3 栄光
「新入生諸君、入学を許可する。私が3年にして主席を務める、シリウス・フォン・ヴァールハイトだ。在校生を代表し、諸君らの入学を歓迎する。
諸君らは今、我がルミナス王国において最高峰の学び舎の門をくぐった。ここには、国を守るための剣技、世界を識るための魔術、そして民を導くための帝王学、その全てが揃っている。これらは諸君らが、自らの未来を切り拓くための『力』となるだろう。
しかし、心に刻んでほしい。力には、必ず責任が伴うということを。
特に、上流科に籍を置く者たち。君たちは生まれながらにして多くの恩恵を受け、この国の中枢を担うことを期待されている。その血筋は誇りであると同時に、決して逃れることのできぬ『責務』の証だ。家名に甘んじ、研鑽を怠るような者に、この学園に居場所はないと知れ。君たちに求められるのは、ただ優秀であることではない。民の模範となり、国をその双肩で支える、真の指導者となることだ。
もちろん、普通科、騎士科、魔術科の諸君らとて例外ではない。身分や出自に関わらず、この学園に在籍する以上、君たち一人ひとりが王国の未来を形作る重要な礎なのだ。自らの才を疑わず、ただひたすらに高みを目指してほしい。この学園は、その意志ある者に対し、あらゆる機会を与えることを約束しよう。
これからの学園生活は、平坦な道ではない。厳しい試練が、諸君らを待ち受けているだろう。だが、隣に立つ学友と切磋琢磨し、時には互いを支え合うことで、乗り越えられぬ壁はないはずだ。
諸君らが、このルミナス王立学園の生徒であるという誇りを胸に、実りある日々を送ることを期待している。私の話は以上だ。」
この場所は通称[アウレリウス中央講堂]と言うらしいです。
新入生は合計650人ほどいます!いや、だから多いっての!?
そんで、そんなアホたれな規模の人数が入り座れる圧倒的スケールの劇場型(シアター形式)をしているんですわ。
あの遥か先に見える巨大な壇上と講演台…。
広すぎて演壇に立つ人物は豆粒のようにしか見えないからさ、『射影具』という名前の魔導具で~、正面に巨大なモニターを映し出して~、遠く離れていても講演する人物をしっかり見る事ができる仕組みなんだとさ。
…いや、そんな本末転倒な事するなら、こんなにも広くするなや!
メンテナンス職員のお気持ちを考えなさいよ!あらあらまあまあ!!お可哀そうに!!まぁ頑張ってね~。
ウンシェルトの家にもこの魔道具はあったけどもさ、こんなにも大きく映せるほどの物ではなかったよ?
この中央講堂は演談やスピーチするだけでなく、演劇に特殊な講義として様々な用途で使われている講堂らしいけどもさぁ…こんなにも広くする必要がありましたぁ?
その程度だったらもっと別の場所でやりませんかぁ?
んではい、俺は上流科専用スペースの座席の1つに座っておりますよ!
上流科の座席のスペースのみ、やたらと凝った装飾品に、天井を支えるように立つ巨大な大理石の柱!
柱一つ一つに、空間の快適さを保つ為の魔術刻印が刻まれているんですねぇ…。
ひゅ~快適い!なのと同時に、その魔術刻印の解析処理に加えて~、ここらの連中の感情の揺れ動きも、魔眼は捉えて逃してくれません!!いや!見逃して!
情報処理を勝手に始め、情報の奔流が脳に流れ込んできちゃいます~!
ぐおお!?頭が痛~い!?
そう思っていますとですね、シリウスと名乗る知的かつ、耳くらいにかかる程度の銀髪、通った鼻筋にその切れ目に紫紺の瞳をした、やや冷淡さにも見える風貌の銀髪の男子生徒が、祝辞を述べ終えたところでございましたわ?
中々の厳しい言葉に一般の新入生、そして俺がいるこの場の上流科の生徒たちも各々険しい顔を浮かべたり、不安気な顔をする者と様々ですね!
