84 『紫苑騎士団』の影
私が尋ねた4人…反抗的なのはどれもその精神をかき乱すような、何とも言えない残留魔力が漂っているからだ。
…この者達の領土はどこだ?
「…『紫苑騎士団』?何を言っておられるのでしょうか?変な事なんて何もされていませんが?まぁ、すれ違ったり、私どもの懇意にしている他貴族殿を集めたパーティー、夜会などの護衛や、ちょっとした小規模の茶会に僅かな人数が護衛に来ていただいてはおりますが…。」
「ですかね。私の家にも専属の護衛騎士として、少々置いてもらっていたりくらいです。」
「お二方の言う通り、まぁ僕たちの家は王国に点在する一つ貴族街に集まっておりますから。まぁ、すれ違う事はあるでしょう。」
「…レグルス公爵があのような殺戮をしなければ!ミリアルデ侯爵も、シュラハト侯爵も領土を持っておられましたから、貴族街に近い我々共、懇意に出来ていたのですよ!」
…レグルスの逆鱗に触れた、シュメルツェント家、ズース家、キャンディッシュ家、ザーネ家…どの伯爵家もこの妙な残留魔力を漂わせる者達も、それぞれ違う貴族都市に居住している。
…まさかとは思うが、貴族都市殆ど全てがおかしくなっているのか?貴族都市は『紫苑騎士団』団員が必ずいるからな。
…まぁ『騎士団』と言う名のあまり才能の無い貴族達の集まりでもあるが。
だが…そもそも紫苑騎士団の本部は何処だ?団長名は?
おかしい。
なぜ何もかも不明なのだ?曲がりなりにも『騎士団』として各貴族家の護衛、儀礼的な任務に当たってるいるのだ。
本部は必ずあるはずなのだが…。
改めて各騎士団の本部、各支部、駐屯場を整理するか。
1位の『金剛騎士団』は言うまでもなく、ここ王都、王宮や七公爵家の特別エリアにある。
2位の『紅蓮騎士団』は役割的に国境沿いにある大城塞都市だ。
3位の『蒼穹騎士団』は幻獣を使役、育てるための特殊な大都市に点在している。また、王宮護衛の名目で、王都にも駐留している。
4位の『翠玉騎士団』だが、密偵、隠密と言う特殊部隊として、王都に近い位置の都市にある。
6位の『琥珀騎士団』は役割上、ルミナス王国の何処にでも駆け付けられるよう、便利な大都市に本部、そして点々と各所に支部として城郭都市〔城塞都市とは違う〕がある。
…6位の『琥珀騎士団』がルミナス王国の市民全般の安全を守るのなら、5位の『紫苑騎士団』は『建前』では、王国の各所の貴族社会の安全を守る名目で創設されたはずだ。
団長名が分からないのも妙だ。
王宮に各団長名の履歴があるはずなのに。
いや…私も『紫苑騎士団』団長に会っていた気がするんだが…何故だ。
何故霞がかっているように何も思い浮かばない?
私は侯爵家で貴族都市ではなく、一領地を管理しているアイスベルク侯爵領だから、貴族都市に然程関わりがない。
いや待て、レグルスの粛清にあった6名の貴族、そして今、私に反抗気味なこの者らなど、やたらと沢山の他貴族と関わり合おうとする【====】がいた…。
は?なぜ今正に思い出そうとした『何か』にまで霞がかって思い出せない?
「…君たちは、紫苑騎士団に深く関わりがあるという事は、どんな鎧を纏っていたかなどわかるはずだ。見た目はどうだったかな?」
私の記憶では…深く鮮やかな赤紫色の水晶のように、輝いていた鎧だったが…。
「は?紫色の鎧に決まって…あれ?何だっけ?しっかり思い浮かべられませんね。」
「…なんか紫だった事は分かるのですが…。夜会やパーティの護衛として来てくれていたはずなんですが…?」
「専属で護衛騎士をしてもらっているはずですが…顔がいまいちはっきりとしない?」
…この者らも同じか。
だが…確かに『紫苑騎士団』は間違いなく、貴族に深く関わる役目を持って創設された事は間違いない。
ただ、本当に貴族の箔を付けさせるための、形ばかりの騎士団ではあった。
しかし何故かここ1年ばかし、『紫苑騎士団』の動向がはっきりしない…。
何者かに乗っ取られた可能性が一番でかいな…。
当初は本部も、確かにきちんとはっきりと置かれていたのだ。
「ふむ。どうやら君たちも霞がかって思い出せないようだな…。私も同じだ。はぁ…。これ以上の情報はもう、ここでは出せないな。仕方がない。
さて、どうかな?反抗的気味だった君ら4名。これで如何に自分らが裏で操られていたか、よく理解したな?愚かだったのは自分たちだと、少しは理解は出来たはずだ。
『紫苑騎士団』ではなく、裏で糸を引く者がいるのかもな。その者に警告と言う意味で、レグルスの6名の処刑、及びグラオザーム公爵家による、6つの貴族家の取り壊し、粛清を受け入れよ。君たちも同じ目に遭いたくないないのであれば、七公爵家に楯突く真似は今後は禁止だ。
七公爵家が余りにも独裁的で、横暴も幾度となくやらかしているなら、反感的な君たちの意見は正しいが、レグルスのローズクォーツ侯爵を連れて行く件も、双方がきちんと同意した上での行動だ。
脅しをかけられたのでは?と言う者いるだろうから先に言っておこう。
レグルスはそんな真似は一切やっていない。むしろ担任教師である私に、許可を求める手順を踏んだ上での連れ出しだ。意見があるのならレグルスではなく、許可を出した私を責めなさい。」
…妙な魔力反応を示した4名も、多少は自分の行動に疑問を持てたのか、ようやく静かになったか…。
「多少は納得してくれたな?よし、では誰か私が意識を飛ばした、この2名の生徒を治療室まで運ぶ。申し訳ないが、誰か手伝える者はいるかな?」
マデラは担任としてここにいてもらわねばならない。
そうしていると、2名が手を上げてくれている。
「私がお手伝いします。リゲル先生…。」
「私もお手伝いを致しますわよ。」
「君は2ヵ月前にレグルスとアトリアの試合に出た、パール・リヒター侯爵に、そして最後までレグルスと戦った、エスメラルダ・ロルベーア侯爵だったな。ではよろしく頼もう。マデラ、荒らして済まないが後を頼む。」
…微笑んでくれるか。
迷惑をかけて申し訳ないな。
「ええ。勿論平気よ!私はこの最上位クラスの担任ですもの!さ!皆!このまま燦爛クラスに後れを取ったままで悔しくないのかしらぁ~?気を取り直すのは…中々難しいでしょうけど、精神面もバシバシと鍛えなおさないとね?」
ふっ…流石だ。
どうにか一時的だけでも、恐慌状態は軽くできるかな…。
「では私と、そしてリヒター侯爵と、ロルベーア侯爵と共に失礼する。この2名を治療室まで連れて行かなくてはいけないからな。」
私はそのまま、最上位クラスの教室から出て行った。




