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魔眼の名門家の俺は、常時発動するタイプの魔眼のせいで平穏な学園生活を送れません!  作者: はーにゃ
3 騎士科稽古

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40 慟哭

「…………………。」


 稽古日3日目の朝です。

 本日はとってもいい天気!しかし相変わらず暑いです!

 日差しが差し込んで俺の眼をつぶしてきます!


 え~壁には、手のひらほどの大きさの、滑らかな青い石が埋め込まれていて、これが『空調石(ウェントス・ラピス)』『宝玉等級:アメシスト』です。

 石に軽く触れて『涼しく』と念じれば、石から涼やかな風がそよぎ出し、『暖かく』と念じれば、陽だまりのような穏やかな熱を放射します!

 常に部屋を快適な温度に保ってくれる、寮の標準設備です!


 ま、本来ならば『空調石(ウェントス・ラピス)』を使って部屋の温度を調整したいところではあるのだが、如何せんこれも10日分の魔力しかなくて、魔力を補充するのに、あ~銀貨6枚だったか?かかるんだよね。

 ポーションに金額が持っていかれるのと…あとスクールバッグ!!アトリアの奴め!毎度毎度吹き飛ばしやがって!!

 おかげで殆ど使えてないんだよ!!


 …ベッドに寝転んでいる俺は唇に手を乗せると、スピカの唇の柔らかく温かい感触が思い出される。

 そして右腕を目元に乗せて覆い隠して、


「ああ…やべえ。稽古中に何やってんだよ、俺はさ~。ノートになんて説明したら…。」


 結局あの後、スピカと『学生証(スコラ・ファーブラー)』のIDの共有をして、俺の部屋がどこにあるのかも、連絡だって取り合う事ができる。

 その後、『万象の噴水(オムニア・フォンス)』でお互いもう一回飲み物を飲んで、手をつないで何でもなかったかのように、演習場に戻った。


 ま!戻ってもだ~れも寄ってこなかったから!?結局稽古が終わるまで、また談話室で休憩してたよ!けっ!

 今日もどうせ寄ってこねえだろうなあ!


 ああ、『空調石(ウェントス・ラピス)』を使っていないと暑いなあ。

 じゃない!さっさと支度支度!


 俺は身支度を整え制服に着替えて、鏡で確認っと。

 …眼は相変わらず紅く光ったまま。


「…っ!!」


 昨日のスピカの唇の感触と…あの蒼く光る綺麗な眼。

 …本当に好きだったんだ、スピカの事が。


「はぁ、気が重い。行くか。まあ、どうせ談話室なりテラスなりで時間をつぶす事になりそうだが!」


 俺が玄関の扉を開けると…


「「「………」」」


 ああ…昨日なんかとは比べ物にならない程、終わった。


「あの?クラートさん…?なんでここにスピカさんがいるんですか…?」


 好きであるノート・フォン・ヴァールハイトと後は…


「……あの、クラート…ごめんなさい。」


 …口付けをしてしまった、件のスピカさん。


「……これは、もう逃げられないんだな。」


 そうだよね~、隠れて浮気とかさぁ…無理に決まってるじゃん。

 バカだろ、俺はさ。

 …俺は覚悟を決めたよ。









「「「………」」」


 現在はね、ここは上流科の燦爛さんらんクラス専用サロンなんだ。

 上流科の生徒だけが入室を許されるサロンは、重厚な絨毯が足音を吸い込み、壁にかけられた歴代の主席の肖像画が、静かにこちらを見下ろしているよ…。

 一体どの面下げて入って来やがったのかと、なんかそうに言いたげな眼差しの絵だねぇ…。

 演習場と同じく『紅玉石ピュリフィコ・ルーベルラピス』『宝玉等級:ルビー』が2つほど上空を漂っている。

 ここには、俺と、ノートと、そしてスピカの3人。


 エルナトには先に演習場に行ってもらったよ。

 かなり心配げな顔をしていたが…。


「クラートさん。何か……言い訳はありますか?」


 …もうノートが完全に怒り狂っているな。


「済まない。言い訳は…しない。」


 そう言った瞬間、いや、もっと前から検知していたが…

 その言葉を聞いたノートは掌を向けて、複数の魔術を発動させた。


「…っ!!そうですか!!なら覚悟はできていたんですね!!『第4階梯:闇:フェッセル』!!!『第4階梯:闇:コンプレッシオン』!!!『第3階梯:闇:シュティルシュタント』!!!」


 そうノートが3つの魔術を俺に発動。

 甘んじて受け入れた。

 …避けるなんて出来るはずもないでしょう…?


