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魔眼の名門家の俺は、常時発動するタイプの魔眼のせいで平穏な学園生活を送れません!  作者: はーにゃ
3 騎士科稽古

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46 告白

「「………。」」


 あの惨劇の跡地を見た後、俺とスピカで帰路につき、昨日と同じく蒸し暑い部屋で抱き合って眠りについた。

 そして、今日こそノートと向き合わなければならない。


 俺とスピカの2人で、1年生の上流科校舎の最上階、燦爛クラスの教室まで歩いている。


「(―はぁ、はぁ、まだ!!何か言い訳はありますか!?―)」


 ノートの涙を思い出す。


「(―ふざけないでよ!!―)」


 本当にその通りだ。

 それでもスピカが大事なのと同じく、ノートも大事で好きな人である事には変わりはない。

 無視されてしまうだろうか?また以前のように仮面を被った状態になってしまうのか。

 今日を合わせてあと3日で騎士団との稽古は終わる…。

 それまでに何とか関係性の修復をしたい…。


「クラート…ごめんね。私がノートさんとの間に入った事で軋轢を生ませてしまったわ…。」


 はっと、気付くと冷や汗せで滲み、スピカの制服の袖を思わずギュッと握りしめていたみたいだ。


「はぁっ…はぁっ…い、いや、スピカには何の責任もない。あの場所でスピカへの確かな恋に気づいてしまった事には変わりはないのだからね。ただ…スピカと同じくらいノートも大事である事に変わりはなくて…済まない。スピカ。ははっ…。浮気性の俺を許してくれ…。」


 本当に何を言っているんだ俺は。

 スピカにも、ノートにもあまりにも不誠実な言葉を今、吐いてしまった。

 隣のスピカはどんな顔をしているだろうか。

 見るのが怖い。

 昨日、あれ程スピカに救われたと言うのに…。

 それを踏みにじる言葉だ。

 俺の顔から汗がつー、と垂れてくるのが分かる。

 喉が渇く。


 それでも、先ずは確かめなければいけない…。

 逃げてはいけない。

 スピカがどんな表情を浮かべているのかを…。


 だから…ゆっくりと顔をスピカに向けようと…。


「平気よ。クラート。それ程までに責任を感じる必要はないもの。私に愛情を注いでくれたように、ノートさんにも、愛情を注いであげて?」


 …ぅえ?どゆこと?流石に男として言ってはいけない言葉を俺は吐いたよ?


 隣のスピカの方に、思わず驚きでさっと顔を向けると…。

 スピカはいつの間にか、微笑みながら『極冠の魔眼』を輝かせていた。

 不思議だ…。

 何故、この蒼い輝きを見ると心の緊張と荒れ具合が落ち着くのだろう…。


「…スピカはそれで良いのかな?俺は…スピカにも、ノートにも失礼極まりない言葉を言ったよ?君にあれだけ救ってもらったにも関わらず…。」


 俺がそう言うと、スピカは俺を抱きしめてくれて、


「大丈夫。私もまた、クラートに凄く救われたわ。もう、2日前の弱い私はいなくなったの。この魔眼を誇れるようにしてくれたのは…クラートなの…。だから、今度はノートさんと仲直りして?」


 そうか…。

 強くなったんだんだね、スピカ…。

 ごめんね?そして…ありがとう。







 廊下の一番奥、1年の燦爛クラスの巨大な両扉に魔術刻印が幾つも刻まれた…もはや見慣れてしまった教室の扉の前。

 …もう、ノートは中にいるのだろうか…。

 はぁ…だめだなぁ…。

 いつものように開けられねぇ…。


 だが、スピカの手前、開けないわけにはいかないか。

 …スピカが震える俺の手に、手を重ねてきてくれた。

 スピカの方を見れば微笑みながら、頷いてくれている。


 であれば!いざ開けるかな!!



「クラートさん。スピカさん。ごきげんよう。昨日はよく休めましたか?」


 ひえ!?

 ノートの声が後ろからするんだが!?

 冷や汗がダラダラ垂れているが、答えるしかあるまいか!


「ひゃ、ひゃい!よよよ、良く、から、身体を、ややや、休める事が、で、出来たひょ?」


 …おい、めっちゃ情けなく喋れてないじゃんよ!


「フフッ。おや?上手く喋れてないですね!今からお話出来ますか?」


 あらあらまあまあ…ホームルームはもうすぐだが…これは間に合わないか~。


「………スピカ。先に中に入ってもらっていいかな?先生が来たら上手く説明してもらっても良い?」


 緊張と不安で俺の顔が扉に真っすぐ向いたまま、スピカにお願いをする。

 正直ここまで助けてもらったのに、まだスピカに甘えようとしている俺は…バカ野郎だね。


「うん。よく、きちんと対話してきて?」


 そういって先にスピカには教室に入ってもらった。

 しかし……あああ!!だめだ!!振り向けねえ!!

 でも、先ずは謝らないとかな。


「…ノート。先ずは一昨日は君に酷い不誠実な対応をしてしまったね。済まない。これもまた、一昨日にも言ったけれど、言い訳の言葉もない。本当にごめん。」


 ううむ、正直に言ってあの死にそうな重力の魔術はくらいたくはないが…、必要とあらば受け入れるしかあるまいかなぁ…。


 そんな事を思いながら背後にいるノートに謝罪する。


「クラートさん…。ここでは話づらいでしょうし、この最上階には幾つかサロンもあります。そこに移動しましょう。」


 ええ?サロン?俺そのうち1つの部屋でとんでもない、ハイパワー殺意マシマシ重力魔術をもらったんですよねえ?

 またあれ、やられるのぉ?


「フフッ。別にもう変な真似はしませんよ?普通に対話がしたいだけです。」


 ほんまかぁ?不意で魔術を放ってこない?


