105 庶務 兼 風紀委員7 『秩序部隊《オーダー・スクワッド》』
今ですね~、もう学園の放課後ですので、上流科エリア『正門(凱旋門)』付近の『放射状道路』の御車寄せに4頭馬車に乗って、ヴァールハイト家まで帰ってま~す。
な~ぜかエルナト様までお隣で俺を見張っておりますけれどもね!おかしいだろ!
何を俺をまるで犯罪者みたいな目で、睨みを利かせておりますの…?俺が何をやったと言うのですか!?
俺の愛する誠実な二股の正妻さんは、別の馬車に移されたぁ!!俺の身体は2人を必要としてるのに~。
シリウスお兄様ですかい?何だか家臣の私兵団の『秩序部隊』を見に行くとかで先に帰られたわ?何ですかね?その部隊。
まぁ…王都はアホみたいに広いけど、七公爵家の貴族街というこれまた広~い場所とは言え、一角だけだからねえ~。
お城みたいに巨大な七公爵家だけど、数千とかの戦闘部隊は置けないよねえ。
「おいクラート。どうして私がお前の隣で見張ってるのか…分からないとは言わせないぞ…?お前、話し合いが終わって教室に戻ってきた瞬間、ノートとスピカに飛びつきやがって…。この紅眼性欲魔がああ!!!」
「ちょちょちょ!?何を言ってるんだい!?あれもまた正妻さん2人の軽いスキンシップだよ!!見たでしょう?2人共満更でもなかったんから!!ごヴぇ!?」
「お前とあの2人の光景が見ていられない程の状況だと分からんのか!お前の魔眼はそれを教えてくれない、単なる『女たらしの魔眼』だったようだなぁ!?」
痛~い!?えええ!?ついぞレグンまでじゃなくて、エルナト殿下まで刀の鞘でぶん殴ってきたぁ!?
生徒会のラウンジでレグルスが最後に爆弾を放り込投げて来やがりまして…。
あの後、ローズクォーツさんの学業が終わるまで、俺の凶暴な妹のレグンと共に5階の最上位クラス『星屑の回廊』の隠しエリア、通称『蒼穹の隠れ家』と言う場所で暇を潰していたらしいよ?
俺が『救済の魔眼』でその場を見つけて突撃したら…
「(―入って来ないで!!紅眼二股屑お兄様ああ!!―)」
と『水精霊の魔槍』をぶん回して俺を追い出しにかかりやがったのです!!
ねえ?仲直りでしょう?何で今度はお兄様に魔眼の憎悪ではなく、侮蔑の表情を向けてるの~?
レグン!!貴方のせいでどれだけ俺が毎日悪夢を見ていたか知らないでしょう!!
魔眼に対しての憎悪のお言葉が離れなかったんだからね!!めっ!だよ!!
と言うかさ!アトリアのおバカの最終日に見せたという本性…ヤバくな~い?俺と出会たから根が良い子だったのかよ!!
聞かされましたよ!!アトリアのおバカの悲痛な叫びの件を全てねえ!!俺は平穏を望んでいただけなのぉ!!アトリアのおバカまで面倒を見るんですかい!?
アトリア自身も俺しか見えていないようなのです!!ぅえ?スピカが魔眼同士の共鳴なら、アトリアのおバカとは、規格外同士の孤独の共鳴…って事おお!?
ノートですかい?俺が魔眼しか持ちえない他者への嫉妬と怒り、ノートもまた第4階梯しか使えなかった他者への嫉妬、劣等感、怒り…そこら辺が共鳴した感じ~。
それにしても…事実アトリアのおバカには学園に来るまで、結構助けてもらったしね~。
何なら俺がこの王立学園に来るまで、アトリアしかまともな友人がいなかったしね~!!
だから言っただろ?俺は陰キャだって!!これで分かったか!!俺が女たらしではない事が!!
しかもそれをエルナト様に言ったらさぁ…
「おいクラート。アトリアの件は承知したがなぁ?お前自身が様々なトラブルを引き起こす火種だと言う事を自覚しろ!!何が誠実だ!!やはりお前自身と言う存在その物が、女を腰砕けにさせてるだけではないかああ!!」
「ごヴぇ!?ちょちょちょ!?まだ何も言っていないのに何で叩かれないといけないんですかい!?おかしいだろうがぁ!?俺の存在を否定しないでよぉ~!!ショックだよ…。ぐすん。ああ!な~るほど!エルナトも俺の魅力に気づいてくれたんだね!!俺もエルナト様が前々から可愛いと思っていて…ぐへへ。あ。ごほん。酷いよ!戦闘おバカのエルナトにもちゃんと前々から接しててたじゃん!!…あ、あれ?小突きなり愚妹にもやられたけど武器での小突きが来ねえなぁ?あれがないと何だかモヤっとするんだよ。」
…エルナト?なんか静かじゃないの~?どったの?
