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魔眼の名門家の俺は、常時発動するタイプの魔眼のせいで平穏な学園生活を送れません!  作者: はーにゃ
5 執行人の魔術科指南

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83 上流科最上位クラス

レグルスが引き起こしてしまった、貴族の学生殺し…。

流石に執行人エクスキューショナーと言えど、学園内での殺戮はないだろうと油断してしまった。

むしろ心配だったのは、エルナトや、そして私の腹違いの妹のスピカだった。

クラートやノート、スピカの複雑な人間関係と、そこに最も不穏分子であったエルナト第2王女殿下…。

私の担当するこの4名が騎士科稽古で波乱を起こしていたため、ややレグルスとアトリアの魔術科指南の件も含めて、後回しにしてしまった。


レグルスに至っては口こそ悪いが、クラス全体を見渡し、それに適した行動をとり、面倒見の良い優秀な生徒だったのだ。

だからこそ…最上位クラスから1人の女子生徒を連れて行きたいと言う申し出に、青春だなと…そう思い、可愛い生徒の要望に許可を出した。


故に油断した。

そう、レグルスは七公爵家でも極めて特殊な立ち位置でもある、ルミナス王国を裏から支える、執行人エクスキューショナー、暗殺を生業とする公爵家の人間だった事を…かなり失念していた。

