6 2人の奇襲
しかしこの教室、空間全てが真っ白くて、床から壁、天井に至るまで全てが『聖銀』で作られてんだけど?
なにこのピッカピカな空間!俺の魔眼を潰さないでくれるかなぁ!?
同じく『聖銀』製の巨大な教室の両扉を開けて、数メートル右横に演台がある形になってますなぁ。
その演台も…ああ!?アトリアのおバカ!!?鮮やかな赤色をしている、まさしくルビーの魔石のように煌いてる演台が…ぐっちゃぐちゃ…。
つか広!?何だここ!?俺含めて6人だろ?そんな少ない人数なのに、あのぐちゃぐちゃになってる演台を中心に、横幅が半径10メートルの階段教室に、教室の演台から最後部まで15メートルほどか?
んでと、眩くてうぜえ『聖銀』の壁や床に…ああ、なるほどね~。
シリウスさん?とやらが祝辞を述べてた[アウレリウス中央講堂]の柱にもあった、教室全体を快適な空間に保つ為の、複数に重なっている魔術刻印が刻まれているわ。
それと~?壁には『永久光波』の魔除けの魔術刻印が複数ございますかぁ…。
あれで教室の照明代わりにしてんの?ぅえ?アホなの?
さらにさらに~?アトリアの『第5階梯』がぶっ放されたにも関わらず、魔術やら物理攻撃を無効化する、特殊な結界が教室全体に張られてるね~。
ああ…これも魔導具かぁ~。
見えづらいけど『聖銀』の天井にまたまた手の拳サイズの赤く光る石が取り付けられるわぁ。
あれで障壁を作ってんのね~。
ふむふむ、『至高に栄光あれ』ですか~。
ええと?等級は~?はいはい、『宝玉等級:ルビー』…。
…あの、情報量多すぎてまた吐きそうです。
「ていうかクラっち!さっき蹴り飛ばした杖!拾ってきて~!あの魔杖それなりの一品なんだよね~。」
「お前…俺に問答無用で魔術を放った奴の言うセリフか?」
などと抗議しつつ勝手に拾いに行ってる俺…。
アトリアの二つ名、『微笑む災厄』は、俺が家を飛び出してから間もない時期に、魔物の大群が王国の心臓部、王都に押し寄せてくる大厄災が発生する大事件があったんだよなぁ。
原因は未だ不明だけど、冒険者組合で俺も呼び出され大厄災の対処にあたっていたわけ。
けどさ、俺の魔眼は1人の強者に対してはより真価を発揮するんだ…如何せん大量の雑魚の群れとなると弱くなるわけ。
数が多すぎて情報の奔流で苦しくなるのと、範囲攻撃を一切持っていないからさぁ、かなり厳しいんだよ。
まぁ…それでも他の騎士団員や冒険者よりかは、遥かに手際よく片付けていたけどさぁ~。
だ~って、俺の方が強いしね!!
でも…流石に数が多すぎて匙を投げそうになった時に現れたのが、目の前にいる…このおバカなアトリアだよ。
少女がいきなり最前線に出てきたからさ~。
そりゃさ、最初は一般人かと思い焦ったけど、こいつはゲラゲラ笑いながら一人で全ての大群の魔物を地形まるごと含め、焼き払ってしまいやがった…。
それを魔物の対処にあたっていた多くの者が見ていた事もあって、「微笑む災厄」という二つ名が付いたんだと。
その大厄災の際にアトリアからな~…
「(―ねぇ~?君すごくな~い!?倒された魔物の多くは君がやったものでしょ~?見てたからさぁ~!今度ダンジョン攻略ぅなんて面倒な役割を押し付けられたんだよぉ~。ちょっと手伝って~?んとそうだ!あたしアトリア!君はなんて名前なの~?―)」
とやたら絡んできたのが縁の始まり。
お調子者で厄介ごとばかり持ってくるものだから、面倒くせーとは思っていたんだけど~、魔眼の効力で根は良い子と解析されてるものだから、ときたまアトリアの手伝いをしていたんだよ~。
アトリアに俺が家出をしていると言ったこともあってか、手伝い分以上の報酬をもらっていたり、それこそ俺のポーション調達のための冒険者稼業を、少しばかしパートナーとして組み手伝ってもらっていたりと、アトリアにはお世話になっていたりとなんだかんだ感謝もあるわけさ。
う~ん!いいね!こういう関係性はさ!!
だからだろうね~、大魔術をぶっ放されてもなんとなく身体が動いてしまったのはさ~。
んで、蹴り飛ばした魔杖を拾い上げ、魔眼で見たら…ああ、やっぱりこのおバカなアトリアのあまりの規格外っぷりに驚きだよ!!?
魔杖の等級が…『始まりの杖』『宝玉等級:トパーズ』…。
ぅえ?何なのこのおチビ!?魔杖を渡すと同時に思わず叫んだわ!