「…はぁ、茶化しながらも私のかつての凶暴性まで、普通に受け入れてしまう辺りの何気ない言葉が、お前の女たらしであると言う部分を自覚してほしいものだな。それにしてもレグルスめ…私以上にかなり厄介ではないか。私に頭のネジが外れただの散々言っておいて、自分は学生殺し、しかもそれでパニックになりおって…。私でも見るに値しない奴は無視か、適当に痛めつけておくまでに留めておいてるくらいだが。」
あらあらまあまあ!?痛めつけるですって!?まさかあなた!?クラス混同試合のように結構ヤバめに斬り刻んで致命傷ギリギリまでやってないだろうねえ!?
「おいクラート。お前、どうせ2ヵ月前の試合でのあの愚か者2人のように、今でも私が怒ったらあれくらい痛めつけてるのかと言う目で見ているなぁ?そんな事やってる訳なかろうが。ま、私が王族という点で近づく上流科の上級生はいるがな。」
はあああ!!?許せねえ!!このお可愛いお嬢様風貌をしたエルナトに邪な感情を抱いて近づくとは!!
「エルナト!!大丈夫だろうねえ!?変な事はされてないだろうねえ!?おのれぇ…エルナトの美貌に惹かれてノコノコ近寄ってきやがって!!許せません!俺がエルナトをお守りしなくては!!ごヴぇ!?」
「おいクラート。お前に守られるまでもないわ!私の称号を忘れたのか?『宝玉部会:ルビー』だぞ?基本は無視だが、余りにもしつこければ鞘越しの戦技で叩きのめしてる。そもそも『戦闘狂』として悪い方で有名だった私に近づく愚か者だぞ?私が暴れまわって力加減を誤り斬り殺した数の人間は沢山いるのだ。それが分かっているのかいないのか…王族である私に先ず、媚を売ろうとしてやって来るんだぞ?そんな頭の悪い奴が強いわけなかろう。近づくのは基本魔術師が多いか。魔術師自体が貴重だからな。血筋に甘え、その1点のみで愚かにも寄って来るのだ。精々『宝玉階梯:エメラルド』程度の小物だ。
分かったか?まぁ…どうせ庶務、まぁ雑務だな。風紀委員としてもお前と活動する事になる。ふっ、いざとなればお前に頼るかもな。」
んで、今もう帰り道で、既に貴族街だ~!!早い…か?ゆったり馬車が、大理石の『放射状道路』進んでるたし。
ふぇ~、それにしても、この王宮を囲むこの『円周道路』は綺麗に整えられた並木道で気持ちがいいね~。
王宮側と反対側の各公爵家の高い塀付近に、手入れ用の魔導具、『自然は芸術である』が点々と設置されているのさ~。
見た目は人頭大サイズ水晶玉だよ。
緑の葉のような色をしていてね…そいつが勝手に魔力を放って綺麗に整えてるのさ!
で~もぉ、『宝玉等級:エメラルド』だからこの水晶玉の魔術刻印の手入れが必要です。
だから…俺は馬車からちょっと顔を出して、
「あ、お疲れ様で~すぅ!いつも巡回ありがとうございま~す!」
「おや?最近引っ越しをなされたクラート様ですかね?お声がけありがとうございます。」
というちょっとした声がけと共に過ぎて馬車は通り過ぎましたが~、今のが王家直属の『王宮近衛師団』さ~。
人数はそこまで多くないみたいだけど、威厳と儀礼を重視した、磨き上げられたピッカピカの銀色の鎧に、王家の紋章(光り輝く太陽と剣を組み合わせたデザイン)が入った深紅のマント身につけて巡回、さっきの『自然は芸術である』のチェックや手入れを行ってくれているんだ~。
「全く…クラートは一々律儀だな?まぁ、そう言う所がお前の美徳ではあるか。」
あらあらまあまあ!!エルナトに珍しく褒めていただいたわ!!なんて事でしょう…。
今日は朝から大変だったからねえ!?
エルナトに愛する2人と馬車を切り離され、生徒会のメンバーに挨拶していたらまさかのレグン!!
しかもレグルスと恋仲と言うか、不誠実な二股関係!!
もうお兄様の頭の中に沢山の情報が入ってくるからさぁ~?ポーションを何度も飲まないとやってられないね!!
「それでさ~エルナト~。何で今日もヴァールハイト家に来てるんだい?あの王宮に戻らなくていいの~?」
昨日は俺の正妻さんが暴走していたので、泊まりに来てもらったけどさ~?今日まで来なくても良くね?
いいえ!そんな事はありません!嬉しいです!
