33 騎士科稽古1日目 戦技vs魔眼
「ウルスラさん。ポーションを幾つか渡しますね。怪我だけでなく、身体の疲労感もある程度軽減されます。戦技も体内の魔力を使うでしょう?僅かですけど魔力も回復できます。」
2連続で戦ったウルスラさんに、俺が幾つか[カエルス演習場]に持ち込んでいたポーションを渡す。
とは言え俺も使うため、トパーズ級とアメシスト級くらいしか譲れなかったけどさ。
「え!?すいません。わざわざありがとうございます。ポーションなんて初めて見ました…。意外と小さいんですね…。早速一つ飲んでみてもいいですか?」
5センチほどの瓶に入った液体を物珍しそうに、眺めながら聞いてきた。
「どうぞ。ポーションって魔物の魔石を原料にして作られているので、そのオレンジ色がトパーズ級、紫がアメシスト級です。トパーズ級でもそこそこ回復できますよ。」
俺が説明するとほええ、と口をあんぐりさせてるウルスラさん。
何その表情…可愛いね?
「ではトパーズ級の方をいただきます…。んっ…。ぷはあ…。…ふぇ?これは凄いですね!身体の疲れがかなり楽になりました!」
めちゃくちゃ感動してるウルスラさん。
それはそうでしょう!俺がいつもお世話になっている物だからね!
「そういえばポーションって、私の町では売っているお店はありませんでした。これおいくらするんですか?」
目を輝かせながら金額を聞いて来たウルスラさん。
「あ~。確かに小さな町とかだと見ないですよね。トパーズ級のポーションが一つ銀貨1枚。アメシスト級で銀貨5枚ですね。エメラルド級で大銀貨2枚、サファイア級までいくと致命傷も回復できたりするので金貨4枚もします。欠損部位まで再生しますからね。ルビー級が最高品質で俺も見たことないですけど、確か…白金貨3枚だったような?本来ならば魔力は時間をかけないと回復しませんが、消費した分も完全に元通りになるとか。後は死に至ってから10分以内までならば、蘇生できるとのことです。…ウルスラさん?」
黙り込んでしまった後に、慌てはじめてしまった。
「そ、そ、そんな高価な代物だったんですか!?ほ、ほ、本当にこれ、貰ってしまっても良いんですか!?」
「だ、大丈夫ですから!是非受け取っておいてください。ウルスラさん程の実力の持ち主であれば、俺も気持ちよく渡せますから。」
どうにか落ち着かせて、次の俺との稽古?に臨んでもらわないと。
まあ、俺の戦い方は特殊だから参考になるかは分からないけれど。
そうしていると、エルナトが俺に声をかけてきた。
「次はクラートの番だな。休憩も終わった頃だろう。お前は何をするのか正直わからん。あまりやり過ぎるなよ?」
戦闘バカのエルナト様に言われたくねえ!!
ノートも傍に寄ってきて、なんかもう自然に腕にしがみついて…うへへ、青春謳歌です。
「頑張ってくださいね!クラートさん!ウルスラさんは強いですけど、クラートさんなら全然へっちゃらですよね!!」
あらあらまあまあ…なんか満面の笑みで応援?してくれるんだけど、これ稽古なんだよなぁ…。
でも可愛いからなでなで、っと。
「うへへ…。」
顔が赤くなって、にへら~とニコニコと笑うノート。
そこに、ゴゴゴゴゴゴゴっと睨みを利かせてくる鬼の気配!!
「お前ら…イチャつくなと言っているだろおおおお!!」
「「本当にごめんなさい!?」」
2人してエルナトに叱られた。
「………………羨ましい。」
またウルスラのボソッと呟きが聞こえた。
「ごほん。失礼しました。ウルスラさん。準備は良いですか?」
俺がそう聞くと、既に薙刀を構えていて、
「はい!大丈夫です!…あの、クラートさんは何も武器の類は持たないんですか?」
そう不思議そうに聞かれたため、
「ん?はい。多分模擬戦をしているうちに分かると思いますよ?まあ俺の戦い方は本当に特殊なので、参考になるかは分かりませんけどね。」
そう言うとウルスラも気を引き締めたのか、目を細めて臨戦態勢になる。
「「では、いざ!!」」
先ずはウルスラから動くと確信。
はいはい、縮地から来るね?そして次は薙ぎ払いをしてくるわけね。
魔眼の超予測が働き、そして…。
「『基本剣術:応ノ壱:縮地』!!」
はいはい、そう一気に距離をつめて来たけどさぁ…。
「え!?」
左に地面をダンっ!と飛び跳ねて、縮地で接近したウルスラの右側へと瞬時に回り込むんですねえ。
そして左足を軸にして右回転しながら右足刀蹴りを…うん、ここなら薙刀で防御してくれるね?薙刀を持つ、ウルスラに向けて放ちます。
「くっ!!」
そして魔眼の予測通り薙刀の柄で足刀を防御をしてくれたね。
だが超身体能力での威力で、ズガアアアンっ!と一気にウルスラを吹き飛ばすんだなぁ。
「がッ!?」
とんでもない威力で驚いてるようだが、最短最適コースを一気にドンっ!と既に駆け出しウルスラに接近する。
はいはい、『肆ノ花』で足を狙うつもりだね?
