第13話 戦いとその後
アレスと対峙するダクラ。
「行くぞ!」
――ダンッ!!
地面が割れるほどの踏み込みで、ダクラは一瞬にして500m程離れた場所にいたアレスの元に移動し、一撃をくらわせる。拳には黒い渦のようなものが纏わりついている。
――ゴォォォン!!!
衝撃がカローラ達にまで伝わってくる程の威力だ。
「は、速い!」
「なんて力……」
空間に暗黒のエネルギーがほとばしり、空気が震える。
他の隊士達はその戦いに釘付けだ。
「流石に硬いなぁ、生半可な一撃じゃ傷一つつかないか。ならば――」〈闇黒滅死・斬〉
ダクラは浮遊しながら、今度は鋭い闇の刃でアレスの腕を切り落とした。
しかし、ズズンっと落ちた腕は即座にグリッチと共に消え、新しい腕が生えてくる。
そしてアレスも負けじと反撃をする。
口から砲撃を出したり、目からビームを出したり、エネルギー弾を打ってきたり多彩だ。
全ての攻撃が、街一つ破壊するほどの威力。
「アイツの体事態エネルギーの塊みたいなもんだ。ただのパンチでも相当な威力だな」
ダクラもやる気全開の様子。
「いつまで持つかな」〈闇黒炎〉〈闇黒滅死・爆〉
アレスの攻撃も凄いが、ダクラの激しい攻撃はもっと凄い威力だ。
黒い炎と凄まじい爆発に、アレスはボロボロになるも、グリッチと共にすぐに回復し反撃をする。
ダクラは敢えて攻撃は避けずに、全て受け止めている。
しかし、どれだけ反撃してもダクラには1ダメージも入っていない。無傷のままだ。
「あんなに攻撃を食らってるのに……」
「ダクラ様の能力って一体……」
ダクラの強さに、みんな釘付けになる。
「そっか、お前らは新人だから知らないのか」
そんな中、ヴィジ達の問いかけにカローラが答え始めた。
「ダクラ様の神ノ加護は『闇黒』。闇を操る能力だ」
「闇を……操る?」
「闇は全てを無に返す。物理攻撃どころか精神操作系の能力も無に返され通用しない。闇は全てを破滅に導く。闇の形は暗闇だけでは無い。人の闇、社会の闇、この世の闇。恐怖、トラウマ……死。あらゆる破滅の形を再現し敵を闇に葬る。それがミル軍の主天者ダクラの能力だ」
カローラの説明に5人は目を丸くする。ダクラの能力が5人の想像の遥か上をいっていたからだ。
5人は主の称号の恐ろしさを身をもって理解した。
一方で、ダクラ達の戦闘は終わろうとしていた。
「やっぱり核を破壊しないと無駄かぁ。はぁ、気が引けるけど見せしめとしてはちょうどいい。ミル様直伝の超大技。出力を必要最小限に抑えて放つ。使わせてもらうぞ……」
ダクラはそう言うと、瞬時にアレスの懐に潜り込む。
そして、胸の前でエネルギーを溜め、
「くらえ――」〈闇超新星〉
と、攻撃を放った。
――パァァァ……
その瞬間、暗く輝いた光が辺りを包んだ。音すら飲み込んだ闇の光は辺りを暗く照らす。
暗いのに眩しい。隊士達は咄嗟に目を瞑った。
ダクラは隊士達の前に移動し、被害が出ないようガードする。
「い、今のは……」
攻撃が終わり、みんなが目を開けると、目の前には崖ができていた。
よく見てみると半径3km、底が見えない程の巨大なクレーターができている。みんなはアングリと口と目をかっぴらいて固まってしまった。
「ハハッ、壮観だな。事後処理はミル様に任せるか。さて、みんな帰るぞ」
ダクラはそれを見て、軽口を叩く。
その声にみんなは正気を取り戻し、頭を下げた。
「あ、ありがとうございました、ダクラ様!! 部隊の指揮官でありながら、お手を煩わせてしまったこと深くお詫び申し上げます」
カローラが代表し、感謝を述べる。
「いいって、それに他のところも終わったみたいだしな」
「えっ?」
カローラが端末を確認すると、無事アレスを2体とも討伐できたと報告が入っていた。
「はぁ、良かった〜!」
「よし、これにて一件落着だーー!」
みんなは安心し、喜びあっている。ヴィジ達もホッと胸をなで下ろした。
こうして、最悪の大厄災を無事に跳ね除け、みんなで本部へと帰還するのであった。
翌日。合宿5日目。アレスとの戦闘から一夜明け、今日は緊急報告会が開かれた。隊士達は本部にあるホールに向かう。
「昨日の光景が未だに信じられないぜ。あの後、ダクラ様は何事も無かったかのようにミル様の元へ帰っていったし」
「ホントだよ。これからは僕達、ダクラ様に逆らわないようにしないと」
「そ、そうだね」
