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回帰○(リターン・ゼロ)~平凡な俺の前世が『神』だった~【神話編】  作者: トランス☆ミル
第五章 恐怖の根源編

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第36話 お化け屋敷

ギイルの元を去り、再び城へ向かうプリムンズとアラスター。


「...やっぱり、何度見ても気味が悪いですね。」


嫌に綺麗な城門を前に、レイが呟く。


昼間だというのに空はどんよりと曇り、城の周囲だけが切り取られたかのように暗い。


「周囲の基底プログラムが歪んでいますね。」


アラスターが静かに告げる。


「全員、油断は禁物ですよ。」


そして、アラスターの号令で、一行は城内へ足を踏み入れた。


「うわぁ、不気味だなぁ。」


城の中は相変わらず暗くて不気味だ。


「アラスター様。他の隊士は連れてこないんですか?」


中を進み始めると、フラクタが質問をする。それに対し、アラスターは少し低いトーンで話し始めた。


「えぇ、元々ワタクシ一人で行く予定でしたので。と言うのも、ここにいる幽霊ゴーストχ(カイ)級、つまりワタクシと同レベルの力を持っている可能性があるため、言葉を悪くすると不要な人員は足手まといになります。」


「じゃあ、私達も...」


「まぁ、本来なら連れてくるべきではありませんでした。しかし、命令ならば従うしかありません。ミル様は何か知っているのでしょうか...」


アラスターが少し歩みを止めて、考えていると、


「モート様がこの件に動いてくれることはないんですか?モート様の力なら一瞬で解決するはず...それにミル様が言っていた、『俺は手を出せる』ってどういうことでしょうか?」


と、レイがアラスターに疑問を投げかけた。アラスターは少し戸惑いつつ、丁寧に答え始める。


「自国の王が、自ら戦の前線に経つことは滅多にないでしょう。それと同じです。


それに加え、大君主の力を借りる程ではありません。大君主の力は絶大です。例えるなら、ナイフを持った子供に対して、戦車などの兵器を有した軍隊を派遣する様なものです。要するに過剰戦力になりますね。


ミル様に関してはあの性格なので、あまり気にしていないのではないでしょうか?」


どこか言い訳の様に聞こえるセリフだが、純粋な5人は、


「なるほど...」


と、話を受け入れた。


そんなやり取りをしながら、調査を再開する。




「ここの上ですね。」


2階層まで上り終えると、アラスターは3階を見上げる。


「皆さん覚悟はいいですね?」


「「...はい。」」


そして、意を決して階段の一段目に足を運んだ――その瞬間。


空気が、ぐにゃりと歪んだ。


「...ッ!?」


視界が一瞬、白く反転する。足元の感覚が消え、内臓が持ち上げられるような浮遊感。


「これは...!?」


アラスターが叫ぶより早く、壁、天井、床が一斉に"裏返った"。


歪む視界。襲いかかる圧倒的不快感。


「な...何が...」


そして次の瞬間、みんなは見知らぬ空間に立っていた。


「...ここ、城の中...じゃない?」


目の前に広がるのは、歪んだ廊下、左右非対称の壁、感覚を狂わせる床。


霊界領域スピリットドメイン...!」


それを見たアラスターが、驚いた声を出す。


「危険です!ここは幽霊が作り出した異空間です!やはり一度退散しましょう。」


アラスターの指示でみんなは端末を操作する。


だが――


「...あれ?反応が...」


「転移できない!?」


「あ、アラスター様。転移装置が使用不能です。」


その場の空気が、一段重くなる。


「なるほど...つまり、幽霊を倒さなければ帰ることができないと言う訳ですか。」


「それって、やばくないですか?」


「えぇ、かなりやばいですね。こんな空間を作り出すなんて、正直ここまでの幽霊には会ったことがありません。皆さんを守りきれるかどうか...」


経験豊富な主地者ドミニオンデーモンのアラスターですら警戒するその様子が、ここにいる幽霊の異常さを表している。


アラスターのそんな一言に、5人は絶望した。


そんな5人に追い打ちをかけるように、空間の奥で、何かが立ち上がる。


床から現れた一つの巨大な影が、人の形作っていく。全身が黒く、顔に沢山の目が無秩序に付いている、不気味な姿だ。


「...来ます!皆さんさがって!!」


そして、アラスターの叫びと同時に、影が空間ごと押し潰すように襲いかかる。


反射的に動く5人。


「執行魔法――」〈絶対的拒絶アブソリュートリジェクション


幽霊が攻撃を仕掛けると、アラスターが発動した赤黒い魔法陣に防がれ、物凄い音と衝撃が空間内に広がった。


「くっ、重い!!執行魔法。」〈神天罰降臨アドベントオブパニッシュメント


アラスターは攻撃を防ぐと、すぐさま技を発動する。


とてつもない数の雷が幽霊を襲い、弾き飛ばす。


「穢れの拒絶。至高の救済。」〈穢れなき聖域(ホーリードメイン)


続けてアラスターが詠唱と共に技を発動させると、5人の下に魔法陣が展開され、5人をバリアが覆った。


「皆さん、そこから絶対に出ないでください!」


「わ、わかりました。」


アラスターは5人にそう告げると、ズズッと魔法の杖を取り出す。先に天秤のような装飾がついている。


アラスターが杖を構えたその瞬間、影が笑った。


「――抗うのか。」


低く、体の芯(・・・)に直接響く様な、嫌に人間らしい声。


「幽霊が、喋った?」


それを聞いた5人は、声を震わせてそう呟く。


「何を驚いている。私の本質は人の鏡写しの存在。言葉を話せて当然だ。」


「影霊は、強さに関係なくコミュニケーションの取れる唯一の幽霊。なので、言葉を話せるから強いというわけではありません。ですが、アレは言葉を話せる話せないの次元をとうに超えている。」


