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凶弾戦団  作者: イカロス
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第五話 それぞれの朝

見慣れない風景。人が吸血鬼に殺され、街は燃え、絶望に塗れた風景。そこに自分が居た。何がなんだかわからないが…一つだけ断定出来る事があった。この風景はもう見たくないという事。


「ハッ…!?夢…夢だったのか…?」


起きた瞬間の視界には見慣れない天井と見知った男。


「おお!起きたか!やったなぁセシル!ついに異能に目醒めたんだって?これからは一緒に戦える…と言いたいが、まずはゆっくり休め。お前には休息が必要だ」


起きたばかりだというのにいきなり色々言われてセシルは少し混乱していた。昨日の記憶も曖昧なままセシルは周りを見渡す。

そこは本当に知らない場所だったが、雰囲気は学校の保健室や病院の一室という感じだった。


「ここは…?」

「ここは俺たちの本部の医務室。お前は吸血鬼と無謀にも戦った結果異能に目醒めて気絶して…今に至る、という訳だ」


ようやく意識がハッキリしてきたセシルは話しかけてきた男がセラフィムだった事に気づく。


「セラフィムさん…俺どれくらい寝てたんですか?」

「二日程度だったかな…まあ大丈夫だ。異能に目醒めた奴は急な体の変化と慣れない能力使用の副作用で何日か気絶して起きないなんてよくある事。一週間寝たままだった奴だって居る。お前は早い方だから素質があるのかもな!ま、今のお前の仕事はさっきも言った様に休む事だ」

「いや…俺もう動けますよ」


その回復の早さにセラフィムは驚きを隠せずにいた。完全に動ける訳ではないのはセシルの少しぎこちない動きからわかる。だが、気絶から二日で目覚めてすぐに立ち上がるという例は極めて少ない為か、セラフィムはセシルに新たな可能性のような何かを感じていた。


「無理はしなくていい…ゆっくりでいいから、この後司令室に来てくれ。丁度皆揃っているだろうからな」

「は…はい…わかりました」


セラフィムが去って行き、一人になったセシルはある事実に気づく。


「司令室って…どこだ?」


セシルはこの異能者の集う場所に来るのは今日が初めての事であり、中の構造など知っている訳がない。

慌てて出て行ったセラフィムを追う為に部屋の外へ出るセシルだったが、そこから見える範囲にセラフィムの姿は無かった。


「どうすりゃいいんだ…?」

「あら?貴方もしかして…セシル?やっぱりセシルじゃない!会うのは1年振りくらいかしら?」


セミロングの金髪を(なび)かせて優雅に歩く彼女はーーユリカ。現ステラ隊のメンバーであり、セシルの旧友である彼女との出会いは運命的な何かなのかもしれない。


「ユリカ!ユリカか!前と全然変わってないなぁ…そうだ!俺今から司令室に行かなきゃいけないんだが…場所教えてくれないか?」

「司令室なら私も今向かっている処だから一緒に行きましょ。てか、セシル!貴方やっと異能に目醒めたんだってね!でと私と同じ電撃の能力らしいじゃない…また街の人達に何か言われそうねー…私達そんな関係じゃないんだけどなー…」

「異能に目醒めた友人に対しておめでとうの一言もないとは…本当に変わってないなぁ。ステラさんの隊に入ったって聞いたから、性格も少しはまともになるかな〜と思ってたんだが…」

「貴方目上の人に対しては素晴らしい礼儀作法を見せるのに…本当変わってないのね」


彼と彼女は何処で出会い、何故これほどまでに仲良くなれたのかーーそれはまたの機会に語ろうと思う。






吸血鬼は色々な物語で主に悪い役として登場する。そして物語に登場する吸血鬼というのはにんにくや十字架が苦手だったりするが…現実の吸血鬼にはそんな物は効かない。シュルトはにんにくをたっぷり使ったスパゲティが大好物で、ミシェルはいつも輝く銀色の十字架のネックレスを身に着けている。



「おはようございまーすミシェル様!」

「やあおはようシュルト!今日も大好きなクマのぬいぐるみを抱いて人形と一緒にお散歩か!シュルトはかわいいなぁ…」

「いつも女を抱いてるミシェル様からは凄みを感じますよ…」

「子供の夢を壊す事は言っちゃいかん!てかシュルトも子供だったか…」


上等な吸血鬼は人との会話も可能だが、下等になるにつれて人との会話は不可能となる。だが吸血鬼の住むこの大都市「 」では下等吸血鬼は普通に暮らしている。そんな吸血鬼ともしっかり会話し、住む民を幸せな気持ちにしているミシェルは良き王だと言える。少々女癖が悪いのが欠点だが。

吸血鬼達が人類を攻撃する理由は二つある。一つは吸血鬼の世界を作り上げること。もう一つはミシェルの個人的な理由ーーー


「ねえねえミシェル様、ミシェル様は何でそのネックレスをいつも着けてるの?お風呂以外ではずーっと着けてるよね?女の人と寝る時m…」

「それ以上は言っちゃダメだぞーシュルト…このネックレスはなぁ…私の愛した人の形見なんだよ。それ以上はお前なんかには教えてやらん!性知識を覚え過ぎた子供は嫌いだ!」

「そんなぁ…」


ミシェルは空を毎日見上げて毎日同じ事を思う。

(メアリー…君の為に私はいつまで戦いを続ければいいのかな?わからないけど…「もういいよ」と止めてくれる君はもう居ない。だから私は…)


「ミシェル様?空なんて見上げてどうしたの?」

「あぁすまん…ちょっと昔を思い出してな」



To be continued




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