26 クラス混合試合 『静謐なる支配者』
「ただいま戻りましたわ。少しはフローライト公爵は張り合いがいあると思っていたのですが…本当に救えないお人でした。まさか最後に殴りにかかるなんて、酷いですよねぇ?なので、ついつい蹴り飛ばしてしまいました。」
そう微笑みながら戻ってくるノートの顔は晴れやかで、今までにあった陰鬱さが消えている。
「全くだ。あの屑2人にしてもそうだ。なぜあんなのがリュミエール【光】に選ばれたのか見当もつかん。だから地獄を見せてやった。女二人と軽んじたあの3人は二度と顔をみたくはない!」
エルナトにしても珍しく感情を露わにして、目を瞑りながらプルプル震えながら戻ってきた。
3チームの中では最も過激に相手を追い込んでたが、相手が相手なだけあって、むしろ燦爛クラス全員が2人の味方だった。
とりわけレグルスが腕を組んで、貧乏ゆすりしながら怒りを露わにしていた。
「ちっ。フローライト?だったか?俺も奴の顔なんざ金輪際、見たかねえ。その腰巾着2人も同様だ。次見た時は撃ち殺しちまいそうだ。今日はこれで終わりだが、奴ら3人は合同演習に参戦させないよう、先生に頼んでみるか。
…ヴァールハイト。さっきは俺の何を考えてるのか分からねえって失言を謝罪する。済まなかった。てめえが劣等感で苦しんでいるなんざ、クラートに言われるまで全然分かってなかった。」
少し目を伏せがちにして答えるレグルスに対して、ノートは微笑みながら、
「うふふっ。いいえ。こちらこそ、つい感情的になり睨んでしまった事、申し訳ありませんでした。でも、もう大丈夫です!私は自身の強みを見いだせたのですから!」
手を口に添える仕草などはいつもと同じだが、これまでのノートにしてはかなりハイテンションで、元気に満ち溢れている。
そんな様子のノートにレグルスは珍しい物を見た、という顔をしながら、
「はっ!その元気な笑顔の方が全然似合うぞ。くっ!それにしても、フローライトとか言う屑野郎に対しての舌戦、ありゃ見事だったぜ。途中で俺も吹き出しちまってたからなぁ!あっはっはっは!」
腹を抱えて笑うレグルスに賛同するように、
「そ~だね~!!もうさ~、ふろ、ふろ?あれ?なんだっけ~?まあいいや~。めちゃくちゃダサかったよね~!!弱そうな女の子を狙って~グロワールだと証明する~とかさ~。もう顔も思い出したくな~い!!」
アトリアもまた全くの同意見。
スピカもまた同じように、
「…ええ。あんなのが燦爛クラスに万が一来たと思うと、ぞっとするわ。所詮口先だけのつまらない男だったわね。残りの2人も同じ。2戦目で10人がかりで全く歯が立たなく、2クラスほぼ全員が言葉を失ってる中、ノルム公爵合わせて3人だけだなんて…特にエルナト殿下が直々に手を下した2人は立ち直れないでしょうね。」
温和な方のスピカもまた、2クラスを見据えて静かに怒りながら賛同する。
そうしてノートが俺に寄ってきてスカートの両端を少し摘まみ上げ、優雅な立ち振る舞いをしながら言う。
「…ありがとうございました。クラートさん。あなたの言葉で私は救われたからこそ、あのノルム公爵の罵りをさらりと受け流すことが出来ました。ようやく燦爛クラスの皆様とも良い関係が築けるでしょう。」
俺はまっすぐにノートを見ながら、
「…ノート、今回の一件でお前がどれだけ偉大な魔術師であるか、あの試合で証明されたぞ?なにせ俺たちも含め、あの2クラスに複数同時に魔術を扱い維持し続けるという、異次元っぷりを見せたんだ。俺たち含め、2クラスの先生までもが唖然としていたんだぞ?もう誰もノートを貶める発言はこれから無くなるだろう。」
そんな俺の発言にノートは目を大きく見開きながらポカンとしている。
そんな顔もできたんだなと、クスクスと笑いながら俺は言う。
「まさか気づいていなかったのか。魔術の複数同時の行使に加え、威力の調整、魔術の維持、そんな神業な緻密な魔術制御ができるのは、ノート、お前くらいだぞ?
これまでノートには魔術師の称号がなかったが、…今回の一戦で少なくとも『宝玉階梯:ルビー』以上が与えられるんじゃないか?この学園は功績を見せれば、称号も与えられる事が許されてる学園だ。」
そんな俺の発言にノートは驚愕の顔を浮かべている。
レグルスも同じく俺の言葉に賛同し、
「ああ。あんな芸当なんざ俺には出来ねえぞ?俺は正確な精密射撃が出来るだけであって、複数同時行使なんざ、逆に俺が嫉妬してるくらいだが?第4階梯までしか使えないなんて些細な問題だぞ?なんだありゃ?」
ノートが身体を震わせながらポツリと言う。
「私が…『宝玉階梯:ルビー』級?」
若干涙目のノートに俺は言う。
「そうだ。ノートはグロワール【栄光】に選ばれるだけの確かな素質があった。もう劣等感なんて感じる必要はない。間違いなく天才だ。」
その言葉にポロポロ涙がこぼしながらもノートは嬉しそうに、
「…………はい!皆さま、ありがとうございます!」
そうして一週間の2クラスとの合同演習は終わり、特別授業は終了した。
リゲル先生も、(よくこの特別授業を達成させる事が出来たな。君たち、よくやった。)と褒めの言葉をもらった。
後日、学園からの直々な推薦状が国の魔術師組合に届けられ、ノート・フォン・ヴァールハイトは称号『宝玉階梯:ルビー』が与えられた。
二つ名は『静謐なる支配者』




