53 いざ、ヴァールハイト家へ
「「「………」」」
俺はヴァールハイト家の4頭馬車に乗り込み現在、ルミナス王都内部の、王宮や七公爵の壮麗な屋敷が立ち並ぶ最高級エリア、『王都ルミナス・貴族街』へと向かっていま~す。
そもそも、ルミナス王都が非常に広大でありまして、王都内部の一画に学園都市として、ルミナス王立学園、演習場、及び1~4年生のそれぞれ分かれた、平民寮の大区画があったわけです。
なんでこんな大事な事をもっと早くに説明しなかったのかって?
だ~ってさぁ、俺は学園都市とすぐそばの城下町しか行かなかったんだも~ん!
と言うわけでここはルミナス王都内。
城壁街にある、俺とレグンが激突した魔物の森にエメラルド級までしか存在しないのと、行商人が通る道がきちんと舗装されてる理由もよ~くお分かりになりました?
あ、そんな事を言うとじゃあ今度は、その貴族街にあるウンシュルト家があるんじゃないかってかぁ?
うんうん、安心したまえ!
この王都の貴族街には、七公爵家と、エルナトも居る王宮しかないから!
王都内で下手な派閥争いとか防ぐ為なんだろうね。
侯爵以下の貴族は王都の城壁外の、ルミナス王国各地の点々と存在する貴族街から特殊な魔導馬車を使って、ルミナス王立学園、及び学園都市まで来るんですわ。
とは言っても、この『魔導馬車』は伯爵以下では手が出せない程、高価で魔力も大喰らいらしいから、侯爵家以上じゃないと持ってないんだと。
その魔導馬車は連続で短距離のワープ機能があるんだ。
その短距離の跳躍を繰り返すから魔力がガリガリ減っていく。
ならば消費した魔力をどう補充するのか、それは、魔物から採れる魔石を加工した『魔法石』で補充するわけ。
学生も侯爵以上なら胸に校章として付けてるだろ?あれさ。
まぁ…魔法石は如何せんそこそこ高いからねえ。
魔法石の魔力が無くなったら、また取り付けのし直し。
メリットもあるけど、その分、デメリットもあるわけさ。
その魔導馬車が『空間跳躍馬車』『宝玉等級:ルビー』という魔道具なわけさ。
ウンシュルトにもあるよ。
アホみたいにでかい領地で、他侯爵とは比較にならないほど強い家系だからね~。
…だから魔眼に拘るなって!!
ま、レグンも『空間跳躍馬車』で王都まで来て、俺を連行しようとしたんだろうね。
かつての大厄災も王都にブリッツシュラーク家があるから、アトリアのおバカがゲラゲラ笑いながら魔物群を大殲滅したわけですな。
しかし夜7時くらいだからかねぇ…。
まだまだここら城下町は賑やか賑やかっと!
石造りやレンガ造りの重厚な建物と、木組みと白壁の密集した家々、店の軒先に吊るされた、様々な看板や旗が立ち並ぶ城下町…。
人々の賑やかな話し声や、子供のはしゃぐ声、露店商の、威勢のいい呼び声、酒場から漏れ聞こえてくる、陽気な演奏などがよう、聞こえる聞こえる!
そんな中を、このヴァールハイトの家紋のある4頭馬車がガラガラとゆったりと、進んでいますわ。
ただ違うのは、学園都市から真っ直ぐに伸びる、磨き上げられた大理石の大通りの上を進んでおります。
学園都市や城下町を交差する形で、出来上がった大理石の大通り。
でもこの馬車の中…気まずいですよ!!
俺とノートが隣同士で座っていて、その反対側にシリウスさんが座っているんですね~。
正直言ってノートとべったりくっついて遊びたいんだが…
「………。」
はい、シリウスさんの前で出来ませんね。
と思っていたのだが、ノートの方からもう自然にふらりと肩に寄りかかられましてね。
そんな事をされたら、いつものように俺が反応して背中から抱きかかえてしまったんですねぇ…。
完全無意識の行動ですわ。
「ひょえ!?ふへ、うへへ…」
う~ん!たまらん!この反応がとにかく可愛いです!!
もう勝手に手が長~い綺麗な銀髪をしているノートの、頭にもそのまま手が伸びてそのまま、なでなでとしてしまうんです。
人間、慣れって怖いですね。
「ひゃい!ぐへ、ぐへへ…」
う~ん、楽しい反応です!もっと遊んで…はっ!!
