8話 友人令嬢
妹の前世を引き継いでいるかもしれないタオ第四王子に会うための作戦を考えていたオレは、この国には無いミカンの栽培を成功させてその成果物を王城へと持って行く計画を思いついた。
しかし、オレのギフトでは種入りミカンの果実は出せても苗木を出すことはできない。
種からミカンを育てたら実を収穫できるようになるまでに数年はかかってしまう……
「というわけでヨル、あなたのギフトを使ってミカンの成長を早めていただけませんか?」
「なにがというわけなんだよシィナ」
ゼテール伯爵家が治める領地のお隣、ギストレンジ公爵領。
巨大な鉱山地帯を管理するギストレンジ公爵家には、オレと同い年の女の子がいる。
「ヨルの力が必要なんですの! 土をバーッてやって、ミカンをババーッて育てたいのです!」
「せめてもう少し具体的に話してくれねえか……?」
ヨルクライム・ギストレンジ。
オレの目の前で面倒くさそうに頭を掻く貴族令嬢にしてはちょっと……いや、だいぶ粗雑な性格をしている彼女は、ギストレンジ公爵家の跡取り娘にしてこのオレ、シィナ・ゼテールの一番の友人だ。
ギストレンジ家はクレイン王国において『五大公爵家』と呼ばれるとても格の高い貴族なのだが、他の四家と比べてあまりその辺りの格式に興味が無いのか、娘のヨルクライム……ヨルも伯爵家のオレに対等な立場で接してくれている。
「ゼテール領の農地でミカンという新しい果物を栽培する予定なのですけれど、実がなって収穫するまでにとても時間がかかるのです! 五大公爵家の令嬢であり、素晴らしいギフトの使い手であるヨルクライム様のお力でミカンの成長を早められないかと思いまして」
「ボクのギフトねえ……っていうか、ヨルクライム様とか言うんじゃねえ。シィナのクセに変にへりくだるな気持ち悪い。普通に話してくれ」
「ヨルさまぁ~お願いしますぅ~」
「鳥肌立つからやめろそれ!」
「分かりましたの」
鉱山地帯および、鉱山で採掘された金属材料などを使って武器や防具を製造する職人街を有しているギストレンジ領は、クレイン王国を守る王国軍にとっても大切なエリアだ。
その為、農業地帯を管理するゼテール領と比べるとどこか物々しいというか、全体的に荒っぽい雰囲気を覚える。
だからなのかは不明だが、ギストレンジ公爵家の一人娘であるヨルも貴族令嬢にあるまじきワイルドさを持ち合わせているのだ。
「まあ確かに、ゼテール領の栄養豊富な土壌でボクのギフト『グロウ』を定期的に使用すれば果樹1本くらいならすぐに育つんじゃないか?」
「やはりそう思いますわよね!」
「でもなあ、アレ使うと疲れるんだよなあ……」
ヨルはあらゆる物の生育を促進する『グロウ』というギフトを持っている。
流石に手に乗せた卵を一瞬でニワトリに成長させるような力ではないが、毎日継続してギフトを使っていけば数日で数週間分の成長速度にすることもできるらしい。
しかし、その分ギフトを使用している本人は毎日ヘトヘトになってしまうので、ヨルはあまり自分のギフトを使いたがらない。
とはいえオレも果物の種類や大きさによっては、ギフトで1個出すだけでも貧血で倒れそうになることもあるので、ギフト自体そこまで便利なものだという認識はないのだが。
「ヨル、お願いしますの」
「でもなあ……」
「ヨルが子供の頃、ギフトを使って自分のお胸を成長させようとしていたことは一生誰にも言いませんから」
「めちゃめちゃ脅迫してくるじゃねえかオイ!」
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