「がはっ!!!」


 上空からの圧力による拘束、全方位からの超圧力、静止の魔術の3つが同時に俺にかけられる…か。

 とりわけ…コンプレッシオンによる全方位圧力の出力が最大まで引き上げれていて、血を思いっきり吐き出す。

 身体能力の高い俺でも、膝が絨毯に付き、クレーターができながらどんどんと、締め上げられいく。

 ぐうう…これは相当、痛すぎるね…。


「クラート!!」


 思わずスピカが叫んでしまっているか…。

 だが、これは俺の招いた責任だ。


「スピ、カ…君は、ごふっ!何も…悪くは、ない。ぐふっ!!ぜえ…ぜえ…俺が、悪…い!」


 何度も血を吐き出す俺。

 ここまでの吐血は初めてだね…。


「はぁ、はぁ、まだ!!何か言い訳はありますか!?」


 ノートが大粒の涙を流しながら俺に問いかける。

 ノートにそんな顔をさせてしまった俺は…大馬鹿者だ。


「昨日…ぜえ…大事な、女の子、と言った…のに、済ま、ない…。ゴボッ!」


 上流科専用サロンの絨毯、いや、もうクレーター…か。

 あらあらまあまあ…俺の血で溢れているな…。

 ははっ…何をやってんだかねぇ…俺はさ。


「このお!!『第3階梯:闇:アプシュトースング』!!!」


 反発、斥力の魔術が拳に込められて、俺の顔や鳩尾に叩き込まれる。


「ごふっ!ごぼっ…。」


 魔術が全て解除されて、俺は血に塗れた地面にベチャンと音を立てて倒れる。


「ひっ!ク、クラート…。」


 スピカがもう泣いてしまっている。

 ごめんね、スピカ。

 こんな事になってしまって。


「…ノー、ト。君…も、スピ、カと、同じ…く、大事なの…は、はぁ、間違い…ない…。」


 あ、あれ?意識が…薄れ…る、な…。


「っ!!!ふざけないでよ!!裏切り者おお!!」


 ガンっ!と俺の頭に思いっきりノートの蹴りが入ったな、こりゃ。


「はぁ…!はぁ…!私は今日は騎士科には行きません!さようなら!!」


 ああ…ノートが背を向けて歩きだしてしまった…。

 ノート…待ってくれ…。

 嫌だ、嫌だ…お願い…行かないで…。 

 そこで意識が落ちた。











「クラート…意識が戻ったのね…。良かった。エメラルド級のポーションを無理やり飲ませて、後は身体に撒かせてもらったわ…。まだ、腫れは完全には癒えていないけれど…。」


 そう…だろうね、これは瀕死レベルの魔術を受けたから…。

 スピカが涙を流しながら俺に安堵の言葉をかけてきている。

 いつの間にか上流科のサロンは、『紅玉石ピュリフィコ・ルーベルラピス』で修復されて、血も無くなっている。

 どうやら膝枕をされていたみたいだ。

 …本来なら最高何だけどねぇ…。

 

「スピカ…。ごめん。どれくらい時間が経ったかな?」


 スピカの頬を撫でながら問いかける。


「もう殆ど終わりね…。一応、行ってみる?」


 ああ!もう、最悪!!こりゃ、完全にノートに嫌われたかなぁ…。

 どうするかなぁ…。

 姉さん、いるかなぁ…?

 怒られるかなぁ…?


