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十四日目:雷雨



 結局あの後、一日ほど経過したら程なくしてストーンワイズたちと別れた。

 何やら新しく仕事 (?)が出来たらしく『つ、次こそは力に……!』と言いながら急いでどんどん跳ねていった。

 彼らの仕事、というか使命について詳しくはきけなかったけど、多少推察できることがあった。

 まず、彼らは使命のためにこの場所に拘束されている。

 “地底の女王”の補佐をしてる……とまでは考えていないけど、少なからず“太陽と月の邪悪なる竜”が地上に出て行かないようにするために、何かやっているだろうというのは推測できる。

 次に、彼らがそれをやらないと、ここの環境に何か問題でも出てくるんじゃないかということ。

 頑なに使命だと語り、しかも出向く際の『一刻を争う』と言って妙に慌てていたその姿は、どうも与えられた仕事をこなしているというよりは、自分たちの生活圏を守るのに必死だというようにも見えた。

 そうなると、彼らがどうしてあんなに慌しく動いているのかということについて、一応の説明がつくのだけれど、やっぱり、一人取り残される方としてはたまったものではない。

 陸の移動についてのメカニズムを聞こうとした瞬間にこれだ。激突スレスレの軌道で飛んでくる巨体に対して、ぼくは腰を抜かされた。

 エウレカが居て精神的に余裕が出てきたからか、文句の一つでも言ってやりたいという発想になっていた。

「……はぁ。どうしようか」

『うぃ。の!』

「それだけじゃ分からないって……」

 多少なにか喋れるようになったエウレカだけど、七割くらい何言ってるか分からないことの方が多い。こうして二人きりでいる時も、会話しようとしてもやっぱり駄目なのだ。

 でも、対策がないわけじゃない。

 少なくとも言語が通じてると確信できた以上、イエスノーだったら対策があるのだ。

 エウレカを地面において、ぼくは言い聞かせる。

「……とりあえず、意思疎通だけでも出来るようにしようと思うんだけど、いいかな?」

『うぃ?』

「肯定と否定ね。ぼくが何か言って肯定するときと、否定する時で反応わけようと思うんだけど……、分かった?」

『うぃ』

 じゃあ泣き声を決めないとな、と言っていたら、エウレカが二つの言葉 (?)を口にしだした。

『いえぅ!』

『うぉぅ!』

 この二種類を繰り返し口に出している。

 えっと、それを使えってことだろうか。

「んー、ぼくの言ってることは分かる?」

『いえぅ!』

「エウレカは男の子で間違いない?」

『うぉう! うぉううぉううぉう!』

 簡単なテストだったけど、とりあえず確認は出来た。

 前者が肯定、後者が否定だ。

 少なからずこれで、ある程度の意思疎通は行えるだろう。

 そう思いながら、念のためにもう一つだけ質問をしてみた。

「エウレカはマグマスライムじゃないってのは、本当?」

 ぼくのその言葉に、エウレカは少し悲しげな顔をして、

『……うぃ』

 結局、どちらとも答えなかった。



 しばらく立った後、だいぶ久々に驚くべきことが起こった。

 果たして空から降りしきるこの透明無色で味のない生暖かな液体は何だろう。

 考えるまでもなく、ぼくの知識がそれを「雨」だと言っていた。

 知識では雨という存在について理解しているのだけれど、何故か、ぼくにはその雨が妙に新鮮なものに感じられた。まるでこう、生まれてから初めて見ているかのような。あるいはずいぶんと久々に見るかのような。実際記憶をなくしてから見るのは初めてなのだけれど、胸に去来する感覚はそういうのとはまた何か違う。

 どちらにしても、妙な感覚だ。記憶がないというのに、この感想は一体何なんだろう。

 そう思いながら雨にあたっていると、突如としてエウレカが跳ねて叫んでいた。

『うぉぅ! うぉぅ! うぉう! うぉう!』

「な、何?」

 ちなみに今ぼくらが居るのは、エウレカが最初に導いていった間欠泉の場所。池みたいなのがすっかり干からびて影も形も見当たらなくなっているけど、かつて水が溜まっていたところにはそれとなく窪みがあった。どういう原理なのだろう。

 というか、周辺に前より多く黒い木々が生えているのは、どうしたんだろうか。一見して風景がだいぶ様変わりしていた。

「……もしかして、あの時に水が噴き出したからか?」

 ぼくの知識には、砂だらけの土地で水がわくと、その周辺が途端に緑に覆われるという知識がある。もしかすると、これもそれに近いものなのかもしれない。

 足をすすめて、木の近くに寄る。たたくと相変わらず「こん、こん」と硬い。まるで金属のような、鉱物のような、そんな木だ。

 水に濡れて柔らかくなったりといったことはないようだ。

 ちなみに以前あった間欠泉 (?)の跡は、何故か少し埋まっていた。穴自体、亀裂自体はあるんだけど、その亀裂と穴のそこの方で地面肉が寄り合って、以前のように先の見えない暗闇ではなくなっていた。

 だから池のくぼみとかにも水が溜まってるんだけど……。なんだか気持ち赤色していて、目に痛かった。

『ういいいいいッ! いぉい! いぉい! うぉうッ!』

「いや、だから何だって」

 そして、なんだかエウレカが妙に五月蝿い。

 さっきから否定の言葉を連呼したりしてるけど、どうしたんだろう。

 そういう風に安直に考えていたのがまずかったのかもしれない。

「……あれは、ディーゼルボア?」

 こちらに向かって突進してくるように見えるのは、ディーゼルボアだ。

 距離は結構ある。すぐさま突進されたりするほどの距離ではないだろう。

「あー、なるほど、こっちが進路の上にあると。だから危ないってことか。わかったよ、じゃあとりあえず――」

『うぃいいいいいいいいいいいッ!』

 何故こんなにエウレカが慌てているのかということについて、自覚がなかった自分が憎い。


 次の瞬間、ぼくの身体は空中を舞っていた。



雨が降る周期と間欠泉とは、一応ストワたちが言っていた「反対側」と関係があります。


続きはお昼頃です。

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