『ルミナス王国六大騎士団』と、『ルミナス王国六大魔術師団』が表で国を守るなら、グラオザーム公爵家は裏から国を守る一族なのだ。


…グラオザーム家は掟に非常に厳しく従順。

正直、七公爵家でもルミナスの王族に、国に、最も忠誠心が高いのが3位の立ち位置のグラオザーム公爵家。

レグルスの引き起こしてしまった学生殺しは…そのグラオザーム家の魂に深く刻まれた、掟に非常に厳しい一面が出てしまい…このような悲惨な出来事が起きてしまった。


…叱ることなど出来るはずもない。

グラオザームの血が目覚め、掟破りかつ、脅威と認定した者を即座に排除しに行ってしまっただけ。

レグルス自身も相当自信を責めて苦しんでいた。

教室扉の前で、葛藤し入室出来ない後ろ姿を見て…守ってやらねばならない。


私、リゲル・アイスベルクは、私の母が亡くなり、父、スヴェル・アイスベルクが別の貴族と再婚。

そこに私の妹…スピカが出来たのだ。

どう接すれば良いか分からなかった…。

なにせ魔眼を持って生まれてしまい、すっかり私にあまり関心を父は抱かなくなってしまったのだから。

私にとってみれば、再婚相手など他人も同然。

そのままズルズルと引きずり、スピカと言う妹との関係もあまり良いものとは言えなかった。


…またもや、これ以上の失敗はできない。

先ずはレグルスが引き起こしてしまった現場に向かわなくては。


私は燦爛クラスの、演習場に浮かんでいる紅玉石製の教壇から立ち上がり、5階、『星屑の回廊』に向かい階段を降りる。


私の耳飾りの魔道具、『追跡の耳飾りインヴェスティガレ・イナウレス』『宝玉等級:サファイア』は、魔術、魔力の痕跡をある程度探る事が可能だ。


なるほど、やはりこの大階段付近でレグルスの『第3階梯:光:リヒトクーゲル』の魔力が残留しているな。

壁や床に一切の傷跡もないか。

見事な腕前だな。

一発も外すことなく、6名を瞬殺とはな。


…私が何事かと、燦爛クラスの教室に向かう際、友人でもある最上位クラスの担任教師、マデラシトリン・クライノート侯爵と共に5階まで来たときは…まぁ言葉を失った。

大階段付近に大量の血で汚れた廊下、その中に倒れ伏す6名の死体。

10名近くの警備員もおり、急いで遺体収納袋で包む場面、血しぶきや、血の池だまりを『宝玉等級:サファイア』の蒼玉の水晶で洗浄する幾人かの警備員。

半狂乱状態の最上位の者達を、宥める様子…。


…事情を尋ねれば、レグルスがこの事態を起こしたと聞き、


「(―マデラ、私は燦爛クラスでレグルスを見てくる。君は担任として事情聴取を頼む。―)」


「(―リゲルちゃん…。私も生徒の様子には頭を抱えていたけれど…はぁ、やっぱりきちんと教育できなかった私に責任はあるわねえ。…とにかく何とかしておくわ。―)」


…私も同じだ、マデラ。

レグルスの優秀さに頼り、彼の葛藤をきちんと理解してあげられなかった…。


しかし回廊(廊下)は何事もなかったかのように綺麗になったものだ。

この学園の警備員やその他職員には、頭が上がらないな。


さて、レグルスの魔術の痕跡が最も強いのはそうだが…何だ?このほんの僅かばかしの別の魔力は?事件現場の星屑の濃紺の大理石の床と、魔術刻印の施された白亜の大理石の壁を触る。

アトリアの『雷』や、それこそ悲劇を招いてしまったレグルスの『光』と言った、元素魔力ではない。

もっと別の何か…だが微か過ぎて分からないな。

現在、秘密裏に、隠密や偵察を得意とする特殊な騎士団の、第4位:『翠玉騎士団』が『紫苑騎士団』を探っているが…まだ何も掴めていない。


…5階の回廊から魔力が満ち、燦爛クラスの6階『白銀の回廊』でさらに濃密度となり、そこにいるだけで魔力回復、体調の多少の回復など様々な効果がある。

6階は濃密度過ぎて、本当に燦爛クラスに相応しい者でないと、逆に過剰回復であまり長い間いられないが。

まぁ問題なのはそこではなく、この5階…今にして思うと、学園設備としての魔力回廊だけでなく…ほんの微かだが、何か体内を、いや、精神に支障をきたすような残留魔力も『追跡の耳飾りインヴェスティガレ・イナウレス』から感知されている。

これは…学園ではなく、外、つまり王都外の貴族の生徒から持ち込まれている?


回廊で調べられる範囲はこれくらいか…。

最上位:リュミエールの教室に入り、事情聴取をする外ない。


教室扉は2つ。

最上位クラスの教室の重厚なオーク材で作られた頑丈な扉。

演台前と、最後尾にある

扉には、クラス名が刻まれた、古びた真鍮のプレート…。

そして私はノックして、演台前側の扉を開ける。


「…昨日に引き続き失礼する。もう2ヵ月前のクラス混同試合でも見ているだろうが、私が燦爛クラス担任の、リゲル・アイスベルクだ。…ふむ。随分と今朝の恐怖で震えているようだが。息苦しい空気だ。

…さて、私の愛する生徒、レグルス・アフ・グラオザームの行った件について、君たちに改めて事情聴取をしに来た。マデラ、申し訳ないが失礼するよ。」


私がそう言うと、微笑んでくれる私の友人。


教室のレイアウトは…とにかく広い。

演台を中心に横幅は半径13メートル、教室の最後部から演台まで20メートルと言ったところか。

演台に向かって扇状型の階段教室となっている。

床も壁も、磨き上げられた純白の大理石で…点々とある各純白の大理石の円柱には、『永久光波』の魔除けの魔術刻印が幾度も重ねられ、教室を銀色で輝かせているな。

ついでに言えば、『永久氷結』に『永久炎熱』と言った刻印も円柱に刻まれ、快適な空間にはなっているか。


ふむ…改めて異様な教室だな。

白いビロード張りの椅子に、各個人用の象牙製の学習ブースまであるとはな。

あれは授業が開始されると、ブースの正面に魔術で映像が投影され、演台まで良く見えるようになっている。


「…ふむ。先ずは全く関係のない者、つまりは七公爵家、及び下位の者が上位の爵位の者に反感を抱くなどと言う、愚かな考えを持たない者達だ。その者達には怖がらせてしまったが…申し訳ないとは思う。

だが…甘んじて今回のレグルスの行動を受け入れよ。君たちも公爵家がどれほどの権力、そして力があるか…あの戦いにすらならない淡々と一瞬で処刑した、レグルスの殺戮劇で燦爛クラスと、七公爵家に歯向かう事がどれだけ愚かな事か…改めて身に染みたはずだ。」


先ずは様子見の言葉から述べる。

最初は25名だったが…フローライトの追放と、今回の処刑で計7名減り、残りは18名か…。

さて、回廊で感じた妙な魔力を纏った生徒が『追跡の耳飾りインヴェスティガレ・イナウレス』で感知された。

やはり…外から持ち込まれたものか。

何か答えるかな?

