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魔眼の名門家の俺は、常時発動するタイプの魔眼のせいで平穏な学園生活を送れません!  作者: はーにゃ
3 騎士科稽古

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39 救済

「っ!!!」


 俺の言葉で完全に動揺、スピカの顔が赤く染まり上がり、息が荒くなってしまった。

 図星を突かれ怯えているのか、身体が震えてしまっている。


「…………。」


 『万象の噴水(オムニア・フォンス)』のチャラチャラとした音が、俺とスピカ2人だけの空間に響き渡っている。


「わ、わ、私は…。」


 何か必死に言葉を探している様子のスピカ。

 俺は立ち上がり、スピカのいるダイニングテーブルの反対に回り片膝をつき、怯えてしまっているスピカの頬に触れる。


「ひっ!」


 驚いてビクンと身体が震えるスピカ。


「…済まない。怯えさせるつもりは一切なかった。…ただ、魔眼を持つ者同士、同じ悩みを持つスピカの孤独が…少しだけかもしれないが俺には理解できる。

 スピカ。聞いて?言いたかったのは、決してスピカを見放す事は絶対にしないという事だ。

 これまでずっと一人ぼっちだったスピカを、少なくとも俺だけは永遠の味方でいるという事だ。

 どうか怯えないでほしい。今この瞬間、もう一人ぼっちじゃなくなった。」


 スピカの震えが止まり、目を見開きながら俺の目を真っすぐ見つめてきた。

 安心させるように慎重に頭を撫でる。


「誰もスピカという個人を見てくれなかった。誰も理解しようとしてくれる人もいなかった。

 だから悩み事や、相談するという方法が分からなかった。でも、俺には、俺だけにはどんな事でも、何を言っても構わない。何をしても構わない。絶対に拒絶も突き放す事もしないから…。」


 スピカの目から涙がこぼれている。


「ああ。泣いても全く構わない。これまで我慢して我慢して抑えこんでいた、これまでの感情を俺だけには爆発させて全く構わない。呪いだと思っているその魔眼を誇ってあげて。さあ、スピカ。立ち上がって前を向いてほしい。俺の魔眼の名は…『救済の魔眼』。君の孤独を救おう。」


 どんどんと涙と嗚咽が止まらなくなるスピカ。

 そっとスピカを抱きしめてあげる。


「ぐすっ。あふっ。うああああああああああ!」


 大泣きしてぎゅっと握りこんだ拳を、抱きしめた俺の胸や肩にガンガンぶつけてくる。

 ずっと俺はそれを受け入れ続ける。

 そして頭も背中もゆっくりさすりながら、延々とスピカの溜め込んだ感情を受け入れる。


「よく、これまで頑張ったね…。よく、ここまで耐え抜いたね…。本当にスピカはとても強い女の子だよ。君の好きな事、今まで読んでいた本の話、君の趣味の話…。色々聞かせて?一切遠慮なくこれからは何もかも向き合い続けるから。」


