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魔眼の名門家の俺は、常時発動するタイプの魔眼のせいで平穏な学園生活を送れません!  作者: はーにゃ
3 騎士科稽古

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44 『戦闘狂』vs『静謐なる支配者』

 フォルカー団長の言葉で、今日はクラートとスピカは教室には来なかった。

 ノートを含めた燦爛さんらんクラスの4人…いや、レグルスとアトリアはピリついた空気感に戸惑いながらも、何かを察していたな。

 …昨日の教室で、あの3人はひたすら無言でどんよりした空気の中を放っていたからな。


 そして…私、エルナト・ルクス・アラリオン・ルミナスは今、上流科の使う演習場…2ヶ月前のクラス混合試合で使われた、地下3階の[ヴィクトル演習場]のアリーナの、ど真ん中で、試合で愚か者2人を痛めつけた刀…『紅焔閃火こうえんせんか』『宝玉等級:ダイアモンド』を左横に置き、目を瞑り正座をしている。


 私は…クラートをどう思っているのだろうか?

 入学式早々に斬りつけようとしたにも関わらず、常に私と対等に会話をしてもらっていた。

 おかげでクラートには、何となく心を開いて、今では親友の感覚で小突いたりもしているな。

 フフッ…。


『雷滅の鬼神』に敗北した私に真っ先に駆けつけてもらっていたか…。

 あいつは優しすぎる。

 稽古の3日目、私以外が現れず、稽古終わりでようやく姿を見せたかと思えば…本当に初めて見る大怪我をクラートは負っていて、内心私は驚いていたよ。


 あの大怪我の中、ノートに不誠実な対応をして、悪い事をしたと涙をこぼす姿は…あまりにも痛々し過ぎた。

 ノートの仮面を被るような姿よりも、クラートと夫婦漫才をしている2人の方が…私は遥かに好みで居心地が良い…。



 だから…。



「一体何の御用でしょうか?エルナト殿下?[ヴィクトル演習場]に私をお呼びになるとは…。今私はエルナト殿下にあまり構っていられる程の余裕がありませんので。早くご用件をお伺いしても?」



 …全く、かつての仮面を被るか。

 いや、それ以上に人を寄せ付けない態度になっているか。

 …ノート、まだ仮面を被っていた入学当初、お前は度々変な声を上げていたな?

 それがどうしてまた…全く…。



「…遅いぞ。ノート。用件などとっくに分かっているだろう。」


 私は背後の後方にいるノートに言葉を投げかける。


「はて?全く分かりませんねぇ?説明していただいてもらってよろしいでしょうか?エルナト殿下?」


 …この馬鹿者め。

 なぜ敢えて[ヴィクトル演習場]に呼び出した事くらい分かっているだろうに。


「とぼけるのか?ノート・フォン・ヴァールハイト。もう分かっているはずだ。この場所で、ノートは救済されたはずだ。何故またその下らない仮面を被る。とっととその態度をやめろ。迷惑だ。」



 目を開き、私は前を見据えて背後のノートに語りかける。



「…救済ですか?うふふっ。おかしな事を仰いますねぇ。エルナト殿下らしくありませんわ?それに…迷惑などかけておりません。もしそう感じるのでしたら、私から離れればよろしいのでは?」


 …ちっ。

 何処までも強情な幼馴染だ。

 切り出すしかあるまい。


「…ノート。もう十分にクラートはお前から罰を受けた。致命傷に近い程の傷を負わされるまでにな?昨日、稽古終わりでようやく姿を現したかと思えば、クラートは怪我が全く治っていない中であるにも関わらず、ひたすらにお前に謝っていたぞ。お前の魔術を受けながらも、何か言っていたのではないか?」


 さて、どう答えるかな?


「………………………………………………………………………………はて?何も。」


 

 そうか。

 もうそれが答えだよ、ノート。

 私は刀、『紅焔閃火こうえんせんか』を左手に持って立ち上がり、振り返る。

 …はぁ、能面のような顔をしおって。


「その長い沈黙が答えだ。ノート。クラート魔術の痛みを受けて耐えながら謝罪と、お前が大事だと言っていたんだろう?クラートは涙をこぼしていたぞ。クラートだけではないぞ。お前もクラートが好きでたまらなかったからこそ、裏切られたと言う反動で、そんな下らない仮面を付けている。…今一度向き合え。お前がそのような態度ではお互いまともな対話もできまい。」


 私はノートの能面の目を見据えて、敢えて踏み込んでやる。

 ああ、ようやく怒りの顔を覗かせたな。

 身体が怒りで震えているぞ?


