第23話 祓魔師総合親善大会
10月13日。今日は待ちに待った親善大会当日だ。多くの観客と選手で会場はとても賑わっている。
「すごい人だねぇ。」
「OBとかも集まってるからな。」
話しながら入口まで歩いていくと、
「おーい、久しぶりー!!」
と、どこか聞き覚えのある声がした。見るとそこには黄金色の隊服をきたサーガ達が手を振っていた。
「おぉ、第七階層の!!それにザイオン様!」
「アストラさんにミカさん!!」
「久しぶりフラクタちゃん。それにネリンちゃんも。」
5人はすぐに駆け寄って色々と話し始めた。
「合宿以来だね。」
「そうだなヴィジ。君達も選手に選ばれたんだな。」
「当然だぜ!」
レイは胸をドンと叩く。
「ミカ達が選ばれるなんて思ってもいなかったんだよ。」
「そうね。ところで...そのアストラちゃんの後ろにいるのは誰?確か、バトロワは5人チームだからその子も選手なのね。」
ネリンはアストラの後ろにいる女の子が気になり質問した。なんだか隠れるようにアストラの後ろに立っている。だいぶ年下の様だ。
「あぁ、そうだったわね。合宿は休んでたから懇親会にも参加してなかったのか。ほら自己紹介しな。」
「え、えぇ〜と〜。わ、私の名前はシルム。よ、よろしくお願いします。」
アストラに催促され、シルムはオドオドしながらも自己紹介をする。
「シルムは人見知りなんだよ。仲良くしてあげて!」
「あぁ、もちろんだ。」
「こちらこそ、よろしくね!」
みんなの話が終わると、会場内に足を踏み入れた。
観客席に登ると、そこにはとても広いフィールドと、その周りに大勢の観客が座っている。
雲一つない綺麗な青空に、選手達の闘志に燃えた瞳。5人はここが戦場なんだと強く感じた。
「結構早くから人来てますね。」
「この観客席を15等分してる柵は、その階層専用ってことかな?下にある入退場口も15個あるし。」
「みてみて!各階層の指定席の上にVIP席みたいなのが上についてるよ!」
5人は初めて見る本格的な闘技場にワクワクしている。
「あのVIP席は本来大君主とその側近の席なんだが、今回はお前達が主役と言うことで、他のチームの競技があってる時はここで観戦するといい。」
「ほ、本当ですか!?」
「ありがとうございます!!」
「さっ、気合いも入ったことだし、さっさと選手待機室に行くぞ。」
「「はい!」」
そして、ミルに言われてみんなは待機室へと向かった――。
零階層選手用の待機室に着くと、今日の日程の確認や準備を進める。
「しっかり選手用のバッジもつけたな。」
「「はい!」」
「それじゃあ、いよいよ開会式だな。あとは頑張れよ!」
ミルとダクラに送り出され、5人は入場口まで歩いていく。
「いよいよだね。」
「...うん。」
5人は深く深呼吸をする。
そして一時の静寂が流れ、ついに、
「さぁみなさん、大変長らくお待たせしましたぁ!!いよいよ4年に一度の祓魔師総合親善大会が始まります!!」
と、アナウンスが流れ始めた。
「それでは選手の入場です!!まずは天界から。
はじめに第一階層『慈悲』より、アルマ軍代表のみなさんです!!」
選手入場が始まると、会場が揺れるような歓声に包まれた。先頭が隊服と同じ色に、階層の神系象徴が描かれた旗を掲げて入場している。
「うわ~、始まっちゃったよぉ~。」
「武者震いするわね...」
その堂々たる姿は、これから戦いに向かう戦士のごとく輝いて見える。
5人の緊張もより一層高まり、それと同時に胸の高鳴りを見せていた。
「さぁ、天界の代表が出揃いました!!次は地界から――。」
「一応俺達も天界のくくり何だけど...」
「どうやら僕達が最後みたいだね。」
次々に選手が入場し、徐々に自分達の番が近づいてくる。
そして、
「さぁ、続いては第七階層『傲慢』より、あの『最恐』の大君主率いる、モート軍代表の入場です!!」
と、自分達の前の代表が呼ばれ、ついにミル軍の番になった。
みんなはフゥーっと深呼吸をする。
「さぁ、地界の代表も出揃いました!!
