12 怨嗟
「一応聞こうかな?まぁ大方想像はできるが…レグン。何でここが分かったのさ?」
「なぜも何もありませんよ?クラートお兄様のご想像通りですよ?ねぇ?ルミナス最大の学園に…しかも燦爛クラスにウンシュルトの名前が載っている。ウンシュルト家から抜け出した愚か者はただ一人…。ああ!でもお姉さまも出て行かれていましたね~?ですが…調べる必要すらない程、お兄様の情報は筒抜けだという事ですよ?ですから~?もう逃げる事はできないのですよ~?お分かりになりましたか?ねぇ?愚か者のクラートお兄様?」
…目を細めつつ語りますか…。
レグンの言葉に棘があるのは…まぁ、ウンシュルトが魔眼の名門家でありながらさ~、魔眼を持つ者が俺しかいないからだよね~…。
ああ…やっぱりそうか、レグン…顔が物凄く憤怒の表情をしているねぇ…。
「あらあらまあまあ!クラートお兄様も良くお分かりになっている表情じゃないですか~?あっはっは!!…すう、あなたは!!魔眼という特別な天恵を持っているにも関わらず!!クラートお兄様はそれを活かすことなく逃げたんですよ!!私の気持ちが!!あなたは分かっているんですかぁ!!?私には魔眼の名門の出でありながら!!授かることが出来なかったんですよぉ!!毎日…毎日毎日毎日毎日い!!腹立たしいと思っていましたからねぇ!!クラートお兄様のその!紅い輝きの眼光を見るたびに…心の底から憎悪していたのですよ…。羨ましい、妬ましいとねえ!!今でもそうですから!お兄様の眼を見ていると腸が煮えくり返えそうなんですよ…吐き気がする!!
家から逃げるくらいであれば、私にその紅い魔眼を下さいよ!!本当に心から欲しくて欲しくてたまらなかった物は全てクラートお兄様に持っていかれた!!」
…ああ…やっぱりそれ程の強烈なまでの…嫉妬と怒り、そして憎悪がありましたかぁ…。
…手厳しいね?レグン?その容赦のない言葉を…随分俺に対して叩きつけてくるじゃないさ…ねえ?
けど~、その感情は俺も同じく抱いていたんだよね~…。
「レグン…。お前が俺に憎悪を抱くのと同じようにさ~?俺もまたさ?こんな意味の分からない魔眼なんて忌々しくて仕方がなかったんだよ?この魔眼は常に発動しっぱなしで、眼に映る物全て、意味の分からない情報が脳に流れきてさ~?いつもいつも苦しかったんだ。それは今でも変わらないんだよね~。
レグンさぁ…。お前が欲しがっているこの魔眼は呪いその物なんだけど?お前の考えてるような素晴らしい物じゃないんだよ?」
全くさ~?俺だってレグンの類稀なる、魔術の才能に惹かれていたのにさぁ?
「レグンさぁ…俺、この魔眼以外、な~んも持ち合わせてないんだよ~?レグンこそ分かる?俺、魔力全くないわけ。だからさ~。レグンや姉さん、そして兄さん2人の方が、俺はよっぽど羨ましかったんだよね~?あんまり俺を苛めないでもらってもいいかなぁ?」
ああ…ついうっかり俺も棘のある言葉を…言ってしまったかぁ~。
やっちゃったなぁ…
「っ!!クラートお兄様ああ?よくもっ…!!」
…ヤバいな、レグンが怒りで身体がプルプルと震えてる…。
はぁ…本当にヤバいなぁ…!!レグンから大量の魔力が溢れ出してやがる!!
「レグン!!待て!!お願いだ!!これ以上はやめ…っ!!?」
止めようと言おうとした瞬間、強力な魔術の発動を予測しやがった!!
ちっ!!ダッ!と、地面を蹴り、俺は直ぐに右に飛び転がる!
「よくもそんな事をおおおおお!!!『第4階梯:水:ヴァッサークリンゲ』!!」
その瞬間、レグンが右手に持つ魔槍『水精霊の魔槍』『宝玉等級:サファイア』を振り上げ鋭い水の刃が高速で飛来し、ヒュオオオオン!!という空気を切り裂く音と共に、先まで俺の立っていた位置の地面を深く切り裂いていた。
あの魔槍…持ち手の柄に白いスズランの花が絡まり、先端の穂は水晶のように水色に煌いているな…。
ちっ!続けて次の魔術発動を超予測かよ!レグンまでの最短で最適コースを割り出し脚に力を込めて…そしてダンっ!と駆け出した!
