102 庶務 兼 風紀委員4
「初めまして~…。私がぁ、ふわぁ…ポラリス・ド・エーデルブラウですぅ。よろしくお願いいたしますね~。」
う~ん、なんだか天然と言うか、おっとり系というか、不思議な感じですなぁ!
流石は燦爛クラス!どこの学年でも癖が強い!!
「まぁ、このような感じではあるが、副会長としての実力は申し分ない。エーデルブラウ公爵家は代々、水の属性魔術を受け継いでいる。」
エーデルブラウ公爵家はそういや確かにそうだったな。
…水の魔術?水、水、水…っ!!!
「(―あらあらまあまあ…クラートお兄様ああ!!?もう許しませんから!!最高位魔術…まだありますからねぇっ!!―)」
「(―あらあらまあまあ…?怖気づいてしまうなんて…情けな~い!!!『第6階梯:水:エーギルランツェ』!!!―)」
…やべ~、吐きそう。
…いや待て、ここで吐くわけにはいけねえ!!我慢だぜ!
しかし…腰まで届きそうな何だかふわふわしたような空色の髪に~?何ででしょうね~。
喋り方のおっとり具合もそうなんだけさぁ?凄い顔立ちがトロンと目尻がさぁ?ウェズン書記以上に垂れ下がってて…ああ!!あれだ!アトリアのおバカみたいな幼い顔立ちで、思わず保護欲をかんじさせちゃうね~?うへへ。
「おいクラート。また女好きのお前の事だ。どうせ頭の中がピンクでいっぱいなのだろう?なあ?女たらしで二股紅眼野郎。」
…ぅえ?めっちゃ毒吐いて来ませんか!?艶感があるしなやかさで、思わず触りたくなる金髪のエルナト様!?
何で日傘でもさしてそうなお嬢様みたいなさぁ?こんなお可愛いらしいお方がこんなにもビシバシ物申すのだろうね!?
「おいクラート。お前、私にも変な事をしてみろ?切り刻むぞ?」
「ちょちょちょ!?待つのです!!早まらないで!?俺の亜麻色のフワッとした髪をしています、甘いマスクの俺の顔が壊れちゃ~う!!これだけが俺の武器なのですよ!?」
あやべ!こんなふざけた事を言っていたらマジで刀『桜花葉刃』を抜刀しそうな勢いです!!
「あはは!!やっぱりクラート君も僕と一緒だったみたいだね~!僕もね?それはそれは沢山の女の子と遊んでるからね!やっぱり女の子は良いよね!!」
あやべ!フラーメンヘルツ会計監査に同類扱いされているんだが!?
何て失礼な!俺はこれでも陰キャで誠実な二股をしてるだけなんだぞ!
…ん?二股してる時点で誠実じゃないですって~?ほほ~ん?
ああ!!な~るほど!そこのあなた方は嫉妬なされているわけだ!お可哀そうになぁ!!!!
って、誰に言ってるんだよ!?
くそう!フラーメンヘルツ会計監査は無駄に俺とは違ってただ甘いマスクをしている訳だけじゃねえ!
このお方、優しくて愛嬌のある顔立ちで妖精めいたお顔に加え、変な魅了の魔力を放ってるではあ~りませんか!
「そこまでにしましょ~…。ふわあふ…。私のご挨拶ぅ~…まだ終わってませんからねえ~…?ねえ?フラーメンヘルツ公爵…?」
おっとお!このお方!やはりそのような魅了などと言うインチキ魔力には抵抗できるようです!
しか~し!フラーメンヘルツ会計監査も公爵です!魅了の魔力がとても強い!!
ん~?でも待ってください!!このお方に俺の大事な愛するノートとスピカを近づけるわけにはいかねえぜえ。
「あらら。怒らせてしまいましたか~。それでは仕方がありませんね!僕はお口を縫い合わせておきましょう!!」
ああ!!やっぱりですか!?そうですよね!怒ってしまいますよね!?…ヤバくね?俺?
「いい気味だなあ?クラート?お前の暴走もようやくエーデルブラウ副会長の存在で落ち着くかなぁ?」
「ちょちょちょ!?何を俺の事を悪く言っているんだい!!エルナトだって俺の事を切り刻むとか、なんて恐ろしい言葉を吐きまくっていたではあ~りませんか!」
あやべ!また刀を持ちあげ始めたんだが!?
…魔術の発動を予測。
ああ!?エーデルブラウ副会長が何で俺に!?
はい!こう避けよう!
「…ふあわふう…。クラート庶務もフラーメンヘルツ会計監査と同じ感じですかぁ?『第3階梯:水:ツェーレプファイル』ぅ~…。」
エーデルブラウ副会長の手首にある矢車草の花のように煌めく、青色のコーンフラワーブルーのブレスレットが青く輝いて…涙のように雫っぽい水の矢が飛んできます!
しか~し!既に回避を始めていたのでね!俺は右足を一歩後ろに下げつつ、身体を少し右逸らして矢を躱します!
ぽちゃん…と言う音が俺の身体を通り抜け…ドオオオオオオン!!!!…などと言う飛んでも無い音がしたのですが…?
