98 グラオザーム邸『影の試練場』
ローズクォーツと別れて、半分泣きながら馬車に乗り、散々レグンの奴にからかわれながら帰還だ!クソお!
でも…ああ、いいな、レグンがいてくれたおかげで救われた…。
でもローズクォーツとレグン、同時に愛してやらないといけねえのか…。
…どうしよう。
ローズクォーツはもはや俺が絶対に必要としている存在だ。
婚約者なんだ。
じゃねえと、アルタイル会計を怒らせてしまう。
けどよ…レグンは放っておくわけにはいかねえし、俺がいねえとこいつも同じく壊れちまいそうだ。
単なる救うべき相手…ともまた違う。
だってローズクォーツが行ってしまって…半壊しかけていた時に俺はレグンに助けられたからな。
はぁ…収集が付かねえ状況になっちまったよ。
…今考えても仕方ねえ。
さて、ブリッツシュラークの奴はどうしてるかな?
レグンと共に帰ったが…屋敷の何処にもいねえなぁ?
「レグン、ブリッツシュラークとなんか口喧嘩してたろ?帰っちまったか?」
俺に引っ付いて無邪気に笑う…俺と同じ苦しみを持つ愛しいレグンに聞いてみるんだが…
「いえ?う~ん、泣きじゃくるレグルスさんを迎えに行くまでは、大食堂でアップルパイをたくさんパクパク食べては、もっとねだってましたけどね~。」
ああ…あいつやたらグラオザーム邸に来ると、そればっかり食べてはフラフラして帰るんだよな。
そんな事を思っていると、足音もなく背後から、
「レグルス様。レグン様。ブリッツシュラーク様でしたら、『影の試練場』にお行かれましたよ。あのお方の事です。おそらく、私どもの精鋭、『執行部隊』とお戯れになっているのでしょう。」
…まぁ、家紋(影に潜む狼と光の剣)が織り込まれた深緑色の分厚い高級絨毯がよお?足音を遮音するように特殊な魔術で出来てるとは言え…気配まで殺して来るんじゃねえよ。
「アウロラ…。全くよお?相変わらず忍び寄ってくるのやめてくれねえかぁ?家だとよ、流石に気が緩むから心臓が跳ね上がるんだが?」
黒髪をオールバックにした目が少しツンとして、鼻筋も通ったこの余裕気たっぷりのこいつ。
執事服を着ているが、相変わらず服越しからでも分かる胸厚く屈強さが伝わってくるぜ。
ああ…んでこいつ、前にも紹介したが執事長のアウロラ・ノウスだな。
『宝玉部会:ルビー』の称号を持つ、戦技を駆使して、あっさりと雑魚の群れ何十人を一瞬で暗殺する、とんでもねえ実力者なんだよなぁ。
だがこいつはあくまで執事長。
『執行部隊』ではねえのさ。
だが…『執行部隊』の『宝玉部会:ルビー』よりも実力は上だ。
「おや、レグン様は気づいておられましたよ?レグルス様はローズクォーツ様とお関わりになり、随分と心に緩みが出ておられるようです。ですが…同時に救われたのですね。レグルス様と共に闇をお歩きになる…。とても芯のお強いお方です。…どうやら少々沈んだ顔をしていらっしゃる。ブリッツシュラーク様も『影の試練場』で気分を晴らしていますし、レグルス様もレグン様と一緒にご気分を晴らしてみては?私も同行いたしましょう。」
ああ…マジかぁ。
あんまりアウロラと手合わせとかやりたかねえんだがなぁ?
「ほうほう!アウロラさんとても強い気配を感じます!レグルスさん!早く行きましょうよ~!ああ!な~るほど!私と言う可憐な美少女を『影の試練場』で弄びたいんですね~!や~らしい!!ごヴぇ!?」
ああ…なんかレグンを小突くと何か気が落ち着く。
やっぱりレグンも小突かれて満足な顔をしているしな?