う~ん…あの程度の言葉で臆する程度ですか…。
本当に優秀なの?
…ここにいる上流科の方々さぁ…言いたかねえけどさ?本当に『普通』程度の方々ばっかりだよ?大丈夫?
ん?なんでしょう?シリウス主席…で良かったよねえ?一瞬俺の方に目を向けてきたかな?いや、魔眼の効力で、あれは確実に俺を捉えていると解析されています!
は?怖!何ですか!?俺が何をしたというのですか!?
いえすいません!さっき心の中で、上流科の方々を少し下に見ておりました!ごめんなさい!?
ん~っと?もしかしてさぁ、俺が魔眼を保有する、ウンシュルトの一族ともう知られちゃったとか?
しかもヴァールハイトと言えば王国でも7つしか存在しない七公爵家の一角じゃん!
主に闇系統の超高等魔術を扱う一族でしょう?
何ですか?俺を闇にくるんで拉致りたいんですか!?ってあれ?入学式終わりでございますかぁ?
あらあらまあまあ…。
生徒全員が講堂から出ていき、各々の選択した学科の教室に向かうのを見ながら、俺は講堂の座席に座ったまま…。
疲れすぎて動けないんです!
座席の下に荷物を置くスペースがあってさ、新入生は皆スクールバッグをそこに入れていたわけなんだが、俺もバッグを持ち上げ中の物を漁ります!
何を探してるのかって?それはね~、じゃ~ん!大体5㎝ほどの大きさの長方形の瓶、治癒のポーションです!!
ポーションにも品質のランクがあるんだよね!!魔法石と同じランク分けをされておりますよ?
『トパーズ<アメシスト<エメラルド<サファイア<ルビー』とルビー、紅の色が最高品質で~す。
んで俺が取り出した液体の色は紫、つまりはアメシスト級。下から2番目のランクのポーションだ。
これを一気に飲み干します!
ぷはぁ…ん~!染み渡る~!!
治癒のポーションは身体の傷を癒すと同時にな?痛みや疲労などまで癒せる優れものなんです!
でも…ランクが低いと深手や致命傷ほどの傷は癒せないし、痛みや疲労も完全には取り除ききることはできません。
まぁ当たり前か。
今俺が飲んだアメシスト級のポーションもさ?脳疲労を完全には癒せないけど~、多少は持ち直せるのでバッグに3本ほど入れてきたんだ~!準備が良いでしょ~!
あ~だけど、朝の登校時に吐いた際に一本飲んでしまったからなぁ~、今この瞬間飲んでしまったので残り1つかぁ…。準備がまだ甘かったようでした!?さっきの言葉は撤回ですね!
こんな事ならもう少し持ってくればよかった~。
だけどさぁ…ポーションは高い!
先ほど飲んだアメシスト級のポーションは1本で銀貨5枚だからね!?
ちなみに、この世界のお金の価値はぁ…ほい!
『銅貨<大銅貨<銀貨<大銀貨<金貨<白金貨』この順です!
銀貨1枚は庶民の数日分の食費に相当からさ?学生の身の俺にはかなり痛い出費だよ~。
ぐえ~ちくしょ~…俺、侯爵なのに!あ!俺が逃げたんだったわ!?
ならどうやって資金を調達していたかって?2年間、冒険者稼業をやっていただけですが?
魔物討伐にダンジョン攻略、なんなら希少な薬草採集の依頼に、護衛任務と雑務から戦闘と幅広く活動してましたよ?もっと褒めて下さい?
生活と、魔眼の脳疲労回復のためのポーションの調達のために、時にはサファイア級の魔物を魔眼の力で討伐し、そいつの魔石や魔物素材を冒険者組合に提出なんてした事もありましたが?
あ、魔物の強さは、倒した際に落とす魔石の色でランク分けされてるよ?ほい!
『トパーズ級<アメシスト級<エメラルド級<サファイア級<ルビー級<ダイアモンド級』
こんな感じ~!あ、サファイア級はかなりの強敵ですからね?エメラルド級とサファイア級には、かけ離れた強さの差がありますよ?どう?それを倒した俺!強いでしょう!!あっはっは!!
