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魔眼の名門家の俺は、常時発動するタイプの魔眼のせいで平穏な学園生活を送れません!  作者: はーにゃ
3 騎士科稽古

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35 騎士科稽古2日目 『雷滅の鬼神』

 オスカー・ウンシュルト。

 俺の10個上のウンシュルト家の長女。

 魔術こそ使わないが、魔力量が膨大で身体能力が非常に高く、ほぼ俺と同じくらい。

 当たり前だが魔力があるので、戦技も使える。

 だから………うん、俺と同じくらいの身体能力から放たれる戦技はマジでヤバいぞ?

 まあだからこそ、『紅蓮騎士団』の団長なんてやれているんだろうけど。

 『宝玉部会:ダイアモンド』の称号を持つ、真の規格外…。


 魔物の魔石で教えようか?ダイアモンド級の魔石は白金貨50枚に相当する…。

 ルビー級が白金貨1枚と金貨5枚…。

 称号のルビーとダイアモンドの間には…もう越えられない絶壁があるんだ。


 ……バカだなぁ、ウンシュルト侯爵家は。

 魔眼に固執するばかり、オスカーと言う逸材に見放されたのだから。









「なんでここにいるかなんて、ルミナス王立学園という、この国の一番大きい学園にクラートの名前が前々からあったからよ?本当は会いにでも行きたかったんだけど…はぁ、忙しくてタイミングが合わなくてねえ。フォルカー団長が以前よりルミナス王立学園の稽古をするって聞いてたから、準備だけはしていたのよねえ。だから、副団長に仕事を押し付けて来ちゃった☆」


 茶目っ気が全開の姉さん……

 何を舌だして、てへぺろしてんだよ…。


 それにしても…紅く燃え上がるように赤白く輝く鎧に…金属とは思えないほどしなやかな動きを可能とした魔術刻印が刻まれているよ?何なのそれ?しかも全身が『聖銀ミスリル』製じゃないかい!

 ぅえ?戦い神様の加護でも受けているんですか?胸元には…ルミナス王国を象徴とする紋章(光り輝く太陽と剣を組み合わせたデザイン)が刻まれていますなぁ…。

 ついでにその紋章…『第3階梯』の魔術以下は受け付けない、魔除けの刻印が刻まれているじゃないのさ。

 妙に神秘的な輝きを放っていてるとは思ったけどさぁ?


 って、そうじゃねえんだよ!


「いや…来ちゃった☆じゃないよ姉さん。7年ぶりだぞ?めっちゃ久しぶりじゃん!ちなみに俺は家から逃げ出したよ!!」


 そう俺が感情的になっていると、


「ええ!?逃げ出した!?じゃあクラート!?あなた今まで資金や、今までどうやって暮らしていたの!?まあ……あの面倒くさい家だから逃げ出したくなる気持ちは分かるけれど…。」


 驚愕している姉さんに対して、


「そりゃあ、冒険者稼業して資金集めしてたよ。まあ、ルミナス王立学園にいるのは、冒険者組合の紹介で入学したんだよ。俺の名前が載っていたのは、冒険者組合がわざわざ俺の本名をばらしたからだな。」


 俺が今度はプンスカしながら姉さんに答える。


「あぁ~…。なるほどねえ。となると、ウンシュルト家にもクラートの情報が筒抜けじゃない?何か干渉はされたりしなかったの?」


 かなり際どい所を質問してくるなあ…。

 下手に答えると、姉さんがウンシュルト家に突撃しかねないし。

 それに…。



「(―家から逃げるくらいであれば、私にその紅い魔眼を下さいよ!!―)」



「…いや、何もないよ。今のところね。もう俺の事を見放したんじゃない?」


 そう伏し目がちに答えると、姉さんはじっと俺を見つめてくる。

 スルーしてくれないかなぁ…。


「………そう!ならいいわ!それよりもクラート?後ろの子たちは?さっきの質問に答えなさい!」


 ジト目で俺を見てくる姉さん。

 な~んで今日は朝っぱらからこんなに不幸なんだぁ!!


「あらあらまあまあ、クラスメイトだよ。姉さん。燦爛さんらんクラスのね!」


 俺がそう言うと、エルナトが口を挟んできた。


「いや、こいつは稽古中にも関わらず、そこのノートとずっとイチャついていたぞ。さらに言えば、一般の騎士科の女子生徒も口説いて、今日は朝から一緒に登校してきたみたいだからな。」


 エルナトーーーー!!!

 なんてバカな事を言うんだい!?


「クラート?お仕置きかな?」


 ゴゴゴゴゴと微笑みながら威圧感を出してくる姉さん。

 あわわわわ!?


「そうですね。今朝もノートさんと抱き合ってましたよ。」


 スピカーーーー!!!

 お前もかい!?