「全く。相変わらずわざわざ小突れにきやがって。ああ、でも最近レグンを小突くのが楽しいんだよなぁ?ああ…確かに弄びたいのかもな?」
まぁ流石にそんな酷い事をする趣味は基本ねえが。
「ぅえ?レグルスさん!?小突くのが楽しい!?うへ、ぐへへ…。」
「レグンよお?変な声漏れてんぞ?」
ああ…『影の試練場』はこのグラオザーム邸本館から離れた、中庭を挟んだ兵舎地下にあるんだよ。
この本館の奥、まぁ裏口とでも言えば良いのか?の黒鉄製の巨大な両扉を開けて、『影の試練場』まで3人で向かおうとすると、相変わらずひやりとした空気が肌を撫でやがる。
「レグルスさ~ん。毎回思うんですけど~、夏場なのにグラオザーム邸の敷地内に入ると毎回ひんやりしますね~。なんかもうこの景色に慣れちゃいました~。そ~れに~!うへへ。この何だか怖い景色をレグルスさんと歩くこのシチュエーション…。ぐへへ。」
…おい、なぜ引っ付いて歩くんだ?レグンよお?また変な声が漏れてやがるし。
「全くよぉ…ローズクォーツとの別れで疲れてんだがなぁ?俺を少しは労わってくれねえかぁ?アウロラ?ああ…でもレグンと歩くこのシチュエーションは最高かも…。へへ…。あ。」
やべ、俺まで変な声が漏れた。
「レグルス様もレグン様も仲がよろしそうで、なによりでございます。ここ数日で本当にレグルス様はお変わりになられましたね?」
突っ込んでくるなよ…恥ずかしいだろ?アウロラ!
はぁ…んで、中庭か?鬱蒼とした針葉樹の森に囲まてるぞ。
ったく、午後4時ちょい過ぎだが、でも夏場だから太陽の光があるはずだろ?だがな、まだらにしか届かねえんだなあ、これがよ。
中庭って言ったがよ、ここは生憎の執行人のグラオザーム邸だ…。
美しい花なんてねえし、当然敷地を出たような手入れされた並木道のような綺麗さはねえ。
単純にこの鬱蒼とした森で囲まれた中の、磨かれた黒い石畳の道がよ、中庭を突っ切って、その先にある、もう一つの建物…『兵舎』へと、真っ直ぐに続いているんだよ。
ファサア…ファサア…と針葉樹の鬱蒼とした木々が揺れて、風が頬を刺激するぜ。
…ローズクォーツとここで今後は過ごす。
彼女のような美しい人には似合わねえが、でもどうしてもローズクォーツと居たいんだ。
明日が待ち遠しい…。
…大丈夫だ、またすぐ会える。
俺の…心を癒してくれる彼女に…。
「むうう!レグルスさん!ローズクォーツさんの事を考えていますね!私も一緒に愛してください!もっと構ってええ!!」
ああ!全くまた駄々こねて俺にべったりくっついて!仕方ねえなあ。
「分かってる。大丈夫だ、レグン。俺はレグンの事を俺は凄い愛してる。…はぁ、ダメだな。俺はローズクォーツは絶対に必要で、レグンも凄い大事で…俺は何やってんだよ…もう。」
「………………レグルス様も女の子泣かせになってしまわれましたか。これからはより更に困難な道となりますなあ。(…これが…時期当主。)」
「アウロラ…。てめえ、あまりからかうなよ!?てかよお?最後に何かボソリと言っていたが何か文句でもあんのかぁ?おい?」
「おや?聞こえてしまわれてしまいましたかな?ふふ…これは失敬。つい愉快な気分になっただけですよ?」
だぁ!!クソがぁ!手を後ろに組みながら前を優雅に歩きやがって…!!
光弾ぶち込むぞ!
んだがなぁ…こいつやたら強えから背後から撃ち込んでも当たんねえんだわ。
……だが妙に今日はいつになく様子がおかしい気がするのは気のせいか?
「ふふ。レグルス様も随分と感情豊かになられましたね。ああ…これが良い方向に向かう事を祈っております。さて、『兵舎』が見えてきましたね。」
…アウロラにまで心配させる程だったかい。
今までの俺はよ。
つうよりも、何か皮肉ってないかこの野郎!?