幽霊の言葉に、アラスターも補足説明を加える。それを聞いたみんなは、納得した。


幽霊は本来強くなるほど、人に近くなり言葉を話す。それは強大な念を受けた幽霊ほど、より"完全に近い状態"で復元されてしまうからだ。


「厄介ですね...」


両者の間に緊張が走る。


そして、


ドミニオンが来るのは想定外だったが、まぁ良い。6人まとめて無に返してやる!」


と、幽霊が叫ぶとともに、幽霊の背後から6つの黒く大きな手が出現した。


「こちらこそ、全力で祓います。」


アラスターもそう言って戦闘態勢をとると、黒い手がとんでもない速度で迫ってきた。


「速いッ!!」


空間を裂きながら迫ってくる一撃を、アラスターはなんとかかわした。空間内には、轟音と衝撃が響き渡る。


「空間そのものを削っている...」


霊界領域は幽霊の念によって生み出される副次効果的なもので、実際そこまで危険なものではない。


しかし、この領域の中では、物理法則すら幽霊側に傾いている。


「執行魔法――」〈神律執行ディヴァインロウ


それに気づいたアラスターが技を発動すると、杖の天秤が傾き、金色の魔法陣が幾重にも展開された。


仄暗い空間に微かな光が生じ、幽霊の動きが一瞬だけ鈍る。


「ほう...この領域の特殊効果を相殺するか。」


「あなたの好きにはさせません。」


続いてアラスターは地を蹴り、目にも止まらぬ速さで一気に距離を詰める。


〈神天罰降臨〉


そして黄金の雷が一点に収束し、槍の形を取って幽霊の胸部を貫いた。


だが――


「なッ...!」


雷槍は幽霊の体を突き抜け、霧散した。


傷はグリッチと共に揺らぎ、やがて再生する。


「私を構成するのは"個"ではない。」


幽霊は宙に舞い上がり、ゆっくりと腕を広げる。


「殺された者、憎んだ者、恐れた者...怒り、悲しみ、憐れみ。約1億年間私に向けられた負の念、その全てだ。」


8本、10本――空間を埋め尽くす異形の腕。そして、廊下のようだった空間が、とてつもなく広い神殿のような空間に変わった。


「...やはり、集合的念核霊体コレクティブコアスピリット。」


アラスターはそう言うと、


「執行魔法――」〈裁断〉


と、技を発動した。アラスターが杖を振ると、無数の白銀の斬撃が放たれる。


斬撃は幽霊の腕を数本切断し、空間に悲鳴のようなノイズが走った。


効いているようだが、切断された腕は床に落ちる前に霧へと変わり、次の瞬間、別の位置から再生した。


(再生が速すぎる...!)


「無駄だ、祓魔師よ。」


その言葉と同時に、空間の歪みがアラスターを襲う。


「くっ...!」


アラスターは防御魔法を重ねがけしながら後退する。


その背後で、〈穢れなき聖域〉の中にいる5人が息を呑んで見守っていた。


(まずいですね...)


アラスターは内心で焦る。


(このままでは、削り負けてしまう。そもそも器の影霊と地縛霊だけで相当強いのに、禁忌級の呪物まで持っているなんて...封印すら不可能ですね。)


アラスターがそう考えていると、幽霊が一歩踏み出す。


そして、


「理解したか?ここは、私の"家"だ。」


と言った次の瞬間、黒い手が一斉にアラスターへと殺到した。


「――ッ!!」


アラスターは全力で跳躍し、〈神律執行〉と〈絶対的拒絶〉を同時展開する。


轟音。衝撃。アラスターの視界が一瞬白く弾けた。


着地したアラスターの肩からは、神液が一筋流れている。


「あ、アラスター様に傷を!?」


「主って、怪我を負うのか...?」


その信じられない光景に、5人は唖然とした。


「...掠った、だけ...?」


だが、その一撃で、防御が一段階削られたのを、アラスター自身が一番よく分かっていた。


幽霊は、確信に満ちた声で告げる。


「良い。実に良い。だが――君一人では、私には勝てない。」


アラスターは静かに息を整え、杖を握り直す。


「ふぅ...」


限りない絶望が、その場の6人をそっと蝕んでいった。


少しでも、


「面白い!」「展開が気になる!」


と思ったら、ぜひ☆☆☆☆☆評価、感想で応援お願いします。


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〈主な登場人物〉


ヴィジ〈神ノ加護:霊力支配〉:今作の主人公


レイ〈神ノ加護:神線〉:陽気な性格。意外とまじめ。


フラクタ〈神ノ加護:波動〉:穏やかな性格をしている。


ウェント〈神ノ加護:炎魔法〉:優しい性格の持ち主。頭が良く、判断力に優れている。


ネリン〈神ノ加護:サイコキネシス〉:天真爛漫で活発な性格の女の子。頭はあまりよろしくないが、攻撃力はピカイチ。


アラスター:地界第七階層の主地者であり、モートの側近。とても真面目な性格をしている。

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