25 クラス混合試合 3戦目 戦技
この世界には魔術もそうだが、戦士や騎士、そしてクラートのように徒手空拳で戦う物理職にも、きちんと技名がある。
魔術師が使うのが(魔術)であるなら、物理職が使う技は(戦技)と言う。
そして戦技には基本の剣術、『基本剣術』から全ては初まる。
その基本剣術から、魔術の属性が違うように、流派と呼ばれる各々別の戦技を極めて行くのだ。
呼び方としては、『戦技の流派:漢字の番号:技名』である。
「『基本剣術:祖ノ壱:一閃』!!」
エルナトの高速の横薙ぎの斬撃が並び立つ2人に迫る。
そうすると焦ったシルヴァンが前に出てきて聖盾を使い、
「だ、『断罪剣術:罪ノ弐:精霊盾』えええ!!!」
そう言うと光で煌いた盾を地面に突き立て防御の構えを取る、タンク職の聖騎士と言ったところか。
しかし…
「はあっ!!」
とエルナトの気合いの掛け声と共に、ガキイインっ!と戦技の盾ごと刀の一閃で簡単にシルヴァンは弾き飛ばされる。
そして残りの焦ったベニトアイトは急いで戦技を発動する。
「き『基本剣術:応ノ壱:縮地』いい!!」
そう叫びエルナトとは逆で近づくのではなくシュンっ!とエルナトから瞬時に離れて魔剣を振り上げ、
「『第4階梯:炎:グルートクリンゲ』ええ!!」
灼熱の刃がグウオオオンっ!と飛来するが、
「『基本剣術:弐ノ防:空蝉』」
エルナトは瞬時にスンっ!と回転、残像を残しあっさり避けた後、『基本剣術:応ノ壱:縮地』で吹き飛んだシルヴァンに接近、
「『基本剣術:祖ノ参:穿貫』!!」
エルナトの持つ『紅焔閃火』から高速の刺突攻撃が繰り出される。
吹き飛びよろけたままのシルヴァンは驚愕の顔をしながら、不安定な姿勢から戦技を繰り出す。
「『断罪剣術:罪ノ壱:聖絶段』んん!」
光輝く聖剣を真上から刀をガキン!と叩き落とそうとするが…不安定な姿勢で威力もきちんと発揮できていない状態では、叩き落とせない。
しかもエルナトの使う刀は『宝玉等級:ダイアモンド』の国宝級の業物。
逆に聖剣が弾かれそのまま左肩にブスンっ!と貫かれ、血が噴き出る。
「ぎゃああああああ!!!肩がああああ!?」
「五月蠅い。黙っていろ。『基本剣術:祖ノ弐:崩撃』!!」
聖剣を手放し血だらけの肩を押さえ、喚くシルヴァンに容赦なく、エルナトは刀を両手に持ち真上から重量を込めた上段斬りをする。
シルヴァンの左手に持つ聖盾にビシンっ…と大きなヒビを入れながら、重い衝撃でまたもや吹き飛び転げる。
「う、ああ、た、たすげ」
シルヴァンがそうみっともなく言うと、エルナトが縮地で接近し、
「言ったはずだ。無様に命乞いをするようなら、私とノートを軽んじ侮辱したとして、二度と口を開けんようにしてやると。…お前は今、命乞いの言葉を口にしたな?良いだろう。徹底的に叩きのめしてやる。本当の命のやり取りがなんであるかを、その身体で思い知るのだな。」
エルナトの一切容赦ない言葉に恐怖し、必死で這いつくばって逃げようとする。
「ゆ、許し、許して、たす、たすけええ!!」
大量の血を地面に垂らしながら逃げるシルヴァンに、エルナトはもはやゴミを見る目で戦技を出す。
「精々後悔するのだな。まあ、この学園には致命傷を負っても直してくれる治療室がある。私もよくリゲル先生に何度も戦技と魔術で、傷だらけにされては何度も世話になってる常連だ。…ついでだ。基本剣術ではない私の流派を見舞って終いにしよう。
『日神剣術:壱ノ型:旭日火輪』!!!」
太陽のような炎の煌きを『紅焔閃火』の刃から放ち、真下から日の円を描くように這いつくばるシルヴァンをグウオオオオンっ!と、背中を切り裂き、大量の血を流し動かなくなった。
そこに先生たちが駆け寄り、最上位クラスの先生が治癒の魔術師である為で治療をし始め、サファイア級のポーションを傷口に振りまく。
