88 『無慈悲な閃光』の在り方
…5階、『星屑の回廊』…。
4人で最上位共の重厚なオーク材で作られ、鉄の飾りがついた、頑丈な扉前だ。
演台方面だな。
扉には、クラス名が刻まれた、古びた真鍮のプレート…。
いきなり入ったらビビられるからな。
先ずはノックからだな。
ふぅ…おら!ゴオンゴン!!
…あやべ、偉く強引に叩きつけちまったか。
「〔え!?誰でしょう!?〕」
ああ…マデラシトリン・クライノート先生がびっくりしちまってるわ…。
「レグっち~。叩きつけ過ぎじゃな~い?」
…ブリッツシュラーク、てめえだけには言われたかねえよ?
「仕方ねえだろ…つい感情に任せちまったんだよ。ごほん。ああ!レグルスです!ええ…少々最上位の連中ど…いや、クラスの人を怖がらせちまった件で話をしたいんですけど!少し時間をもらえますか!?」
…俺よ、扉越しとは言えこれ程丁寧な言葉を使うの、すげえ珍しいんだが?
「あらあらまあまあ!『無慈悲な閃光』さんにしては~、随分と丁寧な言葉を使いますね~!!ああ!な~るほど!そうやって油断を誘って『無慈悲な閃光』さんの、無慈悲をお見舞いするつもりなんですねぇ!ひゅ~!無慈悲で凶悪~。あっはっはっは!!ごヴぇ!?」
…なんでこいつは毎回煽ってこねえと気が済まねえかな!?
もう小突く事に慣れちまったし、んでこいつも何で少し嬉しそうな顔してんの!?
「レグン!!てめえはちと黙っていろい!!大事な場面なんだよ!!」
「ええ!?別に良いじゃないですか~?それにしてもこんな美少女を小突くなんて…鬼畜生~!!ああ!実際に人の心がありませんでしたもんねぇ!!あっはっはっは!!ごヴぇ!?」
「おいレグーン!?今の言い方はねえだろうがぁ!?このアホたれがぁ!」
まぁ実際その通りだがな!!?…だから小突かれて満足げな表情浮かべてんじゃねえよ!気味が悪い!
「〔え?レグルス公爵!?ええ…もう嫌なんですけれども…。〕」
「〔なぁ…殺されたりしないよなぁ?〕」
「〔噓でしょ…。なんでまた来られましたの…。怖い。〕」
ああ…ったく、情けねえ連中だ。
俺みてえな危険な奴がよ、別の場所でいざ目の前に現れた時を、想定したのが2ヵ月前の混同試合だっただろうによ。
だから『最上位』なんて所詮は見せかけの称号に過ぎねえんだよ。
分かったかよ。
「レグルス公爵様…。大丈夫でございますか…?お優しいあなた様に対し、あのようなご発言は…少し思う所がございます…。」
…はぁ、ローズクォーツが心配する必用はねえんだがなぁ?
むしろローズクォーツの居場所を、壊した責任がある俺の方が問題だ。
「いや、ローズクォーツ、まぁ恐れられちまう事は想定していた事だ。」
「〔はいはい、皆落ち着いて。レグルス君、今開けますね。〕」
ああ、流石だ、クライノート先生。
助かるぜ。
ゴゴン、と言うまぁ、重厚なオーク木材と言う、重たい音を立てながら、教室扉が開く。
「あら?外で騒がしいと思いましたが、ローズクォーツさんもいたのですね。4人で来られたわけですか。…それにしても、まさかレグルス君から来るとは思いませんでした。レグルス君お一人で入られますか?」
はっ、相変わらず肝が据わっている先生だ。
やらかした俺に笑みを浮かべてくれるとはな。
「はい。俺1人です。まぁ残り3人は回廊で見張り…俺がやらかさないかの付き添いって事で。魔銃は持ちませんよ。下手な事が出来ないように…。」
さて、どうするかな?
「分かりました。どうぞ?最上位クラスの教室へ入られてください。」
背後の教室が騒がしいが…悪いな、先生。
迷惑をかける。
んで、俺のとある部分を敢えて見逃してくれたか。
流石は錬金、治癒魔術のエキスパートか。
んじゃま、失礼させてもらおうか。
「ではちょいと失礼しますよ。先生。」
そして…俺は中に入った。
にしても、教室は流石に広いな。
人数も多いしよ。
ま、俺らの教室は『聖銀』製の階段教室だが、ここはとにかく眩い純白の大理石の…扇状の階段教室か。
「邪魔するぜ?最上位クラス。ああ、一応安心しとけ?魔術媒介の魔銃は持ち込んでねえからよお?」
はっ!怪訝そうな表情じゃないかよ、なぁ?
まぁ、それは置いといて、恐れの表情をしている奴らが多いか。
情けねえとは思わなくもねえが、七公爵家の恐ろしさと貴族社会の掟を考えれば、当たり前か。
ま、後は…俺が魔銃を持ち込んでねえと言う、言葉で安心したか…何だかまだ言いたげそうな連中もいるか。
仮に今朝の件で俺に危害を、もしくは殺しでもしたら、そいつはただじゃ済まされねえが…グラオザーム家が一斉攻撃するしな。
んな事は後でだな。
「何をしに来たのか…そう言いたげだな?最上位クラス。謝罪だよ。主に七公爵家の権力と力、そして掟を弁えてる奴らも同時に怖がらせちまった事のな?先ずはそう言う奴らには謝ろう。申し訳なかった。急な銃殺を行って怯えねえ奴の方がおかしいからなぁ?」
さて、本来七公爵家が簡単に頭を下げる事はマズイんだが、特に俺のグラオザーム家は上位の3位に君臨しているわけだしな?
