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回帰○(リターン・ゼロ)~平凡な俺の前世が『神』だった~【神話編】  作者: トランス☆ミル
第五章 恐怖の根源編

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第37話 神核

「...ふぅ...」


アラスターは息を吐き、杖を地に突き立てるように構え直した。


肩を伝う神液しんえきが、光を失って床へと落ちる。


(このままでは削り負ける...いえ、それ以前に――)


幽霊の再生速度。念の総量。そして、この霊界領域スピリットドメインそのもの。


(もしこれでだめだったら...)


空間内に緊張が走る。


そして、


「...これで決めます。」


と、アラスターが静かに告げると、アラスターのまとうオーラが爆発的に増加した。


悪魔形態ディアボロスフォーム


次の瞬間、アラスターの背中に漆黒の巨大な翼が生え、頭上には丸とバツが合わさった赤黒い光輪が現れた。


「ッ!?」


そのあまりの圧に、幽霊ゴーストも少し後ずさりをする。


「あ、あれは...」


「親善大会でミル様が言っていた、『悪魔形態』!!」


穢れなき聖域(ホーリードメイン)〉の中で、ヴィジ達も驚いた声を出す。


神ノ審判(ゴッズジャッジメント)第一審ファーストインスタンス『剥奪』〉


そして、アラスターは技を発動する。


「なんだこれは?力が使えな――」


それにより、幽霊は能力を封印され戸惑っていると、そこに有無を言わさずアラスターが一撃を入れる。


「ガァ゙ッッ!?」


反応できない速度で舞うアラスターの一撃に、幽霊は数十メートル吹き飛ばされ、壁に激突した。


轟音と共に壁が凹み、そこにはグリッチがかかっている。


「くっ、領域のオブジェクトに傷をつけるとは。」


「まだまだ行きますよ。」〈神ノ審判:第二審セカンドインスタンス『執行』〉


アラスターが再び技を発動させると、黄金の稲妻でできた武器が大量に現れた。


剣、槍、斧、鎌――正義の武器たちは、物凄い勢いで幽霊に襲いかかる。


黄金のラッパから放たれる回避不可能な攻撃は、幽霊の念をごっそりと削る。


しかし、


「良い攻撃だが、まだまだだァ!!念操ねんそう魔法」〈呪怨雷鳴カースサンダー


と、幽霊も攻撃を強める。


幽霊の放つ漆黒の稲妻の雨は、アラスターの攻撃を相殺するどころか、むしろ押し返している。


「こ、これは!?」


「知らなかったのかッ?俺は『最強の魔法使い』でもあるんだぞ!!」


「ッ!?そうでしたね。忘れていました。」


幽霊の言葉を聞き、「その当主は己のコンプレックスを隠すため、家族や街の人達に『自分は最強の能力を持った魔法使いだ』と言い回っていたんだ。」という、ギイルの言葉を思い出した。