…ま、こんな適当な会話をしながら、黒い石畳の道を歩いてたらよお?確かにすぐ目の先に、『兵舎』が見えて来やがった…。
相変わらず『兵舎』っつうより、一つの巨大な『黒い砦』だぜ。
グラオザーム邸の本館と同じく、一応、最高級の黒御影石で造られているがな…。
ああとは言え、優雅な装飾は一切ねえぞ?『兵舎』だからなぁ?ただクソ分厚い壁と、矢狭間かよって思う程のクソ細い窓があんのさ。
分かるか?この建物はなぁ…『住まう』ためではなく、『戦う』ために存在することを物語っているのさ…。
「うええ…。何度見ても怖い外観ですぅ。ああ!な~るほど!ここで私をレグルスさんが辱めて~、『執行部隊』の怖~い人達にその姿を敢えて見せつけるために、ここまで連れて来たんですね~?や~らしい!!…うへ、ぐへへ。ごヴぇ!?」
…最近こいつ、クラートみてえな変な声やら、気色悪い妄想するよな。
まぁ、小生意気は相変わらずだから小突くんだがよぉ?
「レグンよお?いつもの減らねえ口はそのまんまだがな?最近素と言うか、本性を顕わにしてきたなぁ?てめえ、その変な妄想よ?クラートの奴とそっくりじゃねえの。…だから何で小突かれて満足げな表情してんだぁ?」
「クラートお兄様とそっくりですかぁ?ほうほう、そうですか~。クラートお兄様もウンシュルトでは静かでしたからねぇ。私と同じく心の弱さを覆い隠していた感じですかぁ。うへへ。」
…こいつ、生意気だけなだけじゃなくて、案外楽しいやつだなぁ?
ずっと俺に引っ付いて変な笑みが浮かんでるし。
まだ15と少女らしく可愛いじゃねえの。
…ますます手放せねえなぁ?ああ…やべえ、ローズクォーツと二股…。
心がズタズタな癖して最低な男になっちまった…。
「お悩みをされておりますね、レグルス様。よろしいのではないですか?2人の女性に救われていらっしゃるご様子。ただ今は、それで十分ではないですか。それがレグルス様の心の支えとなるのであれば。さて到着しました。入りますよ。」
ちっ、アウロラめ…俺の心を読むなよなぁ。
はぁ…んでそのアウロラが、『兵舎』の黒鉄製の、重厚な両開きの扉を開ける。
ああ?家紋も刻まれてねえし、この『兵舎』にはこの黒い鉄の扉が一つあるだけだ。
このつまんねえ扉の両脇には、魔術の蒼い炎を灯した、これまたつまんねえ無骨なだけの、鉄製の『永炎の燭台』が不気味に立っていやがんのさ。
アウロラ…?これを見てよお?気分が晴れるどころか、逆に気分が下がるっての。
「よ~し!いつものように入りますか~!『執行部隊』さ~ん!またお邪魔しま~す!可憐な美少女の登場で~す!情欲してはダメで~すよ~!あっはっはっは!!ごヴぇ!?」
「おいコラぁ!グラオザーム家の精鋭部隊を煽ってんじゃねえ!つうかレグーン!いつの間に『兵舎』に入ってやがったんだ!?」
てめえグラオザーム邸に来てまだ1週間も経ってねえだろうがよぉ!?何本当に我が家のよう物知り顔をしてやがる!?マジのゲンコツだぞ!
「うへへ。ゲンコツ貰った…。別に良いじゃないですか~!?もう恋仲ですし!我が家ですもん!闊歩して何がいけないんですかぁ~!?ああ!な~るほど!『執行部隊』の怖~い人たちに、私を取られるないか不安なんですね~!か~わいい!!ごヴぇ!?」
…まぁ、もう良いか。
一々こいつの破天荒と口減らずに付き合っていたらキリがねえ。
小突いて楽しいし。
相変わらず小突かれて満足気だし。
「ああ…レグン様でしたら夕食後に『兵舎』にお行かれになられていたようですよ。まぁ、精鋭部隊ですから、然程気にはされておりませんよ。レグルス様がお連れになられた大事なお方と、認識して丁重に扱われていましたから。」
なんで俺は知らねえのにアウロラ…てめえは知ってんのかなぁ!
