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凶弾戦団  作者: イカロス
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第六話 他人の恋ほど面白い

司令室にはステラ隊のメンバーと全隊の隊長が揃っていた。


「主役が来ましたのでセシル君歓迎会(仮)を始め…たい処だが、色々忙しいので、スパッと色々発表するぞ…まずセシル!君の兼ねてからの夢であった俺達との共闘…まあ入隊を認めよう!」


唐突な発表にセシルの心境は驚きと感動がごちゃ混ぜになっていた。


「あ、ありがとうございます!」

「お前のやる気とかその他諸々の事情を考えてもすぐに前線に…と言いたい処だが、まずお前には異能を使う事に慣れて貰わないといけない。そこで、お前には一時的にステラ隊に入隊してもらう。そこでメンバーに鍛えて貰え!言う事はそれだけ。セシルとユリカも戻っていいぞ」

「私何で呼ばれたんですか!?」


ワクワクが止まらない子供の様な表情のセシルと対照的に腑抜けた表情のユリカの二人が司令室から出て行くと、途端に笑いが起こった。


「いや〜あれがセシル君ですか!噂には聞いていたけどなんか初々しいね〜。ちょっと前のアギ君を見てるみたいだね!」

「燐さんには前の俺はあんな風に見えてたのか…」

「いやいや、燐だけじゃなく誰から見ても同じ様な態度だったと思うぞ?」


武蔵 燐。この女性も隊長の一人。いつも陽気で何があってもそのテンションが下がる事は無いと言われている。見た目もポニーテールでいつも薄着という特徴から元気過ぎる人感が溢れ出ている。


「えー、ご歓談の処悪いのですが、本日皆様にお集まり頂いたのは他でもない」


いきなり口調が丁寧になったセラフィム、何か畏まって言う必要があることの様だ。

「ちょっと…他の大陸の方にですねー…出張に…私の代わりに…行って頂きたい訳でして…」

「「お前が行って来い」」

「俺は総司令だ。お前らと違ってたーくさん仕事があってなぁ…」

「そんなに仕事無いだろ。それよりこの中の誰かはどこまで何のパシリに行かなきゃいけないんだ?」


ステラの的確なツッコミでセラフィムの無駄話は遮られた。


「とりあえず、結界装置を前の任務で使い切ったからそれを貰ってくるのと、ついでに新しい武器の試作品が出来たらしいからどんな物か見て来てほしい。はい!行ってくれる人!」

呆れたと言わんばかりの顔でステラは

「はぁ…私行くよ」

と立候補した。すると次々に我こそはと立候補する者が現れる。

「ステラが行くなら私も」

「武器の試作品かぁ…僕が行こうかな」

「私行っちゃおっかな〜」

ステラの影響力恐るべし。

「よし決定!今回パシ…お使いに行ってくれるメンバーはステラ、ユーキ、マイ、燐の4人!期限は特にないからゆっくり行って来てくれ!以上!お話終わりぃ!」


意地でも働かない総司令に呆れた隊員達が次々と司令室から出ていき、残ったのはステラ、セラフィム、スローネ、燐の4人。


「良いのかステラ?前の戦いの事もあるし、休んでてもいいんだぞ?」

「わ…私はその…お前に…///」


ステラは顔を真っ赤にして俯いてしまった。そして沈黙に耐えられなくなったステラはそのまま司令室を出ていってしまった。


「ステラは男心がわかってないしセラフィムも女心がわかってないなんてなぁ…」

「俺ステラを追いかけ…」

「女同士の話があるからお前は来ちゃダメだ。スローネ!この大馬鹿野郎に核心に触れない程度に叱っとけ!」

「了解した!」


と言い残すと燐は駆け足で司令室を出てステラを追いかけた。





ステラは顔を真っ赤にして俯きながら競歩かと思うほどの速歩きで廊下をグルグル回っていた。


「HEY!そこの恋する乙女!ちょっと止ま…って行かないで!無視しないでよ〜」

「ハッ!?燐か…いやっ…そのっ…恋だなんて…」


誰から見てもわかる事だが、ステラはセラフィムの事が好き好きである。

訳知り顔で燐はステラに


「ステラは愛情表現の仕方がなってないんだよ。大丈夫。この愛のキューピッドの私に任せてくれればあんな男一人くらい余裕のよっちゃんよ!」


と言ってみせるが内心では

(こんな面白そうな事に首を突っ込まずにはいられない!恋愛経験なんて無いけどなんとかなるだろ!たぶん!)