「…はい。」


 声ちっさ!!










 教室扉まで向かう最中にある、一際美しい装飾が施された、マホガニー製の両開きの扉。

 中央に、ルミナス王立学園の校章が小さく刻まれているだけ。

 燦爛クラスの生徒が、その校章に自らの『学生証(スコラ・ファーブラー)』をそっと触れさせると、校章が淡い光を放ち、「カチリ」と、心地よい音を立てて錠が開く…。


 なんともまあ、よく分からない仕組みよなあ。


 その扉の向こうは、まあとても静かでさぁ、穏やかな空気に満ちた空間よ。

 ご丁寧にも磨き上げられた床には、足音を吸い込む、深紅の絨毯。(俺が重力魔術を喰らった色と同じだね!!)

 まぁ、この絨毯さぁ…まぁ俺が?最悪血をげろってたり、その他汚れを自動で勝手に浄化、清掃する『浄化の紅絨毯ピュリフィコ・タペータ』だぞ!!『宝玉等級:エメラルド』ですねぇ。

 壁際には背の高い本棚が並び、天井からは、シャンデリアがあるんだけど『光石(ルーメン・ラピス)』って呼ばれる『宝玉等級:エメラルド』の特殊な魔宝石が取り付けられてる。

 それが明かりとなってここのラウンジを、ああ…良い感じで照らしてるんだね~。


 部屋の中央には、数人がゆったりと腰掛けられる、大きなビロード張りのソファと、低いウォールナット材のローテーブルが置かれているだけだね。

 部屋の隅には、望んだ飲み物が静かに湧き出る、『万象の噴水(オムニア・フォンス)』『宝玉等級:ルビー』が、かすかな水音を立ててチャラチャラと静かに耳に入って来るね~。

 …スピカと恋に落ちた時も、この音が響いていたね。

 あ~んで、窓はないさ。

 ただ、壁にかけられた数枚の壮麗な風景画さ~、魔術によって時折、描かれた木々がそよぎ、雲が流れるんだけれども?はぁ?これも魔導具じゃん。

 ん~魔眼の解析だと、『芸術のための芸術アルス・グラティア・アルティス』『宝玉等級:アメシスト』…。

 いらねえだろ!!こんなにたくさんの風景画!!


 そしてはい、一般校舎にもありました『氷結石(ゲルム・ラピス)』の上位互換!

 その名も!『大理石の冷暖炉マルモル・コルコンディア』『宝玉等級:ルビー』がある!!

 これは季節ごとに快適な空間を保つ為、夏なら氷結の冷風を、冬場なら暖炉として炎を灯して温める!

 これねえ、魔力も使わなければ、魔法石なんかの補充もしないで良い、やべえ代物だよ!!

 これ俺の寮にも欲しいです~。


 まあそれくらいかな~。

 けれどもさ、その一つ一つの調度品が最高級でね、そして、外の喧騒も一切届かないこの完璧な静寂こそが、ここが「特別」であることの、何よりの証明だぞ!!



 んて、そんな説明なんてどうでもええねんよ!!

 凄く気まずいのだが!?

 ていうかマジで重力魔術はやめて!!

 あれ本当に死ぬ!!マジで!!


 しかし…そう思うとやっぱり優秀な魔術師なんだよなぁ~。

 俺が死にかけるほどだもんね!!



「「……」」


 んでまあ、談話室にもあった万象の噴水から、俺はこの前と同じ果実水を、ノートは紅茶を。

 そして対面する形で座っている。

 まあ、俺は流石に罪悪感で俯いてるけど…。


 今更謝っても仕方あるまいか。

 正直俺の言葉には何の説得力もない。

 ただ、ノートも黙っているみたいだし、こっちから切り出すかな。


「今更もう謝っても仕方がないから、正直にいうね。姉さんと喧嘩した後、皆俺に寄って来なくてさあ、1人だったんだよね。俺と姉さんが姉弟でしかも俺は魔眼持ち。仕方がないよね。異次元みたいな喧嘩して、俺の眼光は禍々しく紅い。誰も寄ってこないし、騎士団の人たちに指南してもらっているから、もう俺の出番はなくなった。なんか皆楽しそう?でいいのか知らないけど、ハキハキと自分たちで動いてるからさ、まあ、寂しかったかな?だから…スピカに話しかけられたときは、内心嬉しかったんだ。やっと一人じゃなくなったってね…。魔眼持ち同士の悩みの傷の舐め合いさ。その勢いでね、つい、俺からスピカにキスをしたんだ。だから…あ~…まぁ本当にノートに…っ!!!」


 俯いてまま、俺がぽつりぽつりと話をして、ノートには悪い事をしたね、と言おうとしたら…ノートは俺の座っているソファに来ていて、抱きしめれるように押し倒されて、思いっ切り押しつけるようにノートが唇同士を重ねてきた…。


「っ!!…ぷはあ…!ノ、ノート!?何で…?俺は君に…」


「クラートさん。好きです。私も本当に大好きなんです。」


 正直に言ってびっくりしたよ。

 何故?俺は君に悪い事をしたのに…。


「クラートさんの孤独を私は分かってあげられなかった…。クラートさんはどうですか?私が大事ですか?」


 俺はソファに押し倒されたまま、ノートは顔を赤くしながら、それでも真っ直ぐ俺を見つめている…。

 だから…


「うん…。君の事もとても大事で…俺もノートが好きなんだ…。ごめんね?そして…ありがとう。浮気性の大馬鹿者をまだ好きでいてくれて…。」


 そのまま、ノートはもう一回俺に身体の上に倒れこむように、抱きしめて…。そして俺もまた、抱き返して…お互いの眼を見つめて…もう一度、唇同士を重ね合わせた。


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