それを確認したエルナトは、もはや腰が抜けて座りこんでるベニトアイトに目を向け、刀にこびりついた血を振り払いながら、ゆっくり歩いていく。
「…次はお前だ。そこに這いつくばってるゴミは私の期待には答えられなかったが、お前はまだ楽しませてくれるか?」
戦技も出さず、エルナトはただひたすらにゆっくり歩いて近づいていく。
ベニトアイトはもう粗相していて、演習場の地面が湿っている。
先ほどのシルヴァンの命乞い、許しを乞えば容赦ない戦技が飛んでくる。
はっきり言うと、ベニトアイトもまた、噂でノートを軽んじ、エルナトが戦闘狂である事は知ってはいたが、それでも他人事、どれだけ狂人なのか分かっていなかった。
王女だからまあどうにでもなる、そしてフローライト公爵と言う虎の威を借り媚を売っておきたい、リュミエール【光】に選ばれ、公爵にも呼ばれて、少しハイキング気分だったのだ。
1戦目の魔眼チーム、2戦目の二つ名持ちチームを見て尚、命のやり取りがこれだけ恐ろしいなんて考えてもみなかった。
フローライトと同様で、燦爛クラスのあのような活躍なんて自分でも出来ると勘違いしていたのだ。
自分は貴族だから安全、能力もあるからいざ危機が迫ってもどうにかなると、高を括っていたのだ。
そしたらどうか。
女だと甘く見てた3チーム目が一番過激で、既に公爵も吹っ飛んでる。
…死が、死神が迫ってくる。
そして…何もできず何も言えず、死は目と鼻の先に立っている。
「…何もしないのか?何もしなければ戦場、そして強者、裏社会の住人、サファイア級以上の魔物…これらにお前は殺されて終いだぞ。」
ただ座り込んで死を見上げる事しかできないベニトアイト。
「………………ゆ」
瞬間、シュバババババンッ!と、ベニトアイトを避けながら大量の斬撃が降り注ぎ、大地に無数の斬撃痕で出来ていて、チンッと刀を納刀するエルナト。
『基本剣術:祖ノ肆:連斬』
「…ゆ?ゆとは何だ?まさか許してなどと言うつもりではあるまいな?言ったはずだ。無様に許しを乞えば、二度と口の聞けん状態にまで徹底的に叩きのめすと。お前ら程度に私の流派を使うまでもない。…だが、気が変わった。どうやらお前も私たちを軽んじていた事が、ここで分かった。お前は良いデモンストレーションになる。私たち燦爛クラスに楯突くことがどれだけ恐ろしいか…お前を使って周りの連中に見てもらおう。」
エルナトがそう言い刀を再び抜刀。
それを見たベニトアイトは半狂乱になりながら、魔術を叫ぶ。
「う、うああああ!!!『第4階梯:炎:グルートクリンゲ』えええ!!!『第4階梯:炎:フランメランツェ』えええ!!!」
炎の刃と槍がゴオオオ!と至近距離から放たれるが、
「『基本剣術:壱ノ防:流水』」
まさかエルナトは魔術に対し、刀による受け流しをして魔術を逸らす神業を行う。
そしてエルナトがついに放つ。
「『日神剣術:弐ノ型:烈日一閃』!!!」
『紅焔閃火』が太陽のように激しく煌き、そして…神速の一閃がベニトアイトの左肩を深く切り裂き、血が噴水の如く飛び散り…倒れた。
そしてすぐさま同じく治療が開始される。
エルナトはもう興味も微塵に失せ、ノートと共に燦爛クラスの元に帰った。
そんな試合の様子を見ていたリゲル先生が演習場の真ん中に立ち告げる。
「3戦目、燦爛クラスの勝利だ。3チーム目の[ノート・エルナト]チームは非常にやり過ぎではあったが、上位クラス、最上位クラスは共によく分かっただろう。これが本当の命の奪い合いだ。先ほどの3名は、私が敢えて出場を許可した。何故だかわかるか?虎の尾を踏むとどうなるか、それを諸君ら2クラスに見せたかったからだ。百聞は一見に如かず、という事だ。
本日はこれで終了となるがこれより6日間、特別授業は続く。燦爛クラスと合同演習で諸君らが成長する事を期待する。以上だ。解散。」