クソつまんねえ黒鉄製の両開きの扉を開けて中に入ると、兵舎の一階ロビー…。
ああ?ここには家具も装飾も、何もねえよ。
敢えて言うなら、光を鈍く反射する黒御影石の床が広がっていて、壁一面には継ぎ目のねえ灰色の安山岩の石壁だ。
…ここは本館と同じく、廊下の要所要所に銀製の、装飾のない『永炎の燭台』が置かれて、魔術の蒼い炎が静かに揺らめいてる。
本当にそれだけだ。
『永久氷結』やら『永久炎熱』と言った、夏場や冬場を快適に過ごせる、魔術刻印なんざねえぜ?
1階は『執行部隊』の生活空間じゃなくて、ただ『影の試練場』に向かうだけのもの。
流石に2階からは生活場として、もう少し快適な環境だがな。
んで、このつまんねえロビーの中央に、地下へと続く幅の広い『石造りの螺旋階段』が、暗い口を開けているんだよ。
何度見ても心の弱っちい俺には、不気味過ぎてなぁ?
俺以外のグラオザーム家の者は平然としてんだが、俺にはどうにもいつまで経っても慣れねえ。
「レグン、てめえは良く平気そうな顔をしてこんな不気味な場を歩けるな?俺はあんまり好きじゃねえんだが?この地下の『影の試練場』…演習場、訓練場とは別で、『拷問(尋問)区画』があるんだがなぁ?」
けっ!あの6個のゴミ貴族家の、捕らえた同じく生ゴミの当主や、俺に楯突いたゴミを生んだ、更なるハエみてえな蛆虫の婦人、同じく愚かな予備のゴミの兄弟共…。
そいつらを『拷問(尋問)区画』の牢獄に放り込んで、そいつらから何か聞き出そうとしても喚くだけ…。
ギャアギャアと泣き散らしやがって…ウザッてえ。
…だが、ゴミではあったがチタニアに全ての手の指を切断されて、痛みで藻掻き、絶望と表情を俺に向ける顔。
…あれ?今まで何とも思ってなくて、とっくに過ぎた物と消えかかっていた記憶が…どうしてここに来て甦るように振り返ってんだ?俺は。
……あの歪みに歪んだ、命の最期を悟った、絶望と恐怖の顔が…特に予備のゴミの兄弟やらの子供の顔が…急にフラッシュバックしてくる。
痛そうだった、蹲って泣きじゃくっていた…。
あれ?別にあんなゴミ同然のガキなんざ、処理して当然…だよなぁ…。
なんでか心が痛む?何で?ゴミだろ?あんなの。
…。
あ?何か聞こえる…。
「…さん!レグルスさん!!…大丈夫ですか~?呆けた顔をしていました…。私もたくさん殺して…今でもその人たちの事を時たま思い浮かんでしまいますが…。私が一緒にいますから。平気ですよ!」
…ああ?呆けていた?何で?
「ああ…レグン…。済まねえな。一緒にいてくれ。」
何か…急に心細くなってんだが?いつの間にかレグンの『緋色の魔術師団』のビロードの長いロングコート越しに、レグンの腕に俺までしがみついているんだが?