ホールに向かう途中の廊下で、零階層組の5人で話していると、
「おぉ、お前達!」
と、後ろからカローラが話しかけてきた。
「カローラさん! あれ、部隊のみんなはどこです?」
「あぁ、各部隊からは代表として権や力、能など上級隊士が来ることになってるんだ。君たち合宿組はちょうど本部にいたからついでに呼ばれたんだね」
「そうですか。その……怪我などは大丈夫ですか?」
「心配ないよ。軍には回復の能力者もいるんだし。それに、俺達の部隊は全員下級だから敵の少ないあの場所に送られたのに、主の、それも他軍の隊士の手を煩わせてしまった……もちろん君達も。迷惑かけてばかりだ」
カローラは感情をグッとこらえ、静かにそう言った。
「だから、俺ももっと強くならないとなー。じゃあまたな!」
そして明るく取り繕ってさっさとホールに向かっていった。5人はあぁ……と心中を察して見つめている。
それからしばらくして、みんながホールに集まると緊急報告会が始まった。前にはミルとザイオンが立っている。
「はいはーい、みんなちゅうもーく」
ミルがパンパンと手を叩き注意を引く。そしてザイオンが資料を見せながら話し始めた。
「じゃあ、話を始めるよ。まず戦争についてだけど、2国間に不可侵条約を結ばせたからこの件は問題無し。問題なのは戦争意志『アレス』の発生についてだ。最終発生は革命の時代末期、約74億年振りの復活だけどおかしな点がいくつかある。
1つ目は大規模な戦争でないにもかかわらず発生したこと。まだ研究段階ではあるもののこの条件下での発生はまずありえない。しかも階級もΦ級上位としっかり規模が大きかった。
2つ目は複数体同時に発生したこと。これは言わずもがなだね。
そして3つ目。僕達が発生の予兆を確認できなかったこと。バグが発生する場合、その場がグリッチなどによって不安定になるんだ。これは本来非常に微弱だけどここまでの規模になると容易に観測できる。バグの規模によるけどアレス級ならだいたい3日前から予兆が発生する」
ザイオンの説明に、ミルも続く。
「つまり俺達は自然発生ではなく、何者かが故意に発生させた可能性があると考えている」
「「!?」」
低く重い声。それを聞いた隊士達は、あり得ないと顔を見合わせた。
「そ、そんなことあり得るんですか!? もし本当なら、我々のような上位階級天地者レベルが数十人規模で関わっているということになりますよ」
その場にいる各部隊の代表は混乱した。それほど今回の事態は異例たったのだ。
「今回アレスと戦闘したスパルームとアンタナ、ダクラくんからは特に違和感がなかったと聞いている。だがそれがおかしいんだ。強い念の放出が観測されたのは2国のみ。何者かが念を供給、増幅してないと辻褄が合わない」
「じゃあ、その何者かって一体……」
「今の段階では見当もつかないね。だから今回は報告だけだ。捜査は研究班に任せるとして、この話は終わりだな」
「え、それだけ……てかこの話『は』?」
みんながざわざわしていると、ザイオンが一呼吸置いて話を再開した。
「ちょうど全部隊の代表がいることだしついでに話しておこうと思ったんだけど、今から約1ヶ月後に親善大会があるでしょ。その親善大会なんだけど、毎回色んな種目をやる中、今回は下級隊士のバトルロワイヤルと一騎討ちちトーナメントのみになった。理由は――」
「「えーーー!?」」
理由を話す前にみんな騒ぎ出した。特に上級隊士が。
「な、何でですか! あの必要以上の地獄の訓練の意味はーー!!」
「俺達の神液を吐くような努力は無駄だったのかーー!!」
「死んだ方がマシだと思った私達の日々はーー!!」
上級隊士達は立ち上がり、怒号を浴びせている。
「そ、そんなに……」
「上級隊士も大変なんだな……」
「アタシ達のがまだマシに思えるわ……」
上級隊士の悲痛な叫びに、ヴィジ達は引いている。
「ざ、ザイオン様も結構スパルタなんですね」
「いや僕じゃないよ。ここにいるミルと、天界第六階層の大君主ロウの仕業だ」
「へっ!? ロウ様ってあの、大君主四天王の第三柱、『最狂』のロウ様ですか!?」
「そう。あの人とミルは混ぜるな危険。僕といる時と違って、やばい人×やばい人だから、巻き込まれた隊士達は君たちの比にならない程の地獄を見たはずだよ」
「なんか……同情します」
レイは上級隊士の方に視線を向け、哀れみの感情を向ける。
