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回帰○(リターン・ゼロ)~平凡な俺の前世が『神』だった~【神話編】  作者: トランス☆ミル
第五章 恐怖の根源編

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第38話 死の救済

ヴィジとネリンの意識が、深く沈み込んでいく。


神核デウスコアから溢れ出す呪詛。幽霊ゴーストの嗤い声。倒れ伏したアラスター。仲間たちの苦悶の表情。


(幽霊から負の感情が流れ込んでくる...まずい、意識が...飲まれる...)


ヴィジの胸の奥で、何かが切れた。


次の瞬間、ヴィジの体から、黒いオーラが静かに噴き上がった。


「ヴィジくん!?」


ネリンが息を呑む。


「くっ、だ、大丈夫だ。あの時(・・・)とは違う。意識ははっきりしてる。」


ヴィジの体は、幽霊にかざした右側だけが黒いオーラで覆われている。


それは、先ほどまでの正の念とは違う。怒りでも、憎悪でもない。


すべてを呑み込み、支配する"負"そのもの。


(なんだ、この感覚...念の流れが見える...感じる...)


「...これは...」


アラスターが、ゆっくりと目を見開いた。


ヴィジは、顔を上げる。その瞳は、恐ろしいほど澄んでいた。


「――もう、やめさせる!」


ヴィジがそう言った瞬間、幽霊の周りに渦巻く念が、幽霊に向かって一気に収束した。


幽霊はその場に固定される。


「なッ!?」


腕が上がらない。声が出ない。神核の鼓動が乱れる。


「な、何を...した...?」


「解釈の拡大...僕は念を支配できる。そして君は、念でできている。」


その言葉を聞いた瞬間、幽霊の表情が歪んだ。


「ば...馬鹿な...!そんなこと、できるはずが...」


その表情に、もう微塵も余裕を感じない。


しかし、幽霊の周囲の空間が、歪むほどの死の気配に包まれる。


今までにない程の呪詛が5人を襲う。


「まだだ。お前達を内側から壊してやる。さぁ、味わえ――死の恐怖を。」


そして、幽霊言葉と共に、5人の視界に無数の"終わり"が映し出される。


消滅。忘却。無音。


だが、


「...?」


何も起こらない。


5人は、震えながらも立っていた。


「...通じない?」


「私達...訓練で、死は何百回も体験しました。」


フラクタが、かすれた声で言う。


「恐怖に飲まれないための訓練...それを、何度も...!」


「ば...かな...!」


幽霊の声に、初めて怯えが混じった。


その時、


「――皆さん。ありがとうございます。」


と、低い声と共に、アラスターが立ち上がった。


そして次の瞬間、フワッと幽霊の前に瞬間移動する。


「貴方は、もう終わりです。」


「ハ...ハハハッ!やれるもんなら、やってみろ!攻撃(・・)じゃ俺は殺せないぞ!」


「いいえ。」


アラスターは、杖を静かに構えた。


「これは、攻撃ではありません。」


その声は、驚くほど優しかった。


「――救済です。」


幽霊の瞳が、揺れる。


「長い間、苦しかったでしょう。恐怖に縛られ、憎しみに囚われ...」


「何を...」


「もう、終わりにしましょう。執行魔法。」〈真なる救済トゥルーサルヴェイション


アラスターが技を発動したその瞬間、光が静かに広がる。


それは裁きの光ではない。拒絶の光でもない。包み込むような、温かな光。


「ガァ...ァァァ...」


幽霊の体が崩れていく。


だが、その顔には――初めて、安堵の表情が浮かんでいた。


そして、幽霊は完全に消滅した。


幽霊が消えると同時に、今まで体にかかっていた"圧"が不思議と消え、体が楽になった気がした。


床に残ったのは、神核デウスコアのみ。


「...今度こそ、やりましたね。」


アラスターは一息つくと、


「さぁ、急いで本部に帰りましょう。」


と、アラスターは即座に神核を回収する。


「この場に長居は無用です。早くこのことをモート様に報告せねば。」


アラスターの指示と共に、みんなは端末式転移装置を取り出す。


そして端末を起動させ、本部へと転移した。




本部の転移所に着くと、急いでモートの元へ向かう。


本部はいつもと変わらぬ静けさに包まれていた。


「本当に、帰ってきたんだな...」


モートの部屋まで向かう途中、レイが呟く。


今まで霊界領域スピリットドメインの中で、絶望と恐怖に浸されており、実感が湧かない。


体感で1週間近くいたように思えた。


「えぇ...そうね。」


フラクタはかすかに笑おうとして、うまくできなかった。


「生きてるって、こんなに重いものなんですね。」


ウェントの言葉を、誰も否定しなかった。


そして、モートの部屋の前まで来ると、アラスターは神核を静かに抱え直す。


「皆さん、よく耐えてくださいました。」


その声は、戦闘中の冷静さとは違い、どこか疲労を隠しきれていなかった。


モートの部屋に入ると、空気が一段引き締まった。


「おぉ、帰ってきたのか。早かったな。」


