13 『紅眼の魔人』
ビビビビビビ!!!
「…っんあ?」
学園2日目に鳴り響くまたもや、けたたましい音で~す。
しかし!
「あらあらまあまあ!!って、うるさいわぁ!!バカ垂れ時計!!空気をお読みなさいよ~!!」
いつも通り俺の唯一とも言っていい楽しみの眠りを妨げる~!この小生意気な目覚まし時計を、思いっきりぶん投げてお仕置きタ~イム!!
ガチャ―ン!!
…ぅえ?不穏な音が今しましたわよ?共に目覚ましの甲高い音が止んでますね~。
あ~!な~るほど!ようやく自分の立場を弁えましたか!偉いぞお!
なわけあるかぁ!!目覚まし時計が…ぶっ壊れた!?おい!この程度でぶっ壊れてしまう程、あなたは脆かったんですか~!?
今まで散々共に喧嘩をしてきた中ではあ~りませんか!!
「…いやああああ!?」
も~!全く、やってしまいましたわ!?
「あ~全く!まーた余計な出費が出てしまうでしょ~!これまでの俺たちの関係は!こんなにも脆く儚かったの~!?目覚まし時計さん!?」
今日も相変わらず、ああ…疲れが取り除けないし!学園寮の外から聞えてきますわ楽しそうな喧騒が、よう聞こえる聞こえる!!このうざった~い日差しとさ!この冷たいベッドのシーツの感触が、俺を今日は一段と苛つかせてくれるんです~!!
燦爛クラス:グロワール【栄光】って言う、美少女たちの集まりの場所でのどんちゃん騒ぎにまきこまれてさぁ…大変だったんだぞ!!でも美少女かぁ…うへへ。
あ、レグルス公爵様をお忘れてしまっていましたわ!?不敬罪で処されてしまいますわ!?
そして何より…昨日も森の騒ぎだね。
「(―家から逃げるくらいであれば、私にその紅い魔眼を下さいよ!!―)」
「…あらあらまあまあレグン!!あいつは全くもってお変わりがないな!あの小生意気な態度とかよ~!!?」
ああ…昨日のレグンの言葉が、どうしても頭から離れてくれません!
俺自身もさ?昨日のように軽く高度なを行使して、世渡りも上手いし!幅広く行動ができる妹を俺も羨んでいたんだぞ?
まぁ、まさかあれ程高度な次元にまで押し上げているとは、思わなかったけどさ…。
妹もまた魔眼を持つ俺を、度々羨望の眼差しを向けてきている事は分かってはいけどよ~、あれ程の憎悪を向けるまでに妬んでいたとはね~。
…知るか!大馬鹿!!
ま、自分自身の事で精一杯だったからね~。
でもなぁ…レグンの事はもっと面倒見て上げれていれば良かったな。
う~ん…となると、もしかしてなくても俺が悪い!?いや悪いか~!!家から飛び出したからねぇ!?
「はぁ…とにかく学園に行かねえと。アトリアめぇ…教室に行ったら『空間拡張学生鞄』の件をたっっっぷりと!突きまくってやるからなぁ!」
レグンとの一件の後に、アトリアの魔術で吹っ飛んだカバンの件を、夜遅くに学園へと事情を話したらさ~?
「(―あ~燦爛の子かぁ…。まあ毎年初日は必ず何かしら問題を起こすからねぇ。仕方ないから少し値段をまけてあげるよ。―)」
と本来、大銀貨5枚するところをなんと!!大銀貨2枚と銀貨5枚にまで!半額にしてもらったのです!!素晴らしい!!
しかし、学園の職員があんな事を言うなんてね?やっぱりさぁ?グロワール【栄光】だなんて大層な名前とは程遠い、問題児クラスなんじゃないの~?
…そんな事はございませんでした!!お可愛い美少女がなんと!!あ~アトリアも入れてあげよう!4人もいたのです!!ひゅ~!!
「…………それにしてもさぁ?昨日なら入学式というある意味?大イベントがあるからまだしも…今日も一段と…ていうかそれ以上にうるさくないですか~?何なのでしょうか~?」
疑念はあるけど、まぁ正直どうでも良いし!早く美少女の元まで行くぞ~!!…ちくしょ~!!余計な出費を出してまで買い戻した『空間拡張学生鞄』に、今度こそはと!準備が疎かだったと、深く反省しましたからね。
トパーズ級5本に、そしてさらに~!アメシスト級のポーション2本、計7つを入れましたわ?これなら今度こそは不足な~し!!多分な!!
あ~!な~るほど!!
1年の寮の区画の入り口付近まで歩いてさ、喧騒の理由が分かりました~!
入り口の前に、昨日祝辞を述べてた3年主席の、通った鼻筋にその切れ目に紫紺の瞳をした!なんとまぁ!お美しいシリウス・フォン・ヴァールハイト様がおられたからですわね!!
う~ん…しかし不思議です。
ここは1年の寮の区画だし、しかもこのお方はさぁ?銀髪美少女のノート公爵様のお兄様ではあ~りませんか!!
は!!いや、待ってください!確か昨日、俺をしっかりと認識して、遠くにいるはずの俺を見ておいででした!!
