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10秒勇者~スキル【無敵モード】で10秒だけは世界最強~普段は最弱なので、舐めプのふりして時間稼ぎします!  作者: 桑野和明(久乃川あずき)


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称賛

 リティスがバルコニーに姿を見せた。


 ドロドロに溶けたザルドールを見て、緑色の目が大きく開く。


「十秒もかからずにザルドールを倒すとは……」

「速攻で倒さないと、ヤバイ魔法を使ってきそうだったからさ」


 俺は落ちていた金の首輪を拾い上げる。


「運がよかったよ」

「運がよかった? お前の圧勝ではないか」


 リティスは俺に顔を近づける。


「お前の強さは理解してるつもりだったが、私の予想をはるかに超えている。七人神に匹敵するかもしれん」

「七人神って?」

「Sランク序列一位から七位の冒険者たちのことだ。Sランクの中でも別格の存在とされている。だから、人神と呼ばれているんだ」

「へーっ。そんなに強い奴らがいるんだな」

「ああ。と、そんなことより、秋斗。お前の戦い方は危険だぞ」


 リティスが眉を吊り上げる。


「強者ゆえの余裕からだろうが、お前は敵と喋りすぎる。それが、舐めプ、なのかもしれんが、自分の命が懸かっているんだ。敵は殺せる時に確実に殺したほうがいい」

「いやぁ。つい、癖でやっちまうんだよ。は、はははっ」


 俺の頬がぴくぴくと動く。


 ちょっと無理がある言い訳だが、仕方がない。味方でも【無敵モード】の弱点を知られるわけにはいかないからな。


 その時、氷の手すりから音がして、細かいひびが入った。


「おっと、氷獄城がもろくなってるみたいだな。とりあえず、城から出ようぜ」


 俺とリティスは溶け始めた氷獄城を出た。


 すぐにうにゃ子が駆け寄ってくる。


「よくやったにゃ、秋斗。さすが、うにゃPにゃ」

「うにゃPって何だ?」

「うにゃ子のファンの名称にゃ。秋斗とはこの前コラボもやったし、名誉うにゃPに認定されてるのにゃ」

「俺はお前のファンじゃないし」


 俺はうにゃ子に突っ込みを入れる。


こいつ、突っ込み所が多い天然ボケ女だが、実力はそれなりにあるよな。うにゃ子のおかげで時間稼ぎもできたし。


 冒険者たちが俺に近づいてきた。


「お前、すげぇな。Dランクなのに十三魔将を倒すなんて」

「ああ。秋斗はすごいぞ」


 俺の隣にいたリティスが胸を張った。


「秋斗は他にも魔族の幹部を倒しているし、デスドラゴンも倒したんだ。こいつの強さは私以上だからな」

「リティス様以上?」


 女の冒険者が目を丸くする。


「ってことは、この人、Sランクレベルの実力があるってこと……ですか?」

「ああ。しかも序列上位のな」


 その言葉に冒険者たちがざわめいた。


「マジかよ。序列上位って十位以内ってことか?」

「そんなに強くは見えないがなぁ」

「だが、こいつが十三魔将をあっという間に倒したのは事実だぞ」

「それは……そうだな」


 冒険者たちの視線が俺に集中する。


「なあ、あんた」


 黒ひげの冒険者が俺の肩に触れた。


「俺たちのパーティーに入らないか? あんたが入ってくれたら、がっつり稼げそうだ」

「それなら、私たちのパーティーに入ってよ。全員女だから、いろいろと楽しいと思うよ」


 犬の耳を頭に生やした亜人の女が俺の腕に胸を当てた。


「おいっ! 色仕掛けは止めろ!」

「別にいいでしょ。秋斗さんはお金より女のほうが好きかもしれないし」


「ダメにゃ!」


 うにゃ子が俺の腕を引っ張る。


「秋斗はうにゃ子といっしょに魔王を倒すって約束したのにゃ」

「魔王を倒す?」


 黒ひげの冒険者の目が大きく開いた。


「本気なのか?」

「もちろんにゃ。この世界の平和は、うにゃ子たちが守るのにゃ!」

「おいっ! 魔王を倒すのは戦闘経験を積んでからって言っただろ」


 俺はうにゃ子の後頭部を軽く叩く。


「あと百体ぐらいは十三魔将を倒して、戦闘に慣れておかないと」

「十三魔将は百人もいないにゃ」

「とっ、とにかく、魔王を甘く見るな! 戦うのなら、百パーセント勝てる状態で挑まないとダメだ」


「その通りだ」


 リティスがうなずいた。


「秋斗の強さは規格外だが、魔王ヴァルザスも神に近い存在だと言われている。そんな相手と戦うのなら、慎重にならないとな」

「あ、ああ。この世界の命運を握る戦いになるからな。はっ、ははは」


 俺は乾いた笑い声をあげる。


「これが強者たる所以か」


 五十代ぐらいの冒険者がぼそりとつぶやいた。


「あれだけ圧倒的な強さがありながら、慢心することなく確実に魔王を倒そうとしている。もしかしたら、歴史が動くかもしれんな」


「す、すごい」


 若い女の冒険者が瞳を潤ませる。


「私たち、未来の勇者といっしょに戦ったんだね」

「ああ。子供に自慢できるぞ」


 他の冒険者たちも尊敬の眼差しを俺に向ける。


う……期待されても困るんだよな。俺のスキルは最強だけど、十秒しか使えない欠点ありのスキルだから。


 まあ、魔王退治は強い奴にまかせよう。七人神って強い奴らもいるみたいだし。

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