7話 タオ第四王子
〝タオ・クレイン第四王子がギフト『フラワー』の発動に成功。手のひらから一輪の花を咲かせ、サライト・クレイン第二王妃にプレゼント〟
「『ギフトにより出現した花は、タオ第四王子曰くタンポポという名前の異国の花だそう』ですか……」
アイラから受け取った号外のチラシを読み、タオ第四王子が使用したギフトについての説明箇所を確認する。
タオ王子が使用したのは『フラワー』というギフトで、オレの『フルーツ』と同じようにイメージした物を出現させることができる能力のようだ。
ギフトを使用したことで体力を消耗したのか、母親であるサライト王妃に花をプレゼントした後に、王妃の膝の上で眠ってしまったらしい。
「そういえば、わたくしも初めてギフトを使用した時は疲れて眠ってしまいましたわね」
あの時のオレは、たしか4才だったはず。
その年はゼテール領の名産品であるアパルスが不作で、それをなんとかしたくて祈ったらいつの間にか小ぶりなアパルスの実をひとつ握っていて……
まだあまり熟していなくて酸っぱかった記憶がある。
「ふふ。4才の記憶が二つあるというのも不思議なものですの」
『初めてのギフト発動』というシィナの4才の記憶とは別に、夏山彪牙として施設で暮らしていた記憶も忘れていない。
同じ月の誕生日の子供を集めて、月に一度の共同誕生日パーティーをやっていたのを覚えている。
あの時はまだおじさんの家に引き取られていないから、夏山じゃなかったんだよな……
「それにしても、3才でギフトを発動とは……タオ王子は優秀ですのね」
さすがオレの妹……が、転生しているかもしれない王子様だ。
まあ実際にタオ王子と会って話したわけではないから確定情報ではないのだが、オレと同じ系統の手から物を出すというギフトなわけだし、この国にはないタンポポの花を出したっていうことは、これはもうほぼほぼウチの妹で合っているんじゃないだろうか。
「なんにしても、まずはタオ王子と直接会って王子が美柑なのか確かめないとですわね」
とはいえ相手はこの国の第四王子……そんな気軽に会えるような相手ではないだろう。
こちらも貴族令嬢とはいえ、農地管理を主な生業にしているゼテール家は伯爵家の中でも辺境伯のような立ち位置だし……
「今年のアパルスの初採り献上は済ませてしまいましたものねえ」
アパルスの初採り献上とは、年に一度ゼテール領で栽培されているアパルスを初収穫した際に、その年の初物として国王に献上する習わしだ。
他の果物や野菜などの初物は基本的に王都の市場に流したり、他の領地を治める貴族に贈呈しているが、琥珀色に輝くアパルスの実はクレイン王国を代表する果物ということで、オレの父親……領主のルトヴァン・ゼテール自ら王城に赴いて献上することになっている。
「来年の初採り献上の際に、お父様に付いて行って……いえ、そんなに待てませんわ!」
美柑がタオ第四王子かもしれないと思ってしまったら、すぐにでも会って確認したくなってしまう。
何か他に、王家の人たちに会えるような動機は……
「ミカン……そうだわ、ミカンですの!」
オレはギフトを発動してこの世界には無いミカンを出現させることに成功したことを思い出す。
ミカンは妹の好物だが、いきなり『わたくしのギフトで出した新種の果物を是非第四王子に』とか言っても怪しまれて受け取ってもらえないかもしれない。
しかし、これを新たな名産品としてゼテール領で栽培して献上したら……
「いけますわ!」
とはいえ、これからミカンの種を植えて普通に育てたら実がなるまでに5、6年はかかるだろう。
それなら普通に来年のアパルス初採り献上まで待った方が色々と早い。
「何か策を考えなければいけませんわね」
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