68 魔術科指南2日目 『微笑む災厄』vs『干天の慈光』
「はぁ…立ち去ってくれましたか。ただ…面倒な事になりましたね。あの『霞みの隠者』さんが指南中、ずっと来るとなると魔術科の皆さんの指南に影響を及ぼします。私の方で、今日中に『緋色の魔術師団』団長さんに連絡をしてみましょう。」
「ちっ!全く師団長にのくせに放任とは、責任感ってもんがねえのかよ。自分と互角か上だからなんて、情けねえ理由とはな。さっさと退団させられねえのか?あの兜野郎をよ。」
ま、こうは言ったものの、奴に向けての本気の『第5階梯』の魔術を不意打ちの如く、早撃ちで放ったが余裕の態度で対応。
さらには下の『第4階梯』の魔術で相殺されちまった。
こちとら『煌きの星』の魔銃を使ったにも関わらずだ。
気に入っているわけじゃねえが、『無慈悲な閃光』の二つ名を持つ身としちゃ、屈辱でしかねえぜ。
「う~ん、どうでしょうねえ。ある意味、あの危険な人物を管理、見張るという目的で『緋色の魔術師団』からは外せないのかもしれません。退団させてしまえば管理下から外れるので、レグルス君の稼業である、裏社会に行きかねません。
まぁ、今日は引いてくれましたし、今日の指南に集中しましょうか。」
あの兜野郎の実力で、裏の住人に回られたら俺でも対処が難しいか…。
超遠距離からの気配を悟らせる前に、殺す事もできるかどうか…。
「クソったれが。だが今日の所は気にしてても仕方ねえ。よし、てめえら!あの兜野郎も出て行ったから魔術指南の開始だ!!」
「「「「はい!よろしくお願い致します!!」」」」
けっ!威勢の良い声になったじゃねえか。
「なんでレグルス君が指南開始の宣言をしてるのよ…。まあいいわ!指南の開始です!」
アストリッド師団長も同じく宣言して指南が開始された。
またしてもブリッツシュラークの謎のお転婆具合には、苦労させられたがもう間もなく指南の終わり頃だ。
つうかこのおバカ、ずっと元気に喋ってるだけで、魔術科の連中が困惑していると同時に…良いムードメーカーになってくれていやがった。
こういう部分が憎めねえし、楽しく感じるぜ。
全くよ。
そんな終わり頃の時だ。
アストリッド師団長からブリッツシュラークに話しかけたのは。
「さて、本日も終わりですが、ブリッツシュラーク様。模擬戦という形で手合わせ致しませんか?最初にいらっしゃいました、『霞みの隠者』様に真っ向から勝てるのはあなただけ。流石に『宝玉階梯:ルビー』の私と『宝玉階梯:ダイアモンド』のブリッツシュラーク様では、力の差がありますから、お手加減をお願いします。」
おいおい、マジか!
ブリッツシュラークに模擬戦とか危なすぎるだろ!
「おお~!!アストリッド師団長には~、あたしもとても好印象だからね~!!とっても優し~からさ~!!分かったよ~!!少しだけ手合わせしよ~!!」
「アストリッド師団長。こいつ、俺たち1年燦爛クラスでもかなりの規格外の力を持ってるから、気を付けてくれよ?んでブリッツシュラーク。てめえの魔術媒介の等級は?つうか、『宝玉等級:トパーズ』までじゃねえと、てめえの場合危なすぎるんだが?」
大体トパーズ級クラスの魔杖で教室を大破壊しまくっては、2ヵ月前の[ヴィクトル演習場]を荒地に変えやがる。
正に厄災級なんだよ。
…2ヵ月前ねえ。
「(―っ!!あ、ありがとうございます…。でしたら、ここ5階『星屑の回廊』のラウンジ/談話室か、サロンで構わないでしょうか?一応どちらも軽食もありますし…。―)」
ローズクォーツと後で会わなきゃならねえんだった…。
さて、どうしたもんかねえ…。
「うん?もちろんいつも使ってる『宝玉等級:トパーズ』の~、『始まりの杖』だよ~!!それじゃあ~良いですか~!!アストリッド師団長~!!」
「はい。大丈夫ですよ。ブリッツシュラーク様。魔術科の皆様も『霞みの隠者』が怖いとは思いますが、『微笑む災厄』の二つ名を持つブリッツシュラーク様であれば、対処は可能ですからあまり心配いりませんよ?そういう意味も込めての模擬戦です。ではブリッツシュラーク様、お願い致します。」
そう言ってアストリッド師団長は、ワンドの『黄金の篝火』を抜き出す。
全くを持って悔しい話ではあるが、『宝玉階梯:ルビー』と『宝玉階梯:ダイアモンド』には、実力差がかけ離れてやがるからな。
俺ら1年の燦爛クラスでの規格外は、クラートとブリッツシュラークの2人だろうよ。
アストリッド師団長とブリッツシュラークが前に立ち…おいおいまさか!?