「…ん?何だ?別に私の事など気にする必要はないのだが…。ふむ、しかしそのノートの反応は、私も初めて見るな。ふっ。やはりお前、ではなかったな。クラートであれば信頼が出来そうだ。」
「「……お見苦しいところをお見せしました。」」
凄い恥ずかしいです!
なんてことでしょうか!身体がもはやノートを必要としているとは!
微笑みを浮かべるシリウスさんに見られてしまいました!
そんな恥ずかしい光景を見られていたら、気付けば城下町の喧騒が消えていますねぇ。
遠くで時を告げる王宮の鐘の音だけが、何だか響いていますわ。
チラリと馬車から外を覗けば、…貴族街へと続く大門が見えています。
やがて門を潜り抜ければ、凄く広く、あの何だかやべえ超でっかい王宮を囲うように、磨き上げられた大理石の『円周道路』の大通り!
大通りには芸術的な装飾が施された、『魔街灯』『宝玉等級:サファイア』でよーくしっかりと照らされております!
道の片側には、この円周道路に高い塀がどこまでも続いてるね~。
んで、高い塀が途切れてる場所もあって、豪奢な鉄門の前には大きい丸い広場がありますなぁ。
ああ、この門と広場の奥にそびえ立つ、白亜の壮麗な屋敷…と言うか城が見えますけれど~、これが七公爵家ですか。
でっかいよぉ!?家々の門には、家紋を刻んだ旗が、静かにはためいているし!
…ありゃ、アトリアのおバカいる家か!?
ブリッツシュラーク家(雷・苛烈)
『青銅の尖塔』:青銅の屋根を持ち、天に向かって、避雷針のように鋭い尖塔が何本も突き出している、ゴシック様式の城館。
…え?怖いんですけど?雷魔術を司るのは知ってるけどさぁ…しかも苛烈!?
「(―あたし、1回でもいいから魔術をクラっちに直撃させることが目標なんだよね~。―)」
…すぅ、うん、苛烈だわ!だってゲラゲラ笑いながら大厄災の時も超広範囲に渡って、そこら一帯が消し炭になってたからなぁ!
王都のすぐ傍でやるな…と言いたいが、レグンも森で大惨事やってたしなぁ~。
スピカと改めてみてきた時は、それはそれは小さな隕石が落っこちてきたような有様だったし…。
そんでもってあれが…ううん!?レグルスのお家かい!?
グラオザーム家(光・暗殺)
『影に潜む館』:高い塀と、鬱蒼とした木々に囲まれ、外からはその全容がうかがい知れない、ミステリアスな屋敷…。建物自体は白亜で美しいが、どこか影がある。
…はい、アトリアと同じくとても怖いですね!
流石は裏社会の住人を抹殺する、執行人の家系でございますね!
あのさぁ?レグルスのお屋敷?の前には何でか他の公爵家と違って、マ~ジで鬱蒼とした森で囲まれて、豪奢な鉄門も見えないし、丸い広場もない!なんかこの森の奥を突き抜けないと、よく分からん!!
そういや、最近あの2人とここ1週間ばかし大波乱だったから、全然会えてないような気分にもなってくるわい。
そんでもって、あれがエルナトもいる王都の中枢、心臓部の王宮かいな。
ルミナス王宮(神聖 ・絶対・ 光)
最も高い丘の上に、ルミナス王宮は鎮座していますなぁ。
純白の大理石で築かれた超広大なその城で、天を突く幾本もの黄金の尖塔がさぁ~、常に太陽のような輝きを放っているんだが?
城の周囲に…その…、大地から切り離されたいくつかの浮島があるんですが…?
「あの浮島が気になるか?あれは王家専用の庭園だ。天から、小さな滝も流れ落ちているしな。あれを見て驚かない方がおかしい。私も未だに信じられない光景だと感じている。
そして、王宮全体に金色の輝きを放つ光は、超高度の守護結界だ。あれこそがルミナス王国が巨大な一大国家であり、絶対的な権威の象徴でもある。だからこそ、我がヴァールハイト家も含めた七公爵邸すらも臣下として従えられるわけだ。」
シリウスさんが丁寧に説明してくれていますけれども…え?なんなのぉ~あれ?あそこにエルナトいるんですかい?
何ですかい!?ぜいたくだなぁ!?あの一つ一つの浮島自体が魔導具じゃんかい!!
俺の『救済の魔眼』を舐めるなよ~!!解析によると~、『天を浮遊する庭園』!!
そして『宝玉等級:ルビー+』ですか。
いや待って下さい!?『ルビー+』ですって!?