「さぁさぁ、勝負はこれからだァ!!」


「望むところです!!」


双方の叫声と共に、戦闘がより激化する。


黄金の稲妻と漆黒の稲妻は、互いに空間を切り裂きながら駆け回る。


肉弾戦も交えつつ、目にも止まらぬ速さで、両者共に一歩も引かない激闘を繰り広げていた。


〈神ノ審判:第三審サードインスタンス『削除』〉


アラスターはもう一段階ギアを上げ、技を発動する。


アラスターから放たれる光は、空間を飲み込み、領域内が白飛びした。


「ぐぅッ!?こ、小癪なぁ!」


幽霊がその光に触れると、ジュ~っと音を立てて身が焼かれる。


幽霊の中にあった人々の念が、みるみる浄化されていく。


だが、幽霊も負けじと力を振り絞り、


「念操魔法。」〈希望侵蝕ホープイーター


と、技を発動させ、白い世界を再び黒く塗り替えた。


「ふぅ、今のは危なかった。力の大半が削ぎ落とされてしまったぞ。」


「これでもまだ祓えないのですか。」


幽霊のあまりの耐久力に、アラスターは内心焦り始める。


アラスターの使う〈神ノ審判〉は、執行魔法の最上位能力の一つで、これが効かないとなると、いよいよ後が無くなってしまうからだ。


「はぁ...皆さん。衝撃に備えてください。」


追い込まれたアラスターは、みんなにそう告げると、


「それでは、少々手荒く行きますよ。」


と、攻撃の構えをとった。


〈神ノ審判:最終審判ドゥームズデイ『終焉』〉


そして、アラスターが最終奥義を放ったその瞬間、世界は光に包まれた。


「ぐっ...ぐァ”ァ”ァ”ァ”ァ”!!!」


幽霊の異様な雄叫びが、領域内に響き渡る。


音すら飲み込む聖なる光は闇を浄化し、幽霊の抵抗虚しく領域を白く塗りつぶしていった――。




「...疲労を感じたのは何億年ぶりでしょうか。」


聖なる光が消え視界が開けると、幽霊は消え、領域は元の城に戻っていた。


「や、やりましたね!アラスター様!」


「えぇ、何とか勝てたようですね。」


〈穢れなき聖域〉の中にいた5人は、幽霊が消えたことに安堵の表情を浮かべた。


アラスターは5人の元へ向かう。


アラスターの表情も少し穏やかになっていた――だが、その時だった。


「「ッ!?」」


突如、禍々しい気配が再び現れ、みんなの背筋がゾゾッとした。


「...有り得ません。」


アラスターが振り返った目線の先にあったのは、禍々しいオーラを放ちながら宙に浮かぶ1つの水晶だった。


「じゅ、呪物が...」


やがて呪物の周りに念が渦巻き、再び人の形を取り始める。


「ふぅ、危ない危ない。」


そう呑気なことを言う幽霊の前で、何が起きたのか飲み込めない6人は固まってしまった。


「フフフ、良いねぇ...良いよその表情ォ!!素晴らしい...素晴らしいぞ!!」


「どう、やって...?」


「あぁ、いい事を教えてやるよ。俺のエネルギー源である呪物『神核デウスコア』は、元々周囲に渦巻く負の念を取り込み、バグの発生を抑制させるための物だ。


だが今は俺のコアと融合し、俺はこの呪物に取り込まれた念をエネルギーに活動している。」


幽霊は呪物の説明しながら、不気味に微笑む。


「ま、まさか!?」


「そう、お前達が俺に対して抱く感情――恐怖、怒り、憎悪、焦燥、絶望。それらの負の念を抱いた時点で、俺には勝てないってことだ。」


その言葉を聞き、5人の表情が一気に曇った。


「ほら、そこの下級隊士ども。お前達が絶望すればするほど、こいつの敗北は確実なものとなるぞ。」


「...」


5人は言葉を失ってしまった。


頭ではダメだと理解しているのに、絶望が止まらない。恐怖が収まらない。


沈黙が、城内を支配した。5人の胸に渦巻く感情――恐怖。焦燥。敗北感。


(まずいですね。神核――ワタクシの攻撃ですら干渉できなかった禁忌級呪物。)


アラスターは即座に悟った。


(領域が消えたのにも関わらず、未だに連絡が取れません。このお城自体が領域となったのでしょうか?今の私に5人を逃がすだけの力が残っているでしょうか?)


「どうした?さっきまでの威勢はどこへ行ったのだ?」


幽霊が嗤う。神核は、不気味な鼓動を打ちながら、より強く輝き始めていた。


その時、


「アラスター様。」


震えた声で、ヴィジが口を開いた。


「この呪物..."負の念を取り込む"って言いましたよね。」


「...ええ。」


「逆に言えば、正の念なら反発するか対消滅を起こすんじゃないでしょうか?」


一瞬、空気が止まる。アラスターの目が、僅かに見開かれた。


「僕の『霊力支配オーラインペリウム』は、神力しんりょくを霊力、特に正の念に変え、自由に操るというもの。つまり、ヤツと全く正反対の能力です。」


「そ、そんなことできんのか!?」


「でもそれって、かなり危なくないかしら?」


レイはヴィジの作戦を聞いて驚き、フラクタは懸念を示した。


「確かに、盲点でした。やってみる価値はあるかもしれません。」


だが、アラスターはその作戦に同意する。


「ネリンさんにも、協力して欲しい。」


ヴィジはネリンに視線を移す。


「わかったわ。」


ネリンの『サイコキネシス』も、神力を念に変え、それを"手"として扱う能力であるため、神核にも干渉できる可能性がある。


そしてヴィジとネリンは、幽霊の方にそっと手をかざす。


「ネリンさん。」


「えぇ。」


2人はそっと息を吐く。その瞳に、恐怖はない。


「ほう?下級隊士の分際で、一体何をすると言うんだ?」


「今から...お前の核を封じる!いくよ!」〈霊縛れいばく


「まかせて!」〈聖なる手(ホーリーハンド)


「「合体技!!」」〈〈聖なる禁縛ディバインプロヒビジョン〉〉


2人が技を発動させると、七色の光の渦が神核へと吸い込まれていった。


2人のの周囲に、澄んだ光が広がる。


それは恐怖ではない。怒りでもない。守りたいという意志。信じるという覚悟。


それらの正の念が、2人の力によって一本の"流れ"となり、神核へと逆流した。


「なッ!?何だこれは!?」


神核が、悲鳴のような共鳴音を上げる。


「ぐォォォォ!!力が...力が打ち消される!」


「き、効いています!」


攻撃は確かに効いている。だが、幽霊もかなりしぶとい。


「雑魚のくせに、生意気なぁ!!」


「ぐッ!!」「きゃぁ!!」


「呪詛!?」


核を封じられて尚、幽霊は呪詛返しをしてくる。


「速攻で終わらせます。執行魔法。」〈神天罰降臨アドベントオブパニッシュメント


「させるかァ!!」


アラスターの一撃は、幽霊の漆黒の手によって防がれる。


「まだこれ程の余力が!?」


「例え核が封じられたとしても、器である俺自体が最強なんだよォ!!」


幽霊はそう叫ぶと、とてつもない力でアラスターを殴り飛ばした。


「ハッ!?しまっ――ぐはッ!!」


アラスターは、ドゴォン!!という轟音と共に、後方の壁に激突する。


「あ、アラスター様!?」


ウェントが声を上げると、ヴィジとネリンに流れ込んでくる呪詛が多くなった。


「や、やばい...もう限界だぁ...」


「クハハハハ、どうだ?お前達が負の感情を抱く程、俺の呪詛は強くなる。お前達が死ぬのも時間の問題だなぁ。」


幽霊の笑みは、みんなを恐怖に陥れる。


負の念を孕んだ神核が、1人不気味に輝いていた。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


ヴィジ〈神ノ加護:霊力支配〉:今作の主人公


レイ〈神ノ加護:神線〉:陽気な性格。意外とまじめ。


フラクタ〈神ノ加護:波動〉:穏やかな性格をしている。


ウェント〈神ノ加護:炎魔法〉:優しい性格の持ち主。頭が良く、判断力に優れている。


ネリン〈神ノ加護:サイコキネシス〉:天真爛漫で活発な性格の女の子。頭はあまりよろしくないが、攻撃力はピカイチ。


アラスター:地界第七階層の主地者であり、モートの側近。とても真面目な性格をしている。

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