「ノートちゃんって、後ろの銀髪の可愛らしい女の子の事かな?クラート?」


 ノート!頼む!下手な事は言わないで!!


「ひゃい!?えっと…、うへへ。」


 ノートーーーー!!!

 態度がもう露骨です!!


 あ、超予測で戦技せんぎきますわ…。

 刀を抜刀したもん。


「………………お姉ちゃん。怒っちゃったぞ☆『稲妻剣術(いなずまけんじゅつ)雷ノ壱(かみなりのいち)迅雷一閃じんらいいっせん』!」


 縮地と基本剣術の一閃が合わさった戦技。

 しかもとんでもない神速とパワーです!!


 俺は左にダンっ!と飛んで姉さんの右側に回り込む。

 雷を纏った一閃を放つ姉さん(こっわ!)の右腕を、俺もまた全力の力を出して左手で掴み…ドガアアアン!!という音と共に、どうにか押さえこむ!!!

 ひいいいい!!


「ね、姉さん。誤解です。『雷滅の鬼神(らいめつのきしん)』の二つ名を持つ姉さんとこれ以上やりあったら…ね?ほら?あの~演習場が壊れちゃうからさ?許して下さ~い!!」


 俺と姉さんの周りに軽いクレーターが出来上がっていた。

 姉さんの持つ刀は特殊で、最初から刀身全体に赤黒い雷がバチバチと纏っている。

 その赤黒い雷自体が『第4階梯』の雷魔術並みの威力がある。

 刃に軽く触れるだけで危険。


 魔刀『震霆雷轟しんていらいごう』『宝玉等級:ダイアモンド+』

 他の『宝玉等級:ダイアモンド』の武具よりグレードが上だ。

 柄、鍔、刀身全てが漆黒。

 だが…刀身の刃だけが、紅く禍々しく煌いている。


「…はぁ。相変わらずね。クラート?その謎の身体能力に加えて…その紅い光を放ってる魔眼。本当に意味が分からないわあ。それより!私の二つ名をクラートに言われたくありません!『紅眼の魔人』の二つ名があるクラートに!」


 そう言いながら刀を収める姉さん。

 はぁ…助かったぁ~。


「あらあらまあまあ?姉さん…その二つ名さぁ~、あまり好きじゃないからさぁ…あまり言わないでもらってもいいですかぁ?」


 俺がちょびっと苛つきながら言うとさ~?


「はぁ?私の攻撃をしのげる事自体、意味が分からないのよ?あとクラート?そんなに嫌わないでも良いじゃない?私は好きだけど?貴方の異名。それに!私と戦って勝てる相手なんていないんだからね?普通ならさっきの一撃で、私に歯向かう全ての愚か者の首と胴を泣き別れにしてきたんだから!」


 …嫌わないでも良い、か。

 俺の『紅眼の魔人』の異名…これ過去を思い出すからそんなに言われたくなかったけど…姉さんにそう言われるとねぇ…。


 んであと!納刀した刀をグルグル回しながら怖い事を言うじゃないの~姉さん!

 …ほんとなんなの、この人。

 そんな半分姉弟喧嘩みたいな事をしてた俺たちに、フォルカー団長が歩み寄ってきて、


「ごほん。まぁまぁオスカー団長。その辺にしてあげましょうや。もう間もなく騎士科の学生達がやって来ます。クラート殿もまだお若い。青春の一つや二つありましょう。せっかくお越しになられたのです。オスカー団長のお力をお見せできれば、より学生たちの士気も上がりましょう。」


 おお!流石はフォルカー団長だ!

 ノートもうんうんとコクコク頷いてる。


「むう。フォルカー団長がそう仰るなら仕方ありませんね。でもクラート?くれぐれも遊び過ぎたらダメだからね!分かった?ノートちゃん?クラートをよろしくね!」


 俺にかがみこむように忠告してくると同時に、ノートにも向かって言う姉さん。


「ふぇ!?ひゃい!」


「ちょちょちょ!姉さん!いや~、あの~俺たちは…。」


 俺がノートに目を向けると、顔が赤くなって俯いてしまっているので、途中で言葉が詰まってしまった。


「…はぁ。もう!クラートの意気地なし!もう出来上がっているのよ。お二人さん?」


「「で、出来上がって!?」」


 俺とノートの二人同時に思わず叫ぶ。

 ついノートと目が合い、俺が恥ずかしくなっている。

 そう…なのかもしれないな。


「…っ!!」


 …唇をぎゅっと結んで何だか悔しそうにしているスピカ。

 はぁ、どうしよう…。


「はあ…なぜ稽古なのにイチャイチャが始まるのだ…。」


 そう頭を抱えながら呟くエルナト。

 本当にすいませんでした!!






