4話 ギフト
「ふぅ~……」
息を整え、手のひらを見つめて集中する。
身体の中のエネルギーを凝縮し、物質に変換させるようなイメージを高めていく。
「出てきて、アパルス!」
ポンッ!
「おお~……!!」
気合いを入れて一言叫んだオレの手のひらの上には、洋梨のような形をした琥珀色の果物……我がゼテール領の名産品である『アパルス』の実がひとつ乗っていた。
「さあアイラ、こちらをどうぞ」
「ありがとうございますシィナ様!」
ゼテール家で働いているメイドのアイラにオレが出したアパルスを渡す。
きっとメイドさんたちの休憩時間におやつとして食べてもらえるだろう。
食べ盛りの若い子も多いし、もうあと何個か出しておこうかな。
「それにしても、シィナ様の『ギフト』はいつ見ても素晴らしいですねぇ……」
「ありがとう、アイラ」
〝ギフト〟
転生前に女神から言われた通り、この世界には『ギフト』という特殊能力が存在する。
ギフトは誰でも授かれるものではなく、一部の選ばれし者のみが生まれた時にひとつだけ特殊な力が使えるようになる。
そんでもってこのオレ、シィナ・ゼテールはギフトを授かった選ばれし者なわけだが……
「手から果物を出せちゃうなんて、シィナ様のギフトは王国イチでございます!」
「それはさすがに身内びいきが過ぎるわよアイラ」
そう……アイラが言った通り、これこそがオレの、手から任意の果物を出せる『フルーツ』というギフトだ。
……。
…………。
「いやショボすぎませんかわたくしのギフト」
自室に戻り、自分のギフトのあまりの地味さに絶望する。
いやまあ一部の人しか使えないから世間的に見ればギフトを持ってるだけでもすごいんだけどね?
「手から果物出せる能力なんて……もっとこう、炎とか水みたいな王道の能力があるではないですか……」
実際、この世界には炎や水を操るギフトを持った人間がいるのをシィナ・ゼテールとしての知識で知っている。
だからこそオレの『フルーツ』というギフトの凄さが霞みに霞みまくってしまう。
なんだこれ、マジでフルーツギフトじゃん。お中元じゃん。
「美柑は果物が好きだから再会した時にこのギフトを見せたら大喜びかもしれませんわね」
ちなみにギフトは何の代償も無しに発動できるものではなく、使うとそれなりに運動した後くらい体力を消費する。
出した果物と同じくらいのカロリーを消費しているんだろうか……?
「そういえば、手から和菓子が出せる主人公のゲームとかありましたわね」
引継ぎが完了した前世の記憶からそんなことを思い出し、少し可笑しくなってしまう。
あの主人公は和菓子を出すとその分お腹が空いていたような……そういやあのゲームって恋愛アドベンチャーか……
「わたくしも手から出した果物を渡して、高貴な殿方をメロメロにして差し上げましょうかしら」
…………。
「わ、わたくしが、殿方をメロメロに……? いやでも、わたくしは……」
ま、マズいぞ……この世界で女性として転生した影響なのか分からんが、シィナという女の子の意識から来る趣味嗜好に抗えなくなっている……前世の夏山彪牙としての記憶と意識も引き継がれているが、仕草や口調を荒っぽくすると違和感があるし、色々と混ざり合って変な感じに……
「だ、大丈夫! ちゃんと女の子の事も意識して見ることは出来るはずですわ……!」
まあ、今のオレがそういうことをすると百合百合になっちまうけどな。
とはいえオレの前世の記憶にはこんな名言が刻まれている……
「男の人は男の人同士で、女の子は女の子同士で恋愛すべきだと思いますの」
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