23 クラス混合試合 3戦目 才能
「っがあああ!動けん!?なぜだぁ!!?なぜ魔術媒介無しの素手で魔術を発動出来るうう!?」
魔剣『息吹の剣』『宝玉等級:サファイア』で切りかかろうとしたフローライトを、グオオオン…と、上空より紫のオーラが降り注ぎ、拘束状態にしている。
ノートは手を口に添えクスクスと笑いながら、
「あら?もうご存じかと思っておりましたが、案外ノルム公爵家の…いえ、違いますね。あなたご自身の情報網は全く大した事がなかったようですねぇ?さて、どうなさいますか?このままですと何もできず終わってしまいますよ?」
目を細め、フローライトを見据えながらどうするか観察していると、ガクリと膝をつき始め物凄い形相で叫ぶ。
「おかしい!!何か媒介となる物を持っているのではないのかぁ!?これは『宝玉等級:サファイア』以上の媒介がなければこのような威力は生まれんだろうがぁ!!」
手を添えたまま話すノート。
「…口答えは結構ですから早く何かなさってくださいません?もうこのまま押し潰しますよ?私を倒し、グロワール【栄光】であると証明なされたいのでしょう?」
どんどん身体が地面に倒れこんでいくフローライトは叫ぶ。
「このぉ!!卑怯だろうがぁ!!『第4階梯:風:ヴィントクリンゲ』えええ!!!」
魔剣をどうにか振り上げ真空の刃をシュイイイイン!!と地面を切り裂きながら飛ばしてくる。
ふむと一言、右手を前に出し、
「『第3階梯:闇:シュティルシュタント』」
ブゥン…と、そのまま真空の刃を目の前で静止させる。
手を突き出したまま、
「『第3階梯:闇:アプシュトースング』」
反発、斥力で真空の刃をグウンっ!と逆に押し戻す。
そのまま地面を切り裂きながらフローライトに接近。
動けないフローライトは叫ぶ。
「おい!!2人!!何をしている!?早く助けろおお!!」
四つん這い状態になりながら唾を飛ばしながら叫ぶ。
そんな情けない事を言うフローライトに、押し戻した刃の速度を調整、ゆっくり目にしかし少しずつ刃がフローライトに近づく。
そしてコツコツとフローライトに向けてノート自身も歩いてゆく。
「…どうされたのですか?四つん這いになってしまって。先ほど仰っていたように、私のクラスメイト4名並み…いいえ、それ以上の御活躍を拝ませていただきたいのですが?さあ!早くあなたお一人の素晴らしいお力を披露してくださいませ?」
微笑みを浮かべながら刃と共にゆっくりゆっくりとノートは近づく。
流石にパニックを起こしたフローライトは叫ぶ!
「こんな押しつぶされた状態で披露も何もできるわけないだろおおおお!!」
こいつは何を言っているのか。
魔術で拘束、押しつぶされた状態でも冷静に対処できなければ、グロワール【栄光】など有り得ない。
更に言えば媒介も何も使っておらず、フローライトが馬鹿にした第4階梯の魔術なのだ。
それを跳ね除けられない時点でこいつは失格だ。
リュミエール【光】に配属された事すら甚だ疑問である。
「はぁ!はぁ!くそ!『第5階梯:風:オルカーン』んんん!!!」
フローライトを中心に暴風が巻き起こり、自身が放った刃とノートを全部まとめて吹き飛ばそうとしているが…
「『第4階梯:闇:コンプレッシオン』」
手を前に出し紫のオーラがフローライトを全方位から覆い囲み、暴風その物を押し込める。
そのままオーラを圧縮していき少し、また少しと圧し潰していく。
「…どうされたのですか?先ほどから四つん這いのままで。さあお早くお立ちになって?」
フローライトにどんどん最初の刃と共に近づく。
フローライト自身は最初の『第4階梯:闇:フェッセル』と『第4階梯:闇:コンプレッシオン』でうずくまる状態で圧し潰されていく。
…ここで凄いのはノートが魔術を複数同時に3つ操っている事だ。
刃を『第3階梯:闇:シュティルシュタント』で速度調整も行っている。
ノート本人はそれについては当たり前の事過ぎて、どれだけ魔術師として異次元な事をしているのか気付いていない。
しかもずっと魔術を維持し続けている。
普通は一回放ったら終わりなのだ。
レグルスに対し、劣等感と怒りで特別な力も無ければ、強くもないと言っていたが、とんでもない。
第4階梯までしか使えないなど些細な事でしかなく、才能に満ちあふれ、まさにグロワール【栄光】に相応しく、クラス選別の水晶の判断は正しかったのである。
フローライトは怒らせてはいけない相手を怒らせてしまった。
スピカが言っていたように、最初の魔眼チームが一番優しい方だったのだ。
「誰かああああ!!助けろおおおお!!『第5階梯:風:フレスベルグ』うう!!」
オーラの中から強引に巨大な風の翼を生み出し、風の衝撃波を起こ…そうとして、すぐに闇の重力の中に押し込まれて消えてしまった。
もうフローライトの身体はガチガチに固定、さらにどんどん圧縮されてギュウギュウに潰されていく。
そしてついぞ魔術媒介であった魔剣『息吹の剣』『宝玉等級:サファイア』が圧壊し、魔術はもう放てない。
もうノートと残った真空の刃が、フローライトの目の前まで来た。
「も、もう分かった!俺が間違っていた!!頼む!助けてくれぇ!」
情けなく拘束、圧縮された状態で泣き叫ぶ。
ノートはゴミを見る目で、もはや何も言わずゆっくりと、刃をじわりじわりとフローライトの鼻先まで進めていく。
そして口を開いた。
「…本当の戦場で、サファイア級以上の魔物がそんな懇願を受け入れるとでも?そんなだから、ご家族はあなたを戦場には行かせなかったのですよ。少し…痛いですよ?」
そういうとそのまま真空の刃を進めてフローライトの鼻先を少しだけ切り裂いた。
「ぎゃああああああ!!!痛い!!痛あああい!?」
それを見たノートは十分と判断し、
「『第3階梯:闇:ドルック』」
真空の刃を上空からグオオオン…と重力で叩きつぶした後、フローライトにかけられていた魔術を全て解除した。
だが…、
「よくも…この俺に!傷をつけやがったなぁ!!」
なんとこの男、逆上して殴りかかってきたのである。
もう呆れを遥かに通り超して、本当のゴミである。
そんな男にノートは(はぁ…)と溜息を吐き手を前に魔術を放つ。
「『第1階梯:闇:ゾーク』」
ノートの掌から紫のオーラが出現、するとフローライトはノートの方にグウウン…と、一気に吸い寄せられる。
「は?」
間抜け面を晒して吸い寄せられてる最中に、
「『第3階梯:闇:アプシュトースング』」
そう唱え反発、斥力のオーラを右膝に集中させて、引き寄せられくるフローライトの鳩尾に反発の魔術を込めた右膝蹴りを叩き込み、(ぐえええ!?)と言いながら[ヴィクトル演習場]の最後部まで蹴り飛ばした。
「うふふっ。本当に…救えないバカな男ですね。少しスッキリしましたわ。」