え?まぁこの生徒会室全体が、燦爛クラスと同じく魔術や物理無効の防壁が張られているとは言え…。
軽く背後を見ると、重厚なマホガニー「壁板」が貼られた壁越しに張られた、『至高に栄光あれ』がぁああ!?凄くバチバチと赤い電撃みたいなのを起こしててヤバそうなんだがぁああ!?
「…ふわあふう…。う~ん、フラーメンヘルツ会計監査みたいな事は~…ダメですよ~?風紀委員も務めているんですからぁ~…。ああ…試しにどの程度か試験という面もお~ありますう…。ふわあふう…。」
「…ああ、はい…よくわかりませんが…ごめんなさい?」
おおい!!何で『第3階梯』の魔術でこれだけの威力があるんですかぁ!?
でも、あのブレスレット魔術媒介は…魔眼さんによりますと『波打つ海』『宝玉等級:サファイア』ですか~。
…あ。
「(―お兄様の眼を見ていると腸が煮えくり返えそうなんですよ…吐き気がする!!―)」
「…っ!!ぼおえ!?」
…ごめん、這いつくばって吐いちゃった!!てへぺろ?
何せまさか『宝玉等級:サファイア』とレグン等級と同じなもので…!何て皮肉なのでしょう!?
「え?ふわふわわわ~!?怖がらせ過ぎた~…?」
いえ、すいません!!俺のトラウマなだけです!ポラリスお姉さま!!
「お、おい!!?クラート!?お前大丈夫か!?私も言い過ぎたから、とりあえず落ち着け!?」
おいおい…めっちゃしゃがんで背中さすってくれるではあ~りませんか!!
ひゅ~エルナト様さ~いこう!!
「(―家から逃げるくらいであれば、私にその紅い魔眼を下さいよ!!―)」
「っ!!げぼお!!ごぼお!?」
…ごめんなさい~!?水魔術だけは無理~!!
ありゃりゃ…せっかくの豪勢な踏み心地の良い、俺の魔眼と同じ色の深紅の絨毯が台無し。
ああ…ヤバいですう…。
ポラリスお姉さまがオロオロしてしまっております…。
「…なるほど。これは確かに重症なようだな。クラート殿の事情は聞いていたが、まさかポラリス副会長の水魔術…いや違うな。水魔術自体にここまでトラウマがあるとはな。『第4階梯:聖:グリーガーゼーレ』。」
おや?ローズクォーツさんのお兄さんのアルタイル会計が、ローズクォーツさんと全く同じのワンド『美徳と名誉をもって』『宝玉等級:サファイア』で俺に精神に呼びかける恐怖心を無効化し、闘志を呼び起こす魔術をかけてくれましたわ?
俺の身体全身がオレンジ色に一瞬だけ輝いて、俺のトラウマによる恐怖心が消え去る。
ああ!!本当にありがとうございましたああ!!
相変わらず無表情だけどね!でもうへへ。
何でこの人こんなに幻想的な雰囲気で…麗しい端整な顔立ちなんだろうね!惚れ惚れしちゃう~!
「どうだ?少しはマシになったか?クラート殿。」
おっと!俺もお礼を言わなければなりません。
「すいません…。ありがとうございました。アルタイル会計。でも何で水魔術自体にトラウマがあると分かったんですか?」
「は!?クラート!?お前、水魔術その物にトラウマだと!?図太い神経をした女たらしのお前程の男が、女にだらしがないお前に何があったのだ!?」
「ちょちょちょ!?俺そこまで女たらしじゃないってば!?言い過ぎでしょう!?酷い…。エルナトにそんな風に思われるなんて…俺が何をしたと言うんですか!!ごヴぇ!?」
「ほんの僅かに考えれば分かるだろうがぁ!!この女泣かせぇ!!」
あの~さっきまでのお優しいエルナト様はどこへ?あとめっちゃ痛いです。
とても強く小突かれました。
「何を言っているんだい!俺はただノートとスピカを大事に思っているだけじゃないか!!ちょっと愛情表現を前面に押し出しているだけでしょ!?ごヴぇ!?」
「五月蠅い!!お前が女たらしだからノートもスピカもおかしくなってしまったのではないか!!特にスピカ!!入学当初は、あれだけ静かで毒舌で、お前の事を気色悪がっていた!あの!スピカがお前に骨抜きにされてしまっているんだぞ!昨日の生々しい声が頭から離れないわ!」
「痛~い!!?小突くなよ~!つうか言い過ぎだろ!良いじゃんか!ちょっとしたスキンシップ!!ごヴぇ!?」
さっきからパラソルのある場所で、ゆっくりと紅茶でも飲んでいそうな素敵なお顔が怒りで歪んでいます!
あ、やべ!
「…ふ~ん。ふわあふう…。やっぱりそこの私の婚約者のフラーメンヘルツ会計監査と同じタイプでしたかぁ~…。ふわあふう…。さっきの水魔術で怖がらせた事~、謝らなければぁ良かったですぅ。はあふう…。」
ええ!!?何ですって!?そこの甘いマスクの、燃えるような赤髪の肩まで届くミディアムヘアの女たらしのフラーメンヘルツ公爵とお!?
