10 静寂
「『第2階梯:闇:エトレント』」
そうノートが昏倒中のエルナトに対し魔術を唱えると、紫のオーラがエルナトを包む。
するとエルナトの身体が浮かび上がり、ノートが浮かび上がったエルナトを抱きかかえる。
…は!?なんとお美しい光景だ!?さらさら銀髪美少女がフワフワ金髪美少女を!抱えているだとぉ!?
もっとこの魔眼に焼き付けたいです~!!
「うふふっ。エルナト殿下はしょっちゅう争い事を起こしては、返り討ちに合う事は日常茶飯事ですからね。このように昏倒する事もまた珍しくはありません。なのでこのように魔術で持ち上げ抱える事もしょっちゅうです。…あ、えっと?クラート様…うへへ…あ!ごほん。
では皆さま、また明日お会いしましょう。失礼いたします。」
そう言って、エルナトを抱えたノートは教室から去っていった…いや待て、また変な声が漏れてたぞ?
って!あああ!!待ってくれ~!!
「…なるほどな。スピカだったな?俺の疑念を杞憂だと断言した理由はよく分かったがよ、侯爵の身であれだけ規格外な強さを持つ教師と、そこの騒ぎの中心の野郎のように希少な魔眼持ちのてめえ。一体どういう関係だ?」
おお!?なんと素晴らしいご質問をされるのでしょうか!!レグルス公爵様!!
や~るぅ!!
「どうもこうもないわ。父が同じで母が違う。それだけの事よ?ただ私と先生とでは実力は雲泥の差よ。私は『極冠の魔眼』のみでしか力を発揮出来ないのに対して、先生は体術の他に魔術も普通に行使できるから。あなただって見たでしょう?蹴りと同時に冷気が宿っていたのが。せいぜい気をつけることね?
まぁ…父は私の魔眼という価値だけにはご執心のようだけれど…。」
そう言いながら俺の方に歩いてきて、ぅえ?何ですか?そんなあなたのような神秘的な、美少女に寄られると…うへへ。
「だからあなたも魔眼の価値しか見えていなかったウンシュルトの家から逃げ出したのかしら?」
そう俺に…ちっが~う!!そう言う質問を望んでたんじゃないのよ!!
ああ!こんなクソったれなご質問に答えないとダメですかぁ…?
「そうだよ~!面倒くさかったからねぇ!!奴らめ!!俺が魔眼で苦しんでいるのに!!高度な魔術をみせつけやがって~!!許せな~い!!侯爵の務めから逃げた俺を責めちゃいます?」
う~ん!やっぱりウンシュルト家、実家の話を持ち出されるとね~!!少しだけささくれ立つよね!
でも良いんです!こんな美少女から質問には返さないといけません!!
「あ、えっと?それは悪かったわね…。別に嫌味で質問したわけではないの。魔眼自体がとても希少なものだから…お互い苦労が絶えないわね?」
分かっていますよ!!嫌味じゃないことが俺の魔眼が解析してるからねえ!!うへへ。
むしろ境遇が同じという事に対し、親近感を抱いているらしいのかぁ…うへへ。
「いやあ、全くだね~。そこのおバカなアトリアから始まり、色々大変だったよ!!いきなり『第5階梯』の魔術を放って来やがって~!!」
「え~!!クラっち!!最初の魔術はいつもの挨拶みたいなもんじゃ~ん!!ごヴぇ!?」
お黙りなさい!!あなたは何回俺に迷惑をかけたと思っているんだい!?
あなたの魔術は危険すぎるんですよ!おらぁ!と小突いてやったわ!!
「あんなドでかい魔術が挨拶なわけあるかぁ!!大体ここの設備の殆どはお前の最初の大魔術で吹っ飛んだぞ!?このおバカ!!」
「痛~い!?クラっち!!さっきから頭ぼこぼこ叩きすぎ~!!いやぁ~、それにしても先生怖かったね~!!エルトナ王女様が嚙みついてくれたおかげで~、あたしにお叱りが飛んでこなくて内心ホッとしたよ~!!アッハッハッハッハッハ!!ごヴぇ!?」
「笑い事じゃねえわ!!おバカ!!全く、俺もリゲル先生がアトリアに苛烈な説教をするんじゃないかと、どれだけヒヤヒヤしたと思って…」
ああ…な~るほど!アトリアの能天気ぶりな発言に小突き突っ込みを入れていたら、単純に心配をしていただけだと気づいたわ。
「お、お~…う、うん。ごめんね~…」
アトリアの顔も赤くなってるし、何となく気まずい空気が流れていると…いや待つんだ!
