81 魔術科指南 上位、最上位
『白銀の回廊』から『門』を4人で潜り、お馴染みの大理石の床に、アーチ状の石造りの廊下に、壁に青い炎の灯る魔法の燭台が並んだ、遺跡のような廊下を歩き、上位と最上位クラスの教室の扉前。
…15人だったか。
どんな奴らか。
…最早俺には『最上位』と言う言葉その物に半分トラウマが刻まれてちまったからな…。
下位、中位クラスの教室扉はタモ材の扉だったが…ここはウォールナット材かい。
豪華な扉な事だ。
「はぁ…気が重いが入るか…。レグン、特にてめえは外見が良すぎるからマジで気を付けてくれ?じゃねえと…また俺の身体に沁みついた執行人としての勝手に殺しに行きかねえからなぁ。」
「あらあら?今朝もそうでしたけどぉ~、やたらと心配をしてくれますよね~。ああ!な~るほど!私を独占したいあまり、私に対して向けられる、情欲した他の人の目線が許せないんですね~?や~さしい!…あ、あれ?また恒例のゲンコツが来ないですね?なんかあれがないとモヤっとするんですね?どうしたんですか?」
こいつ…もしかして俺に構って貰いてえの?
「あのなぁ…。俺だって別に好きでゲンコツ入れてる訳じゃねえからな?てめえが最初余りにもうるせえから、ゲンコツ入れてたけどよお、1日で小生意気な態度に少し慣れ始めてるんだわ。
ちなみにだが、マ~ジで心配してんだぞ?ま、上流科じゃねえから、流石にそこらは弁えているだろうが…。弁えてるよな?」
魔術科とか、下位と中位クラスはともかく、上位と最上位クラスは自分が選ばれしものだと、気取ってたりしねえよなぁ?
「レグルス公爵様?ここで考えていても仕方がありませんから、一度入ってみましょう。」
「んだな。ローズクォーツもレグンとは別な方向で、美しいからな。気を付けてくれ?よし入るか。」
「は?ちょっと…なんかこの優しさたっぷりの『無慈悲な閃光』さん、不気味ですねえ?ごヴぇ!?」
流石にその失礼なレグンの言葉にはゲンコツを入れたわ。
教室扉を開けると…既に『赤曜の魔術師団』と師団長のアストリッド・モルゲンシュテルンが既にいた。
まぁ…ついさっきまで俺がやらかしちまったからなぁ。
少しだけ遅くなってしまった。
…はっ、ついさっき行った殺戮そのものには、もうどうでも良くなってる自分がいる。
入学以前まではああいう事が日常茶飯事だったせいでな…。
「遅くなって悪かったな。アストリッド師団長。ちと、トラブルがあったもんでよ。」
「ふう、安心しました。まさか来ないのかと少し心配でしたからね。では、魔術科の皆さんに挨拶を。」
アストリッド師団長の言葉で、教室全体を見渡してみる。
下位、中位クラスは廊下の雰囲気をそのままを教室にした、って感じだった。
だがここは、白漆喰の壁に大量の本棚がズラリと並んでいる。天井には『永久炬火』の魔術刻印が刻まれた炎の灯る『永炎のシャンデリア』かい。
はっ、『宝玉等級:サファイア』の魔導具とは、良いもん使ってるじゃねえか。
随分と雰囲気が変わったじゃないかよ。
ただ防護障壁自体は『宝玉等級:アメシスト』の『志を持て』…か。
下位と中位クラスの教室と変わらねえなぁ?
んで?魔術科共の雰囲気は…ほ~ん?確かに下位と中位クラスに比べると、確かに魔力の濃さを感じるな。
やる気がないわけではない。
学ぶ気持ちは下位、中位クラスよりはある。
しかし平民出身で、魔術が長けている者は多くはない。
故に…やや周りから持て囃されえてきたな?
少しだけだが、傲慢さが見えるぞ?
とは言え、俺らが貴族と言う事もあり、大人しいか…。
だがてめえら!レグンをジロジロ見過ぎだっつの!!あとローズクォーツも!!
ちなみにブリッツシュラークを見ている奴は…殆どいねえな。
こいつ、見た目が幼くガキンチョみたいな風貌だからな。
「んじゃ、先ずはてめえらを今日を含めて4日間、面倒を見る事になった、1年燦爛クラスのレグルス・アフ・グラオザームだ。先ずは一つ言っとくがな、てめえら、周りから持て囃されきたな?少しだけ傲慢さが見えるぞ。あんまり下手な真似して怒らせんなよ。」
俺がそう敢えて挑発気味に言ってやると、くっく…ああ、顔に不満と怒りの顔を出したな?
「あの、すみません。僕たちは別にそんなつもりはないんですが?何を根拠に言っておられるのでしょう?」
そう言う所だよ、どアホが。
俺と言う七公爵家に向かって、不満タラタラな言葉を発してるだろうが。
チラリとアストリッド師団長を見ると…なんか仕方なさそうな顔をしているな。
つまりは多少の脅し程度なら許してくれるか。
ま、下位と中位クラスみたいに強烈な恫喝をするのは、なるべく避けるが…。
「おい、てめえ、俺に向かって抗議しやがったな?声のトーンが不満タラタラだ。傲慢つうのはそう言う所だ。てめえ、『宝玉階梯』の称号は何だ?」
敢えて俺がもう少しだけ煽ってやる。
俺が七公爵家と言う部分を少し忘れてもらうためだ。
怒らせ、貴族に楯突かせるためよ。
くっく…どう答えるかねえ…。
「…少し不満なトーンになってしまうのは仕方なくないでしょうか。急に傲慢とか言われて、少しムッとしない方がいないと思います。称号は『宝玉階梯:エメラルド』です。どうですか?少しはご納得いただけたでしょうか?」
『宝玉階梯:エメラルド』…こいつは最上位か?
