31 騎士科稽古1日目 騎士科 最上位クラス薙刀使い
「さて、350名近いとは言っても、流石に上位と最上位クラスになると一気に減るなぁ。2クラス合わせて50人くらいか。平民出身でエメラルド級の魔物を倒せる実力を持つ者はかなり限られているからな。」
魔術無しで魔物を狩れる平民はそう多くは無い。
銀貨1枚で数日分の食費になるので、それが8枚にもなるエメラルド級の魔物は本来かなり危険なのだ。
それを軽々狩れるのであれば、貴族並みのお金持ちになれる。
だからこそ、エメラルド級の魔物を狩れるだけの実力を持つ者が上位、最上位クラスになれるのだ。
「今まで疑問だったのだが、クラートはなぜ徒手空拳なのだ?これまで戦技を使ったところを見た事がないぞ。それにも関わらず、あの身体能力は何なのだ?」
あれま!ご興味を持っていただけますかいな。
エルナトが俺を見ながら…可愛いっすね?聞いていた。
「戦技を使えるってことは、少なからず魔力を持ってるだろ?だけど俺は魔力が全く無いんだ。その代わり何故かこの常に発動してる魔眼と、突きや蹴りだけで魔物を屠れる常人離れした、不気味な身体能力があるんだよなぁ。魔眼の名門家ウンシュルト家なら誰でも魔眼を持ってるはずなのに、俺しかこの魔眼を持ってない事も謎だ。おかげで…ごくん…っぷはぁ。こんな風にポーションを常に持ち歩いて飲んでないと、魔眼が常時発動してるから頭が痛くて仕方無いんだよ。この紅い魔眼自体も謎。クラス選別の水晶もエラー起こして、シリウスさんがリゲル先生に直前で推薦状出さなきゃ、下位クラス行きだったらしいぞ?…あ。」
あやべ、口が滑ってしまったわ?てへぺろ?
…ちょちょちょ!?エルナトとノートが驚愕の顔して俺を見てきてるんですが?
「お、おい。それは本当か?私の剣技を軽々さばけるクラートが下位クラス行きだった?それよりもシリウスが推薦とは一体どういう事なのだ!?」
知りませんわ!?美少女達のクラスに放り込まれたんです!
あやべ、またレグルスを忘れてしまいました。
不敬罪で処されてしまいますわ!?
「そ、そうですよ!?クラートさんが燦爛クラスに来てくれなければ、私はあのまま劣等感に悩まされているところだったんですよ!?わ、私たちのクラスにクラートさんが来なかった時の事を考えると…だ、ダメです!!絶対に考えたくありません!!」
あわわわ!?2人がかなりパニックを起こしている!
とりわけノートがめちゃくちゃしがみついている!
や、やばいな。
本当にうっかりして、さらっと何でもないように言ってしまった!!
「お、落ち着け!二人とも!今俺はこうして燦爛クラスに配属された以上、もうどこにも行きようもないから!!と、とにかくだ!今は稽古に集中するんだ!ってあああ!!?」
ノートにめっちゃ引っ張られてる!
「い、嫌ですからね!?どこにも行かないで下さいよ!?絶対ですからね!?」
ああ!半分涙目で訴えてくるノート!
落ち着かせなければ!!
「ごほん。落ち着いてくれ。どこにも行ったり消えたりしないから。ノートに泣いてほしいわけじゃないんだ。」
少し抱きしめて背中をさする…うへへ、良いですね…。
おっと、そうすると落ち着きを取り戻したのかな?
「はい…。そう言われてしまうと泣くわけにはいきませんね…。すみません。取り乱してしまいました…。」
ああ…そう言って少し笑顔を取り戻してくれたね、良かった…。
しかしあっぶね~。
どうにか落ち着いてくれて良かった~。
でも、まだ触り足りません。
そうしてノートの背中をさすっているとですね…
「あのー…。お取り込み中すいません…。先ほどのエルナト殿下の剣技が非常に素晴らしくて、指南をお願いしたいのですが…。いいですか…?」
…なんて事でしょうか!恥ずかしいです。
俺とノートが顔を見合わせて…、
「「………お見苦しい所をお見せしました。」」
エルナトが直ぐに声をかけてきた騎士科の生徒に、
「はぁ…全く。済まなかったな。勿論だ。名は何と言うのだ?」
そうエルナトが聞いた相手は女子生徒の最上位クラス。
「あ、はい。ウルスラ・エルンストと言います。薙刀を使います。」
おやおや?…背中付近まで届くセミロングの茶髪で…おっとりとして優しい雰囲気を出しているが…見た目にそぐわない強さがあるんですが?