司令室に残された男二人。謎の沈黙が空気をどんどん重くしていく中、ついに口を開いたのは…スローネだった。


「なぁセラフィム君よぉ…お前色々と大丈夫か?」

「とても失礼な事を言われてる様だが…俺は正常だ」


呆れて溜息をつくスローネ。


「まあいいや…俺も行くわ。じゃあまぁ…頑張れよ!」


そして司令室に一人取り残されたセラフィム。何がなんだかわけがわからない鈍感男は一人寂しく暇を持て余す事に…

「仕事があるんじゃねーのかよ!」

「スローネまだ居たのか!?」




「ステラはセラフィムのどんなとこに惚れたの?」

「そ…そんなの言えるか!」

あー確かにこの娘はかわいいわ。ミシェルが気に入るのもわからなくもないわ、と心の中で納得する燐だった。


「まあとりあえず言える事は…ステラはセラフィムに尽くす事=好かれる事、みたいな変な解釈しちゃってるんじゃないかな?」

「ち、違うのか…?」

「うっわー純情乙女ってかわいいなー…」

「???」

心の声だだ漏れだった。いかんいかん。このままではステラペースに飲まれてしまう。

「ま、まあ男ってのは単純な生き物でね〜…いい雰囲気でバーっと抱きついて好きでーすって言っちゃえばあんな鈍感男なんて瞬殺よ!」

(こんな世間知らずの美少女だったらどんな男でも放っておかないだろうしステラとセラフィムは付き合いが長いっぽい。これはイけるでしょ!)

「ありがとう燐…燐は私なんかより全然大人なんだな…私なんて戦うことばっかりで…」

ここでズバッとステラの悩みをブチ壊さなければならない。燐は確信した。だが無理だった…恋愛経験ゼロの燐にはそんな事は不可能…圧倒的無理難題…

「え、えーと…そんなに悩む必要は無いよ!ステラは魅力でいっぱいだし、まだまだ時間はあるんだ!と、とりあえず明日!明日お出かけする時にもっと色々話そう!そうしよう!」


そうしてステラの恋愛相談は一時的に幕を閉じた。ただし一時的。

(ステラは素晴らしいアドバイスを期待するかもしれないなぁ…困った…)

燐の苦悩は続くのであった。




一方その頃、恋愛など微塵も関係無いセシルとユリカ。セシルの提案でユリカに本部内を案内して貰っていた。

「そこがトレーニングルーム。これで大体の主要施設は見せたと思うけど…まあ何かあっても習うより慣れろってことで」

「ありがとなユリカ。色々助けて貰っちゃって…」

「困った時はお互い様よ。それより、貴方の異能見せてよ!私と同じ電撃を操るんでしょ?」

「何かちょっと違う気がするが…まあそんな感じだ」

そうしてセシルはユリカと、何かを嗅ぎつけてやってきたアギに自分の異能を披露する事になってしまった。



「何それ…腕に電気纏うだけとかショボ…ちょっとそれはないわー…」

「よ、よーし!俺と模擬戦してくれセシル!ユリカがストップと言ったら試合終了だ。しっかり見ててくれよ!」


何がなんだか、突発的な模擬戦が始まった。

今回の突発模擬戦は異能無しで各々の武器を振るう実力勝負に決まった。


「では両者構えてー…レディーファイッ!」


掛け声と同時にアギは自慢の槍を構えて突撃して来た。この程度ならセシルは余裕で避けられるーだが、この程度で終わらないのがプロの戦い方。

アギの突進は簡単に横っ飛びで避けられたものの、槍は横にだって攻撃出来るのだ。


「槍は打撃武器にもなるんだぞぉ!」

「ぐぅあっ…」

手加減してくれたのか、セシルの腹に直撃したのは槍の柄の部分。それでもダメージがあることに変わりは無い。


「もう終わらせる!ユリカ!刮目して見てろ!」

「まだ終ってたまるかぁ!」


怯んだ状態から何とか持ち直したセシルは槍での突きを狙っているアギの懐に飛び込んだ。前方を突くことだけを考えていた槍はその予想外の行動には対応出来なかった。

「クッソ…だがそこに居ても何が出来…うおぉ!?」

足払い。前に吸血鬼との戦闘でセシルが喰らった技である。

いきなりの事に対応出来ないアギはそのまま床に倒れた。そしてセシルの拳が振り下ろされ…


「ストーップ!!この勝負セシルの勝ち!」


「新人に負けちまった…もうお終いだぁ…」

「でもアギさん、俺に手加減してくれたじゃないですか。あれが無かったら俺…」.

「あれがあったらお前致命傷だから!手加減当たり前だから!クソォ…俺だって異能があればなぁ…」


こうしてセシルの記念すべき日は平和に終わりそうである。

「そういえば俺セラフィムさんに休んどけって言われて…あれっ?体が〜」

ドーンと地面に大の字で倒れたセシル。

「セシル!セシル大丈…って寝てるわ…」


その寝顔は好奇心旺盛な子供の様だった。



To be continued















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