107 グラオザーム邸のドタバタ
ええ~現在グラオザーム邸のたくさん客間、ラウンジがあるお部屋、それも比較的広めのお部屋にいます。
正直ですね~、個室以外の廊下や壁が…ほぼ砦なのです!バカみたいに天井の高い遺跡を青白い明かりで照らして、訪問者様を威圧しにかかりやがるのです!
至る場所の壁に取り付けらた『永炎の燭台』がまたまた青白く炎が灯っていやがりまして、さ~らに『光石』まで青白いと来ました!
床は黒御影石!?マジでまた真っ黒なのに青白さが反射して不気味なのです!更に肝心の壁までもが、やったら滑らか~に綺麗に整えられた…深灰色の玄武岩の石壁だとお!?
おおい!!一々黒ばかりではあ~りませんか!!
ここはやはり魔人の巣くう居城であったかぁ…。
あ、でもモフモフの分厚い深緑色の絨毯が廊下一面に引かれていたのはナイスです!
そしてこのラウンジには黒檀の…何でまた黒なのかな?長~いローテーブルが真ん中に、テーブルを挟むようにアンティーク調の黒い革張りの横に長いソファがありますねえ。
床?このグラオザーム邸ならぬ、魔人の居城はですねぇ…全部ギラりと鈍く輝く黒御影石らしいですよ?当然ここもね!
しかし!各個室はマホガニー材の壁板らしく安心です!いや安心かなぁ?
そして!毎度おなじみ『万象の噴水』と『大理石の冷暖炉』が備え付けれておるわい。
だからいつもの果実水を飲みつつ…
「んっ…ぷひゅ~。俺の喉とお肌が潤うわぁ…。ついでに叩かれまくった美しい亜麻色の髪もね!ごヴぇ!?」
「ならもっと小突いててめえの頭を凹ませてやるかぁ?紅眼性欲屑ナルシスト。ったく、本当に来やがって…。これからローズクォーツとレグンとで『影の試練場』まで赴くところだったのによぉ?」
な!?どんどんと俺の悪いあだ名がたくさん生まれて行っている!!?
「誰がナルシストじゃ、ぼけえ!!やっぱりチタニアちゃんの方が良い子ではあ~りませんか!ほら!不誠実な二股をしているレグルスよ。俺の隣に座っているチタニアちゃんを見てみなさい!微笑んで俺の手を握ってくれておるのですよ!ここまで丁重に案内をしてくれたのですからぁ!見習いなさい!ごヴぇ!?」
ちょちょちょ!?あなた今…魔銃のグリップで殴ってきたぁ!?
痛ぁ~い。
「何でてめえに説教なんざされなきゃなんねえんだぁ?二股はてめえも同じだろうが。つかおい。チタニア…。そこの紅眼性欲魔は女たらしなんだぞ?チタニアまで絆されてるんじゃねえよ。いつもの突きさす目はどうした?」
は?誰が性欲魔で女たらしじゃ!俺は陰キャなんだぞ!?
「でもお兄…。クラートさんのおかげで元気になった。私は好き…。」
あらあらまあまあ!!可愛いねぇ!
「チタニアちゃ~ん。なでなで~。う~ん!ほらぁ…レグルス!チタニアちゃんはとっても素直で良い子だよ!!ちゃんと見習いなさい!そして俺は性欲魔でも女たらしでもありません!誠実な二股をしている俺は良いけど、不誠実な二股をしているレグルスこそ女たらしだぞ!めっ!だからね!ごヴぇ!!?」
「俺の妹に手を出してんじゃねえぞ!ゴラァ!!」
「痛ぁ~い!?はぁ!?レグルスも同じでしょうが!ローズクォーツさんという正妻さんがいながら俺の妹のレグンをたぶらかして!!愛人にしてんじゃねえぞ!!この色欲の執行人がぁ!!ごヴぇ!?」
「愛人じゃねえわ!クソがぁ!!きちんと愛してるんだ!!ボケがぁ!」
「痛ぁ~い!?愛していようが愛人である事には変わりないでしょうがぁ!!俺を見習いなさい!きちんと誠実な二股をしている俺をねぇ!!2人とも正妻さんなんだよ!!ごヴぇ!?」
「てめえも結局二股には変わらないだろうがぁ!この女たらしの紅眼性欲魔!!」
「は?クラートお兄様に私とレグルスさんの関係の事をどうこう言われたくないんですけど?チタニアさんをたぶらかす紅眼屑お兄様ぁ?」
「お前も私に邪な感情を持っていた時点で『誠実さ』はとうに消えているだろう。」
えええ!?レグルスはともかく、妹のレグンとエルナト様に武器で一斉に3つも同時に叩かれたぁ!?
はい、ここには女たらしのレグルスに、良い子なチタニアちゃん!そして当然ぐへへ~、俺『の』エルナト様に、…俺の大事でもあり愚妹のレグンがいるのです。
そして~、
「うふふ、面白いお人です。クラート様は。レグルス様がいつもお世話になっております…。えへへ、レグルス様の正妻さんと認識していただけているなんて…ありがとうございますわ。」
はい!このスラリとしたお上品さと、時たま見せる朗らかな笑顔が素敵なローズクォーツさんもいらっしゃいます!!
