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回帰○(リターン・ゼロ)~平凡な俺の前世が『神』だった~  作者: トランス☆ミル
第六章 小さな厄災編

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第41話 みんなで任務

 アートが来て3日目。パトロールの疲れがまだ抜けきらないまま、プリムンズの5人とアートは、支部の一室に集められていた。


「今日は少し緩めの任務がある」


 開口一番、ダクラがそう告げる。


「内容はダンジョン調査。最近、街の外れで古代遺跡が見つかってな」


「ダンジョン……ですか?」


 ヴィジが復唱する。


「あぁ。古代の祭壇や神殿の類だ。内部構造は不明、僅かながら魔力の反応も確認されている。こういった未知の機構を調査するのも、我々祓魔師エクソシストの務めなんだ」


 淡々と説明するダクラの横で、


「ダンジョンかぁ〜!」


 と、アートが楽しげに声を上げた。


 その様子に、5人は一瞬だけ顔を見合わせる。


(……嫌な予感しかしない)


 誰も口には出さなかったが、全員同じことを思っていた。


「俺は今回も同行する。昨日の件もあるからな」


 ダクラの視線が、ちらりとアートへ向く。


 アートは気にした様子もなく、鼻歌を歌っている。


「準備ができ次第出発する。各自、装備を整えろ」


「「了解」」


 こうして、プリムンズとアート、そしてダクラの7人は、ダンジョンへ向かうこととなった。




 ダンジョンは車では行けないため、ダクラの能力で飛ぶこと数十分。街を抜け、さらに外れへと進んだ先。山岳地帯。


 そこには、ひっそりと佇む遺跡があった。


「……これがダンジョンか」


 レイが呟く。


 入口と思しき、崩れかけた石造りの建造物。蔦が絡みつき、長い年月を感じさせる外観。


 一見すれば、ただの廃墟だ。


「外見は普通ですね」


 フラクタが淡々と観察する。


「だが油断するな。内部がどうなっているかはわからん」


 ダクラは短くそう言うと、入口へと歩き出す。


 その背中に続こうとした時――


「……あれ?」


 不意に、アートが立ち止まった。


 くん、と空気を嗅ぐようにして、遺跡をじっと見つめる。


「どうした?」


 ダクラが振り返る。


 アートは首をかしげた後、


「あ、ここ――」


 ぱっと顔を明るくした。


「知ってる」


「「え?」」


 プリムンズの声が、綺麗に揃った。

 

「……詳しく聞こうか」


 低く抑えた声で言うダクラに対し、アートは悪びれる様子もなく笑う。


「うん。前に来たことあるよ」


「このダンジョンは一体何なんだ?」


「それは後でのお楽しみ!」


 さらりと言い放たれたその一言に、嫌な予感がさらに一段階強まった。


 やがて、


「じゃあ、案内するね!」


 と、無邪気な笑顔と共に、アートは迷いなく遺跡の中へと駆け出した。


「あっ、おい待て!!」


 ダクラの制止も虚しく、


 小さな背中は、暗い入口の奥へと消えていく。


「……行くぞ」


 短くそう言い、ダクラも後を追う。


 ヴィジ達も顔を見合わせ、覚悟を決めるようにゆっくりとうなずいた。


(……絶対、普通の任務じゃない)