モートの部屋には当たり前の様に、ミルとザイオンがいる。


ミルの言葉の通り、6人が出発してからわずか数時間しか経っていないのにも関わらず、6人はぐったりとしていた。


「ふむ...」


ミルは、6人の表情とアラスターが持っている呪物を見るなり、深く息を吐いた。


「...やはり、神核か。」


「ッ!?これを知っているのですね。」


アラスターは少し驚きつつ、簡潔に報告を始める。


旧城の悲劇。幽霊の正体。呪物のこと。


「なるほど...ご苦労だった。」


モートは静かに労いの言葉を投げかける。


「『死は救済』というモート様の教えのお陰です。モート様の神ノ加護(フォース)、『デス』にある救済の技を使わせて貰いました。」


「...そうか。」


アラスターの話に、モートはどこか嬉しそうに返す。


そしてミルも、


「ヴィジやネリンなら、やってくれると思ったよ。能力の拡張も学べたみたいだし、勉強になっただろ。」


と、活躍したヴィジとネリン、その他の3人に声をかけた。


「いやぁ、死ぬかと思いましたよ。能力の拡張も、あの時みたいな黒いオーラが出たからできただけで、今はできません。」


「まぁ、何はともあれ結果オーライだろ!」


ミルは未だ強ばっているみんなに、ニコリと笑ってみせる。


「ミル様は、この事を見越して5人を同行させたのですね。」


「まぁ...そういう事だな。」


(本当はヴィジの完全殺戮形態ジェノサイドフォームを見たかったんだけどな...)


ミルは心の中で本音を呟く。


そして、そんな風に会話するミルに対し、


「ミル。お前はなぜこれを知っていたのだ?」


と、モートが問いかける。


ミルは少しの沈黙の後、ゆっくりと話を始めた。


「お前ってやつは、興味がない事はすぐに頭からデリートするよなぁ。


――あれは俺が封印した呪物なんだよ。」


それを聞いた瞬間、6人の表情は驚きに変わった。


「正確には呪物ではなく、神具の一種だがな。


数十億年前のある日、モートに頼まれて俺たちが開発した試作品『神核』は、辺りの念を吸い取り、バグの発生を抑制する制御装置だった。だが、定期的にメンテナンスしなきゃならないし、もしもの事があって溜まった念が解放されたら、辺り一帯が壊滅しちゃうから、結局没にしたんだよ。」


「あぁ、確かにそんなこともあったな。」


モートはミルの話を聞いて、思い出した様にうなずいた。


それからミルは話を続ける。


「没なり封印して処理したのは良かったものの、まさか神核を安置してた神殿ごと掘り起こされるとはね。」


「と、言うことはつまり、ミル様が封印した神具は大量の負の念により呪物となって、その呪物の封印をヴァルディス家の当主が解いてしまったことによって、再び機能し始め、この1億年間であそこまでの力を持ってしまったという訳ですか。」


アラスターはミルの話を聞き、簡潔にまとめる。


その話を聞いて、プリムンズの5人も納得した様子だ。


しかし、ミルは少し声色を変えて、再び話を始める。


「だが、重要なのはそこじゃない。」


「え、どういうことですか?」


その言葉に、ヴィジは動揺したように聞き返す。


「いいか、あそこの幽霊は1億年前に封印されたんだろ?で、今になって封印が解けたと。


祓魔師エクソシストの封印はそう簡単に解けるものじゃない。俺のなんて尚更だ。


と、言うことはどういう事かわかるか?」


ミルの問いに、アラスターはゆっくりと答える。


「封印を解いた者が...別にいる。」


みんなの間に緊張が走る。


「この間のアレスの件といい、先日の親善大会の時に感じた違和感といい、今回の件といい、確実に裏で何者かが動いている。」


反神者レベラーか。」


「あぁ、それもかなり厄介な。」


ミルの言葉にしばしの沈黙が流れる。


そんな中、ザイオンが口を開いた。


「まぁ、どんな敵が来ても、みんななら大丈夫でしょ。僕には"負けるイメージ"が湧かないなぁ。」


その発言にみんなはハッと目を見開く。


「そ、そうですね!」


「ハハッ。弱虫なお前が、洒落たこと言うじゃねぇか。」


「う、うるさい。」


ザイオンの一言で、みんなの表情が明るくなった。


「まぁ、どんな敵が来ようとも、ミル様達がいる限り、俺たちは負けない。」


「そうね、レイ。」


そしてみんなは、今一度、気を引きしめる。


祓魔師エクソシストとしてのみんなの活躍は、まだまだ序章に過ぎないのであった――。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


ヴィジ〈神ノ加護:霊力支配〉:今作の主人公


レイ〈神ノ加護:神線〉:陽気な性格。意外とまじめ。


フラクタ〈神ノ加護:波動〉:穏やかな性格をしている。


ウェント〈神ノ加護:炎魔法〉:優しい性格の持ち主。頭が良く、判断力に優れている。


ネリン〈神ノ加護:サイコキネシス〉:天真爛漫で活発な性格の女の子。頭はあまりよろしくないが、攻撃力はピカイチ。


アラスター:地界第七階層の主地者であり、モートの側近。とても真面目な性格をしている。

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