あ、因みに皆に各飲み物を置いてくれたのはローズクォーツさんです!!なんて気が利くのでしょうか…。
「ローズクォーツさんと言う人がいながら女たらしで不誠実な二股をしているレグルス!!許せません!めっ!です!!あ、あれ?今度は小突かないねえ?もう小突きがお家芸となってるから、あれがないとなんかモヤっとするんだよ?」
ん~?あ、レグルスがちょっとばつの悪い顔をしているね~。
言い過ぎたか。
まぁ…ローズクォーツさんもレグンもどうあれ納得してるらしいから、俺からは特に何か言う事は無いねえ。
事実レグンもちゃんと愛しているようです!ローズクォーツさんのお兄様、アルタイル会計も特に怒ってないようです。
で~もお!!
「レグルス?あなたの執行人としての信念と、心の弱さをかけ併せ持つだなんて…そんな闇が深くて可哀そうな運命辿ってるあなたに女の子の母性本能がくすぐられるんだよ!自覚を持てい!!この無自覚な女たらしがぁああ!!ごヴぇ!?」
「女たらしはてめえの方だろうがああ!!この妙に誠実さがあるこの女たらしがぁああ!!」
痛ぁ~い!?もう!いい加減武器で叩くのはダメですよ!!
「お兄…。少し元気になって良かった。クラートさんはとても良い人。好き。」
あらあらまあまあ!!チタニアちゃん可愛いね!なでなで~。
あら~うっとりした顔をして~!!新しい妹が出来たみたい!
「チタニアちゃん。ありがとうねえ。クラートお兄ちゃんがよしよししてあげよう!!ごヴぇ!?」
「あらあらまあまあ?チタニアさんまで手籠めにしないで下さい。情欲してるんですか?ロリコンですか?この性欲紅眼お兄様ぁ?」
…俺の本当の妹のレグンに『水精霊の魔槍』で叩かれた…。
「はぁ…おいクラート。この情け容赦ないチタニアをそこまで手籠めに出来るお前は…もう何だかお前と言う存在その物がおかしいだろう?」
あらあらまあまあ!うへへ、お嬢様風貌の可愛いエルナト様に褒められた~!え?褒められているわけではない?
…うるせえ!!
今午後6時半くらい~。
日が沈みかけているけど、アトリアのおバカは何だか知らんが『影の試練場』とやらで『執行部隊』と言う怖~い人たちと『戯れている』とか言う意味の分からない事態を聞いたんでね。
ラウンジにいた面々で、その『影の試練場』とやらの兵舎まで歩いているんだけどさぁ?…怖いって!!
中庭とか言い放ってるけど、ここは森!鬱蒼とした森の中!!
ただその高い針葉樹が少し道を作るように整えて生えてやがるの!!
まぁ…馬車が2台くらい~?通れそうなキランキランな黒い石畳が続いてるだけよお?
ここを『中庭』と言い張るんじゃあないよ!!
あ、そうそう、このグラオザーム魔人城に入る際の、無骨な両開きする黒鉄製の門を潜ったら道が十字路に分かれていただろう?右が普通…で良いのか知らんが真っ白い巨大な馬車小屋の建物。
んで、左が何でか巨大な魔人の住む巨大な居城を迂回するように、何処かの道に続いていたけどさ?なるほど、兵舎まで直接つながる大理石の道であったかぁ。
玄関口と変わらん、黒鉄製の巨大な両扉の裏口を出たら、左に白い大理石の道が、この黒い石畳の道に交差して繋がってたもん。
んで相変わらず明かりは、地面に突き立てられた長く伸びてる黒味のかかった銀製の、『永久炬火』の刻まれた炎の灯る『永炎の燭台』が続いてるだけですわぁ。
だから何で青白く調整したかなぁ!?怖いんです!
何ですか?俺たちはこれから、ルビー級以上の魔物が居座る居城にでも向かっているんですか!?
「…昨日、レグンと一緒にアウロラの奴と歩いたな。単純に気晴らし程度だと思っていたのによぉ…。まさか違法魔導具を持ち込んで、俺諸共グラオザーム家を壊滅させるつもりだったとはなぁ?あんだけ婚約者が出来た事を喜んでいたと、そう思っていたんだがなぁ?どうかこの先も苦しめってな。」
おいおい…闇が深くて可哀そうなレグルスよ、ここで暗い話をしますかい。
はぁ、仕方ないなぁ~。
「別に殺すつもりはなかったんじゃない?『致死の空気』を持ち込んでたって話だけど…グラオザーム家を巻き添えにしつつレグルスを殺そうとするなら、『どうかこの先』も苦しめって、発言はしないだろう?起爆させるフリだよ、フリ。自分を殺して以前のように破壊人形に戻れ、そして国に蔓延る悪を抹殺し尽くせ、まぁ…こんな所かな?