そう思っていると、妙な魔力を纏った男子生徒がバシンとブースの机を叩き、立ち上がり…


「…っ!!リゲル先生!!その言葉はないでしょう!?私共の仲間が殺されたのですよ!?燦爛クラス、七公爵家だからと言って横暴が過ぎる!!」


ふむ…あれだけの悲劇があって尚反感を抱く、か。


「…おかしな事を言う。1~4年の燦爛クラス、及び七公爵家は殆ど横暴などと言う真似はしていない。

むしろ反感や不満を抱き、私の生徒、燦爛クラスと七公爵家に挑もうとする、勝負を仕掛ける、そして…レグルスの時のように失礼な態度を取る、君たち、特に上位と最上位の者達こそが横暴だ。

君は、2ヵ月前の混同試合で何も学ばなかったのかな?あの時私はこう言った。

1ヵ月前に起きた王都すぐ近くの森の争った形跡、ああいう強者を前にした時、命はとても軽い。今回の一件が良い例ではないか。レグルス・アフ・グラオザームという本当の殺しの達人が、どのように戦う…いや、蹂躙するのかが分かっただろうに。」


そしてまた妙な魔力を纏った、女子生徒が反感を抱く。


「その横暴をレグルス公爵がやったのですよ!そして貴族としての義務、国民を導き守る義務が私たちにあるのです!!私どもの命が軽いはずがありません!」


なんと愚かな…。


「そんな頭にもない建前を振りかざしているから、レグルスにあっさりあの6名は処刑されたのだ。良いか?『殺戮』ではなく、『処刑』だ。この言葉の意味が分かるな?貴族社会の掟、秩序を乱す真似は者は許されないのだよ。それに…横暴とは言ったが、君たちのクラスメイトであったローズクォーツ・ムート侯爵は嫌がっていたのかな?もしそうであるのなら、横暴ではあったかもな。例え七公爵家だったとしても。しかし…別にそうではなく、喜んでレグルスについていったではないか。むしろ彼女は処刑の一件で、ようやく自分に言い寄ってくる男性が、減ると気が楽そうではあったがな?」


さて、何かまた別の者が言い出しそうだから、とっとと本題に入らなくては。

どうにもここまで言っても分からないらしい。

だから私は、マデラに言う。


「さて、これ以上は時間の無駄だ。マデラ、申し訳ないが、あの2名の愚か者の爵位は、校章バッジを見ると、金と銀。伯爵と子爵だ。私と言う侯爵に歯向かった者として、一度痛い目を見てもらった後、連行し、反省房行きだ。その後また復帰してもらうとしよう。」


「…わかったわ。リゲルちゃん。ごめんなさいね。まだまだ私が導けなかったばかりに…。」


許可は得た。

マデラ…別に君が悪いわけではない。

あの2名の生徒もおそらくは、これほどまで愚かではないのだろう。

しかし、済まないが力ずくだ。

私は魔の短剣『一瞬凍結(アトモス・ゲラーレ)』『宝玉等級:ルビー』を取り出し、


「眠っていてもらおう。『基本剣術:応ノ壱:縮地』。『第2階梯:氷結:ライフ・ディ・ピッケ』!」


先ずは瞬時に最初の男子生徒に接近、続けざまにつま先を冷気で宿し、上段のつま先蹴りで顎をガアン!と打ち抜き他生徒に当たらないよう、最後部の壁まで吹き飛ばす。


「…ポカンと呆然しているようではまだまだ未熟だぞ?最上位の者達。『基本剣術:応ノ壱:縮地』。『第2階梯:氷結:ライフ・ファオスト』!」


もう一人の女子生徒に一瞬で移動、冷気を宿した左拳の縦拳を、ドン!と鳩尾に叩き込み膝から倒れ伏す…。


そのまま階段教室の、ど真ん中まで移動、演台までゆっくり歩きながら最上位の者達に私は問う。


「これ以上の問答は無意味。平行線だ。さて、私がこの教室を訪ねた意味は一つ。ここにいる妙な魔力を纏う残りの、そこの4人。君たちは『紫苑騎士団』に何かされたか?」

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