ちなみに現在も冒険者稼業は続けていま~す。
唯一の生計を立てる方法だからね~!
ちなみに、学園より一般生徒、要は寮暮らしの生徒には毎月普通に生活できるだけの資金が与えられるんだって。
全員に支給される生活資金は、金貨1枚と大銀貨3枚。
あっぶね~!!俺が寮で暮らしていなければ資金繰りに困ってしまう所でしたわ?
何せ俺、侯爵家の貴族ですからねえ~!!ん?でも待ってください!
何で俺、貴族なのにこんなにお金に困っておるのでしょうか?あ!俺が家から逃げ出していたんでしたわ?てへぺろ?
しかし『普通』に生活していればの話であって、ポーションがとにかく必要な俺にとっては、学園支給分では生活が成り立たないんだよ!
そしてなんとも皮肉なことにさぁ…、治癒ポーションを調達するために、冒険者稼業で生計を立てていたのに!その仕事の最中で魔眼の負荷でポーションを何本も消費する…、なんて言う事態もあったりと、本末転倒にも程があるだろうがぁ!!
それとなぜ学園に来たのかと言うと、冒険者組合の職員にルミナス王立学園を紹介されたからですぅ。
少し無理をしている様子に見えたらしく、稼業を続けている俺のことが気になったらしいよ?
無理なんてしてねえんだがなぁ?
んで、冒険者組合に推薦状を書いてもらいまして、この最大規模のルミナス王立学園に入学したという経緯で~す!
まぁ?もしかしたらこの謎に満ちた、俺が安直に名付けた『深紅の魔眼』について~、何か手がかりを得られるのではないかと!僅かばかりの期待を胸にこの学園に足を踏み入れたのです!
しかしだね組合よ、紹介状を書いてもらったことには非常に感謝しているが、俺が上流科に配属されたという事は、俺の家名をバラしやがったな!?
次訪れるときは問い詰めてやろう…!
さ~て、この学園はシリウス主席の言う通り、仮にも最高峰の学び舎なだけあるのでね!一般生徒(普通科、騎士科、魔術科)と上流科と共に関係なく、実力のほどによってクラスが分けれているんです!
最上位クラス:リュミエール【光、知恵】
上位クラス:シーエル【天空】
中位クラス:テール【大地】
下位クラス:ノワール【黒】
この4つに分類されま~す。
新入生たちは全員出ていく前にさ?『射影具』に映し出された光り輝くモニターから、自分たちがこれから所属するクラスを見ては一喜一憂してましたね。
下らないです。
だ~って、皆あまり変わらないじゃん!!実力!
気持ちは分かるけどね~。
でも正直、感情の揺れ動きとたくさんの騒がしいからさぁ~、さっさと確認して出て行ってもらいたかったよね!
だからある程度さ?講堂が静かに落ち着くまで座って待っていたんです!早く出て行きなさいよ!
よ~し、では俺も自分のクラスがどこに所属しているのか確認をしよ~。
遥か正面に映る巨大ミニターとは別で、上流科専用の劇場座席に用意された…もう突っ込まない!もう一つのモニターを確認だ!
そうだなぁ~、できれば中位クラスの『テール』クラスだったら少しは楽に過ごせそうかなぁ~?
うえ…モニターからマ~ジでどうでも良い情報でいっぱいだよ~。
んで?はいはい、俺が大量の情報に疲れながらも~、瞬時に魔眼が解析したのは…今あげた上記4つのクラスどれでもないですね~。
ぅえ?どういう事?
侯爵家以上かつ最上位の実力を持ち、選ばれし者しか入れない、あのクラス…
燦爛クラス:グロワール【栄光】
「あらあらまあまあ!?ちょちょちょ!?はぁ!?皆を下に見た俺にバチが当たっちゃったかぁ!?」
超広大な中央講堂に俺の声がこだましちゃった!?ごめんね!?
次回も粗削りがなくなりつつあると信じたい…!