「…エルナト殿下。あまり、私を怒らせないでいただけます?エルナト殿下と言えども容赦はできなくなりますが?」


 容赦しないか。

 随分と強気になれたではないか。

 …いや、その返答は前もって分かりきっていた事。

 用意していた言葉でも返すとしようか。


「ふむ…。果たして私に勝てるかな?ノート。私はこれでも…『宝玉部会:ルビー』だぞ?」


 さて、私のこの言葉にノートもまた…あの称号を言うだろう。


「…言ってくれますね?エルナト殿下?私も『宝玉階梯:ルビー』なのですが?それでも私に歯向かいますか?」


 ははっ、やはりそう来たな?やはりその称号を名乗ったな!

 敢えて怒らせてやろう。


「ふふ。その返答が返ってくることは分かっていたぞ?ノート。やはり称号を名乗ったな?…かつてお前の劣等感から救いあげてくれた者は…一体誰だったかな?自分は強いと、才能があると自覚させてくれた者の名は…果たして誰だったかな?」


 フフッ。

 ああ、そうだ!怒れ!感情を吐き出して見せてみろ!!


「っ!!!先に裏切ったのはクラートさんです!!!どうせ今、スピカさんとデートでもしてるのではないですか!!?もうとっくに私の事なんて忘れていますよ!!これからどんな縁があろうと私の方が大事だと言ってくれたのにも関わらず!!その当日に裏切っていたんですよ!!!魔眼持ち同士で今頃、傷の舐め合いでもしているのでしょうね!!!」


 くっく…おそらくそうだろうな!

 ああ、私もそう思う。

 なにせ、フォルカー団長の言葉に甘えて出掛けようと、デートに誘っていたのだから!


 だが…それでもノート、お前の事は忘れているはずがない。

 なぜなら涙をこぼしながら、俯いて悲しそうな顔をして、スピカを誘うはずがないからだ。

 本当に、心の底からお前たち2人を大事に思っているはずだ。


「だったら何だ?諦めるか?まあ、私はそれでも構わないが。だがノート、お前は対話もせずに、その仮面を被り続けるつもりか?今のように下らない癇癪を起すのか?悪いがそれは勘弁してもらおう。私の心の平穏の為にもな。」





 カツン…、カツン…、とゆっくり怒りの顔を浮かべながら私の方に歩いて、対峙してきたか。

 2人だけの円状のアリーナ型の演習場で、ビリビリとした空気感で満ち溢れる。






「ふぅ…ふぅ…ふぅ…っ!!!もう…容赦は…しませんよ…!エルナト殿下!!」


 ああ…身体が前のめりになって、肩が吊り上がっているなぁ?相当歯を食いしばって怒りに満ちた顔だな。


「ほう?良いだろう。私もノートがどれ程強いのか…試させてもらう。」



 私は刀…『紅焔閃火こうえんせんか』を抜刀する。

 ああ、懐かしい…。

 この紅い刀身を見るのは久方ぶりだ…。

 これを持ってお前と共に愚か者3人をぶちのめしたなぁ…。



「っ!!『第4階梯:闇:フェッセル』!!!」


 ノートが掌を向けての先制攻撃。

 上空から拘束の重力が降り注ぐ。

 それに対して…。


「『基本剣術:弐ノ防(にのぼう)空蝉うつせみ』」


 ぐるりと瞬時に回転し、残像を残して拘束魔術を躱す。

 だが、次から次へと…。


「『第1階梯:闇:ゾーク』!!『第3階梯:闇:アプシュトースング』!!」


 引力で強引に私を引き寄せての、反発、斥力の魔術のオーラを右膝にためて吹き飛ばす算段だな?

 ククッ。

 ノート…お前を甘く軽んじ、あの殴ろうとした愚か者、フローライト・ツー・ノルムにとどめを刺した事と同じ事をしているな?


 まあ、わざわざ縮地で接近する手間が省ける。

 力勝負と行こうか?ノートよ?