 そうして騎士科が入場してきた。


「ん?おい、あれ!『紅蓮騎士団』の人じゃないのか!?」


「凄い!初めて見た!」


「『紅蓮騎士団』ってめっちゃ強いんでしょう?凄い豪華だね!」


「黒い刀を持ってる…。って事は『雷滅の鬼神』!オスカー団長じゃないのか!?」



 こりゃあ人気だなあ。

 やはり昨日フォルカー団長が言っていたように『琥珀こはく騎士団』にはあまり興味を持つ人はいないんだなあ…。

 俺からすればフォルカー団長の方が立派に見えるが。

 そうしたら姉さんが演習場に拡声させる、『翠玉水晶ウィリデ・ファーブラーラピス』『宝玉等級:エメラルド』の魔導具を持って…、



「やっほーーー!!『紅蓮騎士団』のオスカー団長で~す!!今日から君たちの指南をしまーーす!!」



 おーい!バカ姉!!何をお茶目風に自己紹介してんだぁ!!?



「「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」」



 …何を盛り上がってんだ!このアホ騎士科共が!!

 お前らはそれでも騎士を目指してんのかぁ!?

 登校中の俺らを助けなかったくせによー!!?


 あ、ウルスラさんだ。

 手を振っておこう!

 あ、向こうも手を振り返してくれた。


「何を手振ってんだぁ!この女たらしが!」


 …エルナトに小突かれた。

 痛いです。


「ごほん。えと、どうします?フォルカー団長。この…バカ姉を誰と模擬戦をさせますか?流石に魔術師のノートや、魔眼持ちのスピカでは騎士科に見せるデモンストレーションにはならないでしょうし。かなり強いですからねぇ。姉さんは。俺の戦い方も特殊で騎士科にとって参考になるか分からないですし…。」


 そうフォルカー団長に聞くと、


「ふむ。となると、やはりエルナト殿下ではないかね?」


 そうエルナトに問いかける。

 そうすると、姉さんも傍に寄ってきて、


「そうだね~。私もあの戦闘狂と噂のエルナト殿下と少し剣を交わしてみたいなあ~?」


 するとエルナトも闘気を滲みだして、


「分かった。オスカー団長とは私が相手をしよう。」


 やる気なのは良いんだけどさぁ…演習場壊さないでね?






「エルナト。気を付けろ?姉さんと俺が一撃だけやり合った際、パワーが段違いだっただろう?全力で臨まないと、模擬戦だろうと吹っ飛ぶからな。」


 そうエルナトの傍で忠告する。


「分かっている。クラートの姉があれ程とはな。まあ、クラートとの血の繋がりを考えればおかしくはないか。刀も相当な代物だな。私もこれを取り出すとは思わなかったが…。」


 そう言い一本の刀を手にする。

 ああ…ヤバい。

 姉さんの刀並みにヤバい。

 そしてエルナトは姉さんと対峙する。


「ありゃりゃ?エルナト殿下は本気だねぇ?でも…それで私に渡り合えるかな~?」


 バッカ!!クソ姉!!エルナトを煽るなよ!!


「…私も以前のように闇雲に突っ込むわけではない。オスカー団長も精々油断しない事だな。」


 ああ…終わった…。ガチの本気モードだよ。


 そうしてエルナトは刀を抜刀する。


 魔刀『浄火蒼天じょうかそうてん』『宝玉等級:ダイアモンド+』

 刀身全体にかけて蒼い炎が揺らめいている。

 同じく『第4階梯』の炎魔術並みの威力のある刀。

 柄は赤く、刀身が濃藍こいあい色…


「ほほお~。中々の一品だねぇ。そこいらの『宝玉等級:ダイアモンド』の武具とはわけが違うね~。私の刀と同じレベルかな?ま、模擬戦頑張ろう!」


 いや…もう模擬戦じゃねえだろ。


 気付いたらノートが心配そうにエルナトを見てるのは良いんだが…俺の腕にしがみついてます!!

 そんなノートも可愛いぞ。

 なでなで…っと。


「うひゃ!?」


 ノートがびっくりして飛び跳ねた。


「ク、クラートさん!?ってあわわわわ!?いつの間にしがみついてぇ!?」


 顔が赤くなって可愛いぞ!


「っておい!!私がこれから真剣勝負をするのにイチャイチャするなああああ!」


「「ご、ごめんなさい!!」」


 エルナトに怒られ、また二人で謝った。


「おやや?やっぱりお似合いだよ?二人とも!」



 などと言いながら対峙するエルナトと姉さん。

 姉さんも魔刀(震霆雷轟しんていらいごう)を抜刀する。



「ふっふっふっ~!では、行きますか!」


「では私も…。行かせてもらう!」


 模擬戦の名を被った勝負の始まり。

 本当に演習場壊さないでね!?



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