5話 妹の手がかり
「ふぅ~……出てきて、ミカン!」
ポンッ!
「やりましたわっ! 成功ですの!」
ギフトを発動したオレの手のひらには、妹と同じ名前の果物がひとつ。
「ミカンを出せましたわっ!」
イメージした果物を具現化するオレの特殊能力・ギフト『フルーツ』は、当たり前だが自分の知らない果物は出すことが出来ない。
オレがシィナ・ゼテールとして転生したこの世界には前世にあった果物が存在せず、記憶を引き継ぐまではシィナが知っているこの世界の果物しか出すことが出来なかった。
しかし『前世の記憶を取り戻した今のオレならもしかしたら』と思ってミカンをイメージしてギフトを発動してみたところ、なんと本当に美味しそうなちょっと小ぶりのミカンを出すことに成功してしまった。
「はむっ……ん、ちゃんと美味しいですわ」
しっかりした甘みとすっぱすぎない酸味……オレ好みのミカンの味だ。
懐かしいな……冬になるとコタツの上に山盛りになったミカンが置かれてて、妹と一緒によく食べたもんだ。
自分と同じ名前だからという理由もあり、ミカンは妹のお気に入りの果物だった。
「あの子はどちらかというとすっぱいのが好きでしたわね……」
ちなみにオレの好きな果物は梨。
自分の名前に似たヒュウガナツっていう柑橘系の果物もあるらしいが食べたことは無い。
「そういえば女神様が、わたくしと美柑が授かるギフトは似たような性質の能力になるかもしれないと仰っていましたわね……」
これまでのシィナの記憶を探っても、手から果物を出すギフトを持っているのはオレ以外に知らなかった。
お嬢様としてそれなりにしっかりと教育を受けており、ギフトの種類などについても勉強はしているが、今の所似たようなギフトにも心当たりが無いし、そもそもギフトを使える人自体が希少だ。
「この世界に転生した美柑は3才になったばかりのはず……自分のギフトについてしっかりと把握しているのかしら」
異世界に転生したオレはゼテール家の一人娘。
女神の言った通り美柑と兄妹として転生することは出来なかった。
もちろん美柑と兄妹になれなかったからといって、転生ガチャが外れたとかは思わない。
むしろ貴族令嬢の家に生まれて、これまで何不自由ない生活をしてこれた今の状況を考えたら大当たりだろう。
「とはいえ、もしあの子が他の国とかに転生してたら探すのが大変ですわね……」
この世界では、国同士の争いがなくすべての人が平和で平穏な暮らしを……送っているということは残念ながら無いようで、領土争いで隣国と小競り合いが頻発しているような地域もある。
武器や兵器などは前世の世界よりも発達していないが、代わりにギフトを持った能力者を活用した戦いが行なわれている。
オレのフルーツギフトじゃ戦いには貢献できないし、そもそもゼテール家はクレイン王国の農業地帯を領地として管理する役目がメインなので今のところ戦とは無縁の生活をしている。
ただ、美柑が転生した環境がどうなっているのかは分からないのでそこはちょっと不安だ。
「もしかして、わたくしとは逆で男の子に転生していたり……なーんて」
美柑が転生した人物の手がかりは『現在3才で、オレと似たようなギフトを持っている可能性が高い』という情報しかないのが現状だ。
「まずは、わたくしと似たギフトを持っている子供の情報を集めましょう」
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