はぁ?意味わかんねえ…。
「…レグルス様。どうやら相当ローズクォーツ様が帰られてしまった事に、心が痛まれているようです…。レグン様…。どうかレグルス様をお支えをお願い致します。さて、ブリッツシュラーク様もこの地下の螺旋階段を降りた先で、気晴らしをしております。『執行部隊』も良い訓練になるでしょう。」
心が…痛んでる?まぁ、ローズクォーツが帰ってしまった事は本当に嫌だったが…
レグンが俺を見てニコリと笑ってくれている。
…ああ、癒される。
「…ごほん!まぁ、『影の試練場』全ての区画に魔術や魔力を無効化する防護結界が、全域に張られているが…ブリッツシュラークの奴め、[カエルス演習場]の防護障壁をまさかのぶち壊して、校舎を壊す大惨事を招いたからなぁ?試練場をぶち壊してない事を祈るぜ。ま、そのための紅玉石が学園と同じく幾つも浮いてるがよ。」
暗い『石造りの螺旋階段』をカツン…カツン…と、足音を不気味な反響を響かせて降りていく。
ああ…この陰鬱とした階段を下りるたびに、ひんやりとした湿った空気が…下から這い上がってきやがる。
壁なんて結露で濡れた、冷たい切石だぜ?マジで洞窟。
が、特殊な魔術刻印、『防腐』で頑丈、崩れたりはしねえよ。
ったりめえだろ?そんな事があったら、グラオザーム公爵家の名折れだ。
照明か?壁に一定間隔で埋め込まれた、小さな『光石』『宝玉等級:エメラルド』だけだ。
足元を青白く、最低限照らしているだけなんだよ。
かすかに『金属』の匂いと、『古い石』の匂いが混じり合う、この嫌な感覚、全然慣れねえ。
まぁ…グラオザームの者として、執行人として、そして、『執行部隊』の精鋭達も、これくらい何でも無いようにならないといけねえ。
精神を鍛えると言うより、感情をまず取っ払うためにこんな作りになっているんだ。
前を歩くアウロラも、『執行部隊』達も、俺の親父やお袋も、妹のチタニアも…皆平気なのによお?俺だけが何でか慣れねえ。
置いてけぼりにされている気分。
…これがブリッツシュラークの奴が味わって長年苦しみ続けた孤独か?
ブリッツシュラーク…てめえには恩がたくさんある。
だからこそ、ブリッツシュラーク…てめえが恋心を抱いてるクラートに俺が放り込んでやるよ。
そして、地下深くまで辿り着くと、大演習場…『影の試練場』へ続く巨大な鉄格子の門が、静かに待ち構えているんだ。
門の横では、常に二人の家臣(戦闘部隊)が、微動だにせず、番をしているんだ。
これも一つの訓練ってな?まぁ…流石に交替制だがな。
ただこいつらは戦闘部隊ではあるが、『執行部隊』程の精鋭じゃない。
とは言っても、『宝玉部会:サファイア』の称号はあるがな。
『執行部隊』の予備と言うと言い方は悪くなるが、単純にまだ完全には、精鋭部隊程の過酷な戦闘行動に追いつけていないだけ。
グラオザーム家でも『執行部隊』だけだと足りないからな。
こう言う者達を見込んでは、公爵家で雇い入れ、訓練を行わせる。
「ふむ。門番の務め、ご苦労様です。地味ではありますがこれもグラオザーム家の家臣、戦闘部隊としての立派な務めです。誇りをもってこの場を守ってください。」
はぁ…アウロラも苦労している。
何せグラオザーム家の戦闘部隊も含めた家臣全てを纏め上げる者。
こういう気遣いも大事なのさ。
「「はっ!」」
はは、門番の戦闘部隊の2人も良い顔だ。
ああ、俺もアウロラと同じ考えだしな。
「交替次第、ゆっくり休み、私どもの自慢の料理人が作った料理を味わってください。ふむ。ではグラオザーム家の次期当主レグルス様と、『緋色の魔術師団』のレグン様が軽く修練しますので、開けていただきましょう。」
「お二人共いつもありがとうございま~す!!毎回私の我儘に付き合って開けて貰っちゃって~。ごヴぇ!?」
「おいコラぁ!?何勝手に入ってんだこの野郎!!」
マジかこいつ!レグンめ、まさか『影の試練場』に勝手に出入りしてやがったか!!
しっかり小突いてやったわ!
「ぐへへ。小突いてくれた~。良いじゃないですか~?もう私の我が家ですし~!『緋色の魔術師団』の訓練にもなりますし~。」
はぁ…いや確かに身体を鈍らせるよりかは良いか。
大分甘やかしてんな…。
だって…恋仲だし…。
ま、そうこうどうでも良い他愛のない話をしていると、門番が壁石に設置されてるこれまた妙に見づらい、円状の魔術刻印に触れると、ガガン…と鉄格子の門が上にググっと上がっていく。
「それでは参りますかな。『影の試練場』には5つの区画がありますが、学園のような通常の演習場の5番目はブリッツシュラーク様がお使いになっていますから…1番目の区画、『王都(裏)再現区画』で少し身体を動かしましょうか。」
ああ?…あの王都を再現した迷路かよ。
このアウロラが得意とする場所じゃねえか。




