叶わない夢が支えている
もう付き合うことはない。
そうわかっているのに、今も、彼のことを想う日がある。
夜、帰り道でふと見上げた空。
コンビニの袋を片手に、彼とよく話したあの夕暮れを思い出す。
「おにぎり、温める派だったよね」
小さなことを、まだ覚えている。
別れてから、随分時間が経った。
連絡先ももうない。
彼が今、どこで、誰と、どんな風に生きているのかさえ知らない。
だけど、心の奥では今も話しかけている。
「元気にしてる?」
「あなたの幸せを、祈ってるよ」
それだけで、涙がにじむ。
夢を見る。
もしもう一度会えたら、私は何を伝えるだろう。
「ありがとう」って言えるだろうか。
「好きだった」って、今なら素直に言えるのだろうか。
──でも、もう会えない。
だからこそ、その夢は、私の中で生きている。
叶わないけれど、消えない夢。
それは、私が優しくいようとする理由になった。
誰かを想う痛みを、知っているから。
人を大切にしようと思えるようになったから。
今日も私は、彼のことを思い出す。
もう呼ぶことのない名前を、心の中でそっと呼ぶ。
その度に、私は今を生きている。
叶わない夢が、
今の私を、支えている。