そう予測して…。
「なっ!?『紅花薙刀術:肆ノ花:落花水月』!!」
全身落下させての超低姿勢から放たれる足を狙う横払い。
だが俺はもう接近すると同時にダンっ!と、飛び跳ねて薙ぎ払いを躱しつつ、そのまま空中で前方に1回転しながらウルスラの背後に回り込む。
…うん、闘気で身体能力上げつつ、身体を支えてる左手で身体を前に押し出して躱してくれるな。ならこの攻撃は大丈夫だね…。
俺は左回転、ウルスラの背中に向けて右足を高く振り上げて…
「え!?いない!?後ろ!?ぐっ!『基本剣術:応ノ弐:闘気』!!」
予測通り左手で押し込んで一気に前に転がり距離を取るウルスラ。
そこに先までウルスラがいた場所目掛けて、よし、躱してくれたね…?ガアアアンっ!と地面に穴が空くかかと落としを放つ。
ゴロゴロと転がり飛び跳ねて再び薙刀を構えるウルスラさん。
俺の異常な身体能力と、上手く気配を感知できない事に困惑と冷や汗を流すウルスラさん。
「はぁ…はぁ…一体これはどういう事ですか?戦技がなく、その威力…。」
そして俺はゆっくりと顔を持ち上げ、不気味に紅く輝く眼光でウルスラを見据える。
ああ…ウルスラさん…?身体がびくりと怯えが走っているね?
「あらあらまあまあ…戦えば分かると言いましたよね。これが俺の魔眼を使った戦い方です。ウルスラさんの行動全てが事前に分かります。どんな行動をしてくるのか…。どんな躱し方をするのか…。さっきのかかと落としも、ウルスラさんが躱すまで待ってから攻撃しました。殺そうと思えばいつでも殺せたんですよ…。」
俺がそう言うと、完全に意味の分からない恐怖からウルスラの身体が震え上がってしまった。
ああ…ここまでだね~、やり過ぎたか…。
終わりを告げましょうか。
「あ~。すみません。ウルスラさん。怯えさせるつもりはなかったんです。ここまでにしましょう。」
ガクリと膝を落としてしまうウルスラ。
ヤバい!怯えさせすぎた!
急いで駆け寄って、
「お、落ち着いてください!エメラルド級のポーションです。精神状態も回復できます。ゆっくりと飲んで下さい。」
ウルスラの背中をさすりながら、ゆっくりとポーションを飲ませていく。
「んっ…。ぷはあ…。はぁ…。すいません。ありがとうございます。クラートさんはお強いですね!私もまだまだですね!」
元気を取り戻してくれたウルスラ。
ふう…。良かった~。
「あはは…。まあ、こんな感じなのであまり参考にはならなかったでしょうけれど、俺と同じくまだ1年生で一般の生徒の騎士科で、ここまでお強いのは正直驚きました。特にサファイア級の魔物を倒したエピソードを聞いたときは、俺たち燦爛クラス全員が驚きました。自信を持って下さいね。」
ウルスラはちょこっと顔を赤らめて、
「はい!今日はありがとうございました。また明日お願いします!」
そんな事をしていると後ろから、エルナトと、…ムスッとしたノートが来ていた。
「おい、クラート。お前は天然の女たらしか?ああ?」
とっても怖い顔をして上から俺を目をギラりと睨みを利かせてくるエルナト。
「ちょちょ!待って下さい!?不可抗力では!?」
俺が必死の弁明をしていると、
「く、クラートさん…。私は…?」
ムスッとしながらもちょびっと涙目のノート。
はわわわわ!?
「ごほん。ノートはとっても魅力的な女の子だ。別に誰でも良いとかそう言うんじゃないから!お願いだから落ち着いて!」
ノートを少し抱きしめながら背中をポンポンと叩いて宥める。
「ひゃふ!?ひゃい!?」
顔が真っ赤になるノート。
ノートは可愛いなぁ…。
「おい、クラート…。今ここで、お前を切り裂きんでやろうかぁ?」
刀、『桜花葉刃』を今にも抜きそうなエルナト。
「な、何で!?許して!?」
「………………羨ましい。」
そう呟くウルスラの声が聞こえた。
稽古日1日目、終了。