「おい…アトリア!何が一品物だ!まだ見習い魔術師、『宝玉階梯:トパーズ』が持つ魔杖程度じゃねえか!こんなのでよく第5階梯の大魔術を放てたな!?」
この魔杖、長身を越えるロッド型で、何と言うか…全身が褐色の木材で、先端に透明感のある黄褐色の琥珀石が取り付けられている感じ。
「ひっど~い!?これはあたしなりの優しさなんだよ~!?『宝玉等級:アメシスト』以上の魔杖でクラっちに魔術放ったら、学園が焼け飛んじゃうんだからね~!?」
「焼け飛ぶ!!??いや、そもそも人に向けて魔術を行使する事自体がおかしいだろうが!!」
「クラっちは別格だから良いんだよぉ~!!どうせ魔術が当たりもしなければ、そもそもさっきみたいに2射目を放とうと思っても、何かしよ~って行動すると確実に妨害されるんだからさ~。」
「アトリア…。俺を何だと思っているんだ?俺は化け物じゃない普通の人間だぞ?」
「ヴぇ!?何を言ってるのクラっち!?十分規格外の化け物だよ~!?」
「俺からしてみても十分アトリアも規格外の化け物だ!!」
ごめんなさい!こういう関係!腐れ縁という関係も良いよねぇ、って言葉、撤回です!
などと~久しぶりの会話で少し和んでいるますとですね~、『深紅の魔眼』がアトリアではない別方向から魔術発動の気配を超予測で探知。
しかも俺とアトリアまとめて対象となってやがるんだが!?
ちっ!とっさにアトリアを抱きしめる形になりながら、ドンっ!と床を蹴り前方へ飛び転がる。
その直後俺とアトリアが言い争っていた場所に、上空から紫色のオーラとも表現できる高重力の力場がブウオオオオオン…と、降り注いできやがった!
『第4階梯:闇:フェッセル』
魔眼が魔術の解析をすると同時に、転がった先のすぐ背後に殺気を予測。
すぐさま飛び起き、エメラルド級以下の魔物であれば刈り殺せるほどの威力を誇る、右足を軸に左足によるスパァン!と後ろ回し蹴りで迎撃。
殺気を放っていたのは『宝玉等級:ルビー』の薄い桃色の刃の刀『桜花葉刃』を持つ、腰まで届きそうに長く、そして輝く艶の良いしなやかな素晴らしい金髪だ!!
顔立ちはお嬢様!という愛らしい顔立ちをしているのに…凛々しくもどこか無機質な碧眼の女子生徒…。
すう…可愛いね!じゃねえな!?
まぁただ、俺の後ろ蹴りはしゃがみ込むように躱される。
けど、その回避行動を起こす事はもう魔眼で予測済みだよ。
すでに回避されたと同時に、俺は下段の右回し蹴りで刺客者様を吹っ飛ばす。
「っ!!」
軽くあしらわれた事に驚愕しているご様子だが…それと同時に第4階梯の魔術を放った術者も別にいやがる。
「アトリア!!」
「分かってるし平気だよ~!!『第3階梯:雷:ドンナー』~!!」
アトリアがより速攻性を重視したか、重力魔術の術者に『第5階梯』よりも等級の下がった雷魔術で応戦。
ミョルニルほどの規模でないにせよ、バチバチ!と音を轟かせながら、青い稲妻が荒れ狂いながら飛来していく。
「『第3階梯:闇:シュヴェルクラフト』」
俺たちに攻撃をした術者がそう唱えると、紫の円状のオーラが出現し、強い引力でギュオオオンとアトリアの雷魔術を飲み込み相殺させた。
…は?マジで?相殺!?
「ありゃまぁ~…」
放った魔術を簡単にいなされた事にアトリアも俺と同様に、少し愕然としているよ。
何てったって、相手は何の触媒のない『素手』のみで『第3階梯』魔術を発動し、アトリアも『宝玉等級:トパーズ』程度の魔杖ではあったにせよ、同じ『第3階梯』級の雷魔術を打ち消しやがったからなぁ…
「流石ですね。お二人とも。特にクラート・ウンシュルトさん。私の魔術を回避するだけでなく、そこにいらっしゃる王女様の気配を察知して、対処なされたのですからね。」
そう言葉を発するのは腰まで長く砂の様にさらさらとした銀髪に紫紺の瞳…そして同時に端麗な容姿であるにも関わらず、鋭利で冷たさを感じさせる女子生徒…。
…何と言うか…あんな冷たさを感じさせなければ、めっちゃ可愛いんだが!?
「あ~、ごほん。お褒めの言葉はありがたいんだけど…アトリアもそうだが貴方も中々やってくるじゃんか。先ずは魔術を放つ前に名前を言うのが先じゃない?流石に酷くない!?」
「うふふっ。それは確かに。あなた方があまりにも楽しそうに戯れていらしたので、つい悪戯心が芽生えてしまいました。大変失礼いたしました。
私の名前はノート。ノート・フォン・ヴァールハイトと申します。先ほどの入学式で祝辞を述べていました、シリウスお兄様の妹です。
そしてあなた様が対処なされたお方はこの国の第2王女エルナト。
エルナト・ルクス・アラリオン・ルミナス殿下であらせられます。」
…ぅえ?この子さぁ、今とんでもない事を言わなかったかな!?