「はぁ…お前の見張りだ!このバカ垂れ!!と言うのは建前だがな。面倒くさいだけだ。王宮にいるのが。全く…私は王族とは言え…まだ学生だと言うのに!!私が落ち着き始めたから婚約しろとうるさいのだ!!何処の者とまでは言われてはいないがな。」
な、何ですって!?え、エルナトが結婚を強要されてしまっている!!許せねえ!!エルナトが他の男の物になるなど~!!!
「ダメです!!ええ!是非とも我が家でごゆっくりしていきましょう!!いつまでもいて良いからね!!エルナト!ごヴぇ!?」
「お前はただヴァールハイト家に居候させてもらってるだけだろうがぁ!!」
刀の鞘で叩かれました…。
痛いです。
さ~て、到着~。
相変わらずのチェス盤みたいに節々に黒曜石があしらわれた、尖塔が幾つもある壮大な城館ですわい。
丸い広場の鉄門を抜ければ、これまた超広大な馬車が4つは通れるよね!?って感じの白亜の大理石の道が玄関までとにかく真っすぐ続いてる。
玄関口までなっがいよ~!道の途中で超でっかい『永久水流』が刻印されたクラシックなデザインの銀製の噴水があってだね、その噴水を中心に大理石が少し窪んでいてだね、結構広くて浅い湖のように広がってるんだわぁ。
その噴水と湖の左右に大理石の道があって、そこを歩いて玄関まで向かうのさ~。
この鉄門をくぐってからの長い道のりまで、芸術的な装飾がなされた『魔街灯』が左右に点々と置かれているしね~。
んで噴水の手前で更に十字路にまた道が分かれておりまして、左右に馬車専用のデカい白亜の大理石で出来た建物、馬車小屋があるんだわぁ。
そこに1人用の『ゴーレムの魔導馬』『宝玉等級:アメシスト』も幾つかあるんだぞい!!後はまぁ…このヴァールハイト公爵邸のこの大理石の十字路を中心に、綺麗にガーデニングされた庭園でもあるんだぞい。
この通りを歩きながら見る庭園は圧巻だぜ〜。
いやぁ…庭師さんには頭が上がらないねえ。
いつもお疲れ様で~す!!
あとそう、この壮大な噴水と湖の左右に、蔓青薔薇が絡る銀製のガーデンアーチがまるで緑豊かなトンネルのように長く続いているんだよ。
その先を抜けると、白い丸い屋根と蔓薔薇が絡まる白い柱の『ガゼボ』があるのさ。
そこで優雅にお茶会をするのだろうよ。
んでさ、さっきからこの巨大なヴァールハイト城館の後ろの中庭からさ、何だか不穏な音が響いてるんだが…?
「ああ…なるほどな。なぜシリウスの奴が見えないのかと思ったが…『秩序部隊』の訓練場に赴いてシゴいていたのか。」
…何ですか?それ?へ?このグウウウンと言うなんだかとんでもない音がしてるけれど…訓練!?
「…うん?お前、私に我が家とか言っておきながら、私以上に知らないではないか。『秩序部隊』は、『宝玉階梯:ルビー』が20名、『宝玉階梯:ルビー』が45名の計65名で構成されたヴァールハイト家の精鋭部隊の事だぞ?
各七公爵家には私兵団として少数で構成された精鋭部隊を保持しているがな。
例えばレグルスの家の『執行部隊』がルミナス王国に燻る裏社会の住人共、反乱分子、他国からのスパイでもいいが、騎士団や魔術師団では対処が難しい者共への排除を目的とする。
なら『秩序部隊』はと言うと、まぁあり得ないと思いたいが、万が一七公爵家や他の騎士団に魔術師団が反旗を翻した時に動かす、粛清、排除を行う精鋭部隊だ。
…私の兄が団長の『金剛騎士団』が最後の砦であるのなら…『秩序部隊』はその前の砦…と言ったところか?まぁ…グラオザーム家は少なくとも反乱はしないはずだがな。私はこれでもレグルスを評価している。」
「待て待て待つのです!!今日は朝から情報量で飲み込まれる!!!」
何だそのとんでもねえヤバい部隊はあああ!?
「エ、エルナト!!逃げるんだよ!ここは我が家ではなかったよ!ああお待ちになって。スピカとノートを早く連れ出さないと!前々から思っていたのです!!いつかシリウスお兄様は俺を闇にくるんで拉致してくるのではないのかと!!さぁ!エルナト!早く逃げるんだよ!!ごヴぇ!?」
「お前バカか?私は王族だぞ?それに何処に逃げると言うのだ?仮に逃げても『戦略級門』、指定したポイントに『門』を強制出現させる『宝玉等級:ダイアモンド』神代の魔導具があるから逃げられんぞ?はぁ…お前の騒がしい被害妄想を見るのもまぁ面白いが、流石に飛躍しすぎだ。」
…俺の方がやっぱり運命と神様に嫌われているよね!!