…騒めいてる。
怯えに、呆然とする者、混乱している者…さて、誰か何か言うのかね?
「…レグルス公爵様。口での謝罪で済まされる事だとお思いで?」
…ほう?俺が少し頭を下げたらこの態度か?やるな。
「七公爵家が頭を下げたと言う事は、今朝の我々の仲間を殺した罪を認めになると言うことですね?」
…やっぱりそう来たか。
「ちょ!だから何でそう言う事を…。」
「七公爵家の方が謝罪に来てくれているのに…何で喧嘩を売る真似をするの…。」
ああ、それが普通の反応。
何であれ七公爵家が謝りに来たわけだからなぁ?殺しと言う、まぁ確かに口で謝罪程度じゃ済まない事であっても。
だが、七公爵家に楯突けば処刑は当たり前何だがなぁ?侯爵以下もそれは同様だろうに…。
あまり一般常識で口を挟まないでもらいたいんだがな。
「いえ、殺しは流石に擁護出来るレベルではないでしょう。」
「魔術媒介も持っていないとの事。我らにどのような事をされても良い覚悟で来たのでしょうなぁ?」
おいおい…マジか?反抗的なのは4人か。
ああ…クライノートで先生も頭を抱えてるわ。
「ったく、てめえら4人よお?俺はあくまで七公爵家の力を弁え、掟を守っている奴らを怖がらせちまった事への謝罪なんだよ。誰があのゴミ共の殺しの謝罪来たと勘違いしてやがる?ああ?俺はよ、はっきり言えば、全く罪も何も、あのゴミ共に対して何も思ってねえよ。とっくに過ぎ去ってんだよ。後よ、怖がらせちまった奴らにも本来なら、今でも何も思ってねえからな?それでもこうしてここにやってきたのは、ここ5階の回廊に一々畏怖の目で見られる事が面倒だから、来ただけだからな?勝手に思い上がってんじゃねえぞ?」
全く、こいつらも本来なら抹殺対象何だが…。
「っ!!おのれ!公爵だからと図に乗らないでもらいましょう!!」
「魔術媒介もないのです!こちらからも攻撃させてもらいます!」
「お覚悟してください!魔術媒介がなければ我らにも!」
「これからは七公爵家も終わりです!私たち侯爵以下の者でも!」
はぁ、なんかこいつら頭おかしくねえか?
まあいい、てめえらみたいなのを炙り出して、七公爵家がきちんと管理してやる。
七公爵家だけじゃねえ、ルミナス王族にもな。
「てめえらみたいな反乱分子をこれからは管理する。この謝罪も、バカみてえに揚げ足取りをする愚か者を見つけるためのものだった。それとよお?俺が魔術媒介、魔銃を持ってないと言う言葉を簡単に信じるな、アホが。」
ああ…騒めきと再びの恐怖の顔が、てめえらから見える。
全く…こんなのが『最上位』を名乗るのかい。
「ま、まさか殺しを!?」
「お、お、お許しください!」
「七公爵家が終わりと言う発言はどうか…!」
「こ、攻撃なんてそのような真似をするつもりはなかったのです!
バカが…吐いた言葉は飲み込めねえだろ。
「ああ?もう遅えよ。『第3階梯:光:リヒトクーゲル』!」
即座にとある魔銃を抜き放ち、ズガンズガンと4発…瞬時に4人の愚か者の脳天に光弾を撃ち込み…何も起きはせず風穴も空かない。
けっ!今正に再びあの惨劇が起きると思って、半狂乱になりかけていたなぁ?この4人以外の『最上位』共。
「ちったぁ目が覚めたか?どうせてめえら、なんか変な幻惑にでもかかってたんだろ。そうじゃねえと、ここまでアホな発言は出来なかっただろうからなぁ?」
はぁ…俺が使った魔銃は…全身が桜色でグリップ部分に薔薇の形をしたピンク色の魔石が埋め込まれた物。
名を『慈愛の星』『宝玉等級:ダイアモンド』だわな。
俺が持っていた魔銃で唯一、殺傷能力がなく、どんな魔術でもそれは撃ち込んだ対象に癒しを…怪我や精神の回復に変換される。
『階梯魔術』の数字が6に近い程、より癒しの力が強いが、こいつ…超魔力喰らいだから、そんなポンポン撃てねえ。
こいつを使うなんてな…。
レグンが昨日部屋に来るまで、殺しに慣れ込んだ俺には合わねえと、今まで使わなかったんだが…。
…ローズクォーツが俺の家に来たんでな、つい持ってきた。
「…とりあえずてめえら4人は今回ばかりは見逃してやるよ。次はねえかな。これからはより、七公爵家が貴族社会に介入、管理する。そんじゃ、もうこれで俺の謝罪は終いだ。出て行くとしよう。クライノート先生、失礼いたしました。」
「いいえ!レグルス君。ごめんなさいね?迷惑をおかけしました。」
はは…そうかい、俺を責めず、むしろ謝ってくれるとはな。
「いえ…これで俺の罪がなくなるわけじゃないですけどね。ま、多少の罪滅ぼしをしたと言う事で…。俺の隠し持っていた魔銃、何も言わないでもらってありがとうございました。…じゃあな、最上位共。『最上位』に相応しい実力と、そして、『民の模範となり、国をその双肩で支える、真の指導者』となれよ。これはシリウス主席 兼 生徒会長が祝辞で述べていた言葉だ。てめえらもせいぜい良く考える事だな。んじゃな。」
こうして俺は教室を出た。