…まぁそうだよね~。
意味わからんもん、浮島とか。
…けれどあの王宮の黄金の輝きは…、俺の『深紅の魔眼』いや、『救済の魔眼』が言っている。
あれは…ほぼ侵略不可能な、絶対的な防御結界だわ。
あの結界自体が魔導具…なのか?
魔眼からだとあれの結界名は…『たゆたえど沈まず』だが…。
けれども『宝玉等級:測定不可』となってるんだが…?
姉さんが堅苦しいと感じる気持ちもよく分かる。
しかもあの場にだって、姉さん程の強さは…流石にないと思いたいが、第1位の『金剛騎士団』が守護しているわけだろう?
「あの、シリウスさん。俺の姉さん…『雷滅の鬼神』に相当する実力者があの王宮に、7人もいるんですか?」
そんな俺の王宮の壮大さにドン引きしながら、質問を投げかけると、少し目を瞑ったシリウスさんが答えてくれる。
「…流石に『雷滅の鬼神』程の強さを持っている者はいない。だが、副団長は『雷滅の鬼神』同等か、或いはそれよりやや上の実力者だ。
そして…『金剛騎士団』団長の…第1王子である、アルニタク・ルクス・アラリオン・ルミナス殿下は『雷滅の鬼神』の数段上の実力者だ。」
…は?おいおいおいおい!?今とんでもない事をさらりと言ったな!?
第1王子が『金剛騎士団』団長!?
「そ、そうなの!?ノート!?ぅえ?だからエルナトも戦闘おバカになってしまったの!?」
ついつい大好きでかつ、最早自然に接する事が当たり前となっている、ノートに顔に詰め寄りながら話しかけてしまった…のだが、
「ふひゃい!?ちちち、ちかちかか近いクラートさんの顔…う、うへへ…」
「…まさか、ここまで妹のノートがこのような反応をするとは…流石に驚いたな。本当にクラートを心の底から愛しているようだな。
流石に第1王子なだけあって、非常に温厚なお方だ。エルナト殿下含めた王家自身も、相応に実力者揃いと言う事だ。殿下全員が最低でも『宝玉階梯:エメラルド』或いは『宝玉部会:エメラルド』だ。故に我々七公爵家がひれ伏すわけだ。」
はぁ~!!?ルミナス王家こっわ!!
「うへへ…クラートさんに、ぐへへもたれかかろ~。」
おいおい、可愛い過ぎかな?はいはいよしよし~…ってはっ!!
「ごほん。そ、そうなんですね。あまりあの場に近づく事は止めよう…。」
俺は冷や汗でいっぱいだよ。
「まぁ、それ程緊張する必要はない。我がヴァールハイト家も懇意になっているわけだからな。さて、もうすぐ我が家だ。」
シリウスさん、あの化け物揃いのルミナス王家に対して全然平気なんですね!
さて、あれが俺が今後俺がお世話になるヴァールハイト家か…。
スピカ…、大丈夫かなぁ…。
ヴァールハイト家(闇・重力・粛清)
『白と黒の城館』:磨き上げられた白亜の大理石の外壁に、屋根や窓枠、尖塔の鋭い先端には、光を吸い込むような『漆黒の黒曜石』があしらわれた、モダンで冷徹な印象の超広大な城館…。
まるでチェス盤の駒のような、白と黒のコントラストじゃ~ん!素敵~い!!ひゅ~!!
シンメトリー(左右対称)を基調とした、完璧な幾何学的な美しさがありますねぇ。
窓は細長くて、あまりに整然とし過ぎているから、逆に人を寄せ付けない雰囲気なのかな?
う~ん、まぁ…さっきのアトリアとレグルスのお屋敷よりは幾分、人の住処っぽい…のか?なんか…燦爛クラスの教室扉にもあるような、複雑な魔術刻印が門にも刻まれていて不思議だ。
ふい~、丸い広場の鉄門に馬車が近づくと、勝手にギイイ…と開きましたね!
そうして3人で馬車を降り、馬車を引く家臣の人が4頭馬車を引いて行った。
玄関ホールまでたどり着く。
う~ん、でっけぇ巨大な両扉だわい。
そしてシリウスさん、が開けると…中には、
「ただいま戻りました。父上、母上。そして、我がもう一人の新たな家族、スピカ・アイスベルク。」
ふぅえ?今なんて言いましたか?
「く、クラート。先にヴァールハイト公爵様の邸宅に到着したの。ノートさんのご厚意で。」
「す、スピカあああ!?」
俺は驚きで大パニックを起こしたわい。