下級隊士組は、その話を聞いて上級隊士達が少し可哀想になってきた。
やがて、ミルがビリビリッとグリッチの様な強烈なオーラを一瞬放ち、みんなを静かにさせる。
「人の話は最後まで聞きましょう」
「「は、はい」」
そのオーラに畏怖されて、上級隊士は静まり返った。
ザイオンはコホンと咳払いをし、話を続ける。
「続けていいかな。で、そうなった理由は、親善大会の翌日に『大君主親善大会』を開催することにしたからだ」
「え? いまなんて??」
その言葉に隊士達は耳を疑った。
「大君主親善大会だ」
「「……」」
隊士達はシーンとして、固まってしまった。
「おい。うんとかすんとか、なんか反応しろ」
「「すん」」
みんなが固まった中、
「あ、あの~。大君主親善大会って具体的にどんなやつですか?」
と、唯一生き残っていたヴィジが質問をする。
「ああそっか。お前は知らないか。まっ、かく言う俺もよく知らない」
「え?」
「大君主親善大会が最後に開催されたのは神話の時代中期。ミルが大君主になったのは神話の時代の末期だからあんまりわかってないんだよ。
簡単に説明すると大君主同士の一騎討ちトーナメントだね。出場は志願者のみで最低4人集まらないと開催しないから不定期開催だったんだ。まぁ革命の時代は忙しかったから、親善大会の話をしたの自体超久しぶりだったけどね」
「へぇ〜」
ヴィジとザイオンがそんなやり取りをしていると、
「「うぉーーー!!」」
と、いきなり隊士達が息を吹き返した。
「あ、あの伝説の聖戦を、自分の目で見れる日が来るなんて!」
「生きてて良かったぁ〜!!」
「そういうことなら、僕達の努力も報われたようなものです!」
上級隊士はすっかり機嫌を直していた。むしろニコニコと嬉しそうだ。
「じ、上級隊士って意外と短絡的なんだな……」
「うん。僕も冷徹な人達だと思ってた」
レイとウェントは。威厳ある上級隊士像とはかけ離れた姿に、再び引くのだった。
「まぁ、一通り言いたいことは話したし、なにか質問ある人?」
「誰が出るんですか?」
「それは当日のお楽しみだ。他に質問はないかな? ないなら緊急報告会はこれにて終了だ。みんなお疲れ様。」
こうして緊急報告会が終わり、みんなはそれぞれ元の場所に戻って行った。
合宿組はそのまま残され、これからのスケジュールが伝えられた。
「今回は事情が事情だから、今日は訓練なしで明日と最終日は1日目のようにひたすら俺達と特訓だ」
「終わった……」
「俺達生きて帰れるかなぁ」
みんなはその言葉に不満の表情を浮かべる。トラウマがよみがえりそうだ。
「つべこべ言わない。それに零階層組とゼノシュ、サーガ、アストラ、ミカはダクラくんの力を見たんだろ? いつかああなれるように頑張るんだ」
「あれにかぁ」
それを聞いた9人は、無理だろという顔をする。
「誰だって最初は下級隊士さ。今の主だって例外じゃない。大事なのは想像力でしょ? 無理だと思ったらそこで終わりなんだよ。
強くなった自分を想像するのは簡単な事じゃないかもしれないけど、実際に見たなら何となくわかるはずだ」
だが、ザイオンその言葉にみんなは心を動かされ、今まで以上にやる気をみなぎらせた。
「そ、そうか。そうだな!」
「よしっ、やってやるぞーー!!」
「「おーー!!」」
その様子を見て、ミルとザイオンも笑みを浮かべるのだった。
少しでも、
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〈主な登場人物〉
ヴィジ〈神ノ加護:霊力支配〉:今作の主人公
レイ〈神ノ加護:神線〉:陽気な性格。意外とまじめ。
フラクタ〈神ノ加護:波動〉:穏やかな性格をしている。
ウェント〈神ノ加護:炎魔法〉:優しい性格の持ち主。頭が良く、判断力に優れている。
ネリン〈神ノ加護:サイコキネシス〉:天真爛漫で活発な性格の女の子。頭はあまりよろしくないが、攻撃力はピカイチ。
カローラ:ザイオン軍の一部隊の指揮官。権天者。真面目で優しい。
ダクラ〈神ノ加護:闇黒〉:大君主の側近、主の称号を持つ。真面目な性格。実は全階層の主天者の中でもトップクラスの強さをもつ。
ミル:常世零階層を統べる大君主。厨二病でお調子者。とても寛大。
ザイオン:天界第七階層を統べる『最強』の大君主。その実力とは裏腹に内気で超臆病な性格。