「あらあらまあまあ!!流石はお兄様ですねえ!?一体誰の口から!私たち家族の方が羨ましいと言えたものですねえ!?『第5階梯:水:レーゲンシュペーア』!!」
駆け出したと同時にさぁ!!先まで立っていた場所から広範囲に渡ってよ~!!ズシャシャシャンっ!!と水の槍が上空から大量に飛来かよ!!爆撃されたように辺り一面が穴だらけとなってんじゃねえか!!?くそがぁ!!
「あらあらまあまあ!!?お前だってその『第5階梯』馬鹿げた大魔術を極めてやがるじゃねえかよ!なぁ!?俺にはそんな物ねえわ!バカ垂れな妹がああ!!」
マジで苛つく!!そんな物を持ち合わせてよくも!!
「あらあらまあまあ!ガミガミと情けな~い事を言うじゃないですか~!!ねぇ!?『第4階梯:水:ヴァッサーゼンゼ』!!」
「あらあらまあまあ!誰が情けねえだ!?レグン!お前の方がよほど情けねえなあ!んでよ~!もう見えてんだよね~?その魔術の予測がさぁ!!?」
駆け出している間に、レグンが魔槍を左斜め下に振り抜き、フウウウンっ!!と水の大鎌が地面を抉って飛んできやがる…。
だがよ?走りながらぐるりと空中で一回転して、お前の水の大鎌をあっさり躱したわ!ぼけえ!!
んでお前の目の前だ!!ボケがぁ!
「そら!!レグン!お前の目の前だぁ!!くたばれ!!」
一気に魔槍を裏拳でグウウン!!と叩き落とそうとするが…だめ!回避~!
「はぁ!?良くもまあ私の魔術を躱しておいて、良く言うじゃありませんかぁ!!『第4階梯:水:ヴァッサーシュトース』!!」
シュウウン!と強烈な魔槍からの刺突攻撃!
『水精霊の魔槍』からに水の渦が纏わり、強烈な超音波振動でギイイイインと音を立て切断力が引きあがる…。
こんなものを叩き落とそうとしたら、俺の手がバラバラになっちまう!!くそがぁ!!
一度後ろにドン!と地を踏みしめて、ぐるんと宙返りで水の刺突を回避する!
「あらあらまあまあ!どうしましたかぁ!?水の刺突!!当てられませんでしたねえ!!ざ~んねん!けっ!」
煽ってやるわ!俺だってなぁ!お前らの何でも出来る事が腹立たしかったんだからよお!!
「あらあらまあまあ!クラートお兄様こそ避けるばかりで!全然攻撃がこないじゃないですか~!ざ~んねん!!『第5階梯:水:フルートプファイル』!!」
がああ!!?前方に大量の洪水の如くシュシュシュシュン!!と超音波振動によるギイイインと揺れる水の矢が大量に飛来して来やがるかぁ!
「遅いわ!!バカが!とっくに分かってるんだよね~!!」
身体を右回転させて避け、そのままダンっ!!とまた最短コースを走り抜く!
しかしさぁ!ああ!またもや背後の森が滅茶苦茶だよ!
「あらあらまあまあ!どうしましたかぁ!?また接近できるぞ!?っ!!ヤバい!!」
「『第6階梯:水:コールガランツェ』!!」
レグンが俺が先ほどまで走っていた位置に魔槍の先端を向けて、水の超巨大な輪を出現!?何だ?
とにかくガアン!と地面を踏みしめてレグンの背後に回るように前方宙返りをした瞬間!!
ズジャジャジャン!!とバカみたいな爆裂音!?
着地して、確認したら…ああ!!?まさに津波が起こったの如く、あまりにも超広範囲にかけて、あの巨大な輪から大量の水の槍が発射、森の前方にあった何もかも滅茶苦茶に薙ぎ払ってしまっている!?
「なっ…レグン!!お前!?最高位の魔術だと!?どうやって習得しやがったぁ!!?しかも…森が大惨事じゃねえか!?」
マジで大惨事なんだが!!?ぅえ?バカなの!?俺がさっきまで立っていた後ろ…もう何もねえじゃねえかよ!?このド阿呆!!
だが、背後は取ったぞ!
って!!くそがぁ!!
「あらあらまあまあ!動揺してしまって~!?情けな~い!『第3階梯:水:ヴァッサーシュナイデン』!」
ちっ!!背後にいる俺に向けて魔槍を振るうかよ!?『水精霊の魔槍』自体に水の刃を纏っての切り裂き攻撃か!!
だが…すぐさま屈んで避ける!
「あらあらまあまあ!レグンよお!攻撃してる割には全然当てられてねえな!情けな~い!そら!!くたばれ!!」
レグンの左わき腹に向かって、右足を軸とした、左回転しながらの左後ろ回し蹴りを打ち込む!
