音が何かおかしくなった。

 それら全てが、今の、エウレカの一動作を端に発せられたことだろいうのを、ぼくが理解するのにちょっと時間がかかった。

「……エウレカ、何やったの?」

「わ、私は別に……、そんな目をしないでくださいっ。そ、そんなに馬鹿力じゃありませんもん」

 両手で顔を覆い、蹲ったエウレカ。

 擁護不要なまでに、色々と酷い有様だった。

 というか、あーなるほど、確かにこれだけの腕力があれば、ぼくごときが気を違えて襲い掛かっても軽く撃退できることだろう。

 撃退ついでに即死しそうな感じでもあった。

 ていうか、これだけ強いならエウレカがディーゼルボアとか狩れば良いんじゃないのかな?

 そんなことが頭の裏に過ぎったけど、とりあえずぼくはしゃがんで、落ち込むエウレカの頭をなでた。スライムの時からもそうだったけど、彼女は特に嫌がりはしなかった。

「あー、はいはい、落ち着いて?」

「うう……、リンドさん、私恐がったりしません?」

 上目遣いの涙目は可愛いんだけど、いかんせん反応し難いことを言ってくれる。

「で、さっきのは何だったの?」

「ちょっと変身しただけですわ。筋肉の内部構造をいじった形で」

 何言ってるか全然分からなかったけど、まあ、力を強くしたということだけは理解できた。

 それであの威力って、随分とまたアレだったけど……。

「では、気を取り直して。――ツリーハウスを作りますわ!」

 多少立ち直ったエウレカは、ぼくに向かってそう宣言する。

 どうだ、すごいだろーみたいな感じの顔をしてくるのは良いんだけど、一つだけ言わせて貰いたい。

「……『ツリーハウス』って何?」

 明らかにエスメラ語の言葉じゃなかった。

 エウレカは、「え? なんで知らないの?」みたいな顔をしていた。



ちょいちょいリンドの理性を振り切りかけるエウレカですが、腕力はご覧の有様です。

ちなみに、リンドたちの時代の魔法使いは、魔法石を使わないでも魔法が使えます。ちょっとした肉体改造ですね。そのうち言及されるやもしれません。


次回は明日中に投稿できるといいなー。

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