第51話 仮想空間って素晴らしい!
「......ふぅ」
やっと一息つけるぜ。俺がいるのは学園寮の一室。さっき見せられた“ランキング”とかいう精神衛生上よろしくない代物のせいで、心のHPがゴリゴリ削られている。だがな!ここから挽回するんだよ、水谷悠真という男は!!
ベッドに腰掛けつつ、片手サイズのデバイスに目を落とす。現実世界でいうスマホ的ポジションのやつだ。学園からの通達、クラスの掲示板、個人間のやり取り、全部これ一台。文明って偉大だな。異世界なのに不便さが無いのが逆に怖い。
学園施設の案内やらクラスチャットの雑談を流し見していると、ピロン、と通知音。
......嫌な予感しかしねぇ。
内容を開く。
『1年に2回行われるランキング戦以外でも内部ポイントを獲得する方法は存在する。それは、対個人決闘システム──』
ほうほう。要するに決闘でポイントの奪い合いが可能、と。宣誓制、賭けられるのはポイントのみ、場所は練習場限定。仮デバイスを破壊した方が勝ち。連続で同じ相手は不可。さらに成績の変動が無い者は減点......。
「......なるほどな」
つまりだ。
弱いと見なされたやつは狩られる。
逆に言えば、俺みたいな“ランキング底辺臭を漂わせてる男”は、絶好の獲物ってわけだ。クソ制度じゃねぇか。教育とは。
だがまあ、悪くない。
恥をかくのも、足を引っ張るのも──俺に喧嘩売ってきた側だけだからな。
俺はデバイスを閉じ、腹の虫の訴えに従って食堂へ向かった。
── ── ──
食堂は予想通り騒がしかった。
だが内容はだいたい同じだ。
「ポイント賭けて回し合えばよくね?」
「いや減点条件怖くね?」
「決闘ルール、まだ追加来そうだよな」
......平和だな。平和だけど、闘争社会の匂いしかしねぇ。
俺は定食を注文して席につく。久しぶりに“まともな飯”って感じだ。......いや待て、アリスの手料理もあったな。あれは別枠で神。
1人でのんびり食っていると、背後から聞き慣れた不快ボイス。
「よう、水谷」
「げっ......何か用事?......中村」
振り向くと、そこには安定のドヤ顔。相変わらず俺のストレスゲージをピンポイントで殴ってくる才能だけは一流だ。
「用事も何も、さっきの見ただろ」
「さっきの......?」
「相変わらず鈍いな」
中村は一歩前に出て、わざとらしく胸を張った。
「この学年で“初”をくれてやるよ。......宣誓、私──中村燈は水谷悠真に決闘を申し込む。勝敗に賭けるポイントは±10」
......。
......は?
ちょっと待て。初日で?しかも±10?お前どんだけ俺のこと好きなんだよ。もはや求愛だろ。
周囲が一瞬静まり返り、次の瞬間ざわつく。
視線が痛い。超痛い。
だが俺の返事は決まっている。
「宣誓、俺──水谷悠真は中村燈の決闘を受ける」
空気が爆発した。
「おおお!?」
「マジで!?」
「初日から!?」
そして、どこからともなく聞こえる鬱陶しい声。
「おいお前ら!!練習場に集まれー!!」
林田だ。楽しそうだなコイツ。爆発しろ。
── ── ──
練習場。
いや、正確には仮想空間。
デバイスを通して意識が接続されると、視界が一瞬ノイズじみた光に包まれ、次の瞬間には広大な闘技フィールドが広がっていた。
地面の感触はリアル。風も匂いもある。でも死なない。壊れても再構築される。文明の勝利。
......最高か?
中央にプラントが立つ。
「ルールは公式に基づく。カスタムルールとして勝敗ポイント±10を適用。......はぁ、何で自クラス同士で潰し合うんだか」
わかる。めちゃくちゃわかるぞ先生。俺も今、人生の選択ミスを噛み締めてる。
中村は俺と向かい合いながら、余裕たっぷりに口を開く。
「良い事教えてやるよ」
「なに」
「あまり大々的に決闘宣言はしない方がいい。手札を晒す行為だからな」
「......それ、お前にも不利じゃね?」
「だからこそ、だろ」
意味深に笑う中村。
嫌な予感しかしない。
プラントが手を上げる。
「 ──開始」
その瞬間。
中村は不気味なほど穏やかに笑った。
「......私はお前を認めない」
そして、宣言する。
「──【多重人格】」
Xの方では言ったのですが、唐突に書きたい作品が出来たので2作同時で進めたいと思ってます!が、2作目は一旦という状態なので、更新頻度としてはメインのこの作品の方を多めにします!