…言い方は悪くなるけどさぁ、自分の死後すらレグルスを復讐の道具として、利用しようとした。そんな危険人物だよお?まぁ俺はそのアウロラさんとやらは知らないけど、その人こそ悪じゃん。次期当主のレグルスに復讐の道具としか見てなかったんだから。早めに膿を取り除いた、それで良いじゃないの~。
…そうでしょ?今日の生徒会室のラウンジでも言ったけどさ~、殺しはしたくない、でも悪を裁き、殺す道しかレグルスにはないんだから…。執行人としてこれまで何百と殺してきた事を無意味にしないために。
仮に逃げ出して業で押しつぶされるなら、俺が肯定してあげよっかぁ?レグルスがやってきた事は正義だよ。正しい。それで良いじゃないの~。」
…うんうんレグルスは怒ってるね~。
さっさと心の膿を吐き出していただきましょう!
「ああ!?おい、クラート。そう簡単に割り切れる問題じゃねえんだよ。そして特にアウロラは信頼していた!!無関係な人間がこの問題に突っ込んでくるな。」
うんうん。
確かにその通りだよ?でもねえ…この場所を歩くたびに思い出すんでしょ~?
だからこの薄暗くなった森の中で、禍々しい紅い魔眼を輝かせて…俺は言うのです。
「へ~、でもさぁ…?執行人を続ける覚悟、しているんでしょう?そんな弱気で出来るのかな?アウロラさんを信頼してようが何だろうが、『致死の空気』という違法なテロ魔導具を、それも悪を抹殺する七公爵家のグラオザーム家が隠し持っていた、なんてヤバい事だよねぇ~?悪を滅ぼすグラオザーム家が、悪の魔導具を持ち込んでいた愚か者をレグルスは排除した。どう?正解だろ?おやや?…ぼふっ!…ゴホッ!がぼっ!…うええレグルジュ~、殴り過ぎ~。」
う~ん!痛い!!レグルス~、俺の美しい~顔を良い感じで何度も殴ってくれたね!!
そして俺の襟首を掴み上げないで~!!苦しいです!!
「お、おい!!レグルス!やめないか!!」
う~ん!エルナトがレグルスを止めにかかってるね~。
でもこれは必要な事~。
「うるせえ!!エルナト!!クラート!てめえ…あんまり怒らせるんじゃねえぞ!!ごらぁ!!アウロラ…信頼してたのに!!俺を裏切りやがって…!てめえの言う通り、悪を野放しにしたルミナス王国が許せないって…。俺に悪を殺し尽くしてほしかったが、俺の心が弱っちいから失望したってなぁ…。畜生おお…。」
はぁ…ちょこっと涙目じゃないの~。
仕方ないなぁ~。
背中をさすってやりつつ言いますよ!
「ごめんね。レグルス。敢えて怒らせたんだ~。こうでもしないとレグルスは心を閉ざして、アウロラさんの言った通りもっと苦しんじゃう。でも、俺はさっき敢えてアウロラさんを悪く言ったけど、レグルスがそこまで信頼してたんだ。良い人だった事は間違いないんだろうねぇ。…そうだね~。アウロラさんの言う通り、まだまだ悪は多いからねえ。俺のウンシュルト家も、俺やレグンを良いように使っていたように。
…アウロラさんの怨嗟の声を、より執行人としての茨の道を歩ませるための、背中押し、声援として変換してみよう!!
アウロラさんを信頼していたから、レグルスには珍しく短剣、ナイフを持ち歩いてるんだろう?しかも大事そうに。
ええと魔眼によるとそれは、『夜陰切除』かぁ。『宝玉等級:ルビー』の物。アウロラさんの武器だね?」
にひひ!目が見開いておるぞい!女たらしのレグルスよ!!
「…ちっ、その通りだ。このナイフはアウロラの物だ。てめえはブリッツシュラークとは違った規格外だなぁ?あいつは倫理観が欠けていたが、クラート、てめえは普通に優しいかよ。わざわざ俺に殴らせてでも救おうとするなんてよお?…ったく、かなり力いっぱい殴ったのにピンピンしやがって。相変わらずの身体能力と耐久性があるよなぁ?ほぼ傷が無い。…だが、ほらよ。エメラルド級のポーションだ。ヴァールハイト家にいるならポーションいくらでもあるだろうが…礼だ。後はありがとうよ。
はっ!二股仲間!!いや?これからはてめえは三股になるのかぁ?」
おっと、『空間巾着袋』から取り出して幾つか渡してくれましたねえ。
なら有難くもらうぞい!
だが…
「ちょちょちょ!?アトリアのおバカをですかい!?ああ…『影の試練場』とやらに行くのが嫌になってきましたわぁ!!」
…因みにこの一連の出来事を見ていたレグンが、少し優しくなりました~。
後はえへへ、エルナトも俺にさらに少しだけ優しくなって、頼れる存在に~。