ぅえ?俺が一体何をしたと言うのですか!?闇魔術でくるんでやはり俺を拉致しに来られたのですか!?
あ、説明タイム~!!
ルミナス王立学園では!貴族生徒は実家から通うのが常識ですよ!
ですからね?学生寮は平民のためだけのものなのです!!その寮のセキュリティは、生徒のプライバシーを尊重してさ?『学生証』『宝玉等級:エメラルド』(ID)を介した個人間の情報共有が基本となっておられるのです!!
お分かりになりましたか?うん?分かり難い?…頑張って!!
まぁでも待ってください!!まだ俺を拉致しに来たとは確定していません!!俺はウンシュルト家の籍を捨てて!特例としてこの寮に身を置いているだけだからね~。
しかも!当たり前ですけども誰とも情報を共有しておりません!!は?友人のいないボッチだってか?
…お黙りなさい!!
まぁそんな事はさておき、主席である何でシリウス・フォン・ヴァールハイトがいるのか…。
う~ん…気づかない振りをして過ぎ去りましょ~!!
「待っていたぞ。クラート・ウンシュルト。少し話がある。しかしここでは目立つ。ついて来い。」
…あ、これ、終わった~。
俺はここで拉致されちゃうんだ!!
「はい…わかりました~。」
あらあらまあまあ!なぜ1年の俺の素性を知っているんですか!!あ!あの銀髪美少女のノート公爵様から聞いたんですか!?
てかさ~、なんで俺がウンシュルトだと分かったんですかぁ…。
あ!俺の魔眼!常に紅くピカ~っと光ってましたね!それで分かったわけだ~。
な~るほど!…部屋に帰ってもいいですかぁ?
ぐすんですよ…、俺、ここで拉致られるんですよねぇ…?さようなら!色々と運命を呪いましたけども!これでお別れになりそうです!!
「…先日は災難だったようだな。まさか私の妹までお前に攻撃をするとは…」
およよ?拉致ではなく、普通に会話をしてきましたね?しかもあの銀髪美少女のノート公爵様についてのお話のようです!!
は!?まさか…あの方を俺に!?
などとそんな事は言えるわけないので~無難に返していきましょう!!
「…いえ、特に問題はありませんでしたので。しかし、まさか同じクラスメイトまで巻き込んで攻撃をするとは思いませんが…?」
ああ…!しまったかぁ~!?これは言うべき情報ではなかったかもしれねえ…!やっちまったか!?
「…それについては私からも直々に謝罪をしよう。実のところ、私も妹とはあまり関係が良くなくてな。あれは嫉妬深い。もう既に妹本人から聞いているかもしれないが、妹は第4階梯までの闇魔術しか使えない。あれは触媒なしで魔術を行使できるという非常に稀有な才能がある。しかしどんな方法を使おうと第4階梯までなのだ。私は主席として第6階梯まで使え、称号も『宝玉階梯:ダイアモンド』だ。しかし…そんな私を間近で延々と見せられていた妹の苦しみは相当な物だっただろう。」
な…何ですって!?嫉妬深かったんですかぁ!?あのちょっと抜けているノート公爵様は!?
なんて事だ…!?これは由々しき事態です!あの銀髪美少女の嫉妬のお顔は!似合いません!!
しかし…これは、嫉妬を向けてきた俺とレグンの関係性にも当てはまりますねぇ…。
ん?『宝玉階梯:ダイアモンド』のお兄様を見て…苦しんでいた…?
「あ~!な~るほど!だからクラスメイトの1人、アトリア・ディ・ブリッツシュラークを攻撃してきたんですね!?あ。ごめんなさい。」
やべ!ついハイテンションで主席と言う、とんでもなく強くて、そして俺を拉致しに来ていた事をすっかり抜けて口を滑らしちゃったぜ?てへぺろ?
「ウンシュルト…案外憎めない奴だな?こうして普通に私と対話が出来るのだから。それはともかく、なるほど。私と同じく『宝玉階梯:ダイアモンド』の、かの有名な『微笑む災厄』か。彼女の事はまるで私を見ているような気分だったのだろうな…。」
あ、あれ?随分と気さくではあ~りませんか!!このお方、見た目と違って話やすいぞ!
いや待つんだ!まさかこうして油断を誘い…ガバっと闇でくるんで拉致をする算段だなぁ!?
なんて事だ…!やっぱり油断ならねえ!!
ん~でもちょっと待ってね?何か…言いづらそうに拳を握り締めていませんかねぇ?
は!?やはりあの銀髪美少…
「私は初日にお前の登校する様子を目撃していた。一切無駄のない動きに加え、その紅い瞳。この2点がどうも頭に引っ掛かり…これらに1人だけ該当する人物がいる事を思い出した。
その人物とは、かつて『紅眼の魔人』と呼ばれた男…クラート・ウンシュルト。お前だ。
祝辞直前に無理やり、燦爛クラス:グロワール【栄光】に推薦状を出し、ねじ込んだのは私だ。」
女を紹介…ではなかったんですね~。
残念です~。
え?そういう事ではない!?あらあらまあまあ、そうですよねぇ!
俺もびっくりです!!シリウスさんが俺をあのクラスにお入れにしてくれたとは!!