だが…ちっ!!
ガアアアン!と蹴りが槍に当たり、遠くに吹き飛ばせは良いものの…まだピンピンしてんなぁ!!
怒り狂った顔をしやがって…。
せっかく美貌が台無しじゃねえかよ…。
勿体無え!!
「ぐうう!!やってくれましたねええ!!?クラートお兄様ああ!?」
「この大馬鹿者が…!槍で少しだけ防いで直撃は避けたか…!相変わらず俺らウンシュルト家は頑丈だよね~!!?」
…っ!!何だ!?この大魔力…!?
俺の魔眼が特大の魔術発動を感知している…。
これは…本気でマズイ!!?
超広範囲型の一撃の威力が高い魔術だと解析してやがる!!
「あらあらまあまあ…クラートお兄様ああ!!?もう許しませんから!!最高位魔術…まだありますからねぇっ!!」
「あらあらまあまあ!!?その魔術はやめた方が良いんじゃねえかなぁ!?流石にシャレにならねえぞ~!?」
マジでやめてくれねえかなぁ…。
苛めないでくれます?本当にさぁ…
「あらあらまあまあ…?怖気づいてしまうなんて…情けな~い!!!『第6階梯:水:エーギルランツェ』!!!」
ああ!!?レグンが魔槍の先端を上空に向け発動させやがって…。
くそがぁ!!マジで巨人が持つようなあまりにも超巨大な水の槍を形成…。
これは…避け場がマジでない程の規模だな…!!ちっ!!
魔槍を振り下ろして同時に巨大な槍をグオオオン!!と、超高速で射出させてきやがったかよ!!
確かに避け場は無い…が、俺は両脚に全力で力を込めて、俺の謎の身体能力に物を言わせてバンッ!と本当に超上空へと飛び上がる…。
真下に水の槍が炸裂してザシャァァァン!!!という音と共に…ああ!!?もう言わんこっちゃない!!地面に巨大なクレーターの完成だよ!!隕石かよ!?そんで…はぁ、木々が折れバキバキと次々と倒れ始める、その内の1本に足を乗せるんだよね~!
その倒れ崩れる木を足場として~!レグン!お前の立つ方角に向けてダンッ!と飛ぶんだよね~!!
これも魔眼の超思考だ!レグン!この大馬鹿者が…
「…へ?」
ああ…やっぱりな、流石のレグンも呆気に取られているが、その隙を見逃す俺じゃねえから~。
瞬時に詰め寄り魔槍をガキンッ!と蹴り飛ばしてさ?そのまま大馬鹿者の…レグンの手首と喉を押さえてガン!と…そのまま地面に叩きつけたよ。
「…っガハ!?うぐっ!?」
…残念だが、魔眼しかないとは言ったが…俺も謎の身体能力があるからね~…。
レグン、お前もやたらと俺に近いだけの身体能力はあるが…俺の方がまだまだ上だよ…。
ここから逃れる事は…もうできないからね~?
「…ここまでだ。レグン。終わりだよ…。勝敗は決したぞ?暴れるな。」
「…っ!!うう!!」
…やめてよ、何でそんな物凄い形相で睨んでくるんだよ…。
頼むから!!もう俺を苦しめないでくれよ!!
「…っ!!もうお終いだ!!レグン!これ以上抵抗するなら、お前をこのまま学園に突き出しても良いんだぞ!?俺というルミナス王立学園の生徒を!襲った犯人にされたいか!?俺にそんな事をさせないでくれ!別に俺とすればウンシュルトがどうなろうと知ったこっちゃないが…それでもさ、お前を犯罪者みたいな事にはさせたくねえ!!頼むから!ここは引いてくれ…。」
もう半分俺は悲しくなってるけど…どんな表情をしてんだろうか…今の俺はさぁ…?
「っ!!………。」
流石にレグンも降参したようで目を瞑りながら力を抜き、押さえ込まれていない手で俺の腕をポンポンと叩き白旗をあげてくれたか…。
もう抵抗の意志、攻撃の意志はないと断定されたしな…。
俺は拘束を解いてレグンを解放する…。
レグンはのそりと起き上がって…そして顔を下に俯かせるかぁ…。
「………………その優しさ…クラートお兄様は相変わらずです…。今日のところは引き上げます…。」
「…済まない。」
レグンは立ち上がりながら、そして落ちた魔槍を持ってトボトボと立ち去ったか~…。
…結局、分かり合えなかったかな~?
ああ…疲れた。
何で入学初日からこんななのさ…本当によお…。
俺も帰ろ…。
…この後、この森の大惨事が後々まで大事件として~、結構ヤバい事になってました~!!