 そんな確信と共に、7人はダンジョンの中へと足を踏み入れた。


「……ッ!?」


 一歩、足を踏み入れた瞬間。空気が、変わった。


 ヴィジは思わず足を止める。


 さっきまで見えていた石造りの通路は、どこにもない。


 代わりに広がっていたのは――


「な、なんだよこれ……」


 レイが呆然と呟く。


 そこは、星が瞬く空間だった。


 頭上も足元も、壁すらも存在しないかのように、無数の光点が広がっている。まるで宇宙の中に放り出されたかのような錯覚。


 だが、確かに足場はある。


 透明な床が、淡く光を反射しながら続いていた。


「ダンジョン……って、こういうものなの?」


 ネリンが困惑した声を漏らす。


「いや、普通はもっと……こう、石の通路とかだろ……」


 ウェントも周囲を見渡しながら答える。


 その時、


「こっちだよ〜」


 と、先を行くアートが軽い足取りで手を振った。


 まるで慣れ親しんだ遊び場のように、迷いなく進んでいく。


「……待て、勝手に動くな」


 ダクラが低く制止するが、


「大丈夫だって〜、危ないとこは覚えてるし」


 と、振り返りもせずに言う。


「覚えてるって……」


 ヴィジは小さく呟きながらも、その後を追う。


 他の5人も続き、透明な回廊を進んでいく。


 やがて、空間が大きく開けた。


 中央には、巨大な螺旋階段。


 だがその階段は、上下という概念を無視するかのように、空中をねじれながら伸びている。


「……どうやって登るんだ、これ」


 レイが顔を引きつらせる。


「普通に登ればいいよ?」


 アートがぴょん、と軽く跳ねて階段へ乗る。


 それに続き、ヴィジたちも階段に足をかけると、突然重力が変わった。


「うわっ!?」


 ヴィジの体が、ぐいっと引っ張られる。


 次の瞬間、足場だったはずの床が"壁"になり、螺旋階段が"地面"になる。


「重力が……切り替わった……?」


 フラクタが冷静に分析する。


 アートは楽しそうに笑った。


「ほらほら、遅いよ〜!」


 そのまま、ぴょんぴょんと階段を登っていく。


 ダクラは小さくため息をつくと、


「……ついていくぞ。離れるな」


 とだけ言い、先頭を追った。




 しばらくして螺旋階段を抜けると、景色が再び変わる。


 今度は、石造りの普通の通路だった。


「……戻った?」


 ネリンが周囲を見回す。


 壁の一部には、星のような文様が埋め込まれ、淡く光っている。


「ここからは普通の迷宮だよ」


 アートが振り返って言う。


「たぶん、魔物もいるよ〜」


「たぶんって……」


 レイが呆れたように言いかけた、その瞬間、ぞわりと空気が揺れた。


「来るぞ!」


 ダクラの声と同時に、影が蠢く。


 壁や床から滲み出るようにして、黒い獣のような魔物が姿を現した。


 数は、五体。


β(ベータ)級か……!」


 ヴィジは即座に構え、掌にオーラを集中させる。


「よしっ、いくよ!」


「了解!」


 ウェントとヴィジが前に出て、ネリンとフラクタ、レイが後方支援に回る。いつもの陣形。


 そして、戦闘が始まった。


「いくぞ!」〈雷撃〉


 ――バリバリ!


 レイの一撃が魔物を弾き飛ばし、ウェントが追撃する。


 ヴィジは前線でオーラの剣で敵をなぎ倒し、ネリンがそれを補助するように魔物を固定する。


 フラクタは戦闘の衝撃を利用して敵を倒し、さらにダンジョンが傷つかないようにカバーしている。


 次々に湧き出る魔物に対し、5人は善戦している。


「左、来る!」


「よしきた!」


 連携は、完璧だった。


 数分後。最後の一体が、ヴィジの一撃によって霧散する。


 静寂が戻った。


「ふぅ……」


 ウェントが息を吐く。


「この程度なら問題ないな」


 レイも肩の力を抜いた。


 その後ろで、


「えー、私やりたかったのに〜」


 と、アートが不満そうに頬を膨らませていた。


「お前はやらなくていい」


 ダクラが即座に切り捨てる。


「えぇ〜……」


 アートはぶーぶー文句を言いながらも、すぐに気を取り直したように歩き出す。


「まぁ、仕方ないか……じゃあ次、行こ!」


 その背中を見ながら、ヴィジは小さく息を吐いた。


(……やっぱり、おかしい)


 道を迷う様子は一切ない。罠も、敵の位置も、まるで最初から知っているかのようだ。


 神話の時代から生きているのであれば、古代のダンジョンを実際に知っているのは不思議ではないが、これは"経験者"どころではない。


(まるで――)