可愛いっすね?
ちょっと聞いてみるか。
「ウルスラさん…でしたか?称号をお持ちですか?」
すいません!仲良くなりたいんでね!
「はい。『宝玉武階:エメラルド』です。お三方に指南してほしいのですが…。後は魔術を見たことがないので、良ければ是非、と思いまして。」
は?あらあらまあまあ!?『宝玉武階:エメラルド』!?平民出身で、しかもまだ学生で!?
おいおい、普通に『翠玉騎士団』までなら入団試験受けれるぞ!?
「何?『宝玉武階:エメラルド』だと?平民出身で称号持ちは、いるにはいるが…まだ学生だったらどうにか精々が『宝玉武階:アメシスト』だぞ?しかもまだ私たちと同じく1年だろう?騎士科の最上位クラスとは大体がそれくらいの強さを持っているのか?」
そうだよね~!エルナトも驚きの顔で問いかけています。
それに対してウルスラと名乗った…うへへ、可愛い少女はですね、
「あ、いえ…。最上位クラスでも称号持ちはいますけど、その殆どが『宝玉武階:アメシスト』止まりでして…。私だけなんです…。私の母親が元貴族だったそうで、その血を受け継いだからかもしれません。」
ああ…なるほど、貴族の血を受け継いでいたか…。
少々おどおどしてる様子だが、俺たちの…あ~、あの恥ずかしい場面に一人で声をかけられる度胸があるわけだ。
は?いえ恥ずかしくありません!青春謳歌していただけです!
あ待って、これ稽古中だったわ。
「なるほどな。そんな背景があったのか。興味本位で聞くが、お前は強くなってどうしたい?」
おやおや?エルナトが試すよう、ウルスラさんに問いかけるではないですか~。
「…私の家はそこまで裕福ではありませんから、強くなって騎士団に入りたいのです。お世話になった両親に仕送りをしたい…。幸運なことに私は他の方達よりも…その、多少恵まれた力だけはあったので、それを活かしたいのです。この薙刀も両親が必死にお金をはたいて、私に譲り渡してくれましたから…。」
確かにウルスラさんの言う通り、その薙刀は『宝玉等級:サファイア』だと解析されてるね。
「なるほど。済まなかった。野暮な事を聞いた。お前の信念は見事だ。クラート、ノート、このウルスラに稽古をするぞ。」
エルナト様~、お優しくなって…成長したんだね!!
「ああ。当然だ。ウルスラさん、よろしくお願いします。」
ええ!当然ですね!可愛いからね!放っておくわけにはいきません!
俺が挨拶をして、ノートもまた、
「うふふっ。ええ。私は魔術師なので少々特殊ですけどよろしくお願いいたしますね。」
ウルスラはちょっと感動したかのように、ペコリと頭を下げて、
「はい!是非お願いします!」
うへへ~とても元気で良いお返事ではないですか~。
ん?何ですか?エルナト様や。
「先ずは分かりやすい剣士である私からウルスラの軽い模擬戦をする。2人共、私が剣を交わしてる最中にイチャつくんじゃないぞ?」
「「ごめんなさい!!」」
釘を刺されましたね!…すいません。
エルナトがフォルカー団長に使った物とは別の、もう一つ刀を抜刀する。
「エルナト…。何本の刀を持ってるんだ?」
俺がエルナトの傍で前々から思ってた事を聞く。
クラス混合試合では『宝玉等級:ダイアモンド』の『紅焔閃火』。
フォルカー団長に使ったのが『宝玉等級:ルビー』の『桜花葉刃』。
そして今度はまた別の、刃が紺色の刀を振り抜いている。
「ん?ああ。刀集めが趣味でな。大体20本くらいあるぞ。『宝玉等級:トパーズ』からこの前の『宝玉等級:ダイアモンド』まで様々にな。」
「………………そうなんだ。」
あらあらまあまあ…流石は王女様。
武具の類は結構な額するけど…。
「さて、騎士科の連中の稽古用に持ってきたこの刀を使う。『鬼火景光』。等級は『宝玉等級:サファイア』だ。」
稽古用にしては随分と良い物過ぎない?エルナト様?