「ほう?てめえ、上位クラスか?その程度の称号で最上位はねえよな?」
…これで普通に上位クラスだったら、ここの教室全体を見直す必要が出てくるが…。
「なっ!失礼ですね!!最上位に決まっているでしょう!?これが3年4年だったら上位かもしれませんが、まだ僕は1年です!『宝玉階梯:エメラルド』なんてそうそういるはずがないです!」
ああ…やっぱり最上位か。
確かにてめえの言う通りかもしれねえな?
だが…所詮は平民。
まだまだ世間知らずの一般生徒か…。
下位と中位クラスの方が、必死に努力する姿勢が見えて、俺はあいつらの方が好印象だ。
「そうそういるはずがない…ね?てめえ、俺ら燦爛クラスについてはどこまで分かっている?そうだな…。『宝玉階梯』でも『宝玉部会』どっちでも良い。どれくらいだと思う?」
これでどう答えるかで、ここの教室の評価が決定しそうなもんだが…。
「そこまで知りませんが、まぁどっちの称号もサファイアではないですか?」
あ~なるほど。
殆ど評価は決まったようなもんだが、もう少しだけ質問するか。
「なるほどな。だがよ。どっちの称号もサファイアを取るためなら、基準としてサファイア級の魔物を倒す事が1つ条件にもなってくる。ま、それだけじゃねえがな。てめえ、サファイア級の魔物がどれくらいの強さか知ってんのか?いや、これだと答えづらいか。ならてめえは、エメラルド級は倒した事はあるよな。魔石も売ったはずだ。その魔石の値段は?いや、もっと言うならサファイア級を倒した経験はあるか?」
…『宝玉階梯:エメラルド』と『宝玉階梯:サファイア』には絶対的な差がある。
魔物で言うエメラルド級と、サファイア級の間に強さが跳ね上がるようにな…。
「当たり前にエメラルド級なら倒した事は何度もありますよ!魔石は銀貨8枚でした。サファイア級には出会った事がないため分かりませんけど、でもエメラルド級より少し上程度ではないですか!?」
ああ…やっぱり流石は平民出身だわ。
世間知らずだな。
「なら答えてやるよ。なんでサファイア級の魔物がてめえらの村や町に出現しねえのか。サファイア級はな、エメラルド級から急激に強さが跳ね上がんだよ。わかりやすく言ってやろうか?魔石の値段は金貨3枚だ。もっと分かりやすく言ってやるよ。銀貨にして300枚だ。どうだ?銀貨が1桁が3桁に跳ね上がったぞ?それだけ危険で強いんだよ。サファイア級ってのは。
つまりよ、てめえがさっき言った最低でも称号サファイア…まぁ魔術科だから『宝玉階梯:サファイア』ってのはなぁ、『宝玉階梯:エメラルド』とは比べられないほど差があんだよ。
んで、燦爛クラスだがな、全員がサファイア級の魔物を単独撃破してんだよ。そうさ。称号は全員が最低サファイアだ。『宝玉階梯』でも『宝玉部会』でもな。」
「は?サファイア級が…そんなに?」
くっく…ああ、顔色が悪くなってきてるぜ?
「ちなみにだがよ、ルビー級の魔物の魔石の価値は白金貨1枚と金貨5枚だ。銀貨で数えると…1500枚か。おっと、3桁から4桁に増えたなぁ?んでよ、俺は『宝玉階梯:ルビー』の称号を持つ、異名『無慈悲な閃光』だ…。」
「っ!!」
くっく…震えているなぁ?さっきまでの威勢はどこへやら。
「はっ…。まだまだ世間知らずだったなぁ?最上位クラスの魔術科のてめえさんよお?さらに言うと…てめえ、一体誰に向かってさっきまでの生意気にも口利いてたよ?俺の称号の『宝玉階梯:ルビー』だけじゃないぜ?てめえ、俺が七公爵家だって分かってて、そんな口利いてたって判断して良いんだよなぁ?
公爵家はな…侯爵以下4つの序列が複数歯向かっても簡単に潰せるんだわ。なぁ?どうするよ?もちろんてめえだけじゃねえぜ?親兄弟…指先でぷつりだ…。
どうした?顔色が悪いぜ?だから言ったろ?傲慢さが見えるぞと。」
「も、も、申し訳ございませ」
「『第3階梯:光:リヒトクーゲル』」
ズガンズガンと『灯火の星』『宝玉等級:エメラルド』で、そいつの頬のすぐ数ミリ外すように2発。
教室の床に穴が空く。
「…ああ?てめえよ。いざ俺みてえな危険な奴に遭遇した時、謝って済むと思うかぁ?おい?
…はぁ。疲れた。おい!そこの震えてる奴含めて15人!今ので如何に自分たちに力がまだまだ、備わっていないか、これで分かったな!?変に怒らせる真似はしねえで、素直に指南受けてくれよ?俺からは以上!」
……あ、そういやこの魔術で愚かな6人を抹殺したんだった。
「レグルス君…。下位と中位クラスよりも恫喝具合が凶悪じゃない?」
「…申し訳ねえ。」
アストリッド師団長の言葉に、普通に謝ったわ。