「おやや?嫉妬かなぁ?うんうん!やっぱり僕をそこまで愛してくれてくれていたんだね。もっとスキンシップをし…」
「黙りなさ~い…?アンタレスぅ…?ふわあふう…。」
あやべ、これ以上ポラリス副会長を怒らせないようにしよ。
フラーメンヘルツ…いえ!アンタレス会計監査!!お互い何でかビクビクしています!
「はぁ…全く、顔合わせもそうだが、クラート殿には別で話だってあるんだ。あまり場を荒らすな。フラーメンヘルツ公爵殿。さて、クラート殿の胃液も清掃されたみたいだしな。シリウス会長もお聞きだろう?」
ああ…確かにこれは、『浄化の紅絨毯』って言う、『宝玉等級:エメラルド』の絨毯ですねぇ。
気づけば俺の胃液が消えておりましたわ?は?汚い?俺から出したものは何でも神聖なものなんですけど?
てかこれ、ノートと熱い口づけで仲直りしたサロンにもあったわ!ひゅ~!さ~すが!!
にしても俺にお話とは?はて?これはただの顔合わせではなかったのかね?
「ん?どういう事だ?シリウス?私とこの女たらしのクラートの顔合わせだけではなかったのか?」
「いや!いつまで言っているんだい!?酷いよ!ごヴぇ!?」
「お黙り。お前のその無駄にハイテンションな喋り方は好きでもあり、嫌いでもある。今は嫌いな方に天秤の重りが乗っている。」
また小突かれたぁ~!!最近エルナト様が俺に容赦な~い!!
「くっく…。…おっと、済まない。余りにもお前たちのやり取りが面白かったのでな。ついぞ黙ってこの愉快な光景を眺めていた。…そろそろ来るな。」
ええ!?面白いですって!?シリウスお兄様!?あなたのノートと同じく、やはりお美しい鼻筋の通った切れ目に紫紺の瞳で笑顔を見せられますと、…惚れ惚れしちゃ~う。
いや待ってください!そろそろ来るですって!?まさか…ついぞ俺を闇にくるんで拉致しようとしているんですか!?ついにその日がやってきてしまったの…。
皆、さようなら!本当に色々と運命を呪いましたけども!これでお別れになりそうです!!
「ん?確かに誰か入って来る音がしたな?まだ誰か勧誘でもしていたのか?シリウス?」
いえ!違うんだよ!エルナト様!!俺を闇にくるんで拉致してくる人達が来たんです!ああ…ノート、スピカ…まだまだたくさん触れ合っていたかった…。
コツン…コツン…と微かに誰か上がってきます!
「〔準備==い?=グ=。〕」
ああ…!!準備って聞こえました!!俺を拉致する準備だああ~!うえ~ん!!
「〔うへへ。=グ=スさんと=ら大丈夫=す!!〕」
おいこらあ!!何が大丈夫だ!バカ垂れ!!こっちは全く大丈夫じゃないわ!!
「来たか…。公爵殿…。」
ん~?公爵う~?誰だい?アルタイル会計さん!はっ!そうか確かにヴァールハイト家は公爵でしたね!!やってくれましたね!?意味深に笑っているシリウスお兄様!!ノートとまだこれからでしたのに!!
あ、ガチャリと背後からドアを開ける音がしました。
皆、改めてさようなら!ここでお別れです…。
ん?何でびっくりした顔をしているんだい?エルナト様や?
うえ~ん、でも俺も勇気を持って振り向くと…は?
「ああ…挨拶の最中に済まねえな。シリウス会長と、アルタイル会計には許可をもらっている。申し訳ねえが邪魔させてもらいたい。んで、話に来たぜ?クラート。」
何でレグルスが?そして…っ!!
何だか緋色のロングコートに、何だか扇情的な漆黒の戦闘着が見えるが…その腰まで届くふわりとした、俺と同じ亜麻色の髪色…。
妖精めいたあどけない顔は見間違えるはずもない…。
「(―あらあらまあまあ…狙った理由なんて、それはそれは我が家に甚大なご迷惑をかけた当事者である、あなたが仰いますか?私の目的は既にもうお分かりでしょう?―)」
「(―しかし本当に流石ですねぇ?この者達3人は我が家専属の暗殺者だというのに…。こうも簡単に倒されてしまうとは。ええ、その紅く輝く眼光…本当に妬ましいですわ、クラートお兄様?―)」
「(―2年ぶりですねぇ?我が家から連れ戻しの命を受けて参りました。もう逃げられませんよ。―)」
「(―家から逃げるくらいであれば、私にその紅い魔眼を下さいよ!!―)」
「…れ、レグン?」
何で…どうして…?俺をまさかまたこんな場所で攻撃しにきたの…?
いやでも待ってください!!何だか…レグルスに引っ付いてねえ?ええ?ていうか何でレグルス今日ここにいるの~?
学園休みでしょ~?
は!!まさか!?何だか分からないけど…不敬罪で処しに来られたんですかああ!?
ぅえ?あの、レグルスとレグンの組み合わせで大パニックだよ~おお!?