おっと、ウルスラさんの方も既に準備を終えている。
「準備は良いか?ウルスラ。」
そうウルスラさんの方に向き合いながら聞くエルナト。
「はい。いつでも大丈夫です。よろしくお願いします。」
ウルスラさんの構える薙刀『千草繚乱』『宝玉等級:サファイア』。
刃が桜色に輝いているのが特徴だ。
「「では、いざ!!」」
エルナトが最初に動く。
「『基本剣術:応ノ壱:縮地』!!」
やはりフォルカー団長よりも俊敏に動き、瞬く間にウルスラに接近する。
そしてそのまま戦技を放とうとするが、
「!?」
「『紅花薙刀術:弐ノ花:月華払い』!!」
薙刀が桜色に輝き、横にグウウウン!と高速回転させて広範囲にかけて防御も兼ね備えた攻撃。
縮地で接近してきたエルナトへのカウンター攻撃をしてきたのだ。
それに対してエルナトは、
「『基本剣術:防ノ壱:流水』」
高速で回転して飛んでくる刃を斜め上に逸らすように、刀で受け流す。
そしてそのまま、
「『基本剣術:応ノ弐:闘気』!」
エルナトからオーラが放出され相手を僅かだけ威圧で行動を鈍らせ、自身の身体能力を向上させる。
ウルスラの放った薙刀戦技が少し鈍った瞬間に、
「『基本剣術:祖ノ伍:円陣断』!!」
エルナト自身が右方向にぐるりと回転しながらの範囲攻撃をする。
『基本剣術:祖ノ壱:一閃』より速度は落ちるものの、敵に囲まれた際に使える戦技だ。
だが…
「『紅花薙刀術:肆ノ花:落花水月』!!」
薙刀が輝くと共に、圧倒的速度で瞬時に前屈みに倒れるように地面すれすれまで、全身を落下させて攻撃を躱す。
そして左手のみで落下する身体全身を支えて、右手に持つ薙刀でエルナトの足に向けて薙刀をシュンっ!と横払いで攻撃をする。
しかしエルナトは身体能力が向上した身体で軽く飛び跳ね、足元の薙ぎ払いを躱してそのまま飛び上がった状態から、
「『基本剣術:祖ノ参:穿貫』!!」
地面にいるウルスラ目掛けて、刺突攻撃をする。
ウルスラもまた、
「『基本剣術:応ノ弐:闘気』!!」
エルナトと同じくウルスラもまた身体能力を向上させて、左手でグン!と身体を地面から飛び跳ねながら、刺突を躱す。
そしてエルナトから距離を離したが既に、エルナトが一瞬で縮地でウルスラに接近しており、
「『基本剣術:祖ノ壱:一閃』!!」
エルナトの神速の横薙ぎで既にウルスラの首に刃が迫り、寸止めされていた。
「…ふむ。見事な腕前だ。あれ程、変幻自在な攻撃をしてくるとはな。私もかなり驚いたぞ。」
へえ~!珍しいね!エルナトが相手を褒め称えるなんて!
「…流石にお強いですね。エルナト殿下。フォルカー団長の模擬戦であの重たい大剣の攻撃を難なくいなしてしまうのですから。私もまだまだですね。ありがとうございました。」
そしてお互い離れて礼をする。
「少し間を挟んで、次は魔術師のノートと模擬戦を行ってみると良い。魔術制御のプロだ。」
そうだぞ!!ただの美少女と思うなかれ。
あの馬鹿垂れ公爵を膝蹴りでぶっ飛ばしたからね!
「ふう。分かりました。ノート公爵様、お願いします。」
そう俺たちに向き合いノートに頭を下げるウルスラさん。
そのノート本人はと言うと…戦技でのハイレベルな戦いにぽかんと口あんぐりさせているんですが?
ぅえ?何その表情?可愛いね?
「…………。」
あれま!黙ってしまっているか。
仕方あるめぇ、ノートに俺が声をかけます。
「ノート。ウルスラさんが呼んでるぞ。」
頭をなでなでしながら、語りかける。
う~ん…触り心地がよろしい!
そうするとビクッと飛び跳ねて顔が赤くなりながら、
「ひゃいっ!!えっ!あ、はい!。ごほん。よろしくお願いいたします。ウルスラさん。」
エルナトが俺らをじとーっと見ながら、
「おい、頼むからきちんと指南に集中してくれよ?」
すいませんねぇ…。