 グウンと一気にノートに引き寄せられてゆくエルナト。


「お覚悟!!エルナト殿下あああ!!!」


「さて…。『日神剣術にちじんけんじゅつ壱ノ型(いちのかた)旭日火輪きょくじつかりん』」


 膝蹴りが当たる瞬間、グウオオオン!!と斬りあげる。

 反発、斥力の右膝蹴りと、私の日の円を描く真下からの下段斬りがぶつかる。


「ククッ?どうした?その程度か?それだと『雷滅の鬼神』の足元にも及ばないぞ?」


「っ!!!お黙り下さい!!エルナト殿下あああ!!『第3階梯:闇:ドルック』!!!」


 ほう?真上からの圧力での押しつぶしか。

 だがな、集中力が途切れて本来の力を発揮できていないぞ?

 そら、『第1階梯:闇:ゾーク』の魔術が途切れてる。


「『基本剣術:弐ノ防(にのぼう):空蝉』。『基本剣術:祖ノ壱(そのいち)一閃いっせん』」


 圧力攻撃をシュン!と残像を残しての右回転しての回避、そこから神速の一閃をスン!と薙ぎ払い。


「あっ!!くっ!!『第2階梯:闇:ラスト』!!」


 おや?優しめな魔術じゃないか?私の身体を重荷で鈍らせるだけとは。

 …全く、本来ならばもっとお前には強烈な攻撃魔術があるというのに…。

 だから…本来のお前は優しい性格をしているのだ。


「お優しい事だな?ノート?その程度だと私は止められないぞ?『基本剣術:応ノ弐(おうのに)闘気とうき』、『基本剣術:弐ノ防:空蝉』」


 私は自身にバフをかけて、強引に魔術から抜け出しながらのまた右に回避だ。


「そら?まだいくぞ?『日神剣術:弐ノ型(にのかた)烈日一閃れつじついっせん』」


 刀が閃光を放ち、ザアン!!と神速の一閃。

 さあ、どうでる?ノート?


「このお!!調子に乗らないで下さい!!『第3階梯:闇:シュティルシュタント』!!『第4階梯:闇:コンプレッシオン』!!」


 静止と全方位からの圧力か…。これでクラートは傷を受けたわけだな。

 だが…。


「動揺し過ぎだ。魔力が弱いぞ。『基本剣術:参ノ防(さんのぼう)鉄塊てっかい』。『基本剣術:弐ノ防:空蝉』。『基本剣術:祖ノ肆(そのし)連斬れんざん』!」


 

 烈日一閃れつじついっせんを中断し、防御力を上げ、強引に全ての魔術をはね除け、回避で全方位からの圧力を強引に突破、そしてシュバババン!と連撃をする。


「うあぅ!?だ、だ、『第4階梯:闇:ヴォルテクス』!」


 ギュウウウン!と重力の渦が発生。

 …私の戦技の連撃が重力でグニョリと全て逸らされるか。


「ならば、『日神剣術:陸ノ型(ろくのかた)劫火緋輪ごうかひりん』」


 ゴオオオオン!と炎をまき散らしながらの、日の円を描く上段回転斬り。

 これも重力で逸らされるが、これは目くらまし。


「『基本剣術:応ノ壱(おうのいち)縮地しゅくち』、『基本剣術:応ノ壱:縮地』、『基本剣術:応ノ壱:縮地』、ノートよ。私はお前の背後だ。『日神剣術:伍ノ型(ごのかた)天陽華斬てんようかざん』。」


 私は3度縮地を発動。

 回避の戦技では重力の渦に巻き込まれるため、縮地で一度ノートから距離を取り、また一気に左斜め側に瞬時飛び跳ねてノートの背後を取れるまでの位置に、そして一気に距離を再び詰め、前方に重力の渦を発生させたままのノート背後に。


 劫火緋輪の炎と閃光で少しだけ視界を封じ、その隙に閃光に輝いた刀の刃の反対、棟打ちを軽くだけ右脇腹に叩き込む。


「がはっ!」


 ズガン!と太陽光の華の炸裂でノートが吹き飛ぶ。

 ノート!正直になれ!!対話をしろ!!



「『基本剣術:応ノ壱:縮地』!!!!」



 吹き飛んだノートに向けて一気に詰める。

 そして…。



「ふんっ!!」


 私はノートを地面に押さえ込んで、刀『紅焔閃火こうえんせんか』の紅い刀身の棟の部分で、ノートの喉元に押し付ける。


「…ここまでだ。ノート。明日…クラートとよく話せ。あいつも反省している。」


 呆然としているのか…ノート。

 そのまま涙がこぼれて嗚咽をこぼす。


「ぐすっ…。あう…。」


 …私は目を閉じて、刀を納刀。

 泣き止むまで、傍にいた。


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