このおバカな子以外に、可愛い子3人もいたではあ~りませんか!!
特にあの銀髪美少女!!何でしょう!何処となくポンコツさが垣間見えるんだよ~!!
う~ん!何で出て行ってしまったの!?あ~!そうでしたわ!
あのお可愛いらしいエルナト様を治療室まで…しかも!抱っこして運んでいました!!
う~ん!あの何かうへへな光景をもう一度見たいです!!
「…おい、紅眼の。俺もきちんと名乗ってなかったが、てめえの名前もまだしっかり聞いてなかったな。
てめえは俺を一度フルネームで呼んでたが…一応改めて名乗るぜ。レグルス。レグルス・アフ・グラオザームだ。」
そうレグルスが気まずい空気なんか、どうでもいいかのように口を挟んできたましたけど~、はい!大丈夫です!全く気にしてませんし、むしろこのおバカなアトリア以外の子を考えていたんです~。
魔眼からは~、おお!?なんて事でしょうか!?単純にこの空気感を和らげる意味もあって、介入したのだと解析されましたよ!?
口調は荒いし怖いけれど~、意外と気の利く人物じゃないのさ~。
唯一攻撃をこなかったもんね~?あ!でも銃口を向けられたのでしたわ!
あ、それと~、ありがとうございます~。
エルナト様の…お可愛いお顔をしている暴走に介入してくれましたしね!!
ん?でも待って?大惨事になるまで無視を決め込んでたじゃない!!
あ、待って、早く俺も名を返さなければ!!不敬罪で処されてしまうかも!?
「クラート。クラート・ウンシェルトと申します。以後お見知りおきを。」
…決まった~!!どうだい!?素晴らしい名乗りを返せたわ!?心の中は騒がしいが…は?騒がしい?うるせえ!!
喋る時は案外とっても丁寧ですのよ?男性に限ってね!!
女の子ですか~?たまに俺の素顔が出てしまいます!!
「堅苦しくすんな。ため口でいい。そこのスピカとか言う蒼眼の魔眼持ちもため口だしな。」
ほえ?なんとお優しいのでしょう!!公爵様にため口でいいだなんて…!!
俺…大感激ですよ!!
「ならそうさせてもらうよ。これからよろしく。レグルス。」
「ああ。よろしく頼むぜ。クラート。
…その紅眼については追及はしねえがよ、見てた感じ、てめえの体術や動作はあの担任教師に匹敵するか、それ以上にも見えた…。武階はどれくらいだ?」
そうでしょうそうでしょう!!何せこの魔眼の超思考と!超予測があるからね~!
…は?待つんだ、やっぱり俺本体自体は大した事がないのでは?
「俺は…まだ『宝玉武階:サファイア』だ。家出中でまともに検定なんて受けていないし、冒険者稼業でサファイア級の魔物を単独撃破したことからこの称号なんだろうな。」
ふっふっふ~!どうですか?リゲル先生よりも下だったんです!!
さぁ…どうかお褒めになって!!
「サファイア!?おい冗談だろ?エルナトのバカは『宝玉武階:ルビー』だぞ?あのバカを軽くあしらっておいて、まだ下の称号だったとはな…。はっ、たまげたもんだぜ!
んじゃまぁ、俺も先に帰らせてもらうぜ。また明日な。」
…やった~!!お褒めいただきました~!!な~んだ!お顔が怖いだけの優しいお方じゃないですか~!そして~…味方が増えたぁ!!やっぱり俺の目は節穴ではなかった事が証明されたぞぉ!!
っ!!まずい…吐きそうです!ここで吐いたらダメですかぁ…?魔眼で情報を読み取りすぎましたぁ…。
ああ!頭が痛ぁ~い!!持ってきた最後のポーション使わねえといけません!!
ってありゃ?スクールバッグ…『空間拡張学生鞄』を探すが…ないです!
魔眼も囁いている気がします!(教室に入った瞬間に雷魔術で消し飛んだよ!!)って。
「アトリア…俺、カバンどうしたっけ?魔眼がさぁ…解析してるんだよねー。最初の雷魔術で吹っ飛んだ…って。」
「……………………………………………………………………………てへぺろ~?ごヴぇ!!??」
「アトリアああああああああ!!」
やっぱりグロワール【栄光】なんて最低だぁ!!!
あ、ヤバ~い…吐くかも。