「………スピカはどうする?一応…行く?」


 少し悩みながら、


「多分…、行ってみた方がいいと思うわ。私たちが来なくて心配もしているでしょうし…。」


 まあ、そうだよなぁ…。一応顔は見せておかないと。

 この状態で姉さんを怒らせたら、流石に負けるけど。


「そうだねぇ…。はぁ…。ま、どっちみち俺が行ったところで、昨日のように避けられていたのは間違いないだろうしね…。」


 ああ、そう思うと改めて悲しくなります!


「スピカ…心配をかけさせたね…。そこの『ゲート』から一般校舎付近までいくか…。」


 スピカはこくりとうなずく。

 何とか起き上がったが、いてぇ…。ポーションは制服に3本ほど入れていた重力魔術で全部ボロボロだわ。

 そうすると…。


「元はと言えば私に責任があるもの…。クラート…担いでいくね?」


 肩を担ぎあげてくれて、そのままどうにか『ゲート』をくぐり、一般校舎まで到着。

 この『ゲート』は、一般生徒からは入る事が出来ないんだよね。

 燦爛クラスも含めた上流科のみ使用可能な特別仕様。

 行きたい場所の『ゲート』を念じて選んで通れば、対となる『ゲート』に転移完了!

 『ゲート』自体は上流科校舎の何処にでもあるし、とにかく広大過ぎる一般校舎に点々と設置されているよ?


「責任を感じる必要はないよ…。ただ、心配をかけさせた事は謝るね…。」


 足を引きずりながら、どうにか木製の巨大な両扉を開けて[カエルス演習場]に着く。

 ありゃりゃ…、もう騎士科はいないな。

 ただ、エルナトとフォルカー団長、姉さんが見える。

 姉さんが怪我してる俺とスピカに向けて走ってきたのがみえるね。


「クラート…まあ、何となく想像はつくわ…。ノートちゃんも今日は来なかったら…。」


 そう言いながらスピカを見る姉さん。

 スピカはびくりと怯えてしまうが…


「ごめん。姉さん…。スピカは悪いんじゃない。不誠実な対応をしてしまった俺に責任があるんだ。それに…。多分、今日俺が問題なく来ても誰も指南なんて受けにこないしね…。」


 ああ…やっぱり自分で言うと改めて悲しくなります!

 はは…しかし、俺とスピカは俯いちゃってる。


「………昨日、途中で姿が見えなくなったけど…そう。あなたはスピカちゃんの心を救ってあげたのね。」


 あらあらまあまあ…涙がこぼれているな…。


「ごめんなさい。姉さん…。スピカは救えても、ノートには悪い事をした…。『救済の魔眼』と名乗るのは、まだまだ遠い…。」


 エルナトも傍にやってきて…。

 殴られるかな?


「………お前がそこまでボコボコにされるなんてな。初めてみたぞ。大方ノートの魔術を全部、受け入れたからそうなっているんだろうが。…後でノートには私からフォローしておこう。」


 …エルナトにしては、随分と優しめ~。

 迷惑をかけてしまったね。


「お前には色々と仮もある。私含めてノートもお前の言葉で立ち上がったのだから…。」


 フォルカー団長もやってきていて、


「…まあ、クラート殿はお若いのです。女の子に…ボコボコにされる事もありましょう。それに、オスカー団長の弟君でもありますし、案外ピンピンしていますしねぇ。明日は休んだらどうですかな?今のメンタルでは指南どころではありますまい。担任殿には私から進言しておきましょう。お隣のスピカ殿も含めて、少し気分転換でもしてみたら良いでしょうなあ。」


 ああ…やっぱりフォルカー団長は懐が深いです!

 でも…ここ最近はダメダメだな。


「そうさせていただきます…。スピカ、明日どこか出掛けてみるか?アイスベルク家がどこにあるか分からないから、申し訳ないけど、一回寮の部屋に来てもらえると助かるな。」


 担いでもらっている、隣のスピカを見て言うと…


「そうさせてもらうわ…。クラートと…遊びたい。」


 頬が少し赤らんでるな…。

 ああ、そういう顔が好きだな。


「…悪い姉さん。明日は…いや明日もかな。稽古…休むね…。」


 俯いて言う俺。

 はあ、情けねえ…。


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