 そう考えかけて、思考を止める。


「……行くぞ」


 ダクラの声に、全員がうなずく。


 そして一行は、さらに奥へと進んでいった。




 どれほど進んだだろうか。いくつもの通路と空間を抜けた先で、巨大な扉を開けると、不意に視界が開けた。


「……ここが、最奥……?」


 ネリンが息を呑む。


 そこは、これまでとは明らかに違う空間だった。


 円形に広がる広大な部屋。天井は見えず、まるで夜空のように無数の光が瞬いている。


 その中心には、古代の祭壇。


「……祭壇か」


 ダクラが静かに呟く。


 床には幾何学的な紋様が浮かび、電子回路のような光が走っている。


 そして、一段高くなった台座。その上に、淡い光を放ちながら浮かんでいるものがあった。


 透き通るような結晶でできた、細長い物体。


 ゆっくりと回転しながら、静かに脈打っている。


「……なんだ、あれ」


 レイが警戒した声を出す。


「触っていいやつなのか……?」


 ウェントも慎重に距離を保つ。


 だが、その時。


「それ、鍵だよ」


 アートが、あっさりと言った。


「鍵?」


「うん。あれ取らないと先行けない」


 そう言うと、アートは躊躇なく祭壇へ向かって歩き出す。


「待て、アート! それには何重もの防衛術式がかかっているぞ!」


 ダクラが制止するが、


「大丈夫だって〜」


 と、軽く手を振るだけ。


 そして、そのままひょいと鍵を掴んだ。


 同時に、空間に微かな振動が走る。


「……ッ!」


 ヴィジたちは一斉に構える。


 だが、何も起きない。


 ――ゴゴゴゴ……


 やがて低い音と共に、壁の一部が動く。


 現れたのは、巨大な扉だった。


 高さも幅も、これまで見たどの扉よりも大きい。


「……あれが、本命か」


 ダクラが目を細める。


「うん」


 アートは鍵をくるくると回しながら、無邪気に笑った。


「じゃあ、開けよっか」


「いや軽いな!? 本当に大丈夫なのか!?」


 思わずウェントがツッコむ。


 だが、アートは気にせず扉の前へ立つと、鍵をすっと差し込んだ。


 ――ギィン!


 扉に光が走る。


 次の瞬間、


 ――ゴゴゴゴ……


 と、重厚な音を響かせながら、扉がゆっくりと開いていく。


 中から、光が溢れた。


「……っ!?」


 思わず目を細める。


 そして、完全に扉が開いた時――


「……うわ」


 ヴィジの口から、思わず声が漏れた。


 そこは、宝の山だった。


 床一面に積み上がる金貨。宝石。武具。魔導書。


 棚や台座には、見たこともないような装備が整然と並んでいる。


 どれもこれも、ただの品ではない。


 放たれる気配だけで、"格"が違うとわかる。


「な、なんだこれ……」


「規模、おかしくない……?」


 ネリンとフラクタも言葉を失う。


 ダクラでさえ、わずかに眉をひそめた。


「……これは……」


 その時。


「ここね、金庫だよ」


 アートが、あっけらかんと言った。


「「は?」」」


 全員の声が揃う。


「ミルにぃと、ラプねぇが作ったやつ」


「……ラプねぇ?」


 ヴィジが聞き返す。


「うん。地界ヘル第五階層の大君主オーバーロード。ミルにぃの友達」


 さらっと、とんでもない情報が出てきた。


「……待て」


 ダクラが低く言う。


「つまりここは――」


「ただのダンジョンじゃなくて、宝物庫だよ!」


 アートは笑った。


「昔、ミルにぃが面白がって作ったんけど、あんまり使ってなかったから放置してたの。あたしも作るの手伝ったんだけど、ほとんど遊んでたんだよねぇ」


「放置ってレベルじゃねぇだろ……」


 レイが頭を抱える。


 ヴィジは、ゆっくりと宝の山を見渡す。


(……これ、一つでも持ち出したら大騒ぎになるレベルじゃないか?)


「もっと早く言えよな……」


 ダクラがため息をつく。アートは頬を膨らませた。


「だって、驚かせたかったんだもん」


 それを見て、ダクラは少し考えた後、そっとアートの頭をなでた。


「いや、とっても驚いたぞ。ミル様からそんな話、聞いたことないからな」


 その声には、昨夜ミルから言われた思いが籠っていた。


 アートはそれを聞いて、ニコッと笑う。


「では帰還するぞ。調査報告は……いらんだろ」


 そしてダクラはそう指示をすると、踵を返した。


「はーい!」


 アートが元気よく返事をする。


 こうして、予想外すぎるダンジョン調査は幕を閉じた。


 帰路につく7人。その背後で、巨大な扉が静かに閉じていく。


 まるで、何事もなかったかのように。


(……なんか、とんでもない任務だったな)


 ヴィジは苦笑しながら、空を見上げる。アートは、その隣で楽しそうに歩いていた。


 まるで、ただの遠足の帰り道のように。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


ヴィジ〈神ノ加護:霊力支配〉:今作の主人公


レイ〈神ノ加護:神線〉:陽気な性格。意外とまじめ。


フラクタ〈神ノ加護:波動〉:穏やかな性格をしている。


ウェント〈神ノ加護:炎魔法〉:優しい性格の持ち主。頭が良く、判断力に優れている。


ネリン〈神ノ加護:サイコキネシス〉:天真爛漫で活発な性格の女の子。頭はあまりよろしくないが、攻撃力はピカイチ。


ダクラ:大君主の側近、主の称号を持つ。真面目な性格。


アート:通称"小さな厄災"と呼ばれる女の子。少女の見た目をしているが年齢は不詳。神話の時代から生きているので、少なくとも"兆"は超えている。性格は無邪気な子供の様。

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