 スピカは暫くずっと泣き続けていた。

 その間、ずっと抱きしめて受け入れ続けていた。











「「………………………………」」


 どれくらい経ったのか、スピカは泣きやみ、お互い同じ長椅子に隣合わせで座っている。

 ぎゅっと俺の袖をスピカは握りしめている。


「…ねえ。あなたは、ノートさんの事が好きなの?」


 顔が赤くなりながら不安げに聞いてくる。

 俺もはっきり言わないとダメか…。


「…そうだね。姉さんにも言われたけど、ノートの事は好きだね。」


 俯いてしまうスピカ。

 もっとぎゅっと握りしめてスピカは言う。


「…何を言っても構わないのよね?」


 もっと赤くなりながら少しもじもじしている。

 いつもの儚い雰囲気が薄れ、女の子としての表面が表れている。

 これが本当のスピカなんだろうな。


「…うん。良いよ。聞かせて?」


 そう言うと決心したのか、俺の方を向き、顔が赤くなりながら目が見開いている。



「…っ好きよ!クラート!あなたの事が!!」



 はっきりと、強く告白してきた。

 …分かっていた事だ。

 何を言っても構わない。

 拒絶しないと言ってしまったばかり。

 目を一度瞑り、そして開く。


「…分かった。拒絶しないと言ったばかり。君の告白を受け入れよう。」


 スピカの方を向き、よくその目を見て、俺もまた、


「スピカ。俺もまた君の事が好きだ。スピカの目は本当に綺麗だ。魔眼がという意味じゃない。その真剣な眼差しが俺は好きだ。」


 かあああと、赤くなるスピカ。

 ははっ…。

 ああ、やっぱり暗く俯いている顔よりも、その可愛らしい照れた顔の方がよく似合っている。


「あ、あ、で、でも…その…ノートさんも好き…なんでしょう…?」


 そう言って罪悪感からか、不安げな顔をしてしまう。

 スピカの不安は正しい。

 確かに俺はノート・フォン・ヴァールハイトという女の子に恋をしてしまった。

 ここ2ヶ月でドジっ子になり…いや、あれが本来の素なんだろう。

 でもここぞと言う場面では、力を発揮できる芯の強い子だ。

 なんとなく最近お互い接しているうちに、いつの間にかそんな関係になってしまった。


「…その通りだ。あの混同試合以来、俺らの関係性は急接近してしまった。今やノート・フォン・ヴァールハイトは…大事な人だ。」


 正直今のスピカには言いたい言葉ではない。

 そのせいで、また俯いてしまっている。

 しかし…救わなければならない。

 苦しんでいるスピカと言う女の子を。


「スピカ。救うと言っただろう?それに君の事が好きだと言った俺の言葉は、心からの本音だ。

 まだ入学間もない時期に俺の悩みに、一番最初に感づいたのはスピカだ。事実、あの時期で君が一番話しやすく、お互い魔眼持ちと言う観点から、悩みを分かち合えたのはスピカのみ。

 正直に言って多分、俺が最初に惹かれていたのはスピカ、君だ。」


 そう言うと驚いたように顔を上げてくる。


「スピカは俺を頼りにしているようだけど、俺もスピカには救われていたんだよ。入学初日の森の災害の件の洞察力や、俺の魔眼に臆せず、スピカのずけずけとはっきり言ってくる部分とかね。

 それにさっきもそう。俺と姉さんとの喧嘩を目撃した誰もが、紅い魔眼と規格外の力を持つ俺に近づいて来なくて、まあ、やっぱり寂しかった。そこにどういう理由であれ、話しかけてきてくれたのは、スピカだけだった。でもそのおかげでスピカと今こうして二人で話せてる。

 ありがとう。スピカ。何でもっと早く、君に好意を抱いている事に気づく事が出来なかったんだろうね…。」


 俺はスピカの手を握って目を瞑り、入学からクラス混合試合までの1か月間の事を思い返している。

 本当によく喋っていたのは、昔からの腐れ縁のアトリア、同性のレグルス、そして…スピカだったのに。


 はぁ…と息を吐き目を開いて、右横にいるスピカをジッと見つめる。

 急に見つめられて、眼がきょろきょろして、顔が赤くなってしまっている。


「…スピカ。君の綺麗な蒼い魔眼を見せてくれるかな?」


 意図が分からずキョトンとしながらもスピカは一度目を瞑り…そして目を開き、蒼い輝きの『極冠きょっかんの魔眼』を発動させる。


「うん。やっぱり綺麗で美しい蒼い光の眼だ。えい!ごっつんこ!」


 そう俺が言ってスピカと、そして俺の額同士をくっつける。

 スピカの目が驚きで見開く。


 広い談話室の一画に、魔眼同士の、紅と蒼の輝きが交じり合う。

 そして、そのままスピカを抱きしめて…唇同士を重ねあった。





 そして…2日目の稽古は終了する。


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