そして最後に。常世零階層より、未だ謎めいた存在、ミル軍代表の入場です!!」
「よし、いくぞ!!」
じゃんけんで負けたレイが先頭に立ち、何も描かれていない真っ白な旗を高く掲げて入場した。
5人が入場すると、そこには壮大な景色が広がっていた。
大きな闘技場の周りにほぼ満杯の観客。代表選手を称える歓声と拍手。今まで味わったことの無い、まさにヒーローになったような気分だ。
大勢の人が応援してくれていることに5人は安心し、堂々と行進を続けた。
各階層の代表選手が全員真ん中に集まり、整列が済むと、大会実行委員長が前の舞台に立って挨拶を始めた。
「本日はお忙しい中、お集まりいただき誠にありがとうございます。本大会の歴史は浅く、神話である『大君主親善大会』に倣い、革命戦争後から始まって今年で第18億4278万1503回目になります。
今年は下級隊士のみの参加ということで、入隊して1000年も経っていない初々しき皆さんの勇姿を見られることを、心から願っております。」
「開催しすぎじゃない?」
「あぁ、俺もそう思う。せめて4百年に一回とかにすればいいのに...」
開催回数の頭の悪そうな数字に、ヴィジとレイはヒソヒソとツッコミを入れる。
そして、
「それではこれより、祓魔師総合親善大会を開会いたします。」
と、開会の挨拶が終わり、会場は熱狂の渦に飲み込まれていった。
「オッホン。それでは次に競技の説明に移りたいと思います。」
みんなが静まると、今度は競技について説明し始めた。
「さぁ、まずはこちらをご覧下さい。」
そう言って指をパチンと鳴らすと、頭上に巨大な映像が映し出された。
どうやらルールが書いてあるようだ。
【大会1日目】
〈〈競技内容〉〉:魔物の森、魔水晶バトルロワイヤル
技術と能力で作られた、魔物が生息する異空間で行われる新感覚バトルロワイヤル。
〈ルール〉
・それぞれ1人ずつに魔水晶が配られるので、それを敵や魔物から守り抜く。
・水晶をチーム全員分割られると敗北。相手の水晶を割ったり、フィールド内にいる魔物を倒したりするとポイントゲット。
・時間経過で『安全地帯』がどんどん狭まってくる。安全地帯の外には魔法結界、通称『ゾーン』が広がっており、その中に入ると約10秒程で魔水晶が破壊される。完全に閉じきるのは開始から30分後。
・魔水晶は常に肌身離さず。持ち主から5m以上離れると30秒程で崩壊する。
・最後まで残った1チームが勝利。
・各試合の1位+総合ポイントが上位3チームを除いて1位の4チームのみが明日の決勝へと駒を進める。
・選手への過度な攻撃は厳禁。その他審判が失格とみなしたものは即退場。
「ルールは簡単で、最後まで生き残れば勝利。予選は5チームずつ試合に参加してもらい、計3試合行われます。」
実行委員長はルールの解説をする。そして、
「各試合の組み合わせはこちらです。」
と、今度は組み合わせが表示された。
どうやらヴィジ達は2試合目みたいだ。
「以上で開会式及び競技説明を終わりたいと思います。」
無事に開会式も終わり、5人は観客席へと戻る。
「おかえり!堂々としたレイの顔。かっこよかったぞ!」
「ありがとうございます、ミル様!」
「それにみんなもいい表情だ。」
ミルはそう言うとニコッと笑う。
5人は席に着くと、窓から会場の様子を見た。下には1試合目に出場するため残った選手達が待機している。
みんなの表情は闘志に燃え、身体からはオーラが溢れ出ているのを感じる。
「開催される競技はローテーションだから、バトロワを見るのは久しぶりだよ。」
「あぁ、そうだな。俺バトロワが1番好きだったんだ!それに自分が出場することになるなんて!」
「アタシもバトロワはやってみたかったのよ。だって森では私の能力を存分に発揮できるもの。」
「絶対に優勝しましょ!」
「そうだね!」
その姿を見て、5人にもスイッチが入ったようだ。
しばらくして試合の準備が整うと、闘技場の真ん中にゴゴゴゴゴ...っと巨大な扉が出現した。
「試合開始の前に、ルールには書いていない補足説明をしておく。まず、ゾーンが収縮すると同時に、出現する魔物の階級が上がっていくから油断しないこと。そして、魔水晶が割られなくても続行不能状態に陥った場合や敗北した場合、最悪死亡した場合はこの扉の前に無傷の状態で強制転移させられるから安心するように。
無論、必要以上な過度な攻撃などルールに反した場合も失格とみなし、即強制転移だ。」
実行委員長が注意事項を述べる。
「最後に、その水晶は魔物をおびき寄せる効果がある。それに水晶の魔力は包み隠せないのでご注意を。」
そして、委員長の話が終わると扉が開き、選手たちが中へ入っていく。
最後の選手が中に入ると扉が閉まり、上に中の様子を中継した映像が映し出された。
どうやら中に入るとランダムな場所に転送される様だ。
「さぁさぁ、いよいよ第一試合が始まります!!実況は放送委員のマリンと――。」
「ルミナがお送りしまーす!!」
実況も始まり、会場は盛り上がりを見せている。
階層同士の熱き闘いが、いま幕を開ける――。
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〈主な登場人物〉
ヴィジ〈神ノ加護:霊力支配〉:今作の主人公
レイ〈神ノ加護:神線〉:陽気な性格。意外とまじめ。
フラクタ〈神ノ加護:波動〉:穏やかな性格をしている。
ウェント〈神ノ加護:炎魔法〉:優しい性格の持ち主。頭が良く、判断力に優れている。
ネリン〈神ノ加護:サイコキネシス〉:天真爛漫で活発な性格の女の子。頭はあまりよろしくないが、攻撃力はピカイチ。
ダクラ:大君主の側近、主の称号を持つ。真面目な性格。
ミル:常世零階層を統べる大君主。厨二病でお調子者。とても寛大。




