第6話 ロマンはスキルに全振りでした
ギルドの壁に並ぶ依頼掲示板の前。俺、水谷悠真はじっとその内容に目を走らせていた。
「えーと、Fランクで受けられる依頼は......うん、やっぱ薬草採取か。ラノベあるあるだな......って、あったぞ」
張り紙には【薬草の採取(Fランク)】の文字。
うん、定番。安心安全。特に戦闘要素なし。
――が、そのすぐ下にもう一つ、俺の目を引く依頼があった。
「ん?これ......【森の魔物討伐(F~Eランク)】?ってモンスター狩りじゃん!」
思わず声が漏れる。
本当にFでもこれ受けられるのか?
「その依頼受けますか?」
背後からやわらかな声がかかった。
振り返ると、そこに立っていたのは、理知的な雰囲気をまとまったギルドの受付嬢だった。たしか、初日にお世話になったあの人だ。
「Fランクの方であれば、パーティ編成を推奨しております。モンスター相手ですので」
......パーティねぇ。
俺にはそんな友達いないし、知らない人に話しかけるのも苦手だ。
だけど、ここはひとつキメておくか。
「俺にパーティ?そんなもの、必要ないぜ?だって俺は――最強さからな」
受付嬢「......は、はは......」
しまった。
今回もやりすぎたか。恥ずかしさが後から波のように押し寄せてくる。
とはいえ、言ってしまったものは仕方がない。クールを装って、俺は掲示板を指差す。
「薬草採取とモンスター討伐、療法受けさせてもらいます」
受付嬢の人――エレナさんは微笑みながら小さくうなずいた。
「はい、承諾しました。無理はなさらず、健闘をお祈りしますね」
***
薬草採取とモンスター討伐。
どちらの目的地も、王都の南にある「ルグド森林」だった。
「モンスター――魔物に色草を荒らされる前にサクッと採って、ついでに狩って帰る。うん、完璧なプランだな」
目的の草――その名は【色草】。
七色草の原料で、別名"万能薬"。光に当たるとカラフルに輝き、根本からの採取が推奨されているらしい。
「光源って......森の中で?見つかるかよ」
愚痴りながらも地道に探す。だが、ふと思いついて鞄の中を探る。
昨日買ったばかりの魔法教本――その中の"無属性"の項目を探した。
「誰でも使える、属性に割り振れない魔法か......よし、きた」
魔法はイメージ。これは漫画で得た重要な知識。
ならば――
「鑑定ッ!」
指先に意識を集中させると、視界の中に光る草が無数に浮かび上がった。
「おおぉ......すげぇ、鑑定って便利!」
視認しずらい色草が、魔法によってはっきりと見える。テンション上がりつつも黙々と採取し――
「よし、これで100本。悪くない数だろ」
そのまま森の奥へと進む。次は、初めての討伐依頼だ。
鑑定で群れを見つけて、その姿を確認すると......。
「ゴブリン......しかも、ちょっとした家族っぽいな」
茂みに隠れながら観察する。敵は経験豊富で、こっちは戦闘初心者。真正面からやり合うのは得策じゃない。
「......よし、イメージするは"透明化"。得るは"気配遮断"」
ステータスに現れた新スキル。
【気配遮断】使用者の気配を消し、周囲の生物に気付かれにくくなる。
(マジで魔法ってイメージだけでどうにかなるんだな......!)
そして、静かに収納魔法から剣を取り出す。あの時買った鉄剣――俺のロマン武器だ。
「いざ、参る!」
気配遮断のまま、ゴブリンへ急接近。剣を両手で握り――全力で振り下ろす!
「いっけええぇぇええ!!」
――ピシ......ピシ......。
「え、なんか嫌な音......?」
――バリン!
「はぁ!?俺の剣!?」
鉄剣は儚くも砕け散った。だがその斬撃は、空間魔法の加護を纏っていたのか、勢いそのままゴブリンたちを一掃していた。
「......え?え、あ、あれ、勝った?」
放心したまま、茂みに腰を下ろす。
「と、とりあえず、ギルドに帰って報告しよ......」
***
ギルドではエレナさんが迎えてくれた。
薬草とゴブリンの素材を提出し、報酬を受け取る。
「案外、稼ぎになるもんなんだな......命かけてるからか......」
報酬袋を握りしめながら、足取り重く宿に戻る。
***
部屋に戻るなり、ベッドにダイブ。
天井を見つめながら、俺は呟いた。
「......鉄剣......俺の、ロマンがぁ......」
剣が脆かったのか?いや、違う。
あの店の品質は確かだった。上級者らしき人たちも使っていた。ならば――心当たりは、1つ。
「あの枝事件......空間魔法の火力、やっぱヤバいのか?
魔力制御の必要性が、いよいよ現実味を帯びてきた。
「......俺、狩りより研究の方が向いてるんじゃね?」
そう思いながらも、疲れがどっと押し寄せる。
「はぁ......落ち込んでても仕方ねぇ。今日は寝よ」
ベッドの中で、鉄剣の残骸を思い出しながら、俺は静かに目を閉じた。