「では…『第6階梯:光:ギャラルホルン』!!」
超巨大な七色の光の輪が出現、そして輪から虹色に輝くオーラの、強烈な高音波による衝撃波が真っ直ぐにブリッツシュラークを襲う!
光属性の魔術の中では『一撃』と言う意味では最高峰の攻撃力。
最高位の魔術なだけあり、命中すれば命の保証は…ない。
ここでそんな危険な魔術を放つかよ!!?アストリッド師団長!?
「おお~!!最高位の魔術~!!『第5階梯:雷:ミョルニル』~!」
入学時にクラートに向かて放った魔術、ズガガガアン!!と音を轟かせ、辺り一面が強い閃光で反射、巨大な青い稲妻の光線が放たれる。
特に驚きもせず、即座に大魔術を発動させられるのは流石か。
流石は『宝玉階梯:ダイアモンド』、最高位の称号持ちは伊達じゃねえな。
そして虹色の衝撃波と稲妻の光線がぶつかり、相殺されるかと思えば…
「は?おいおいブリッツシュラーク!マジかよ!?それ本当に『宝玉等級:トパーズ』か!?」
拮抗したのは少しだけで、あっさりアストリッド師団長の最高位魔術である衝撃波を消し飛ばし、稲妻の光線が突き進む!
「っ!!さすがはブリッツシュラーク様!!『第5階梯:光:ハイリッヒシルトシュピーゲル』!!」
アストリッド師団長の前方に神聖の鏡の盾が出現。
これに魔術で干渉すると防御と同時に、相手に跳ね返す魔術だがあっさりバリイン!!と青い稲妻の光線に打ち砕かれ貫通。
だが、既に横に飛んで雷の光線を躱し、
「お強い!!『第4階梯:光:グランツプファイル』!!」
ワンドからシュパアアン!!と光の矢が放たれ、ブリッツシュラークに飛来する。
「おお~!!流石はアストリッド師団長~!!『第3階梯:雷:ドンナークライト』~!」
ブリッツシュラークの身体にバチンバチンっ!と青い稲妻の衣が纏われ、高威力の光の矢をあっさり打ち消す。
…このおバカ、やっぱり規格外すぎるわ。
「もう一発~!!『第5階梯:雷:タングリスニル・タングニョースト』~!!」
2頭の青い稲妻の山羊に、超巨大なチャリオット(戦車)が出現。
そのままバチバチバチン!!と轟音を轟かせ大広間をバリバリバリ!!と蹂躙し始める。
「やっば!?『第5階梯:光:ハイリッヒシルトシュピーゲル』!『第4階梯:聖:ベシュロイニクング』!!」
再び盾を生み出し、僅かだけブリッツシュラークの稲妻のチャリオットと拮抗、しかし即座にバリイン!と割られるが、自身に高速移動のバフをかけて、アストリッド師団長は攻撃をどうにか躱す。
何だがなぁ…
「おお~!!躱したか~!!でもまだチャリオットは~!縦横無尽に走ってる~!!」
まだバチバチバチと音を鳴らしながら、走り回る2頭の青い稲妻の山羊と、チャリオット。
「ああ…仕方ねえ。『第5階梯:光:ゾンネルシュトラール』!!」
俺が『煌きの星』を抜き、相手を確殺するための、灼熱の太陽光線をギュイーン!!とぶっ放して援護。
一頭の稲妻の山羊の足元を貫通、そのままチャリオットの車輪に光線がぶつかりバランスが崩れ倒れ…ねえのかよ!!?全然走り回ってるぞ!?
「ブ、ブリッツシュラーク!!?そこまでだ!!?早く魔術を解除しろ!!」
アストリッド師団長は、どうにか高速移動で動きまわって躱してはいるものの、これ以上は危ねえ!!
「うえ!?あ!?ごめ~ん!?すぐ解除するね~!?」
でかい魔杖をぐるんと、一回転させて魔術を解除し、稲妻の山羊が消え去る。
「はぁ…危なかった~…。しかし流石はブリッツシュラーク様です。まぁ、こういう強いお方ですので、あの『霞みの隠者』様が来ていても平気ですよ。」
息を切らしながらも魔術科の連中に安心させる言葉を言うのは、数多くの団員をまとめ上げ、数多の戦場を乗り越えてきたからだろうな。
伊達に師団長の座についているわけじゃねえ。
だが…!
「おい、ブリッツシュラーク。てめえ、これから暫く『第5階梯』以上の魔術を使うのは少し控えろ…。」
「う~ん。皆~、ごめ~ん。」
やっぱりこいつの手綱を握らねえとな!!




